右肩に激痛が走り、そのすぐ後にバキッと不気味な音が鳴った。首を捻れば鼻と目の先にドスギアノスの血走った目が映る、もう右肩は動かなくなり全身の力も抜けていく、ガルクは冷めた頭で悟っていた。このまま死ぬと。心なしか痛みも感じなくなりまぶたが重くなってくる、死の恐怖を押しのけ頭の中には思い出が浮かんでは消えていく。
「もう・・・疲れたな・・・」
我ながら情けなかった、村を守るため、父親との約束を守るため、そんな理由でハンターとなり村に帰ってきた、そしてこのありさま、こんな醜態晒すぐらいなら死んだ方がましだ・・・
ガルクはあきらめるように目を閉じた。このかすかに感じる痛みから逃げるように、この永遠に続きそうな疲労から逃げるように、自分から逃げるように。
その瞬間だった。
「あきらめるな!!」
そんな一言とともにまるで軍服のような防具、ギアノスシリーズを纏い、ギアノスの鱗で覆われた刀身から巨大な牙が五本ほど並んで飛び出しているような奇妙な大剣、蛇剣【白蛇】を背中に背負ったハンターが颯爽と現れた、そのハンターは走りながら抜刀し、その肉厚の刀身を力任せにドスギアノスに叩きつけ吹っ飛ばす。
意表を突かれたドスギアノスはガルクの上から離れ地面を二転三転したあと地面で悶える。
「あきらめるのか?お前」
「・・・え・・・?」
ハンターの透き通った青い眼がガルクを見つめる
「さしずめウォル村のハンターってとこか・・・でも、お前は村を見捨てれるのか?」
その一言がガルクの心を震わせた。こんなとこであきらめれるのか、村を見捨てるのか、父親の約束を破るのか。ガルクは無意識に自問自答を繰り返していた。
ハンターは漠然としているガルクを見据え、ふぅとため息をつくと大剣を構えながら言った。
「お前そこで待っていてくれ、その傷じゃ戦えない、俺が変わりにやるから」
いきなり自分を吹っ飛ばした相手に怒りの炎を燃やし、迫りくるドスギアノス、それを落ち着いて見据える。ドスギアノスが口を開け、ハンターに噛みつこうとした瞬間、ハンターは自身の大剣を盾としそれを防ぐ、そして刀身を蹴り、無理矢理ドスギアノスをはじいた。
「おおおお!!」
勇ましい咆哮とともに思いっきり大剣で切り上げを放つ、思いがけない方向から攻撃が来て避けれずに肩の部分を斬られるドスギアノス、しかし簡単にやられるわけではなく口から氷液を吐きだした
それをバックステップで躱し、剣を思いっきり振り上げ縦切りを放ち命中させる、たまらずドスギアノスは後退する。
目の前で戦いがあるのにもかかわらず、ガルクはまだ自問自答を繰り返していたが、それはだんだんと自分への罵声と変わっていった。
自分じゃ村を守れない、父との約束も果たせない、俺にはこの場にいる必要性がない、しかしその答えの言葉は自然と出た。
「それでも・・・・」
その瞬間ガキンッとと言う音ともに、声も聞こえる。
「すまない!仕留めそこなった!!逃げてくれ!!」
どうやらドスギアノスが攻撃を避けこっちに向かってきてるらしい。ハンターは納刀するとドスギアノスに向かって走り出す、それよりも早く、ドスギアノスはガルクの頭上で口を開ける。しかしそれよりも早かった。
「それでもッ!!!」
一条の風が通り過ぎ、斬(ざん)と言う音ともにドスギアノスの体は真っ二に切れていた、バランスを失ったドスギアノスは外側に開きながら倒れて行った、斬ったのは、いつの間にかドスギアノスの後ろにいたガルクだった。左腕に全ての力を注ぎ込み、刹那の瞬間で叩き斬ったのだ。
「それでも、俺は・・・ハンターなんだ」
そう言い残しガルクは倒れた、ハンターは急いで駆け寄り、つぶやいた。
「誰か知らねぇけどよ、お前、大した奴だよ」
ガタゴトと揺れる感覚、変わらず右腕には感覚はないがそれ以外の箇所は痛みが和らいでいるように気がした、重いまぶたを開けると、そこは竜車の上だった。体を起こす、少しズキッと痛むが動けない程じゃなかった。運転席を見ようとすると、竜車が止まった。運転席から顔を出したのは純白のショートカットに透き通った青い眼をしている少年だった。
「お、起きたか、もうウォル村に着いたぞ、降りろ」
少年はニコッと笑いながら顔をひっこめ竜車を降りる。ガルクも体の痛みに耐え降りる。
「ガガガガガガ・・・ガルク!?」
降りたとこではフレアが立っていた、ガルクを見るなりなぜか号泣し始めた。
「あんた何してんのよぉ!!・・・グス・・・血だらけじゃない!!・・・ズズ・・・バッッッッカじゃないの!?・・・ぐすん・・・」
そしてガルクに抱き着いたのだ。
「わわ!やめろって!血で汚れてきたねぇから離せ!!」
「ばっかじゃないの・・・?・・・心配・・・したんだから・・・」
「・・・!」
ガルクはフレアを引き離そうとするのはいったん止める、そして申し訳なさそうにフレアを見てうつむく。するとフレアが我に返った。
「!!何勝手に抱き着いてんのよ!!!」
もはや視認できない程のスピードの乗ったパンチがガルクの鳩尾に入った。
「!!??・・・フレ・・・ア・・・」
そのまま倒れ込むガルク、フレアはあわあわと右往左往に少し動き回った後、ガルクを引きずって泣きながら酒場へと向かった。だんだん小さくなるフレアとガルクの後ろ姿をみて
「あいつ、なかなか大変そうだな・・・」
苦笑いを浮かべるとその少年も酒場へと向かった。