艦娘のんびり日和 作:ゴリラZZ
天龍に連れられ虫取に来た提督と高雄は、森で謎のビック7と一航戦に出会ったのであった。
長門と赤城、加賀である。
「何してんだテメーら、こんなところで。仕事はどうした、仕事は」
「今日は非番だ」
「私もです」
「五航戦が代わってくれました」
「代わってくれたんじゃないですよね。押し付けたんですよね、何時ものごとく」
加賀の言葉に、高雄がツッコむ。
加賀は事あるごとに、自分の後輩である五航戦姉妹、翔鶴と瑞鶴に仕事を押し付けているのである。
その上、加賀は瑞鶴を事あるごとに弄り弄ぶため、怒った瑞鶴が涼しい顔した加賀を追いかけ回すのが、鎮守府内でよく見られる光景であった。
「てめー、加賀。鎮守府内最高責任者を前にして堂々とサボってるたぁ、いい度胸じゃねぇーか」
「何を言ってるんですか、提督」
「あ?何か、弁明があるなら聞いてやろう」
「私は誰が見ていようとサボるときはサボります。それに提督に何言われようが知ったことではありません」
「解体されてぇのかテメーは!!」
加賀のあんまりな物言いに声を荒げる提督。
「なぁなぁ、長門さん達はよぉ、一体変なことして何やってるんだ?」
「何言ってんだ、天龍。コイツらは変なことをしているんだ」
「それが何か聞いてんだよ。黙ってろ、アホ提督」
「それは私も気になりますね……」
天龍が先程まで奇行を働いてた三人に問いかけ、それに高雄も同調する。
それもその筈だ。何せ、赤城は木にボーキサイトを塗りたくり、加賀はクワガタの着ぐるみを着て木にしがみついていた。
長門に至っては、体中にハチミツを塗りたくって黄金に輝いているのであるから、無理もない。
ていうか、現在進行形で加賀は着ぐるみ、長門は輝いているのだが。
「ふっ……何かと思えばそんなことか」
「そんなことって、流石に見知った人が半裸で全身にハチミツ塗りたくってたら正気を疑いますよ」
「実はな、夕張が育てていたクワガタがほんの不注意で目を離した隙に逃げ出してしまったらしくてな」
「落ち込んでいた夕張ちゃんを慰めるためにそのクワガタを見つけてきてあげようって長門さんから誘われたの。今日は非番でやることもなかったし、夕張ちゃんを元気付けてあげたかったから」
「へぇ~、長門さん達、意外と良いとこあるんだなぁ~。ただの戦艦ゴリラと大食い空母じゃなかったんだな」
「ふふ、まぁそう褒めるでない」
「長門さん、褒められてませんよ」
長門達は、どうやら手塩にかけて育てたクワガタが逃げ出して落ち込んでる夕張を見かねて、そのクワガタを探しに来たらしい。
長門も赤城も鎮守府古参と云うだけあって他の艦娘達の面倒見が良く、それなりに慕われているのだ。
「お前らもたまには先輩っぽいことしてんだな。驚いたぜ」
「私は五航戦に悪戯するために虫取にきました」
「黙ってろ、馬鹿」
「加賀さん……」
どうやら加賀だけは違う理由らしかったが。
「まぁ、馬鹿以外の理由はわかったけどよぉ、何でテメーらはそんなアホみてぇな格好してんだ?」
「うむ、聞いた話によると虫は甘いものに集まってくるそうではないか」
「あー、まー、確かにそうだけどよぉ、だからと言って――」
「なら、背の高い私が甘い匂いを出してれば誘われてくるはずだ!」
「それカブトムシィィィッ!!ていうか、a○koォォォッ!!」
「私はそう聞いたぞ?」
「どこで聞いたんだよ!?むしろ、何聴いてたんだよ!?」
「何って陸奥が持ってたまとめ1ってCDだが」
「それa○koのBESTォォォッ!!テメーはただa○koのCD聴いてただけだろうが!!」
長門の斜め上から得た情報に思わずシャウトする提督。
「おいおい……まさかお前らもa○ko聴いてきたから大丈夫とか言い出すんじゃねぇだろうなぁ……」
長門の発言に面を食らった提督は、同行者に訪ねると、赤城が、
「心配ありません、提督。慢心は有りません。対策はバッチリです」
「おお!流石、一航戦のマトモな方!このバカゴリラみたいな――」
「女子ー!と言われればイエーイ!!で返します!!」
「それ、a○koのライブゥゥゥゥッ!!お前も結局、a○ko聴いてんじゃねぇか!!」
「水鉄砲で撃たれた時のために下に水着、水分補給のためのペットボトル、チケット、準備は万全です!!」
「なんの準備してんだ、テメーら!?ライブ行く準備じゃねーか!!クワガタ取る準備じゃねぇーじゃねぇか!!」
「ツッコミがくどいぞ、提督」
「うるせぇーよ、くそゴリラ!!只でさえ暑い中、外に無理矢理出されてこっちはイライラしてんだよボケぇぇぇ!!」
「清々しいくらいに八つ当たりですね……」
長門に引き続き赤城もダメだったことを受け、提督は俺の鎮守府はこんなアホばかりだったのかと、嘆き悪態をつく。
そんな提督の姿を見て、この中では比較的、常識人の括りに入る高雄は軽く引いていた。
「大体よー、a○ko聴いてる女ってのは碌なもんじゃねぇーんだよ。良い歳こいて私たちは素敵な恋愛したい~とか、a○koほんと可愛い~みたいなこと言ってる痛々しい女だらけじゃねぇーか。本当はa○koの可愛さわかってる私たち可愛いみたいなこと心の底で思ってんだよ」
「あの……提督?やめてくれません?色んな所に喧嘩売るのは……」
「a○koだってあのまま歳取れば行き着く先は研ナ○コだからね。あの鼻の主張は隠せないからね」
「ちょっとォォォッ!!何言ってるんですかぁぁぁぁ!?」
提督の暴言に、思わず高雄が声を荒げる。
「何を言うか提督。確かにa○koの鼻はナ○コ族だが、「ナ○コ族って何!?長門さんも止めてください!!」少なくともa○koの普通の女子目線で書く歌詞は私たちの心に突き刺さっている。因みに私は、星のない世界が好きだ」
「私はKisshugですね」
「良いセンスしてますね赤城さん、私はmilkです。高雄さんはどうですか?」
「え、わ、私ですか?私は瞳が好きです。CMで聞いたときから凄く良い曲だなって……」
「a○koから離れろォォォォッ!!悪かった話フッた俺が悪かったから!!」
「ちなみに提督は何が好きですか?」
「スターに決まってんだろ」
「あらしのよるにの主題歌でしたね。あれも良い曲です」
「結局、提督もa○ko好きなんじゃないですか……」
「あ、天龍ちゃんはどうですか?」
20代達がa○ko談義で盛り上がってる中、先程から黙っていた天龍に赤城が話をフると、
「ん~、なんかドラマとか映画の主題歌でたまに聞くけどさ、俺、あんまり昔の音楽聴かないんだよな」
(((((む、昔の音楽だとォォォッ!?)))))
10代である天龍の発言に衝撃を受ける20代達。
あまりの衝撃に天龍に背を向けこそこそ会議をし始めた程である。
(おい、どういうことだ!a○koはナウい若者のカリスマだった筈じゃねぇーか!!)
(ナウいって言葉がもう古いですよ提督!!でも、考えてみるとデビュー1999年なんですよね……)
(ば、馬鹿な……。私の高校時代に陸奥にCDを借りてMDで聴いてたのがもう遥か昔だとでも!?う、嘘だ!?うわぁぁぁぁぁっ!!)
(あ!ヤバイです、最年長が致命傷です!!)
(たぶん天龍さんはMD知らないわよね……流石に気分が落ち込みます……)
天龍との年齢差を実感し、落ち込み始める20代達。その中でも、もうすぐで30の大台に差し掛かっている長門は致命傷に近いダメージを負い、先程から黄金の如く輝いていた身体から光を失わせていた。
それほどまでに、天龍の言葉のナイフはこの鎮守府の中でも指折りの実力者である長門を傷付けたのである。
「おい、どうしたんだよ、みんな。急に元気が無くなって。暑さにやられたのか?」
「い、いや……なんでもない……。ちょっと時の流れが見えただけだから……NTに覚醒しただけだから……」
「?……まぁ、いいや。そろそろクワガタ取り行こうぜ」
「お、おう。そうだなぁ……クワガタ取りに行こうか……」
「え、えぇ……行きましょうか……」
「ダイジョウブダイジョウブ……ワタシハマダワカイ……」
「長門さん。ほら、行きますよ」
「重傷ね」
自信の言葉で皆を傷付けたとは気付いていない天龍が、そろそろ元の目的に戻ろうと促し、これ以上話していたら更にダメージを負いかねないと判断した大人達がそれに続く。
*****
「そういえば、赤城さん達は夕張さんのクワガタを探しに来たんですよね?」
「そうですよ」
「この広い森だとどれが夕張さんのクワガタなのかわからないのではないでしょうか……?それとも、何かわかりやすい目印みたいなのでも?」
しばらく歩いていたクワガタを探し歩いていた一行。
クワガタを捕まえると意気込んだ天龍と先程の傷を忘れるかのように長門がどんどん森の中を進んでいき、それに気だるそうに歩く提督と、いつの間にか着ぐるみを脱いでいた加賀が後を追いかける。
その遥か後ろ、ギリギリ四人を見失わないような位置をのんびりと赤城と高雄がついていっていた
その時に、ふと高雄が疑問に思ったことを赤城に問いかける。
三人は夕張のクワガタを探しに来たと言ったが、この鎮守府近くの広い森で夕張のクワガタを探すのは、相当難しいことではないのかと。
恐らく、クワガタは何匹もいるであろうし、その中から目的の一匹を見付けるのはかなり骨が折れる作業であろう。
何かアテでもあるのだろうかと、高雄は疑問に思ったのだ。
その問いかけた疑問に赤城が応える。
「大丈夫ですよ。夕張ちゃん曰く、夕張ちゃんが育てたクワガタは他のより大きく一目見ればすぐにわかると言っていましたから」
「あ、そうなんですか。それなら大きいクワガタを見つければすぐわかりそうですね。……っと、話していたら思ったより距離が開いてますね。少し急ぎましょうか」
「そうですね。森の中ではぐれると大変ですから……って、あら?提督と加賀さんが凄い勢いでこちらに走って来ますね」
先程より4人との距離が開いてることに気づいた高雄が、はぐれないように距離を詰めようとしたら、驚愕の表情を浮かべた提督と加賀が物凄い勢いで高雄と赤城のいる方、来た道を走ってきた。
「あの提督?どうかなされたんで……」
「そんなに急いで戻ってきてどうか……」
あまりの勢いに驚き、二人に問いかけるもその言葉は途中で止まってしまう。
問いかけた時に、走ってきた提督と加賀の遥か後方に、これまた物凄い勢いで走っている天龍と長門が見える。
そして、そのまた後方に今まで見たことない大きさのクワガタが二人を追いかけているのが見えた。
「な、なんですか!?あの大きいクワガタ!?自動車くらいありますよ!?」
「ま、まさかあれが夕張ちゃんのクワガタなんでしょうか!?一体、なに食べさせてたんでしょうか!?」
「何言ってるんですか!!と、とにかく逃げないと!!」
あまりの大きさに驚き来た道を走って戻り始める一行。
その後ろを、自動車くらいの大きさの化け物クワガタが追いかけてくる。
「オイィィィィッ!!なんだあの大きさはァァァッ!!日本じゃあり得ねぇぞ!!何食ってんだアイツ!!ピザか!?ピザをコーラで流し込んでるのか!?」
「日本どころか世界でもあり得ませんよ、あの大きさは。それにその食事をしても大きくならないのは私と赤城さんが証明してます」
「今、お前らの食事事情はどうでも良いんだよ!!とにかく逃げろォォォォォォッ!?」
大声で喚きながらと必死に逃げる提督とこんなときでもマイペースを崩さず走る提督。
「わぁぁぁぁっ!!なんだこの大きさ!!無理ィィィッ!!流石にこの大きさは怖いィィィッ!!助けて龍田ァァァッ!!提督ゥゥゥゥッ!?」
「落ち着くんだ天龍!キャラがワケわからないことになってるぞ!!」
一番先頭にいた天龍と長門は、その身体能力を活かして凄まじいスピードで前を逃げる四人の後を追っていた。
長門は流石、最年長なだけあり他の者より落ち着いていたが天龍はあまりの大きさにビビり大泣きで逃げていた。
そうこうしてるうちに四人に追い付く。
「な、なんだあの化け物はよォッ!?あれが夕張が育っててたってやつか!?」
「恐らくそうでしょう。見れば一目でわかるくらい大きいと言っていましたから」
「いくらなんでもでか過ぎだろ!?」
「うわぁぁぁぁぁん!!提督ゥゥゥゥッ!!」
「あ、天龍ちゃん達追い付いて来ました!!」
「うわ、天龍大泣きじゃねぇか!!落ち着け!!」
天龍のあまりの大泣きに軽く引く提督。
そこに普段から、声を荒げず淡々とした口調で話す加賀が大きな声で天龍に話しかける。
「天龍さん!!」
「おわぁ!?ビックリした!!急にでかい声出すんじゃねぇよ!!」
「な、何だよ……」
「ふふ……怖いか?」
「うわぁぁぁぁぁん!!」
「何やってんだテメーは!!こんなときに何、キャラ捨ててまで煽ってんだ!!」
「気持ちが抑えられませんでした」
「何を遊んでいるんだ貴様ら!!」
加賀の悪ふざけで天龍は更に号泣し、加賀はそんな天龍を見て嬉しそうにしていた。
それを見た長門がこんなときに何を遊んでいるだと注意する。
「クソ!!何故、奴は我々を追ってくるのだ!?……ハッ!?」
どこまでも追ってくるクワガタを見て、そんな事を思う長門。
そして、その時あることに気づいた。
「まさか奴は、この森に住むa○koの守り神なのか!?」
「a○koはもういいんだよ!!なんだ森に住むa○koの守り神って!!」
「我々が先程、a○koの鼻を馬鹿にしてるのが怒りに触れてしまったのかもしれない!!」
「ちげーよ!!どう考えてもテメーのそのヌメヌメの輝き追ってきてんだよ!!蜂蜜まみれのその身体を求めてんの!!」
「ヌメヌメの身体を求めてるって……//提督、そういうのはもう少し暗くなってからだな……//」
「何、照れてんだテメーは!!耳にまで蜂蜜詰まってんのか、このハニーゴリラ!!」
「提督落ち着いてください!!……キャッ!?」
頬を染め身体をモジモジし始めた長門に声を荒げる提督。その提督を落ち着かせようとした高雄が石に躓き転けてしまった。
「高雄っ!?」
「まずい!!奴が来るぞ!!」
「こうなったら仕方ねぇ……夕張には悪いが、アイツを倒すぞ!!お前ら、艤装を展開しろ!!」
部下の危機に、クワガタを倒すことを決意した提督は、艦娘達に艤装の展開を指示する。
しかし、艦娘達は艤装を展開せずその場に留まる。
「何やってんだテメーら!!早く艤装を……!!」
「提督」
「あ!?なんだこの非常時に!?」
「艤装……持ってきてません」
「へ?」
赤城の言葉に、思わず声が出る提督。
「いやいやいやいや、あれだよ?お前ら艦娘なんだよ?艤装ないとお前らただの娘だよ?アイデンティティ失ってるにも等しいんだよ?何で持って来てないのかな?」
「虫取に私の艤装ショウカクソードとズイカクシールドなんか必要ないじゃないですか。何言ってるんですか提督しっかりしろよ」
「クソ……正論なのに加賀に言われると腹立つ……!!ていうか、ショウカクソードとズイカクシールドってなんだよ!!それただの翔鶴と瑞鶴だろ!!」
「提督そんな場合じゃねぇーって!高雄さんが!」
「キャアァァァッー?!」
「しまった!高雄!!」
「フンッ!!」
クワガタの強靭な両顎が倒れた高雄に迫る。
あわやこれまでかと思われたその時、いつの間にか駆け出していた長門がその両顎を押さえ込んでいた。
「長門さん!!」
「流石、明鏡止水の境地に達しているだけあるわね。身体が金色に輝いてるわ」
「いや、蜂蜜塗りたくってるだけだから。ハイパーモードになってないから」
加賀のボケに天龍がツッコむ
「良くやった長門!!流石、鎮守府のビッグゴリラ!!」
「ビッグ7だ!!……クソ、このビッグ7の力を持ってしても長くは保たんぞ!!今のうちに高雄を!!」
普通の人間より身体能力が高い艦娘の中でも更に力が強い長門でも、クワガタの強靭な顎の力の前ではそう長くは保たない。
その言葉通り、徐々に長門が押されていってるのは目に見えて明らかだった。
長門が分断される未来はすぐそこまでやって来てるのは明白だった。
「天龍!網貸せ!!」
「えっ!?提督……あっ!!」
長門の言葉を聞いた提督は、天龍から網を奪い駆け出した。
「夕張に伝えとけ!!」
網を両手で持ち、その勢いのままクワガタに近づく。
「生き物は!!」
「フグゥッ!!」
踏ん張っていた長門を踏み台に高く飛び上がる。
「最後まで面倒見やがれぇぇぇぇっ!!」
そして、落ちる勢いに体重を乗せクワガタの頭の胸の間に網の棒を思いきり突き刺す。
突き刺された勢いで暴れるクワガタ。辺りには土埃が舞い、一時的に視界がボヤける。
土煙が晴れると、そこには絶命したクワガタの死体と踏まれた長門を起こす高雄。
そして、気だるそうに赤城たちの方に歩いてくる提督の姿が見えた。
赤城たちの元にたどり着くとめんどくさそうに一言、
「けーるぞおめーら」
こうして、提督達の虫取は無事(?)に終わったのであった。
「私のクワガタがぁぁぁぁぁっ!!」
後日、話を聞いた夕張の絶叫が鎮守府に轟き、その夕張を慰めるために金色の輝きを纏ったビッグ7が送られたとか。
a○koの曲の中では、スターと瞳がものすごく好きです。瞳に至っては聴く度に泣いてます。
小説内で言っていることは僕の個人の意見です。
提督と艦娘の年齢設定何ですけど、
長門>提督>赤城>加賀>高雄>天龍くらいのかんじです。
長門は29歳くらいで、提督はその2個下くらい赤城加賀が24、3くらいかな、高雄は22歳くらいかなというイメージで書いてます。