このⅮゲームにおいて最も重要なこととは何であろうか。あるものは何よりも特異な異能の強さ、あるものは生まれ持った相手をねじ伏せる身体能力、あるものは敵を出し抜く頭の良さだという。このどれもが間違った考え方ではない。しかし、これら一番になりえない。
俺は”思い切りの良さ”こそがこの常識外れなゲームにおいて最も重要だと思うのだ。人を殺す、という行動を何のためらいもなく起こせる、今までの積み上げてきた日常をすべて否定できるような行動をためらいもなく起こせる、そんないかれた人間こそがこのゲームの勝者になる。
その点において王はぶっちぎりで
「なんか今そこに誰かいなかったかァ?」
「え?…誰もいませんけど。王さん何か気になったことでもあるんすか。」
「いやいねぇならいいんだ。それよりしっかり探せよォ!この渋谷駅に新お宝ちゃんは眠ってるはずなんだからさぁ!宝を見つけたやつには千ポイント、情報持ってるやつを連れてきたら百ポイント、俺からプレゼントしちゃうからねぇ!」
「わかりました!王さん!」
「俺はちょっとやることできたからはなれるわぁ。みんな頑張ってねぇー。」
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渋谷駅まで来たのはいいが、予想以上にエイスが人間が多すぎる。俺の風刃もレインの世界関数もどちらかといえば暗殺向きの異能だ。例えうまく王一人やったとしてそのあと残りの連中に銃でいっせいに攻撃を受ければ十中八九死ぬ。世界関数もあくまで予測ができるだけでそれを全てかわせるかどうかは別問題である。
相手に物量で負けている以上、こちらも仲間を増やさなければ勝ち目はないだろう。宝を探すよりもまずはカナメ達との合流を優先することにした…のだが。どこに行ってもエイスの見張りばかり。
「だから、レインお前だけ先に合流しろ。このままじゃじり貧だ。俺が少し騒ぎを起こして連中を引き付ける間に外に出ろ。」
「だからどうしてそういつも短絡的な思考になるんですか。それではあなたの危険度が高すぎます。」
「んなこと言ってる場合か、ここにもすぐ見張りが来る、長いことしゃべってる時間はないんだぞ!」
「わからずや!」
「どっちがだ!」
この強情娘が!
「いい加減長い付き合いだ。これ以外方法がないのはわかってんだろ。二人そろってはそれよりリスクが高いってことくらい。」
「………………なら死なずに帰ると約束してください。」
どうやら花屋の一件は彼女にとってもかなり堪えているらしい。
「わかった、約束する。だからさっさと逃げろ。こうしてる間にも時間がーー」
「おい!こっちだ!男の匂いと女の匂い、俺の
まずい!感知系の異能持ちがいたのか!もう戸惑ってる時間はない。
「風刃…起動だ…。」
その言葉に呼応するかのように俺の手に一振りの白く輝く刀が生まれる。同時に、先ほど先導していた男の体が袈裟斬りになる。
「なっっ…。誰だ!ぶっ殺してやる!出てこい!」
異能の攻撃に対してやることが挑発とは…。
「エイスってのは随分アホの集まりなんだな。仲間が一人死んだんだぜ。警戒してしかるべき場面だろ。明日は我が身って言葉を知ってるか?」
「なんだと!てーー。」
言い終わることはなくそいつの首は体から切り離された。そのままエイスの連中を斬りながら出口と反対のほうへ走り出す。
ここまで大っぴらに挑発しているのに銃を向けてくる奴は少数であった。銃よりも使い勝手のいい戦闘系の異能を持っているのか…それとも殺せない事情があるのか…どっちにしろ囮が役割の俺にとっては好都合である。ここにいるエイスの全員が俺を追ってくるのと、レインが出口のほうへ動き出したのを見て、さらに足を速める。
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走り回って数分もうそろそろレインもこの駅から抜けたころだろう。このまま駅から俺が出ることができれば完璧なんだが。
「いたぞ!!逃がすな!」
「足を狙え!宝のありかを知ってるかもしれねぇ!千ポイントだ!殺さず捕まえろ!」
近くに王の姿は見えないし、前には誰もいない、エイスの射撃も足狙いばかりでタイミングを合わせれば何とか回避できる。
このまま問題なく地上までーーーーー。
「バァ!」
「ちッ!」
風刃を横に薙ぐことで目の前に現れた王を遠ざける。最後の最後にラスボス登場かよ…。嫌になってくるな、おい。
「君が俺の仲間を何人もぶった斬ったやつかぁ。随分疲れてるみたいじゃーん。」
「そういうお前は部下ばかりこき使って随分余裕そうだな。」
「でも、その分お前油断してただろォ!逃げ回ってる間ずーっと俺の異能に気ぃ使ってたもんなぁ!」
まるで見てきたみたいに言いやがる…。
「お前さぁ、まるで見てきたみたいだなって思ってるでしょぉ~。……それ、大正解。この王さんにかかれば”お前らの行動”は一から十まで丸っとオミトオシなんだよ!」
今こいつは何と言ったのか。聞き違いでなければお前らといった。嫌な予感が頭をよぎる。いつからこいつに見られていたのか、もしそれがレインと別れるよりも前からなら……。考えれば考えるほど悪い考えばかりが頭を覆う。
「おやおや、すっごい顔してるね~、じゃあこの辺でゲスト!呼んじゃおっかなぁ!!後ろ見てみなァ!……………君の相棒のレインちゃんで~す。この子がなかなか口を割らないから代わりに君にしゃべってもらうことにしましたぁ~!」
「…すいません……………ユウ、あれだけ言っておいて…。」
そこには両耳があった場所から大量の血を流したレインがエイス達に拘束されていた。
なんかぐろくね?と書き終わってから思った。
レインファンの皆様ごめんなさい。
でもこれDゲームだから…。