BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第21話投稿。



ハクメンさんの口調が難しい。そんな訳で少し違っていてもスルーしていただければありがたいです。


第21話

第21話

 

 

 

「…………成程。私は置いていかれたって訳だね。それでラグナとセリカちゃん、ミツヨシさんはレイチェルさんに連れていかれてあのお城に行ったのかな?………まぁ、それは良いとして。此処に誰もいない、って事は、誰も死んではいない、って事だし。問題は………」

 

 

 

数秒遅れて今の状況を理解したイオは、うんうんと頷きながら今の状況を口にする。その後、視界の端にあるものを捉え、げんなりとした顔でそれを見つめる。

 

 

 

「ラグナ逹がいなくなった途端に魔素の濃度が上がったのと、それに合わせて残滓逹が集まってきた事だよね。………私の周りに。」

 

 

 

そう言ったイオの周りから大量の黒い霧が噴き出してくる。霧は集まり、さまざまな形へと姿を変えていく。残滓逹の赤い目は全てイオに向けられており、今にも襲いかかりそうな雰囲気を爆発させている。

 

 

 

「………さっきも思ったんだけどさ、私一人相手にするのにオーバーキル過ぎじゃないかな?私、これから地図も無しで「第一区画」ってとこまで行かなきゃならないから、あんまり疲れたく無いんだけどな。………言っても無駄な気がするけど。」

 

 

 

そのイオの言葉を合図にする様に、残滓逹はイオの周りを蠢きだす。まるで攻撃を仕掛けてこようとしているかの様な残滓逹の動作に、イオは心の中でやっぱりね〜。と呟くと、黒い剣を出現させて、

 

 

 

「うん、だいたい分かってたからいいや。ほら。かかって来なよ。すぐに終わらせて、「第一区画」に行って、ラグナ逹を待たなきゃいけないから。手加減はしないよ?」

 

 

 

そう言って目を瞑り、一つ息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

「………ふぅ、終わったね。それじゃあ、行こっか。」

 

 

 

自分の周りを取り囲んでいた残滓逹をものの数分で殲滅させたイオは、一つ息を吐いてから研究所の外に出ようと部屋の出口に足を向け、

 

 

 

「…………不可解な。先程まで確かに、此処に黒き気配が有った筈だ。」

 

 

 

強大な殺気と共に廊下から放たれた言葉に、咄嗟の判断で身構えた。

 

 

 

「…………誰?」

 

 

 

自分がいる、ということを知らせてはいけない。そうイオの頭は判断していると言うのに、口からそんな声が漏れだした。その声に応じるかの様にして、声の主はイオのいる部屋へと入ってくる。

 

 

 

「………人が居たか。貴様が此処に居た黒き気配を消したのか?」

 

 

 

それは、白い鬼人だった。ラグナよりも大きいであろう長身に、その背と同等の長さを誇る長刀。全身は白い鎧で覆われており、顔があるべき場所にはのっぺりとした白い面だけが存在している。そこまで確認したイオは、その面の向こうに存在しているであろう目と、自分の目が一瞬合った様な気がした。そして、イオの眼前に広がった光景が一気に切り替わる。

 

 

 

――――それは、彼の脳に刻み込まれた、忘れたくても忘れられない光景。彼の視界に写っているのは、三人の人影。一人は、銀髪で、赤いジャケットを纏った自分の兄。一人は、その兄に抱きつく様にしている、自分の嫌いな妹に瓜二つな少女。そして最後に、自分の腕の中で、つい先程息を引き取った幼馴染みの少女。

 

 

――――ツバキ、どうして僕なんかを助けて…………!

 

 

 

彼は腕の中の少女―――ツバキにそう問いかける。ツバキは、銀髪の少女が放った剣を、彼を庇ってその身に受けたのだ。ツバキから返事はない。それを見た彼は顔を上げ、殺意の籠った目で、少女を見上げる。少女はそれに、嘲笑の笑みを浮かべて、

 

 

 

そこで、イオの視界は切り替わった。

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

イオは放心したように声を上げる。今の光景が何かが分からなかったからではない。それは「窯」を抜けてきた時から分かっている。今のは、目の前の白い鬼人の過去だ。それは分かっているから、疑問はもっと別の事。今の光景は、どう考えても「彼」のものだ。此処にいる筈の無い、一人の青年のもの。

 

 

 

「ジンさん………?」

 

 

 

「………貴様は何だ?何故其の顔をして、其の名を知っている?」

 

 

 

思わず呟いたイオに、それまで黙っていた鬼人が問い掛けを放つ。イオはそれに答えようとして、

 

 

 

「答えなくとも良い。今は何も見えていなくとも、あの女と関わりが有るのなら、戦えば自ずと黒き線も見えて来よう。………行くぞ。我が名はハクメン、推して参る!」

 

 

 

イオが言葉を言う前に鬼人―――ハクメンが発した言葉の内容を理解する前に、たった一足で間合いを詰めてきたハクメンの横凪ぎに振られた刀によって弾き飛ばされた。

 

 

 

「うぁ………く……!」

 

 

 

半ば反射的に剣を出し、ハクメンの剣を防いだイオは、その腕に走る衝撃に呻き声を上げながら、空中で体制を整えて着地する。

 

 

 

「………成程。思っていたよりはやるらしい。」

 

 

 

「そんな分析より、話を聞いて貰えませんか?」

 

 

 

少しだけ感心したかのような声を上げるハクメンにイオはそう言うが、ハクメンはそれを無視して斬りかかる。イオは何とかそれを受け流していくが、それが長く続かないのは、イオ自身がよく理解している。

 

 

 

「………蓮華。」

 

 

 

そして、その時はやって来た。二本とも剣を上に弾かれ、無防備になったイオの腹に、ハクメンの蹴りが叩き込まれる。イオは吹き飛ばされ、背中から壁に叩きつけられた。

 

 

 

「………か、はっ……!」

 

 

 

弾丸の様なスピードで弾き飛ばされたイオは、壁に叩きつけられた衝撃で体から空気と共に血が吐き出され、意識が飛びかける。そのままずるずると壁から滑り落ち、仰向けに倒れた。

 

 

 

「………何故反撃して来ない。」

 

 

 

そのイオを見ながら、ハクメンは先程から感じていた違和感を口に出す。目の前で倒れている少女は、ハクメンの剣を受け流し、弾いておきながら、いつまでも反撃しようとしなかった。それどころか、ハクメンが殺気を向けている、というのに、少女は敵意さえ向けてはいなかったのだ。イオはハクメンの言葉に、剣を杖代わりにしながらふらふらと立ち上がると、

 

 

 

「あははは…………だって、反撃、したら………けほっ!……話を、聞いてくれなく、なるかもしれません、から。」

 

 

 

笑いながらそう返した。その言葉に、ハクメンは驚く。目の前の少女は、話を聞いて貰う、たったそれだけのために、自身を殺そうとしている相手に攻撃を仕掛けなかった、というのだ。それは、ハクメンの知る銀髪の少女とはまるで違う、それでいて明らかに異質な在り方。その中で分かった事は、今、この少女はハクメンに何もしようとしていない、という事だけだった。

 

 

 

「良いだろう。話してみろ。」

 

 

 

「ありがとう、ございます。」

 

 

 

取り敢えず、目の前の少女の話を聞く事にしたハクメンに、イオは礼を言うと自らの事を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

「………成程。そう言う事か。」

 

 

 

イオの話を聞き終わったハクメンはそう言って納得する。イオは、自分の大体の事をハクメンに伝えていた。イオがどこから来たのかや、何故此処にいるのか、自分の力である「黒の魔導書」についても。勿論、全てを話した訳ではないが。

 

 

 

「分かってくれましたか?」

 

 

 

「…………貴様がどうして此処に居るのかはな。だが、まだ疑問が有る。………貴様は何故、我を「ジン」と云った?何故其れを知る?」

 

 

 

その質問はもっともだろう。イオは、あの光景を見た後、殆ど無意識の内に、ハクメンの事を「ジン」と呼んでいた。ほんの一握りしか知らない、その名前を。

 

 

 

「………すみません。それはまだ、知られる訳にはいかないんです。」

 

 

 

「ほう、それは、今云わなければ殺される、としてもか?」

 

 

 

「…………それでも、です。」

 

 

 

殺気を乗せながら言葉を放つハクメンにイオはそう返す。………それを言ってしまえば、自分が何であるか、それが分かってしまう可能性があるから。だからこそ、今はまだ、誰にもこれは言えない。

 

 

 

「…………その力、これから役に立つ可能性は有る。………今消すのは早いな。」

 

 

 

ハクメンはそう言うとイオに背を向けて歩き始める。

 

 

 

「…………あれ?殺すんじゃ無かったんですか?」

 

 

 

「………貴様のその力、黒き獣を滅するに必要となろう。今消すのは容易いが、その力を消す必要を感じられん。」

 

 

 

そう言うとハクメンは歩き去って行った。イオはそれを見送ると、

 

 

 

「………はぁ、良かった。今戦ったら、正直逃げられる気、しなかったんだよね。…………そろそろ、限界、だったから。行ってくれて、良かった、かな。」

 

 

 

その言葉と共に、その場に崩れ落ち、意識を手放した。

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