BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第36話投稿。



最後の方はやっつけです。文字数的に厳しかったので………。


第36話

第36話

 

 

 

村に戻ってくるなり一行はカカ族の数名と共にテーブルに広げた大きな地図を囲み、情報伝達係のカカに報告を受ける。それによると、アジア大陸のまだ黒き獣に直接触れたことのない都市に数万という人数を移動させた、ということらしい。

 

 

 

「まさか、こんな手に出るなんて………。」

 

 

 

ナインが悔しそうに唇を噛む。これだけの人数が一ヵ所に集めてしまえば何が起こるのかを想像するのはあまりにも簡単だ。今、世界には人の生命力を嗅ぎ付け現れる怪物がいるのだから。

 

 

 

「まさか、黒き獣を故意に呼び出そうと言うのか?」

 

 

 

「………それもあるかもしれませんが、それだけではないと思います。それでは非効率ですし、今の術式では黒き獣を倒せません。今、彼らの使えるもので黒き獣を倒せるのはタケミカヅチだけです。ナインさん。タケミカヅチを召喚する為に、セリカちゃんの魔力は絶対に必要ですか?」

 

 

 

顔を険しく歪めて言った獣兵衛の言葉に、イオは付け足す様に言ったあと、ナインに問いかける。

 

 

 

「絶対に必要ではないわ。セリカがいなくても召喚は可能よ。制御出来ないだけで。」

 

 

 

「………制御出来なければ、奴何なる?」

 

 

 

「数万の人間の命なら、一瞬で吸い尽くすわ。」

 

 

 

席を立ち、静かに問いかけたハクメンにナインはきつく両手の拳を握ったまま答える。その言葉は、誰が考えを言うまでもなく、彼らが何をするつもりなのかを表していた。

 

 

 

「急がないと!黒き獣が、そのタケミカヅチが何かをする前に、その人達を助けないと!」

 

 

 

「もちろんよ。でも、あんたは駄目。この村に残りなさい。」

 

 

 

立ち上がり、両手を強くテーブルに打ち付けたセリカの言葉を、ナインは肯定した後、セリカを真っ直ぐに見て、残るように言う。

 

 

 

「やだ!私だって魔法が使えない訳じゃない。普通の人からくらいは、自分の事を守れるし、私が行けば、黒き獣を引き付けられるかもしれない。タケミカヅチの召喚で大勢の人が死ぬのも、防げるかもしれない!」

 

 

 

「なおさら駄目よ!そんなことさせられない!あんた………あんたはあいつに会いたいんでしょう?なら、やめなさい。死んだら、あの男に会えないのよ?」

 

 

 

セリカはナインを真っ直ぐに見つめ返して反論する。ナインはそれに、一瞬だけ泣き出しそうに声を震わせるが、それでも涙はこぼさず、それを捩じ伏せるようにセリカを見て言い返した。

 

 

 

「………っ。会いたいよ。だから行くの。」

 

 

 

セリカはナインの言葉に一瞬言葉を詰まらせるが、それでも怯むことなく視線をナインに向けた。

 

 

 

「この前の戦いで、黒き獣の中にラグナがいる感じがした。分からないけど、でも行かなきゃ分からないままだから。………私、黒き獣の側に居たいの。」

 

 

 

そう言いきったセリカに、ナインは迷うように視線を落とす。今回のセリカにとっての脅威は黒き獣だけでなく、十聖や虚空情報管理局などもなのだ。気に留めなければならない対象が多すぎる。

 

 

 

「ナインさん。私とハクメンさんが側に付きます。行かせてあげてください。」

 

 

 

セリカの側に居たイオの言葉に、セリカの顔が輝き、ナインが重く溜め息を吐く。

 

 

 

「………いいわ。その代わり、セリカをしっかり守りなさい。」

 

 

 

ナインは確認するようにイオに言う。それは、そうしなければ許さない、という意思表示。

 

 

 

「あははは。もちろんです。セリカちゃんに危害を加えるなら、黒き獣もタケミカヅチも、十聖も虚空情報管理局も変わりません。全力で叩き潰します。」

 

 

 

イオは、ナインの言葉にいつもの様に笑って当たり前の様にそう答えた。

 

 

 

 

 

 

「遅かったのね。待ちくたびれたわ。あまりにも遅いから、もう帰ろうかと思っていたところよ。」

 

 

 

都市の市街地の一角に転移し、既に黒き獣が現れた事を知って走り出そうとしたイオ達に、民家の屋根の上から声が掛けられる。声の主はレイチェルだ。

 

 

 

「貴様………其処から全てを見て居ながら、何故動かない!」

 

 

 

凄むような声音で言ったハクメンを、レイチェルは冷ややかに見つめる。

 

 

 

「どうして私が動くと思うの?救うのは貴方の仕事でしょう?『英雄さん』。」

 

 

 

「飽くまで舞台に降りぬ心算か。」

 

 

 

「残念ね。私は何時でも観客よ。」

 

 

 

「それなら、最後まで見ていって下さいね。レイチェルさん。舞台の出演者には、それが応援になりますから。」

 

 

 

あくまで傍観の態度を崩さないレイチェルにイオはそう言う。レイチェルはイオの言葉に少しだけ驚いた様に目を大きくすると、口を小さく綻ばせる。

 

 

 

「そうさせてもらうわ。………期待してるわよ。イオ。」

 

 

 

そう言い残して、レイチェルは薔薇の香りを纏って姿を消す。その言葉の通り、町の何処かには居るのだろう。

 

 

 

「どうする、ナイン?黒き獣も問題だが、難民の退避も急がねばならん。」

 

 

 

「取り敢えず、この町に張られた結界を壊します。その間に、何か案があるならお願いします。」

 

 

 

イオはそう言うと、先程までレイチェルが立っていた民家の屋根へと駆け上がり、黒い剣を何本か出現させる。それらを合わせて巨大な剣を作り出すと、それを、近くの入り口に張ってある結界へと射出させる。結界は元から何も無かったかの様に消え去った。

 

 

 

「幾つかの入り口の結界は消しました。難民の人達を避難させるのに使って下さい。」

 

 

 

幾つかの入り口に張られていた結界を破壊したイオは屋根から飛び降り、一行の前に着地するとそう報告する。それを聞いた一行は、三つに別れて走り出した。

 

 

「………成らば我等も」

 

 

 

「行こ、セリカちゃん。ラグナに会いにね。」

 

 

 

ハクメン、イオは黒き獣の方へ向かったナインと獣兵衛に数歩遅れる形でそう言ってから走り出す。

 

 

 

「うん!」

 

 

 

セリカはイオとハクメンの言葉に大きく頷くと、二人を追いかけて走り出した。

 

 

 

 

 

 

黒き獣の首が、大きく暴れる様に振られる。戦っていたナインの魔法が、眉間を貫いたのだ。振られた首は、容赦無く周囲の建物を破壊し、瓦礫と呼ぶにはあまりに大きい建造物の塊が、地上にばらまかれる。そして、その中の一際大きな塊が、セリカの頭上へと落ちてきた。

 

 

 

「へっ………あ、」

 

 

 

セリカは頭上に落ちてくる塊に気付き上を見るが、遅い。既にセリカには避けられない距離にまで塊が迫っていた。動けないセリカの視界が、黒く塗り潰される。セリカに塊が当たったわけではない。視界を塗り潰すほど巨大な剣がセリカの眼前に現れただけだ。

 

 

 

「――――大丈夫?セリカちゃん。」

 

 

 

「ありがとう。イオちゃん。大丈夫。でも、人が………」

 

 

 

セリカは巨大な黒い剣を作り出したイオに礼を言うと、横目に倒れ伏した人の姿を見る。その姿は、注意すればあちこちにあった。

 

 

 

「生きてる人が居るかもしれない………。」

 

 

 

セリカはそう言って走り出す。倒れている人の生存確認を素早く行っていく。

 

 

 

「………ハクメンさん。黒き獣の方をお願いします。私はセリカちゃんの方に行きます。」

 

 

 

「………行け。」

 

 

 

イオはそうハクメンと言葉を交わし、セリカの方へと向かっていく。更に、途中で視界の端に映ったものが、イオの進むスピードを更に上げさせて、それなりに遠くにいたセリカにすぐに合流した。

 

 

 

「い、イオちゃん、これは………?」

 

 

 

「大丈夫?セリカちゃん。来るよ、タケミカヅチが。」

 

 

 

体に力が入らないらしく、ニルヴァーナに支えられているセリカの問いに、イオは簡潔に答えて、視界の端、巨大な魔法陣を確認した方へと視線を向ける。そこに居るのは、黒き獣を人形にした様な巨人。巨人は、四つん這い様な姿勢を取り、前に一度、目の前の標的を退けた光線を放とうとして、瞬間、その標的が霧の様に消え去った。

 

 

 

「え?」

 

 

 

セリカは戸惑いの声を漏らす。それは、その場の誰もが同じだ。圧倒的な恐怖と絶望を撒き散らしていた怪物が、突然その姿を消したのだから。それは、タケミカヅチも例外ではなく、その動きを止めた、次の瞬間、黒き獣は、タケミカヅチの背後に出現した。

 

 

 

「嘘………。」

 

 

 

黒き獣がタケミカヅチを食い千切っていく光景を見ながら、セリカは呟く。何が起きているのか理解出来ない。そうしている間に、召喚者はこのままでは不味いと思ったのだろう、タケミカヅチが巨大な魔法陣へと沈み込んでいく。――――黒き獣を伴ったままで。

 

 

 

「セリカちゃん!私の後ろに居て、動かないで!」

 

 

 

イオはその光景を見て、セリカにそう指示を出す。魔法陣はどう見ても限界で、何が起こるか分からない。しかし、セリカが指示に従う前に、黒き獣とタケミカヅチを収納しようとした魔法陣は炸裂し、咄嗟にセリカの前に立ったイオと共に、魔法陣から撒き散らされた魔素がセリカを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

「………ん……。」

 

 

 

「あ、起きた?セリカちゃん。大丈夫?」

 

 

 

ふっと目を開けたセリカに、イオは詰め寄る様にそう聞いた。セリカはそれに頷く事で答えると、辺りを見回す。そこは見覚えのある風景だ。誰も居ない廃村に、自分達を囲む四足の獣。

 

 

 

「此処って………。」

 

 

 

「ああ、黒き獣の中だな。んで、これは俺達が初めて会った時のアレだ。………っつかイオ!さっさと手伝え!一人でこの数の足止めは面倒なんだよ!」

 

 

 

記憶の中からこの場面を引き出そうとしたセリカに、男の声が掛けられる。続いて、イオへの催促。セリカは、声の方向に視線を向ける。そこには、銀髪の男が幅の広い剣を構えて立っていた。

 

 

 

「――――ラグナ!」

 

 

 

「あははは、ごめんね、ラグナ。もうちょっとだけお願い。セリカちゃんも起きたし、私は外への道を開かなきゃ。」

 

 

 

イオはそう言っていつもの様に剣を出現させる。違うのはその色だ。いつもの黒とは違う、白い剣。

 

 

 

「………うん、此処かな?」

 

 

 

あちこちを見回していたイオは、ある一ヵ所まで歩いていくと白い剣を降り下ろす。すると、何も無い空間が切り裂かれ、裂け目が出来上がる。

 

 

 

「じゃあ、行こ、セリカちゃん。」

 

 

 

「う、うん。ラグナも!」

 

 

 

「俺は行けねぇ。まだここでやることがあるからな。」

 

 

 

セリカの言葉にラグナは首を横に振る。そして、セリカを抱えるとイオに押し付ける様にして渡した。

 

 

 

「イオちゃん、離して!」

 

 

 

「ううん、離さないよ。今の私達にはどうにも出来ないからね。………じゃあ、ラグナ。また会いに来るから。よろしくね。」

 

 

 

「へっ?」

 

 

 

イオの言葉にセリカは疑問の声を上げる。それはラグナも同じで、イオに不審そうな視線を向けている。

 

 

 

「黒き獣を倒すには、此処に来ることが必要だと思うからね。きっと私達はまた此処に来るよ。だから、今は戻ろう?セリカちゃん。」

 

 

 

「………うん!」

 

 

 

「は?おい!イオ、てめえ………。」

 

 

 

「来るな、って言うなら無理だと思うよ。だって、セリカちゃんはラグナに会いたがってるし、私はそれを全力でサポートするだけだからね。じゃ、行こう。セリカちゃん。ラグナもまたね。」

 

 

 

イオの言葉を理解したセリカは頷く。その言葉に何かを言おうとしたラグナの言葉を遮ると、イオはセリカを抱えて、空間の裂け目から黒き獣の外へと抜け出していった。

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