BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第15話投稿。



次は、同じ顔が三人になります。


第15話

第15話

 

 

 

ハザマと別れてから数時間後。イオとノエルはカグツチの統制機構支部の前に立っていた。

 

 

 

「…………ねぇ、ノエルちゃん。統制機構の支部って、誰もいない所なの?」

 

 

 

支部の前に辿り着いた時から不思議そうな顔をして入り口を見つめていたイオは、ノエルに問いかける。その言葉に疑問を持ったノエルは、

 

 

 

「ううん、そんな事は無いよ?普段から何十人単位で人がいる筈。…………どうして?」

 

 

 

と問い返す。イオは、その答えを予想していた様に、頷いて、口を開く。

 

 

 

「…………気付かない?ここの支部から、全然人の気配がしないんだよ。それに、侵入者とか、魔素にやられた獣とかが入って来れない様にするための術式も無い。…………まぁ、後者はラグナのせいかもしれないけどね。扉は斬られてるし。でも前者は違うよ。戦った後が少なさ過ぎる。」

 

 

 

そう言われて、ノエルははっとして辺りを見回す。確かに、全てラグナ=ザ=ブラッドエッジの仕業だと思って気にしていなかったが、改めて見ると戦闘の後が少なすぎる。地面や扉には傷一つ付いていないし、切り裂かれている扉の奥の空間にも目立った傷は残っていない。これではまるで、ラグナ=ザ=ブラッドエッジが現れた時には、既に誰も統制機構には居なかった様ではないか。

 

 

 

「…………どうして?」

 

 

 

「分からないけど、気を付けた方が良いよ。今ここに居るのはラグナやジンさんだけじゃ無いかもしれないからね。」

 

 

 

誰にともなく口から漏れ出た疑問の言葉に、イオは答える。その答えの中の一つの言葉に疑問を持ったノエルは、イオに、

 

 

 

「そういえば、お姉ちゃん。どうしてさっきからラグナ=ザ=ブラッドエッジの事を「ラグナ」って呼ぶの?昔、知り合いだったとか?」

 

 

 

と、そう問いかける。普通なら、衛士としては尋問するべきなのだろう。しかし、目の前に居るのは、つい先程も、前の時も、危機に陥っていた自分を助けてくれた、とても頼りになる「姉」である。それに、これは何の根拠も証拠も無いのだが、今日の朝に「兄さま」の夢を見たときから、どうしてか、ラグナ=ザ=ブラッドエッジが、そこまで極悪人では無い、寧ろ実は優しい人なんじゃないかと、そんな気がしたのだ。だから、その言葉は、警戒ではなく、只の興味で聞いたものだった。

 

 

 

「あ………うん。実は、ラグナとは兄弟弟子、みたいなものなんだ。ほら、私、前にも言ったんだけど、どこかの研究施設の実験体で、そこから逃げ出してきたからいく宛も無くて。路頭に迷って、最後にハザマさんに捕まりそうになってね。その時に助けてくれた人がラグナの師匠だったんだ。それで、いろいろあって私もその人に戦い方を教えて貰って、ラグナとはその時知り合ったんだ。だから、兄弟弟子。」

 

 

 

「…………お姉ちゃんから見て、ラグナ=ザ=ブラッドエッジはどういう人なの?こんな、統制機構を潰して回る様な極悪人?それとももっと、優しい感じの人?」

 

 

 

「うーん、基本的には優しいんじゃないかな?困ってる人は見捨てられないし。でも、統制機構が絡めば話は別。ラグナ、凄く統制機構の事は恨んでるから。」

 

 

 

気まずそうな顔で言ったイオの話を聞いて、ノエルの頭には疑問が浮かび上がる。イオの言うラグナの持っている統制機構への恨みは、他の下層の人達が持つ不平や不満が変化したものとは、根本的に違うと思ったからである。

 

 

 

「…………どうして統制機構を?」

 

 

 

「昔、統制機構に自分の「全て」をぐちゃぐちゃにされたから、かな。…………これ以上詳しい事は言えないよ。聞きたいなら、まず本人に聞かないと。他人の私が話していい事じゃないから。それに、もうそんな時間は無いし。」

 

 

 

イオの言葉を聞いて咄嗟に反論を返そうとしたノエルは、最後の言葉に冷静になって周りを見回す。すると、微かに、あまり嗅ぎ慣れない匂いが鼻を突いた。血に吐瀉物を混ぜた様な、不潔で暴力的な匂い。それは、つい先程まで、この近くで戦闘が行われていた形跡でもある。

 

 

 

「多分、この先で戦ってたのは二人。一人はラグナで、もう一人はジンさん。それで、ジンさんが勝ったなら気配は二つある筈だけど、私が感じられる気配は一つしかない。つまり、」

 

 

 

そこで、イオとノエルは廊下を曲がって広間に出る。そこには、一人の青年が倒れていた。統制機構の制服を身に纏い、辺りに血を撒き散らしながら倒れているその青年は、

 

 

 

「キサラギ少佐!!」

 

 

 

「――――こういう事。」

 

 

 

倒れたジンを目にして血相を変えてジンに走りよるノエルと、言葉の続きを言いながらノエルを追い掛けるイオ。ジンはぱっと見ただけで重症である、という事が分かり、明らかにすぐに動く事ができる様な状態ではない。

 

 

 

「…………うわぁ、酷い怪我ですね。一体どうしたら「イカルガの英雄」をここまで痛め付けられるんですかねぇ?」

 

 

 

「ひゃぁっ!!」

 

 

 

「…………ハザマさん。そんな息を殺しながら近付いて来ないでください。驚かせる気しか無いじゃないですか。」

 

 

 

突然後ろから掛けられた男性の声に、ノエルは驚き、イオは呆れたように男性――――ハザマに言葉を掛ける。ハザマはまるで反省していないかの様に、へらへらと笑みを浮かべたまま、手を軽く振って、

 

 

 

「いや、すみません。そんなつもりは無かったんですけどねぇ。っと、それよりも、これで任務達成ですね。いや、本当に幸運でしたね。何せ、誰も余計な怪我をせずに少佐を回収出来たんですから。」

 

 

 

「ですが、ハザマさん。私達がもう少し早く来ていれば、」

 

 

 

「来ていれば、何ですか?少尉?まさか、少佐を怪我をさせずに回収出来たかもしれない、と?馬鹿言わないでください。戦闘になったら、頼りになるのはあなたのお姉さんだけ何ですよ?それに対して、敵は「イカルガの英雄」と「死神」の二人。流石のイオさんでも、二人相手は辛いものがあるでしょうし、下手をすれば死んでしまうかもしれませんよ?」

 

 

 

「…………っ!」

 

 

 

ノエルは言い返そうとして言葉に詰まる。イオの話を聞く限りでは、ラグナはイオに攻撃する様な事は無い筈だが、それは口にしていいものではない。統制機構の衛士は、ラグナの知り合いだった、という事だけでもその知り合いを拘束する可能性があるからである。ハザマは、そんなノエルの反応を見て、図星を突かれたからだ、と判断したのか、へらへらとした笑みを作ると、

 

 

 

「…………そういう事です。さ、それでは帰りましょう。」

 

 

 

と言った。ノエルは、少しだけ考える様な素振りを見せてから、口を開いた。

 

 

 

「…………いえ、ハザマさん。ハザマさんはキサラギ少佐をお願いします。私はラグナ=ザ=ブラッドエッジを追いますから。」

 

 

 

「は?ですが、あなたでは、」

 

 

 

ノエルはハザマの言葉を最後まで聞かずに、イオに頭を下げる。

 

 

 

「お姉ちゃん。こんなのは我儘だって分かってるけど、それでもお願いします。私を守ってくれませんか?」

 

 

 

「うん、いいよ。だって、もともとそのつもりで来たんだからね。」

 

 

 

頭を下げるノエルにイオはすぐに返事を返す。ハザマは、そんな二人を少しだけ呆れたように見てから、

 

 

 

「はぁ………仕方ないですね。昇降装置から一番下の階に行って下さい。ラグナ=ザ=ブラッドエッジはそこにある研究施設が狙いらしいですからね。」

 

 

 

そう言って指を指した。

 

 

 

「ありがとうございます!ハザマさん。」

 

 

 

ノエルはそう言って走り出し、イオもそれに着いていく。それを見送りながら、ハザマは、

 

 

 

「期待してますよ?」

 

 

 

と誰にも聞こえない声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

「…………ごめんね?お姉ちゃん。」

 

 

 

昇降装置の中で、ノエルはそう呟く。

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

「私の我儘に付き合わせちゃっ痛っ!」

 

 

 

聞き返してきたイオに、理由を言おうとしたノエルは、突然頭を襲った衝撃につい言葉を切ってしまう。

 

 

 

「良い?ノエルちゃん、そんな事は気にしない。寧ろもっと我儘を言っちゃっても良いんだよ?」

 

 

 

「でも、」

 

 

 

「それにさ、ほら、お姉ちゃんが、妹を助けるのって、当たり前の事でしょ?」

 

 

 

「でも、」

 

 

 

「うーん、じゃあ、私からも一つだけお願いがあるから、それでチャラって事にしよう?」

 

 

 

「お願い?……………!!」

 

 

 

その内容をノエルが聞こうとした途端、昇降装置が大きく揺れる。そして、その後に来る浮遊感。ノエルは何故か冷静に、昇降装置が落ちているのだと判断する。そして、

 

 

 

「ノエルちゃん!!」

 

 

 

自分を呼ぶイオの言葉を最後に、意識を失った。

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