ガルクとラングスは、珍しく早朝から剣術の鍛錬をしていた。
「うおらぁ!!」
大剣と同じくらいの大きさの木刀をガルクに向かって振るう。
「遅い・・・!」
ガルクは素早くサイドステップを踏むとすぐさま反撃として鋭い突きを放つ。
「あっぶね!」
ラングスはその突きをギリギリのところでガードする。
二人は模擬戦をしていた、実際、ハンターの世界では対人戦法はさほど役に立たないが、一人で剣を振るうよりは学ぶ量が確実に多いのだ、ちなみに負けたら村内15周走るという何とも厳しい罰ゲームがある、なのでこの二人は確実に殺すくらいの気持ちで剣を振っていた。
「てぇい!!」
ガルクは左手の木刀を横薙ぎする。
「甘い!!」
ラングスはその横薙ぎをガードし、受け流すと木刀を振りかぶった。
「終わりだぁ!!」
ラングスの口元に勝利の笑みがこぼれる、その瞬間だった。
「フッ・・・!」
ガルクは短く息を吐くとそのまま視認できない程のスピードでラングスの背後をとった。
「はい、俺の勝ちな・・・」
「なんでいつもこうなんだよ!!」
ガルクは右手の木刀でコツッとラングスの頭を叩く、するとラングスは膝から崩れ落ちた。
「うおおおお!!今日も村内15周ですか!きついわ!!」
「お前が油断するから悪い」
ラングスの必死な抗議の言葉も冷たく突き放すガルク、その表情はどこか嬉しそうだった。
「さぁ行って来い、俺は帰る」
「くっそぉ!!」
嬉しそうな笑みを浮かべて身を翻すガルクとは対照的にラングスは泣きながら走り去った。
「・・・そろそろ・・・この平穏も終わりそうな予感がするな・・・」
どこか遠い目をしたガルクは静まり返った家の玄関前でつぶやいて家に入って行った。
「はぁ・・・はぁ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」
「お疲れ、ほら、タオル」
「サンキュ・・・」
ガルクが家に入って10分後、早くもラングスが帰ってきた、その表情は苦しげなものだが。
「それにしてもガルクって最近いきなり強くなったよな・・・」
汗でぬれた顔を拭きながらラングスは言った。
「お前と違って朝から日々鍛錬を積んでいるからな」
微笑みを浮かべながらガルクは答えた。
「うわ・・・ひっで」
「冗談だ」
落ち込むラングスに苦笑いを浮かべるガルク、そんな微笑ましい後景を打ち砕くようにドアが乱暴に開けられた。
「大変だ!!」
村長が息を切らしながら入ってきた。反射的に立ったガルクは村長に問う
「どうしたんですか?」
村長はガルクの肩を掴み、声を荒げた。
「イャンクックが!イャンクックが村の近くに現れたんだ!!このままじゃこの村は破壊されてしまう!!」
イャンクック、ギアノスたちと同じと鳥竜種でありながら、飛竜のような動きと威力を持ったモンスターだ、体は小柄で、しかし素早い身のこなしをする、口からは火炎液と言う爆発する液体を吐いてくる、技や動きが飛竜にそっくりなため新人ハンターの間では登竜門のような存在となっている
「!!」
ガルクはすぐに向かうと言わんばかりに外へ出ようとしたが、ラングスの手がガルクの肩を掴む。
「ガルク、今言っても返り討ちに会うだけだ、いったん冷静になれ、話はそれからだ」
「・・・そうだな、すまない」
ガルクは深呼吸すると村長に問う
「イャンクックは今どこらへんに?」
「村の前にある平原・・・ウォダッカ平原に・・・」
ガルクは声も出なかった、ウォダッカ平原は、このウォル村の目の前に広がる広大な平原で、いつもは草食モンスターしかいないものの、そこのイャンクックが現れたのだ、つまりイャンクックがその気になれば今すぐにでも村に来れる、それぐらいの危機だった。
「どうやら、ゆっくり準備をする時間はないみたいだな、ガルク?」
「5分で支度しろ、今すぐその怪鳥を討つ・・・」
「OKお前もちゃんと準備しろよ?」
「わかってる、・・・急いでくれ・・・」
「了解」
ラングスは倉庫へと向かった
「村長、村の皆を酒場に避難させて・・・入らなかったこの家を使ってください、俺らで倒します」
「くれぐれも気を付けてね・・・」
「重々承知しています・・・」
村長が出て行ったのを確認すると、ガルクも倉庫へと向かっていった。