BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

36 / 63
第35話

第35話

 

 

 

「よっ、と。ほっ。」

 

 

 

「ちょっとセリカ。あんまり調子に乗ってると危ないわよ。」

 

 

 

翌日。セリカ達は、再び瓦礫の岩場へと来ていた。ナインやトリニティ等、イシャナから逃げてきたメンバーも一緒だ。その集団の先頭の方で、跳び跳ねる様に不安定な足場を渡っていくセリカに、ナインは呆れと心配を込めて注意する。

 

 

 

「大丈夫だって。昨日、夜にも来たんだから。」

 

 

 

「はぁ、夜!?夜にこんなところに一人で来るなんて、危ないでしょ!?」

 

 

 

「あれ?言ってなかったっけ?でもニルヴァーナとイオちゃんが一緒だったし。あ、あとハクメンさんも。」

 

 

 

岩場の上でくるりとナインの方を向いたセリカは、ナインにとって衝撃の真実をさらりと告げる。それに叱るような口調で注意をしたナインに、問題なし、とばかりに人差し指を立ててみせる。

 

 

 

「ハクメンと!?夜遅くに、こんなところで!?セリカ、あんた、不埒な真似なんかされてないでしょうね?」

 

 

 

「そんなことされるわけないじゃん。ハクメンさん、優しいんだよ?」

 

 

 

器用にハイヒールで岩場を飛び越えて見せたナインの追及に、セリカはナインにとっての爆弾発言をする。ナインはそれに笑みを引きつらせると、次に不穏な笑みをこぼしてハクメンの方へ自然に手をかざす。

 

 

 

「わ、す、ストップです。落ち着いてくださいナインさん。相手はハクメンさんですし、ナインさんが考えてるみたいなことは無いですよ。」

 

 

 

「イオの言う通りだ。それに、イオも一緒に居たんだろう?なら、心配する必要は殆ど無い。違うか?」

 

 

 

ナインの行動の意味を理解したイオと獣兵衛はナインを宥める様にそれぞれの意見を言う。ナインは、二人の意見、特に獣兵衛の意見には反論出来ずに大人しく手を下ろした。イオは自分をかなり低く見ているが、ナインから見れば、イオほどセリカの護衛として最適な人物は居ないと思えるほどに信頼のおける人材だ。実力もハクメンとほぼ互角。そのイオが付いていて、セリカに手出しをする、という方が難しいだろう。

 

 

 

「ハクメン、一体どこまで行くのよ。あんたが急に岩場を調べたい、って言うから来たけど、見たところ何も無いじゃない。」

 

 

 

「昨日も思ったんですけど、此処、不自然な位に魔素が薄いんですよね。それと関係があるんですか?ハクメンさん。」

 

 

 

ハクメンに対してしたナインの問いかけに被せるようにして、イオも問いかける。ハクメンは、その問いかけに顔だけをイオ達の方へ向けると、

 

 

 

「場だ。」

 

 

 

と、簡潔に答える。その場にいる全員は、ほとんどが訳が分からない、と言った顔を見せるが、ハクメンは気にせず、セリカヘと顔を向けた。

 

 

 

「此の空気の中心、貴様なら、恐らく感じ取る事が出来る。何か感じるか?」

 

 

 

ハクメンがセリカに向けて放った問いかけに、セリカは辺りをゆっくりと見回し、目を閉じる。暫くして目を開けると、ある一ヵ所を指差した。瓦礫の陰に隠れた、地下に続いている階段のある入り口の様なものだ。

 

 

 

「………気に成るか?」

 

 

 

「気になるって言うか、なんとなく、何かありそうな気がしただけで。ごめんなさい。実はあんまり自信無い。」

 

 

 

「あははは。大丈夫、セリカちゃん。セリカちゃんのそれはきっと正しいよ。それじゃあ、行こっか。あそこまでは危なそうだから、私が連れていくよ。」

 

 

 

ハクメンの問いに、セリカは不甲斐なさそうに答える。その言葉にいつの間にか近くに来ていたイオは笑いながらそう言うと、セリカと同じ位か、それよりも小さいその体のどこにそんな力が有ったのか、と疑問を投げ掛けたくなるほどに軽々とセリカを抱えると、不安定な足場を跳ねるように渡っていき、すぐに入り口へと辿り着いた。

 

 

 

「………ぷはぁ!びっくりした。イオちゃん!行くとしても心の準備くらいさせてよ!」

 

 

 

「うん、ごめんね。びっくりしたよね。次からはちょっと待つようにするから、今回は許して。」

 

 

 

驚いた様な顔から一転、怒ったような顔でそう言ってくるセリカにイオは謝ると、他の面々が到着するのを待つ。少しして、全員が揃ってから、一行はハクメンとセリカを先頭に、階段を下りて、地下へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「凄い、綺麗………。」

 

 

 

地下への階段を下り、朽ちた駅のホームを抜け、地下道の横穴を抜け。真っ先に通路の奥の部屋へと辿り着いたセリカは感嘆の声を上げる。それを追うようにして入った獣兵衛、ヴァルケンハイン、ナイン、トリニティ、スズカカ、トトカカも、その光景に圧倒され、唖然としたような顔で部屋を眺めていた。因みに、テルミはこの部屋に入りたくないらしく、外で待機している。

 

 

 

「………あ……。」

 

 

 

まるで満天の星空の様に輝く天井に気を取られていたセリカの耳に、聞こえるか聞こえないか程度の大きさで、驚いた様な声が聞こえる。続いて、シャンッという何かが砕ける様な音と、ドサッ、という、それなりの質量を持つ物体が落ちる音。セリカは音のした方を振り向く。

 

 

 

「―――――イオちゃん!!」

 

 

 

音のした先では、イオが地面にうつ伏せの状態で倒れていた。いつも纏っている黒いコートは消えている。それにセリカは、大声でイオの事を呼びながらイオに駆け寄り、助け起こす。

 

 

 

「あははは………ごめんね。私自身は全然大丈夫なんだけど、何か、体に力入らなくて、動けないんだ。」

 

 

 

イオはいつもと同じように笑いながら心配そうな顔でイオを覗き込むセリカにそう言った。その仕草には無理をしているような所は無く、本当に力が入らないだけらしい。

 

 

 

「でも、何時までも倒れていられないね。セリカちゃん、少し離れてて。」

 

 

 

イオの言葉にセリカは素直に従って離れていく。セリカが離れたのを確認したイオは、一度目を閉じると、少ししてから「………んっ。」と小さな声を上げる。次の瞬間、イオの体に何処からか現れた金色の粒子が纏われていき、それらはすぐに、イオがいつも着ている黒いコートヘと姿を変えた。

 

 

 

「………うん、よし。」

 

 

 

イオは立ち上がり、少しの間確認するように手足を動かしてから頷き、顔をイオの方を見ていた一同の方へと向ける。

 

 

 

「皆さん、すみませんでした。話を中断させてしまって。」

 

 

 

「いいよ、そんなこと。まだ何も話なんてしてなかったし。」

 

 

 

イオの謝罪にセリカが答える。それとほぼ同時に、天井の光が呼吸するように収縮と膨張を繰り返し、それに応じて、セリカの体が、淡い光を纏い始めた。

 

 

 

「へ………え、な、なにこれ?」

 

 

 

戸惑いの声を上げるセリカに、ナインは咄嗟に身構える。しかし、ニルヴァーナもイオも反応を見せない。二人には、光がセリカに害を与えない事が分かっているらしい。

 

 

 

「………此処が魔素を拒絶してる、って事は分かってたけど、そっか。此処は魔素に対しての抗体なんだね。」

 

 

 

イオは全身に光を纏ったセリカを見ながら誰にも聞こえない様な声でそう呟く。この空間が魔素を拒絶している、というのは身を持って確認済みだ。今着ているコートも、イオが無理矢理魔素もどきを造り、それで同じ効果のコートが出来ているだけなのだ。普通の魔素ならば、此処に存在することも出来ないだろう。

 

 

 

「ハクメン、どういうことなの?この光は?」

 

 

 

ナインはじれったそうに口調を急かせて聞く。それにハクメンは、天井を見上げたまま、

 

 

 

「此れは、此の星が星を侵食する魔素に対抗して作り出した力であり………セリカ=A=マーキュリーと同じく、魔素に対抗する為に生まれた力………『秩序の力』だ。」

 

 

 

そう答えた。その意味は、この場の殆どが理解していなかったが、どれほどの重みを持って発せられたのか、それは不思議なほどに伝わった。

 

 

 

「………様!ミツヨシ様――――!!」

 

 

 

突然、カカ族の一人が場の空気を引っ掻き散らす様な勢いで駆け込んでくる。そのまま、獣兵衛の前まで進むと、珍しく焦りの表情を浮かべた顔を上げる。

 

 

 

「大至急連絡ニャス!虚空情報管理局とイシャナの十聖が、何か秘密の作戦をやってるらしいニャスよ!」

 

 

 

「十聖………まさか、セブンとエイト!?連中がどこで何をしてるの?」

 

 

 

連絡係のカカの報告にナインは問い詰める様な口調で 尋ねる。

 

 

 

「なんでも、大勢の難民をある町に移動させたらしいニャス!人数は物凄い数だって………とにかく、村に戻ってきて欲しいニャス!詳しい情報をお伝えするニャス!」

 

 

 

カカは一瞬びくりと尻尾を膨らませてからそう答えた。獣兵衛はそれを聞いて、厳しい顔をハクメンに向ける。

 

 

 

「分かった。此処の調査は後回しだ。良いな?ハクメン。」

 

 

 

そう言った獣兵衛の言葉に、ハクメンは頷く。それを見た一行は、カカ族の村へ戻るために、歩き始めた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。