BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第44話



………私用で何時もより少し遅くなりました。


第44話

第44話

 

 

 

「………ところで、ラグナもテルミさんも私の事、「影の英雄」とかって呼んでたんだけど、影の英雄って何か分かる?ノエルちゃん。」

 

 

 

第十三階層都市カグツチ、中階層。そこにある公園の蛇口から出る水に頭を突っ込んで、埃や砂、血などを洗い流しているラグナを見ながら、イオはそうノエルに聞いた。ずっと不思議に思っていたのだ。雰囲気的に今まで聞けなかったが、イオ自身には対して心当たりがない呼び名で何故自分が呼ばれるのか、よく分からなかった。

 

 

 

「「影の英雄」って言うのは、暗黒大戦の時に居た、って都市伝説みたいな噂になってる人の事だよ。黒き獣と一人で渡り合った、とか魔素を打ち消す力を持ってた、とか形も名前も分からない九番目の事象兵器を持ってる、とか。心当たりある?お姉ちゃん。」

 

 

 

「あははは………心当たりしかないかな。」

 

 

 

ノエルの説明にイオは笑ってそう返す。確かに黒き獣を一人で止めたし、魔素を打ち消す事も出来る。更に歴史に乗っていない事象兵器を持っているから、もうこれは確実だろう。

 

 

 

「うん、それ私だね。………ラグナじゃないんだから、この痛い名前はどうにかならなかったのかな?そういうのは師匠とラグナで十分なのに………。」

 

 

 

「おい、聞こえてんぞ。てめぇ、一発殴ってやろうか?イオ。」

 

 

 

イオの独り言に答えるようにして、前方から少しだけ苛立った様な声が聞こえる。声の主は言うまでもなく、ラグナだ。

 

 

 

「あははは。冗談冗談。顔洗い終わったんだね。それで、これからどうするの?」

 

 

 

「特に当てはねぇよ。ま、中心部には行かねぇけどな。今行ったら袋叩きだ。」

 

 

 

イオが誤魔化すようにした質問に、ラグナはぼやくような調子で返す。それにイオは頷くと、

 

 

 

「そっか。じゃあ、とりあえずラグナと別れよう。良いかな?ノエルちゃん。」

 

 

 

そんなことをノエルに向かって聞いた。

 

 

 

「………え?どうして?お姉ちゃん。」

 

 

 

「ま、それが妥当だろうな。」

 

 

 

イオの言葉にノエルとラグナはそれぞれに反応を返す。ノエルは今の状況をあまり理解していないらしい。

 

 

 

「あのね、ノエルちゃん。史上最高額の賞金首、統制機構の支部を襲う極悪人とか、悪名だけなら人一倍ついてるラグナと一緒に居たら、それだけで仲間だと思われちゃうんだよ?更にそれが統制機構の衛士さんだったりすると、問答無用で反逆罪、なんて事もあるかも知れないしね。だから、ノエルちゃんはラグナと一緒にいない方が良いんだよ。」

 

 

 

「で、でも………。」

 

 

 

イオの言葉にノエルはまだ納得出来ない、というように言葉を詰まらせる。ラグナはそれを見て溜め息を吐き、同時に別の差し迫った事態に気付いて口を開いた。

 

 

 

「………ノエル、って言ったっけか?あんた。悪りぃけど、俺は統制機構の奴らと馴れ合うつもりはねぇし、本当なら口も聞きたくねぇんだよ。いい加減迷惑だ。さっさとどっかに消えてくれ。」

 

 

 

「あ、え?ら、ラグナさん?」

 

 

 

その言葉は今までは無かった不機嫌さと不快感をありありと映し出しており、そこから放たれた威圧感にノエルの思考は完全に凍り付いてしまう。

 

 

 

「とっとと消えろ。俺に関わるな。」

 

 

 

そう言ってノエルを邪険に睨むラグナに、ノエルは怯えるように、ふらつくように一歩後退した。

 

 

 

「分かり………ました。せっかく貴方のこと、知れると思ったのに………そんなに冷たい人だったなんて、思いませんでした!失礼します!」

 

 

 

ノエルは悲しそうにそう言うと、ラグナに背を向けて街の中心部へと走り出した。その背中が街角に消えるのを確認してから、ラグナの隣に居たイオは溜め息を吐いてラグナの方を向く。

 

 

 

「ラグナの判断、間違ってはいないけど。………もし後でノエルちゃんに会うことがあったら、しっかり謝っておいた方がいいよ。」

 

 

 

「………分かってるよ。」

 

 

 

イオの言葉に、ラグナはそうとだけ答える。どうやら、少しは言い過ぎた自覚はあったらしい。

 

 

 

「あははは。じゃあ、私はノエルちゃんを追いかけるから。………気を付けてね、ラグナ」

 

 

 

イオは笑いながらそう言うと、ノエルの走っていった街の中心部の方向へとノエルを追いかけて行った。ラグナはその姿を見送った後、一つ息を吐いて背後を振り返る。そして、

 

 

 

「なんか用でもあんのか?ガキ。」

 

 

 

そう、静かな公園の一角に、不適な声音で呼び掛けた。

 

 

 

 

 

 

「………これ、私は出ていかない方がいいよね?」

 

 

 

中階層の市街地の外れにある、上層の影の外。しばらく迷ったあげく、ようやくノエルを見つけたイオは、目の前の状況を見てそう呟いた。イオのいる場所から少し離れた所で、ノエルは黒い統制機構の制服を着た獣人の少女に抱きついて泣いていた。その顔は安心しきっていて、それだけでその少女がノエルにとってどれだけ仲の良い友達なのかがよく分かる。

 

 

 

「あはは。ノエルちゃん、楽しそう。………良かった。」

 

 

 

安心したように呟いたイオが見ている先で、ノエルは少女――――マコト、というらしい。に今までの状況の説明をしている。マコトはそれにうんうんと頷いて、

 

 

 

「そっか、話してくれてありがとう。のえるん。………で、さっきからそこでこそこそ隠れてる人。そろそろ出てきたらどう?」

 

 

 

視線を鋭くし、それをイオのいる方に向けながらそう言った。

 

 

 

「あははは………すごいすごい。ばれるって思ってなかったんだけどな〜。何処で気付いたの?」

 

 

 

視線を向けられたイオはにこにこと笑いながらそんなことを言ってノエル達に近づいていく。ばれてしまった以上、隠れていた方がノエルの気分を害してしまう、と思ったからだ。

 

 

 

「最初にのえるんが抱きついてきた時だよ。その後は完全に気配が無くなって分からなくなった。……あなたは何者?」

 

 

 

「ノエルちゃんのお姉ちゃん………って言っても信じてくれないよね。んー、なら………。」

 

 

 

イオはそう言いながら考え込むように下を向く。そのまましばらく、自分がなんと名乗ればマコトの警戒が解けるのか、ということを考えているうちに、あることに気付く。

 

 

 

「………あれ?どうして警戒を緩めてるの?自分で言うのもあれだけど、今の私、凄く怪しいと思うんだけど?」

 

 

 

そう聞くと、いつの間にか警戒を緩めて、構えも解いているマコトは簡単に答える。

 

 

 

「だって、敵だったらこの場面で考え込んだりしないし。のえるんもあなたの事を「お姉ちゃん」って言ってたから。」

 

 

 

「あははは、それもそうだね。ありがとう、ノエルちゃん。」

 

 

 

「ううん。私は何にもしてないよ。それに、お姉ちゃんには何度も助けてもらってるから。」

 

 

 

イオの笑いながらの感謝に、ノエルはそう返す。それにイオはもう一度、あははと笑うと、

 

 

 

「それで………マコトさん、で良いんだよね?きっとノエルちゃんに話したい事があるんでしょ?」

 

 

 

そう聞いた。それにマコトは頷くと、ノエルに話を始める。ノエルとジンが統制機構を裏切った反逆者とされていること。二人を始末するため、統制機構第零師団、通称『審判の羽根』が派遣されること。その派遣される人材が、ノエルとマコトの親友である、ツバキという少女であること。

 

 

 

「だからさ、のえるんには一旦身を隠してほしいんだ。今の統制機構は変だから、下手したら強引に反逆罪にされちゃうかもしれない。」

 

 

 

マコトの言葉にノエルは頷く。そう言えば、イオも同じような事を言っていた筈だ。そんなことを思いながらノエルはイオの方を見る。

 

 

 

「そうだね。テルミさんも居るみたいだし………マコトさんの言う通りだと思うよ。話を聞いてると、そのツバキさんって人、真面目な人何でしょ?なら………きっとノエルちゃんを殺そうとしちゃうから。」

 

 

 

「うん………分かった。マコトの言う通りにする。私も、ツバキとは戦いたくなんかない。」

 

 

 

ノエルの言葉にマコトは一つ大きく頷くと、隠れ場所を指定する。下層のオリエントタウンに住んでいる、ライチ=フェイ=リンという女医のところだそうだ。そう告げるとマコトはまだやることがある、と告げて踵を返す。

 

 

 

「あ、そうだ。のえるんのお姉さん。のえるんの事、お願いできますか?」

 

 

 

「あははは、うん、引き受けたよ。私が一緒にいる間は、ノエルちゃんには怪我なんてさせないから。安心して。」

 

 

 

イオの答えにマコトは振り向かずに頷くと、路地から出ていってすぐにその姿を消した。

 

 

 

「………行っちゃったね。じゃあ、私達も行こっか。確か、オリエントタウン、だったよね?」

 

 

 

マコトの背中が見えなくなるのを確認してから、イオはノエルにそう言う。

 

 

 

「うん。」

 

 

 

「それじゃあ、なるべく人に見つからないように行こっか。………こっちだよ。」

 

 

 

ノエルが頷くのを確認したイオはそう言うと、ノエルを連れて下層へと向けて歩き出していった。

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