艦娘のんびり日和   作:ゴリラZZ

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僕は全般的に虫は無理です。特にセミが一番無理です。朝、家の前でセミが死んでるのを見つけて「あ、死んでるんやな」と思ってそばを通るときに断末魔を響かされるとその日一日ブルーになるくらいには嫌いです。


大人になると虫が苦手になったりする

「提督!!クワガタ取りに行くぞ!!」

「……」

「提督!!クワガタ取りに行くぞ!!」

「……」

「提督!!クワガタ取りに「うるせーぞ天龍。聞こえてるつぅーの」何だよ、聞こえてるんなら返事くらいしろよ!」

 

ここは日本の某所にある鎮守府。

その鎮守府の執務室で提督は、事務艦(固定)である大淀と秘書艦(半固定)である高雄、妙高と共に執務に励んでいた。

そこに突然、天龍がわけのわからない事を宣いながら、執務室に入ってきた為、執務室内の空気が微妙に白けたものになってしまっていた。

 

「急に何だよ、天龍。俺ぁ忙しいんだよ。てめーみてぇな、わんぱく軽巡に付き合ってる暇はねぇーの。」

「まぁ、そういうなよ提督!執務室にばっかいねぇで俺とクワガタ取りに行こうぜ!!」

「いや、仕事だからね。俺の仕事、ここにいて偉そうにしてることだからね。」

「じゃあ、大丈夫だな!俺と一緒にクワガタ取りに行こうぜ!!」

「ねぇ、聞いてた?俺、仕事してんだけど?何が大丈夫なんだよ。大丈夫じゃねぇーのはテメーの頭だろ。……だいたい、何で俺なんだよ、龍田とか、そこら辺のやつら連れてけよ」

 

笑顔で提督を誘い続ける天龍に、提督は他の艦娘をつれてくように提案する。

 

「龍田は虫嫌いだからって断られたんだよ」

「あーそう。じゃあ、お前がいつも従えてる駆逐艦達連れてけよ。あのぐらいの年齢なら虫とか大好きだろ」

 

鎮守府の資材を支える遠征部隊の隊長を天龍は勤めている。

遠征部隊には、戦闘能力には劣る艦娘や戦闘意欲が低い艦娘達が配備されている。

その中に子供のような駆逐艦達が多く含まれており、天龍は、持ち前の面倒見の良さ、絶妙な弄りやすさを発揮し駆逐艦達に慕われ、常日頃から子供達からリーダー的存在として面倒を見ているため遠征部隊の隊長を勤めるに至った。

まぁ、天龍も高校生くらいの見た目に反して、中身が子供っぽいというのもあるが。

 

「あいつらは……今回だけは、あいつらは連れてけねぇんだ……」

「なんだよ、喧嘩でもしたのか?大人気ねぇな。お前はお姉ちゃんだろ。少しくらい我慢しなさい」

「ちげぇよ、これは……これは、喧嘩なんかじゃねぇ!!艦娘同士の誇りをかけた決闘なんだ!!」

「いや、意味わかんねぇーよ。なんで、誇りをかけた決闘が虫取につながんだよ」

「それは、今朝の出来事だった……」

「えっ?何?回想入るの?」

 

*****

『いけぇぇぇぇっ!!俺のレッドドラゴン!!』

『ふん!この雷様のカブト21に敵うとでも思ってるんのかしら!!』

『雷ちゃん頑張るのです!!』

『天龍なんか倒しちゃえ!!』

 

今朝、俺、天龍はいつものように暁、雷、電と一緒に遊んでいた。

最近の流行りは自分達の育てたカブトムシ同士を闘わせる事だった。

俺のレッドドラゴンは、暁のレディー・アカツキ、電のかぶとくんを倒し、残るは雷のカブト21だけであった。

最強の座はすぐそこまで来ていたのだ。

 

『いけ!そこだ!!やれぇぇぇぇ!!……よっしゃぁぁぁぁっ!!俺の勝ちだぁぁぁぁぁーっ!!』

『私のカブト21が負けるなんて……』

 

雷のカブト21を倒し、遂に俺の最強の時代が幕を開けたと思ったその時だった。

――――奴が現れたのは。

 

『ハラショー。オー、ハラショー。』

『っ!?誰だ!!』

『響ね』

『響だわ』

『響ちゃんなのです』

 

こちらを嘲るような拍手と共にその艦娘が現れた。

 

『今までの試合見させてもらったよ。随分と白熱した試合だったね。感動したよ』

『急に出てきて随分な言い草だな。何だ、次はお前が相手になってくれるのか?』

『威勢が良いね。私のこのカブト虫、フェニックスの相手に相応しいよ』

『響、ノリノリね』

『さっきから出る機会伺ってたものね』

『妙にソワソワしてたのが丸見えだったのです』

 

そして、その威勢通り響のフェニックスは強かった。

俺のレッドドラゴンは、瞬く間にやられてしまった。

*****

 

「――そして、俺は誓ったんだ。奴に必ず勝ってレッドドラゴンの仇を取ると……」

「全くもってどうでもいいわぁぁぁーっ!!」

 

天龍の回想を聞いた提督のシャウトが執務室に響き渡る。

 

「何してんだオメーはいったい!!なんで子供に混じって一緒になって白熱してんだ!!いくつだオメー!!」

「今年で18になるな」

「18にもなって虫遊びでムキになってんじゃねぇーよ!!そんなことに俺を巻き込もうとしてるんじゃねぇ!!」

「雷と響の試合が盛り上がりすぎて手に握ってたレッドドラゴンを握りつぶすなんて……」

「100%お前の過失じゃねぇーか!!」

 

天龍のくそどうでもいい話に、提督は声を荒げる。

 

「まぁ、そういうなよ提督。あいつらには内緒でカブトムシより更に格好いいクワガタを採って、世界水準越えてることを示してやりてぇんだ!!」

「やだよ、めんどくせぇ。世界水準軽く越えてるのは、テメーの馬鹿さ加減だろ。そんなもん一人で行ってこい。俺のこと何だと思ってんだテメーはよー」

「暇人」

「よーし、表出ろー。その眼帯ペチンペチンしてやる」

「具体的に言うと、偉そうな暇人」

「上等じゃねぇか!!この中二病眼帯!!」

 

つまり、天龍は自分で潰してしまったカブト虫の代わりに、カブト虫より更に格好いいクワガタ(天龍の主観)を内緒で取りに行くのを提督に手伝ってほしいのである。

 

「全く何で俺がそんなこと手伝わなきゃいけねぇんだよ。大体。んなこと、妙高が許してくれるわけねぇーだろ、なぁ、妙高?」

「行ってくればいいと思いますよ」

「あれ?おかしいなぁ?今、行ってこいって聞こえたんだけど……」

「いくら艦娘とはいえ、天龍ちゃん一人で森に行くのは危ないですし、今日の仕事もある程度は終わっています。それに、提督がいても正直、邪魔なので行ってくればよろしいと思いますよ」

「あれ?妙高さん?言葉のナイフが嫌に鋭いんだけど?」

「提督がいても何もできないですし、足を引っ張るだけなので行ってくればよろしいと思いますよ」

「ねぇ、鋭いなんてレベルじゃないんだけど。もう触れるもの皆、傷つけるレベルなんですけど」

 

思わぬ伏兵から奇襲を受けた提督は顔をひきつらせる。

事実、妙高が言うとおり提督は居ても眠そうにしてるだけで役にたたない。

 

「天龍ちゃん。ということで、提督と高雄さんを連れていってしまって大丈夫ですよ」

「待ってください妙高さん。何故、私まで入ってるのでしょうか……」

「高雄さんには天龍ちゃんと提督のお目付け役を頼みたいのでよろしくお願いしますね」

「え、あの、まだ了承は……」

「よろしくお願いしますね」

「……はい」

「よっしゃぁっ!!提督、高雄さん!!よろしくな!!」

 

というわけで、天龍の虫取に邪魔物扱いされた提督と保護者役を押し付けられた高雄がついていくことになった。

ブツブツ文句を言う提督とため息をつく高雄をお供に執務室を出ていく天龍。

にこやかに手を降り見送る妙高。

そして、ドアが閉まるときに大淀が一言。

 

「出番がなかった……」

 

*****

「はぁ~あ。なんでこんなくそ暑い中、俺たちがこんなことに付き合わなきゃならねぇんだよ」

「まぁまぁ、提督。妙高さんが言うとおりいくら艦娘でも森に一人で行くのは危ないので……」

「おーい。二人ともー!!早く来いよー!!」

「わんぱく軽巡は元気なこって……」

 

熱中症対策の麦藁帽子に水筒に弁当等を持った提督と何時もより涼しげな格好に麦藁帽子を被った高雄。

その先を、麦藁帽子にジャージを着た天龍が虫かごと網を持ってズンズン進んでいた。

 

「なぁなぁ、提督。クワガタってどこにいるんだ?」

「あー?クワガタっていやぁ、あれだ。あれがあれしてあれんとこに集まるんだ」

「全く持って何も伝わってませんよ提督……。天龍ちゃん、クワガタは樹液が出てる木とかに集まるそうですよ」

「へー、樹液んとこに集まるのか」

「あとは、ハチミツとかを木に塗って集まった所を捕まえるやり方もあるみたいですよ」

「そうだ、天龍。おまえ、全身にハチミツ塗りたくって立ってろ。それだけで虫達にモテモテだぞ」

「そんなことさすがの俺でもやらねーよ!?」

「そんなことしてる人見たら、馬鹿めと言ってさしあげますわ……」

 

そんな事を言いながら進む三人の前に拓けた場所が見えてきた。

 

「お、拓けた場所が見えたな。とりあえずここらへんで……」

「ここら辺から探し…て……」

「おい、どうしたんだよ二人と……も……」

 

拓けた場所についた三人はそこに佇む水着に全身ハチミツを塗りたくり佇む女を見つけ絶句した。

女は、筋肉で引き締まっているが出るところは出ている彫刻を思わせる体を黄金に光らせ、まるでそこに元々存在していたかのような堂々とした態度でしっかりと立っていた。

端から見れば、紛うことなき変態である。

幸い此方には気付いて無いようで、関わりたくない三人は静かに足早にそこを去ることにした。

 

「あの……提督、あれ……」

「あれはこの森に住むゴリラの妖精だ。ああやって、森を悪しきものから守っているんだ」

「俺、今のやつに似てるの見たことあるんだけど……」

「具体的には長門さん……」

「俺の鎮守府に、あんな馬鹿なことをやるビック7はいない」

「いや、でも……」

「あ!また拓けた場所に出たぞ!」

 

先程、見た衝撃を忘れるかのように拓けた場所に向かって提督は走り出した。

 

「よし、ここで虫共探……す……」

「いきなり走り出すんじゃねぇよ、提…督……」

「ハァハァ……、二人とも早……い……」

 

再び、拓けた場所についた三人は再び絶句した。

そこには、赤い弓道着を着て一心不乱に何かを木に塗りたくっている女がいた。

足下には、何かが入っているバケツがある。

幸い此方には気付いて無いようで、三人は再び静かに足早にそこを去ることにした。

 

「おい、提督今の……」

「あれは妖怪ボーキサイトだ。ああやって、木にボーキサイトを塗りたくることで自分の縄張りを示しているんだ」

「いや、今のも見たことあるのですが……」

「今の赤城さんだったよな……ていうか、あれ、やっぱりボーキサイトなのか……」

「俺の鎮守府に木にボーキサイトを塗りたくる一航戦はいない」

 

再び衝撃を忘れるかのように先に進む三人。そこに先程と同じように再び拓けた場所に出た。

 

「あ!提督!あそこに大きいクワガタが!!」

 

拓けた場所に着くなり高雄が大声で前方の木を指差した。

そこには高雄ほどの大きさがあるクワガタが止まっているではないか。

駆け出す三人。木に下にたどり着くなり木を蹴り始めた。

 

「何だ、このデケェ化け物クワガタはぁぁっ!!外来種か!?外国産なのかコノヤローっ!!」

「これだけ大きかったら新種かもしれないですよ提督!!」

「この大きさなら、響のフェニックスなんて一瞬で葬れるぜ!!」

 

そうこうしながら、木を蹴り続けるとクワガタが木から落ちてきた。

 

「やったぁ!!」

「捕獲だ捕獲!!天龍、絶対逃がすんじゃねぇーぞ!!」

「わかってるぜ!!こんなの逃がさねぇよ!!」

 

落ちたクワガタに急いで近寄る三人。

近付いてクワガタを捕まえようとすると、

 

「頭にきました」

 

クワガタの着ぐるみを着た加賀だった。

 

「何してんだテメェはぁぁぁぁーっ!!」

「うごぉっ!?」

 

ツッコミと共に踵落としを浴びせる提督。

 

「何やってんだオメーは!!このくそ暑い中バカなのか!?頭がキテんのはテメーだろ!!」

「私を馬鹿扱いとは流石に頭にきました。挑むところです。……あ、これ一人で起き上がれない。ちょっと起こすの手伝って」

「一生そのままでいやがれ!!」

 

提督がそう騒いでいると茂みから妖精と妖怪が現れた。

 

「おい、加賀。何を騒いでいるんだ……む、提督に高雄、それに天龍ではないか」

「加賀さん?どうかしました?あら、提督に高雄さんに天龍ちゃん、奇遇ですね」

 

先程、提督達が見たのは妖精と妖怪ではなく、やはり鎮守府に所属している艦娘・長門と赤城だった。

やはり先程、見た光景が夢では無かったと知り高雄が疲れた顔で一言。

 

「馬鹿めと言ってさしあげますわ……」

 

 




天龍ちゃんってこんな馬鹿っぽかったっけ?

でも、そんな天龍ちゃんが嫌いではなかったりします。

むしろ好きです。
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