死にたがり少女は覚めない夢を見る   作:桃音@まゆすきp

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好きに

頭がズキズキする。

また嫌な夢を見た。

 

「これで何度目かしら。」

 

今日の夢は最悪。

よりによって嫌いな"男"に殺されるなんて。

 

いつも通りに鞄に防水カバーを付けた本を二冊と水色のルーズリーフ、真っ黒い猫のペンケース、お気に入りのグミ、配布物用の水色のファイルを入れていく。

いつでも遺書が書けるように、薄紅色のレターセットも入れる。

 

散々迷って、切れ味のいいナイフも鞄に入れる。

 

「・・・。行ってくる。」

 

誰も居ない家に挨拶をする。

母にも父にももう会えないから、私はここで独りで暮らしている。

私は心中が大嫌いだ。

 

両親の遺体を見付けたのは中学3年生の時。

合格発表の日。

 

本当に嫌なタイミングよ。

 

嫌な事を思い出したわ。

 

 

 

::::

 

 

「おはよっ、委員長!」

 

いきなり肩を叩かれて、飛び上がりそうになる。

 

「おはよう。朝から元気がいいのね。」

「それがさー!」

 

つまらない会話。

本当は打ち切ってから教室に走って行きたい。

目玉焼きの黄身はいつ潰すのがベストなのかを考えながら相槌を打つ。

 

 

「あ、委員長来たっ」

「お、おはようございますっ」

「委員長!ちょっと困ってるんですけど。」

 

あーもう!私は便利屋じゃない!

端から見れば人気者みたいだけど、実際違う。

なんでも聞いてくれる、都合のいい存在だから集まってるだけよ。

 

「委員長、お客さんだよー?」

 

珍しい。

私にお客さんなんて滅多に来ないから。

 

「せ、先輩。」

「あら、けーくん。おはよう。」

 

恵だった。

 

「いきなりどうかしたの?」

 

恵の顔は真っ青で、今にも倒れそう。

どうしたのかしら。

 

「いえ、先輩に会いたくて来ただけです。」

「そう。じゃあ目的は果たした訳ね?

じゃ、保健室へ行くよ?」

 

見た目より軽い恵をおぶって保健室へと連れていく。

 

先生によると、軽い貧血らしい。

そこまでして私に会いたかったのか?

凄く不思議な気持ちだわ。

恵の頬にそっと触れてみる。

少しひんやりとした頬。

つんつんとつついても気付かない。

 

少し悪戯したくなって、

 

頬にキスをした。

 

男嫌いの私なのに、どうしてだろう。

恵を見ているとおかしくなりそうだ。

 

胸が痛くなるくらいに心臓がばくばくしている。

 

「ん、んぅー。」

 

恵が起きてしまう。

 

「あ、先輩?」

「お、おはよう。

あー退屈だわ。」

 

なんでもないように振る舞う。

どうか気付かないで。

 

 

「そういえば、人間失格っておすすめですか?」

「いえ、おすすめしないわ。

私は好きだけれど、人によって好き嫌いが別れるもの。

それでもおすすめするときは、きっとその人に同じモノを好きになって貰いたいって思った時ね。」

 

それを聞いた恵は、泣きそうな顔で微笑んだ。

 

 

「さ、もうすぐ始業時間よ。

早く教室に戻りなさい。」

 

保健室の先生が声をかけてくれる。

 

「あら、堺くん。調子はどうかしら。」

「はい、だいぶいいです。

もう戻ります。」

 

まだ少し顔は青いけれど、本当に大丈夫なのかしら。

 

「あなたの先輩、ずっと堺くんの傍に居たのよ。」

 

そう言ってくすりと笑う先生。

余計な事を言わないで欲しいわ。

恥ずかしくなって何も言わずに保健室を立ち去る。

 

「せ、先輩っ。」

 

腕を掴まれた。

 

「その、これあげます。」

 

渡されたのは、私の好きな作家の新刊だった。

 

「これ、昨日発売されてたんです。よかったらどうぞ。」

「ありがとう。けーくん。」

 

もう出てるなんて知らなかったから、正直嬉しい。

でも。

 

「でもなんで、この本を私にくれるの?」

「先輩が好きだからです。」

 

あまりにも唐突で意味がわからない。

 

「だって、その作家さんの本が好きだと言ってたじゃないですか。好きなら新刊欲しいかな・・・なんて。」

 

あ、あぁ。そういう事か。

先輩が好きだからは作家さんのこと。

 

いや、少しも残念とか思ってないわ。

だって私は男が嫌いだもの。

嫌いなのよね?

 

嫌いだと思う。

 

嫌いなんじゃないかなぁ。

 

「そ、そうっ!

欲しかったから嬉しいわ!

そろそろ教室に戻りましょ?」

 

そう言ってから、私は走って教室に戻った。

 

************

 

1週間後に書店で好きな作家の本を買うと言う未来は消えた。

しかし、他の作家の本を買う可能性もある。

 

先輩の様子が何か変だった。

ナチュラルに告白したからだろうか。

それにしても告白の前から変だった気もする。

 

今日の先輩は特に注意しておいた方がいいだろう。

 

「さ、堺くん。先生が・・・その、呼んでたよ。」

 

同じクラスの如月さんだ。

 

「ありがとう。」

 

俺の苦手な女子。

 

 

 

 

この人が先輩を殺す未来を何度も見てきたから。

 

 

 

「堺・・・くん?」

 

じっと見つめてしまっていたらしい。

 

「ごめん、考え事してた。」

「そっか、そんな時もある・・・よね。」

 

如月さんに別れを告げる。

先生に用件を聞き、荷物を運ぶ。

 

「あの・・・重そう。

手伝おうか?」

 

また如月さんだ。

 

「いや、重いからいいよ。」

「こう見えても、力持ちっ、だよ。」

 

ここで如月さんに荷物を持たせると、

(私を頼ってくれる=好き)という勘違いが起き、

如月さんからのストーカー行為に繋がる。

(なんでこんなにもあからさまに好きだと伝えているのに・・・。あの女がいるから?)と先輩を一方的に憎み、先輩を殺す。

 

それだけは避けたい。

 

「如月さん、これは僕の仕事だからいいよ。力持ちだとしても、君には持たせられない。ごめんね。」

「そ、そっか・・・。差し出がましい事してごめんなさい。」

 

これでストーカールートは回避出来た。

 

 

########

 

夜、一人の少女はやっと完成した人形の出来映えを見ている。

 

 

 

 

 

「さかいくん・・・。

えへへ、今日は沢山お話した、ね。

みう、さかいくんのこと、だいすき。

 

でも、なんで?

みうじゃなくて、あの女を見るの?

あの女の何処がいいの?

 

早く消えないかな。センパイ。」

 

 

お手製の人形を2つ持った少女が、狂ったように1つの人形の腹部にボールペンを刺していた。

 

「そうだ。おじさんにおねがい、しよ。

なんでもして、えへへ、くれるから。

センパイを殺して、って、言お。」

 

もう片方の人形を抱き締める。

 

「そしたら、邪魔、する人はもう居ない、よね。

さかいけいくん。」

 

少女、如月みうは恵の人形と話し出す。

 

 

「だいすき、だよ」





今日の夜から少し遠出するので、来週投稿予定でしたが、完成したので投稿します。

お気付きの方もいらっしゃるでしょうが、サブタイトルは文章になっています。
文章が完成したときが、一章目の終わりです!

如月ちゃんですっ!
如月ちゃんはヤンデレ設定です。
先輩の名前を指しおいて、フルネームも登場ですw

恵もフルネーム登場しましたね。

先輩の名前が出ない理由は次の話で触れられるといいなぁ。
べ、別に決まってない訳じゃないからねっ。

如月ちゃんみたいに好きな人のぬいぐるみ作れるようになりたいなぁ。

裁縫スキル高いんだろうなぁ。

スキルの神様、私に文才スキルをください・・・。


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