またしても3000字には届かなかった………。ほんと、長く書くのってかなり難しい。後どれくらいでカラミティトリガーに入れるのかな?全然分かりません。
第4話
十数分後、イオは、再び森へと戻って来ていた。前に入った時は、殆ど半日近く迷っていたイオにとっては忌々しい森だったが、今のイオはその森を、全く迷う事なく進んでいく。…………というよりは、
「………何処に行くんですか?師匠。」
ただ、この森をよく知る人物に付いていっているだけなのだが。
イオに「師匠」と呼ばれた、黒と白のツートーンの毛並みを持つ猫の獣人――――獣兵衛は、イオの質問に振り返ると、笑いながら、
「そういえば言ってなかったな。これから、俺の最初の弟子の所に行く。まぁ、お前の兄弟弟子とでも思えば良い。名はラグナと言うんだがな、こいつが才能の欠片もなく………おい、どうした?」
獣兵衛は自分の弟子について話している途中、頭を片手で抑えたイオに気付き声を掛ける。しかし、イオにはそれに答える余裕がなかった。
ラグナ、ラグナラグナラグナラグナラグナラグナラグナ。
聞いた事のある名前だった。当然だ。この前知った記録は常に彼を中心として動き続けていたのだから。だけど、この名前がここまで頭の中に残る理由は、それじゃない。もっと、何か、暖かくて、懐かしい…………。
ラグナ、ラグナ、ラグナラグナラグナラグナラグナラグナ――――――兄様。
頭の中に響いてきた声、「彼女」の声を声を出さず、頭の中だけで否定する。
何度も同じことを言わせるな!!私はイオ!サヤじゃない!あなたは、私に入って来るな!!
と、そこで頭の中に響き続けていた「声」が消える。イオは、頭を軽く振りながら、目の前を見ると、そこには、自分の事を心配そうに見る獣兵衛が目に入る。その獣兵衛に対して、少し笑いながら、
「あははは………。すみません。師匠。もう大丈夫です。」
と言った。
それでも「本当に大丈夫なのか?」と心配してくる獣兵衛に対して、
「大丈夫です。ちょっとサヤちゃんが、お兄さんに会いたい、って我儘を言い出しただけですから。…………体も無いのに、会った所で分かってくれる訳が無いんですけど。」
「ん?イオ、お前の中にはサヤが居るのか?」
イオの言った言葉に疑問を持った獣兵衛はその疑問をイオにぶつける。イオは少し嫌そうな顔になってから、
「正確には少し違います。「私」の中にあるのは「サヤ」の気持ち、感情だけです。だからたまに、「サヤ」の感情が強く残ってる場所に行ったり、名前を聞いたりすると、「サヤ」の感情が暴走しちゃうんです。」
と答えた。
「成程な。なら心の準備をしておけ。これから逢うのは、サヤの「お兄さん。サヤちゃん風に言えば、兄様。ですよね。」その通りだ。恐らく、というか殆ど確実にその感情の暴走とやらが起きるからな。」
獣兵衛はそう言うと、歩みを止める。イオの心の準備が完了するまで待っていてくれる、ということらしい。
「………ありがとうございます。」
イオは、そんな獣兵衛に感謝しながら自分の気持ちを整理し始めた。
◆
「…………良いのか?もうすぐだぞ?」
「はい。心の準備は出来ました。…………あっ、最後に一つだけ。」
そういってイオはそれまで外していたフードを被る。それによって、顔は外から見えなくなった。
「?どうして顔を隠すんだ?別に隠すことは無いだろう?」
獣兵衛は不思議そうに問い掛けてくる。それにイオは、少し笑いながら、
「ほら、もしラグナさんの立場に私が居たとしたら、連れ去られた妹と瓜二つの顔をした人って、あんまり見てて気持ちいいものじゃ無いと思うんですよね。これから一緒に修行していくのに、何かギスギスした空気になるのも嫌じゃないですか。だから、念のためこうするんです。」
と答えた。獣兵衛はそれにどこか納得した様に頷き、
「成程な。確かにラグナはそう言うのは気にするからな、良い判断なのかもしれんな。………よし、そろそろだ。行くぞ。」
と言って森を歩いて行く、イオはそれに付いていくと、森の開けた所に出る。そこには、銀髪の、右目が赤、左目が緑のオッドアイで、まるで人のものでは無いような真っ黒な右腕をベルトの様なものでぐるぐる巻きにした青年が座っていた。
「ラグナ、どうだ?修行は少しでも進んでいるか?」
「………師匠か。いや、あんまりだな。ま、剣の方はノルマはやったけど、術式の方はさっぱりだ。」
「はっはっはっ。相変わらずか。才能の無い奴だ。」
その声を知っている。/あ〜、はいはい。やっぱり来ますか。いや分かってたんだけどね?とりあえず、静かにね?
懐かしい。いつも私を助けてくれた、優しくしてくれた、大好きな兄様の声だ。/うん、まぁとりあえず、ラグナさんへの信頼度と、優しさは十分伝わってるから。だからさ、少し静かにしよう?
兄様、兄様、兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様兄様。/あ〜〜もううっさい!分かったから、あなたが極度のお兄さん好きなのは嫌って言うほど分かったから。だから少し静かにして!頭に響いて痛いんだから!!
やはり予想していたサヤの感情の暴走を、冷静な態度で沈めると、割とあっさりと「声」は聞こえなくなる。…………サヤちゃんは意外と冷静な切り返しに弱い様だ。
「悪かったな。才能が無くて。………んで?師匠、そいつは?」
そこで獣兵衛と話していたラグナは、イオの方に視線を向けてくる。視線を向けられたイオは、フードの下で、ラグナには見えないであろう笑顔を作りながら自己紹介をする。
「初めまして。イオっていいます。ちょっと前に怪しい人に襲われていた所を師匠――――獣兵衛さんに助けてもらって、弟子入りしました。あなたとは兄弟弟子になるらしいです。このフードについては………色々込み入った事情があるので、出来るだけ聞かないで貰えればありがたいです。よろしくお願いします。ラグナさん。」
そう言ってイオは頭を軽く下げる。しかし、何時までたっても返事が来ないのを不思議に思い、顔を上げてみると、ラグナが固まって、「サ……ヤ…?」と呟いているのが見えた。それにイオは、
(えっ、どうしてサヤって……………あっ!声!よく考えたら顔を隠しただけじゃ声までは変えられないんだ!………ラグナさんが妹の声を覚えて無いわけがないし、ちょっと不味いかも…………)
等と、内心は焦りながら、出来るだけ困惑した様な表情を作りながら、「あの、えっと、ラグナさん?」と聞くと、ラグナは、
「あ、あぁ、何でもねぇよ。まぁ、あれだ。なんつーか、別に敬語じゃなくても良いぞ。あんまし丁寧に話されんのとか好きじゃねーからな。呼び捨てで良い。よろしくな。イオ。」
と、少し動揺を残したまま答えた。その言葉にイオは、
「………分かったよ。ラグナ。これから宜しく!」
と、そう答えた。
――――――こうして、繰り返される物語の中で、イレギュラーの少女と物語の始まりであり終わりでもある青年は出会った。この青年が、SS級賞金首、世界最高の犯罪者、『死神』ラグナ=ザ=ブラッドエッジとしてその名を全世界に轟かすのは、もう少し後、数年後の話である。