BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第32話

第32話

 

 

 

「こんにちは。セリカちゃん。」

 

 

 

セリカが昏睡状態から目覚めた次の日。昼過ぎになってから、セリカの病室の扉を叩く音がする。セリカはそれに扉の方を見て入る様に促すと、扉からイオが入って来た。

 

 

 

「あ、イオちゃん。もう来てくれたんだ。もう少し遅いのかな?って思ってたんだけど。」

 

 

 

「あははは、セリカちゃんも早く退院したいかな?って思ったし、実は少しだけ予想外の事があってね。ちょっと急いでるんだ。セリカちゃんも関係してるし、急いで出よっか。」

 

 

 

笑いながらそう言ったイオに、セリカは首を傾げる。セリカの退院する時に、イオが迎えに来るのは知っていた。朝に来たナインがそう言っていたからだ。少し過保護ではないのか、と思っていたが、姉は元から過保護なのだ。ニルヴァーナだけでは心配だったのだろう。しかし、イオの言う「予想外の事」が何であるかが分からなかった。

 

 

 

「えっと、どういうこと?」

 

 

 

「タケミカヅチの事は昨日話したよね?あれを動かすにはセリカちゃんの魔力が必要なんだ。そして、タケミカヅチは黒き獣を撃退した。………つまり、簡単に言えば、セリカちゃんは今、魔道協会に狙われてるんだよ。それで、捕まっちゃえばタケミカヅチを制御する魔力として使われて、死んじゃうかもしれない。だから、………」

 

 

 

聞き返すセリカに、イオは早口でそう返す。どうやら本当に急いでいるらしい。だが、途中で突然話を切ると、扉の方を向く。

 

 

 

「………どうしたの。」

 

 

 

「うん、ごめんね。少し遅かったみたい。」

 

 

 

セリカの疑問にイオが答えるのと殆ど同時に、病室の扉が荒々しく開き、数人の男性が入り込んできた。

 

 

 

「虚空情報管理局だ。セリカ=A=マーキュリー。大人しく同行して貰おう。」

 

 

 

高圧的な態度でそう言いながら大股で歩み寄ってくる男性に対し、セリカは無意識に一歩下がる。そのセリカの手を、イオが掴んだ。

 

 

 

「イオ………ちゃん?」

 

 

 

「ごめんね、セリカちゃん。ちょっと怖いかも知れないけど、逃げるよ!」

 

 

 

そう言いながらイオは病室にたった一つだけある窓を開けると、セリカの手を掴んだまま飛び降りる。セリカは突然の事に対応できず、イオに手を引かれるまま窓の外へと身を投げ出した。

 

 

 

「ひゃぁぁぁぁ!!」

 

 

 

叫び声をあげるしかないセリカの手を掴みながら、イオは黒い剣を四本出現させ、それらを合わせる。剣は形を変えていき、セリカも一度見たことのある、宙を浮く乗り物ヘと変化した。イオはそれに乗り、セリカを自分の後ろの席にに乗せる。更に上から降りてきたニルヴァーナをバイクで言うサイドカーのような部分で器用にキャッチし、病院から離れるように飛んでいく。

 

 

 

「イオちゃん。これ………。」

 

 

 

「話は後。とりあえず、ハクメンさん達と合流するよ!しっかり捕まっててね。」

 

 

 

何かを問いかけようとするセリカに、イオはそう返す。その言葉にセリカが後ろで頷いたのを振り向いて確認したイオは、そのまま一気に速度を上げ、ナイン達が居ると言っていた聖堂の方へと飛んでいく。聖堂はそれほど離れてはおらず、少し飛んでいればすぐに見えてきた。

 

 

 

「………うん、もうやってるね。さすがハクメンさん。」

 

 

 

聖堂の方を見ていたイオは、呆れた様にそう言う。セリカも目を凝らして見ると、聖堂の入り口付近に、倒れ伏している数人の人影と、ハクメンとしか思えない白い影。ハクメンが人影を全て薙ぎ倒したのだろう。

 

 

 

「仕方ない………か。じゃあ、行くよ!」

 

 

 

イオはそう言うと一気に高度を落とす。その間に乗り物は形を変えていき、地面に着く頃にはサイドカーの付いたバイクヘとその姿を変えていた。

 

 

 

「――――――ハクメンさん!」

 

 

 

ハクメンの手前でバイクを止め、イオはセリカとニルヴァーナを下ろしてからバイクを剣に戻して消す。ハクメンはイオとセリカに顔を向けると、更に聖堂の方を振り返る。それと同時に、聖堂の中から四人の人影が現れた。

 

 

 

「セリカさん、イオさんも、無事でしたか〜?」

 

 

 

聖堂から出てきた一人、トリニティが心配そうにセリカに駆け寄ってきて問いかける。セリカは、それに笑いながら頷いた。

 

 

 

「………えっと、話は後にして、どこか安全な所に逃げませんか?」

 

 

 

「そうだな。話は後だ。トリニティ、工房までの案内を頼む。」

 

 

 

「あ、はい〜。分かりました〜。」

 

 

 

イオの提案に、獣兵衛は頷いてトリニティに道案内を促す。トリニティもそれに頷くと、狼に変身したヴァルケンハインの背に乗り、先に走っていく。他の面々もそれの後を追って、魔道教会を脱出した。

 

 

 

 

 

 

トリニティの工房は、魔法に関する商品や書店が並んでいる通りの裏手にあった。小さな木製の家だ。

 

 

 

「………ということなんです〜。」

 

 

 

「大体は分かりました。………とりあえず一番面倒な事になりそうなのはナインさんですね。」

 

 

 

「面倒?」

 

 

 

トリニティから事情を聞いたイオが呟いた言葉に、セリカが聞き返す。イオが心配、ではなく面倒、と言った事に疑問を覚えたのだ。

 

 

 

「………ナインさんが、セリカちゃんが戦いの道具として使われるって聞いて大人しく捕まったままだと思う?私はきっと無理だと思うよ?だから………」

 

 

 

イオがそこまで言った瞬間、どこからか轟音が鳴り響く。イオはそれに分かっていたように溜め息を吐くと、ひょいと立ち上がり扉の方へ向かう。

 

 

 

「こうなるよね………。行きましょう。きっと音がした方でナインさんが暴れてる筈です。早く行って、これ以上の騒ぎが大きくならないうちにナインさんを説得して逃げた方が良いと思いますから。」

 

 

 

イオはそう言うと、タンッ、という軽い音を立てて一気に加速し、音のした方向へと走っていく。セリカ達もその後を追うようにして、音のした方向、議事堂の方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

セリカ達よりも先に議事堂に辿り着いたイオは、議事堂の前で攻撃魔法を応酬させる三人の十聖のうち、残る二人を一人で相手をしているナインの前に立ち、向かってくる水の塊と木の根を切り払う。水の塊も木の根も、イオの黒い剣に触れた瞬間に元から何も無かったかの様に消え去った。

 

 

 

「イオ!どうしてここに………。」

 

 

 

「ナインさん、ここは逃げますよ!私が二人の攻撃の防御を担当します。ですから、ナインさんは転移魔法を使う魔力を温存して、出来るだけあの二人から離れてください。」

 

 

 

「でも、セリカが………。」

 

 

 

「セリカちゃんなら大丈夫です。私が保護して、今はトリニティさん達と一緒にこっちに来てると思いますから。さぁ、行きましょう。」

 

 

 

イオの言葉にナインは安心したような表情をして、くるりと踵を返して走り出す。イオは、その後ろに付きながら、矢のように降り注ぐ水や巨大な木の根を剣を巨大な盾へと変えて防いでいった。

 

 

 

「セリカ!」

 

 

 

「お姉ちゃん!って、そんな状況じゃないよね。とにかく逃げよう!」

 

 

 

セリカ達と合流したイオとナインは、路地裏へと続く細い小道へと逃げ込む。しばらく走っていくと、行く手を遮るように、大小の黒い影が二つ近くの建物の屋根から降ってきた。

 

 

 

「待ち伏せ!」

 

 

 

「大丈夫だ、奴等は味方だ。」

 

 

 

警戒するナインを、獣兵衛がそう言って制する。

 

 

 

「ミツヨシ殿、こちらです。」

 

 

 

黒い影のうち大きい方が、ついてこい、とばかりに駆け出す。一行はそれに付いていき、着いたのはイシャナの外周を囲む森の一角だった。

 

 

 

「ここなら、転移出来る。私の周りから離れないで。」

 

 

 

そこが空気中の魔力が溜まりやすい場所であることを感じ取ったナインはそう言って、呪文を唱え始める。ナインの足元からは大きな魔法陣が浮かび上がり、ゆっくりと回転を始める。そして、その場の全員が陣に入ると、ナインの転移魔法が、陣の中の全員をイシャナから連れ出した。

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