まっしろレポートとふたつの炎   作:アリィ

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Report2-3 [しかえし]

[Report2-3 しかえし]

 

翌朝。朝焼けの光が木葉の隙間からこぼれる眩しさで目覚めた二人。

 

スゥ「ふぅ、ふぁぁぁ~っ。

  …痛たたっ、野宿ってキツいな。あんまり休まらないや。」

 

ファルナ「ん…ぅ。スゥ、おはよう~。」

 

スゥ「おはよう。よく眠れたか?」

 

ファルナ「うんっ。ふかふかのベッドもいいけど、野宿も結構楽しいね!」

 

スゥ「そ、そうだな!」

 

スゥは昨日の晩ご飯の後に抱いた、野宿への自信はどこへやら…自分で思っていたが

ファルナは相変わらず調子が良さそうだった。

こういう所のたくましさが人間とポケモンって違うのかなと、ふと思うスゥ。

 

スゥ「さて、朝ご飯探しにいこう。来るまでにも木の実が生えてる木が有ったはずだから。」

 

ファルナ「うん!リンゴなってないかな~」

 

スゥ「うーん、昨日は見かけなかったから無さそうだけどなー。」

 

そんな事を話しながらスゥ達は朝ごはんの調達をした。

彼女が期待していた物は無かったが、

桃色の柔らかそうな木の実を抱えるほどに収穫してご満悦の二人。

 

スゥ「やっぱりリンゴは残念ながら無かったね。でもほら、こんなに木の実集まった!」

 

ファルナ「んぅ、ちょっと残念。

   でも、この木の実もおいしそうだね。いただきまーす!」

 

スゥ「いただきます。」

 

スゥ「ん!」

ファルナ「あ!」

 

スゥ「甘くておいしい!どう?ファルナ。」

 

ファルナ「うん、すごくおいしい!沢山採っておいて良かったね~♪」

 

スゥ「お腹一杯になり過ぎないようにね。」

 

スゥ(この辺りってこんな美味しい木の実がいっぱいなってるんだ。

もしかして、コラッタ達が縄張り縄張りってうるさいのは…?)

 

スゥ「それじゃあ、出発しようか。もう7分目くらいまで来てるからトキワまでもう一頑張りだよ!」

 

ファルナ「はーい!」

 

二人は森を出て、来た道へと戻って進み始めた。

その時、森から出てきたスゥ達を草むらの陰から見ている集団がいた。

 

?「…あいつらか?お前をイジメたって奴らは。」

 

?「うん。あいつらやっつけちゃってよ、にいちゃん!」

 

?「まかせろ、カジ。

 しかもあいつら、勝手にオレ達のモモンの実食いやがって・・・。」

 

人違いではないことを確かめると、陰に隠れていた集団がぞろぞろと

スゥ達の前に立ちふさがった。

 

?「おい、テメェらっ!」

 

スゥ「!なんだ、またコラッタか?

  …うっ…!」

 

ファルナ「ね、ねぇスゥ。なんか沢山いるよ…この人たち、昨日の…!」

 

?「おい人間。昨日はオレの可愛い弟と遊んでくれたらしいじゃねぇか。

 オレはカジの兄、ガブってんだ。こいつらはオレの子分だ。

 ちょっと俺達とも遊んでくれよ。」

 

スゥ「『弟』って…、そういう事か。

  カジっていうのは、昨日のコラッタの名前だな。」

 

カジ「そうだよ。昨日お前がイジメやがった、可愛い可愛いコラッタだよ!」

 

昨日、最初にスゥ達が戦ったコラッタの名前はカジというようだ。

兄や取り巻きが居て気が大きくなっているのか、昨日の3倍増しで偉そうにしている。

 

スゥ「…それで?仕返しにきたのか?」

 

ガブ「まあ、そんな所だ。

  …だがな、オレは強ぇ奴は好きなんだ。

  オレとタイマンで勝負して勝てたら、その後は見逃してやってもいいかもな。」

 

カジ「えっ!?何でだよにいちゃん!みんな一斉にやったらあいつら簡単にやっつけられるじゃん!」

 

ガブ「まあ黙ってろって。オレが負けるわけ無いだろ?」

 

スゥ「随分自信があるんだな。」

 

ガブ「…カジだけじゃなく、他の奴らも昨日はずいぶんお前たちにやられたらしいな。

   正直、楽しみだ。

   オレは一味違うぜ。早く勝負しろよ!」

 

ファルナ「スゥ、私ならいけるよ。この人を早く倒して、トキワシティに行こう!」

 

スゥの中では「逃げる」という選択肢が色濃く有ったが、

よく見ると逃げても逃げ切れる数じゃないと悟り、何とか目の前のガブに勝つしかないと判断した。

 

スゥ「…行くぞ、ファルナ!」

 

ファルナ「はいっ!」

 

ガブ「女のクセにいい度胸だな。来い!」

 

スゥ「ファルナ、[ひっかく]だ!昨日の調子ならいける!」

 

ファルナ「えいっ!」

 

ファルナはガブとの距離を詰める。

しかし、彼も黙って突っ立ったまま攻撃を受けるつもりは無かった。

 

ガブ「遅ぇよ!」

 

大きな体に反して、軽やかに地面を蹴り素早く走り回る。

ファルナの正面にいたはずのガブの姿が消え、後ろからガブが突進してきた

背中に攻撃を受け、一瞬彼女の息が止まる。

 

ファルナ「くあっ…!」

 

スゥ「速い!?」

 

ガブ「おい、こんなもんか?今の[電光石火]は手を抜いたんだがなぁ。

   お前らこんな弱ぇくせにカジを虐めたんじゃねぇだろうな?」

 

スゥ「今の技は[電光石火]って技なのか…体当たりよりも速いし、威力も…

  ファルナ、立てるか!?」

 

ファルナ「けほっ、う、うん。まだいけるよ!」

 

スゥ(ファルナはガブ程速くは動けないし、どうするか…!)

 

ガブ「もう一編食らえ![電光石火]!」

 

スゥ「くそっ、速いな![ひっかく]!」

 

ファルナ「えいっ!」

 

スゥもファルナも、ガブの動きについて行けてない。

指示も攻撃も上手くいかず引っ掻く攻撃は空振りした。

 

ガブ「遅い遅い!」

 

ファルナ「きゃあっ!!」

 

すぐに後ろに回り込み、またも背中に攻撃を当てた。

二度も同じ場所にダメージを受けてファルナは少し参ってきている。

性懲りもなく、また正面から[ひっかく]を叩き込もうとするファルナ。

しかし、やはり後ろからガブの攻撃を受けてしまう。

 

ファルナ「あぐぅっ…はぁ、はぁ…」

 

スゥ「ファルナ!!

  くそ、このまま一直線に攻撃しても、どうせまた後ろに回りこまれるし…

  …

  ん、"後ろに"…か。」

 

スゥ「ファルナ、もう1度だ!」

 

ファルナ「っく…!はい!」

 

ガブ「またバカ正直に突っ込んでくるだけかよ。

   何度やっても同じだっての!」

 

再びファルナの前からガブの姿がなくなった瞬間…

スゥはしめたと思い指示を出す。

 

スゥ「今だ!

  ファルナ、後ろに思いっきり振りきれ!!」

 

ファルナ「えっ!?…うん!

やあぁぁぁっ!!」

 

ガブ「!!な…グガッ!!」

 

後ろまで振り回したファルナの爪が、後ろから襲いかかろうとしたガブに直撃した。

 

カジ「ああっ!にいちゃん!!」

 

ファルナ「あ、当たった!」

 

ガブ「ゲェッ、グッ、これ女の力かぁ!?…ゲホッ」

 

スゥ「バカ正直なのはお互い様。

  どうせ今度も後ろに回ってくると思ったよ。

  反撃されないって油断してただろうから、かなり効いただろ?」

 

ファルナ「スゥの言うとおりにやったら当たったよ~!すごい!」

 

ガブ「ゲホッ、や、やってくれやがったな、馬鹿力女め!

   今度は本気で行くぜ!」

 

ファルナ「ば、ばかぢから…!?」

 

ガブは更に速い[電光石火]でファルナの周りを駆け回る。

蹴った地面が掘れる程、勢い良く脚を踏み込んでいた。

 

スゥ「さっきよりも速い!

  とにかく、あの速さをどうにかしないと…

  一か八か…ファルナ!

  なきご…」

 

ファルナ「ギャウゥっ!ギャウッ!!」

 

スゥ「えっ!!?」

 

ガブ「っわっ!いきなりなん…」ピタッ

 

スゥが「鳴き声」を指示しようとする前にファルナは大声で威嚇した。

ガブを驚かせてスキを作る作戦だったが、まずスゥが驚いていた。

しかし驚いている場合ではない、今こそチャンスだとスゥは指示を出す。

 

スゥ「今だ!

  全力で突っ込め!!『ひっか…」

 

ファルナ「やああぁっ!!」

 

ガブ「あっ、しまっ・・・ゲウッ!!!」

 

スゥ「…く』、でいいです。それで。」

 

またしてもスゥの指示を待たず攻撃を入れるファルナ。

結果的には全部スゥの指示(予定)通りなのだが、呆気に取られるスゥ。

ファルナの鳴き声に驚き、足を止めたガブのわずかな隙を突いて、

ファルナは渾身の[ひっかく]を叩き込んだ。

 

スゥ「よ、よし!!」

 

ファルナ「はぁ、はあっ、…」

 

スゥ「ファルナ、戻っておいで。よくやった!」

 

ファルナ「う、うん!

   ガブ君!女の子に馬鹿力って言ったらいけないんだよ!」

 

ピクピクとひっくり返っているガブに対して説教を聴かせるファルナ。

 

スゥ「急に力が入ったのは、それが理由か…なるほど。」

 

事実、その馬鹿力のおかげで助かったんだけどなと思うスゥだったが、

ガブの有様を見て自分はそうなりたくないと思い言えなかった。

 

カジ「にいちゃん!にいちゃん!しっかりしてよ!」

 

ガブ「ガッ、ゴホッ、ゴホッ…」

 

スゥ「もう立てないだろ。俺達の勝ちだな。」

 

ファルナ「先に通してもらうよ!」

 

約束通り、これで黙って退いてくれると思い先に進もうとする二人。

しかし、どうも話が違うことになりそうだ。

 

ガブ「ゲフッ…なに勘違いしてんだ!

   …おい、手前ら!俺がやられたってんのに、何ボーっとしてんだ!」

 

スゥ「…え?」

 

カジ「にいちゃん…?

   …あー、そういう事ね。」

 

カジはガブが言いたい事を理解し、黙って見ていた取り巻きに指示した。

 

カジ「みんな!にいちゃんがやられたぞ!

  黙ってられるか!!相手は疲れてるぜ!やっちゃえぇっ!!」

 

子分達「わああああ!」

 

カジの一声でせきを切ったように襲いかかってくるコラッタ集団。

 

ファルナ「ひいっ!?」

 

スゥ「くそっ、何だよ!結局全員でかかって来るのかよ!」

 

ガブ「うるせぇ!!

   このまま見逃す訳無いだろうが!

   グウッ…」

 

言い終わるとガブは気絶してしまった。

 

スゥ「くそっ!ファルナ、逃げるぞ!!」

 

ファルナ「う、うん…!」

 

 

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