当主となったその夜に……
夕焼けか、はたまた血の色か。真っ赤に染まった我が家には息も絶え絶えの母の姿。「生きて」と言ったその姿はワタシに突き刺さった。
護るべき側であったはずが護られてしまったこと
目を閉じれば、瞼の裏に浮かぶのは
―楽しかった頃の思い出
小さかったこの手で受け止めれたのはただひとつ
死んでしまった母の遺体を見て 自分の無力さを痛感し、慟哭した。
そんな哀しみの淵からワタシを掬い上げたのは妹だった。
たった1人の肉親となってしまった彼女の温かさによりワタシは救われた。
心優しく、そのときの記憶も曖昧だった彼女は望まなかったのだろうがワタシは大好きだった母を殺した奴らを許すことはできなかった……
心の奥に芽生えた復讐の種はやがてワタシを突き動かし、復讐を成功へと導いた。
だが、母の敵の死体を目の前にしても、復讐の成功を確信してもワタシは喜びを感じなかった、感じたのは虚無感だけ。
虚しさだけが心を占める。ようやくそのときのワタシは過去を振り返り始めた。
しかし、それは遅すぎた
そのときには受け止めていたモノも溢れてしまっていたのだから……
「ふぅ…」
夢をみていたようだ。久しぶりに見た夢は子供のときのような甘いものでは決してなく、己の愚かさを吐き散らすような苦いものであった。
そんな夢のせいで寝覚めは最悪だった。気分は落ち込み、体はだるい。甲板に出て風にあたることにした。
ベットから出て歩き始める、目の前の扉は音もなくワタシの目の前からなくなる。ワタシの住居となっている自慢のクルーザーなのだ
甲板には夕日が射し込んでいた。
その眩しさに目が眩む。が、それも一瞬すぐに視界はクリアになる。
上を見上げる、操舵室には舵をとる人物の姿がみえた。
「カーラ!」
そして、操舵室に向かって声を出す。
寝起きで何も飲んでいないため喉は渇きあまり大きな声は出なかったが
「はい?どうされましたか?」
聞きなれた凛とした声と共に操舵室である三階の窓が開き金糸のような髪を後で一本に結わえた碧眼の美女が顔を覗かせる。
「いや…」
ワタシは何か意図があって呼んだわけではなかったので少しだけ言葉をつまらす。
「……もうすぐ日本か」
捻り出した言葉は現在地の確認。それでも彼女はニコッ!と笑う。
「そうですね。妹様がいらっしゃる国ですね!」
なにがそんなにうれしいのかワタシにはわからなかった。妹がいる国と聞いて思い出す。
「あぁ…」
現在の日本の治安はそれほどよくないらしい。
一度失ってしまったものを取り戻そうとするのは傲慢が過ぎるかもしれないとワタシは思う。けれど、妹はワタシの全てだったのだ。あのとき気づかされたその存在の大切さ。
彼女には嫌われてしまっているかもしれないという不安を感じながらも、ワタシは再会を心待ちにしている。
そんなことを考えているとだんだん気分がよくなってきた。
たまには風にあたりながら寝るのも悪くはないのではなかろうか。そう思った。
「ワタシはそこのイスで寝ている。
日本までの操船はカーラに任せるよ」
そう言ってワタシは近くのイスを引き寄せる。
イスに座って見える景色は夕焼けに染まるオレンジの海。ワタシは素直にきれいだと思った。意識が朦朧としてくる。また眠くなってきたみたいだ。
さっきまでのベットと違い頬を撫でる風が心地よい。
「お任せください」
カーラの声を聞きながら瞼を落とす。
次に目が覚めるのは日本についたときだと想いながら…
初投稿ですのでご助言お願いします(〃ω〃)