BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第51話投稿。



CS編終了まであと少し。恐らく、後三、四話くらいだと思います。


第51話

第51話

 

 

 

――――地面から伸びてドームを作り出していた黒い膜が、溶けるように消えていく。消えていくドームの中は、戦闘が行われていた事を示すように、舗装された地面のあちこちが抉れ、砕けている。その中心付近に三人の人影がある。倒れている二人と、立っている一人だ。

 

 

 

「はぁ……はぁ……。………思ってたより、時間が、掛かっちゃったかな?」

 

 

 

ただ一人立っている人影――――イオは呼吸を整えながら上を見上げる。数十分前、ノエルが走って行った方向だ。地面に倒れている二人――――ファントムとレリウスが此処に居る以上、ノエルの行った方向にはテルミがいる可能性が高い。テルミの狙いはノエルで、彼はこういうことを雑にやらないので、本人が動いている可能性は非常に高い。だからこそすぐに追いかけたかったのだが、ファントムはともかく、学者タイプに見えたレリウスが相当、というより明らかにテルミを越えるレベルで強かったので、かなり時間が掛かってしまった。

 

 

 

「………急がないと。階段を昇ってる暇は無いよね。」

 

 

 

イオはそう呟くと、黒い剣を三本出現させてぶつける。剣は一つになって形を変え、宙に浮く乗り物へと形を変える。イオはそれに素早く乗り込むと、真上へと飛びはじめた。

 

 

 

「………あれ?何か、落ちて………って!」

 

 

 

イオは何か落ちてくる物体を視界に納め、首を傾げる。が、それが近づいて来て、何であるかを認識すると、出来るだけ衝撃を与えないように、ゆっくりとそれを受け止めた。

 

 

 

「大丈夫?マコトさん!」

 

 

 

「………ぅ……あ………。」

 

 

 

イオは落ちてきた物体――――満身創痍のマコトに声を掛ける。返事はなかったが、多少意識はあるらしい。

 

 

 

「ちょっとだけ待っててね?上に着いたら治すから、それまで少しだけ我慢して。」

 

 

 

イオはそうマコトに言葉を掛けると、飛ぶスピードを上げる。少しして、上に辿り着いた。戦闘が行われていたらしく、あちこちが陥没し、砕けている。そこにノエルの姿は無く、広場の中央辺りにハザマだけが立っている。

 

 

 

「………まさかあの二人が時間稼ぎにしかならないなんて………薄々分かってましたが、やっぱり化物ですねぇ。」

 

 

 

「あははは。テルミさんに言われるのは少しだけ心外ですね。私を作ったのはテルミさんとさっきのレリウスさんでしょう?」

 

 

 

ハザマの台詞にそんな風に答えながら、イオはあちこちを見回す。そして、辛うじて戦闘に巻き込まれず、無傷なベンチを見つけると、そちらへと歩いていき、ゆっくりと、衝撃を与えないようにマコトをその上へ寝かせた。

 

 

 

「あらら、助けちゃったんですか。………その獣人を一体どうするつもりですか?」

 

 

 

「もちろん、怪我を治すんですよ?マコトさんに何かあったら、ノエルちゃんが悲しんじゃいますし。」

 

 

 

ハザマにそう答えて、イオはふっとマコトに手をかざす。手に温かい光が灯り、その手をマコトの体をなぞるように動かすと、マコトの傷がどんどんと治っていく。ラグナを治療していたおかげで、セリカまでとはいかなくても、治癒魔法が得意になっていた。

 

 

 

「治癒魔法、ですか。そういえば、セリカさんとも仲が良かったんでしたねぇ。………チッ、面倒なもん教えやがったな、あのクソ女。」

 

 

 

思い出したような口調で喋っていたハザマの口調は、突然苛ついたような、粗暴な口調へと変化する。そんなテルミの言葉に、イオはあはは、と笑って見せる。

 

 

 

「テルミさんに変わったみたいですね。それで、テルミさん。ノエルちゃんは何処ですか?」

 

 

 

「ん?あぁ、それか。………少し遅かったな?あのクソ人形は今、窯の中だ!あー、そういやさっき、「ノエルちゃんに悲しむ」とか言ってたな?………ッククク、良かったじゃねぇか。悲しむクソ人形もいなくなった事だし、そのクソ獣人を治す必要も無くなったじゃねぇか!そもそも、あんなどんくさい屑人形なんざ、捨てられた方がマシなんだろうしな?」

 

 

 

そんなことを言うテルミに、イオはあはは、と笑う。そして、次の瞬間には、イオはテルミの前に現れて、剣を振りきっていた。イオの剣はテルミの左腕を二の腕辺りから切り飛ばしている。

 

 

 

「私自身は何て言われても構いませんけど………これ以上セリカちゃんやノエルちゃんの事を悪く言うなら、もう片方の腕も切り飛ばしますよ?」

 

 

 

イオはにこにこと笑顔を浮かべながらそんなことを口にする。テルミはそれで、イオが本気であることを理解し、距離を離す。それから、切り飛ばされた左腕を拾って、外していた帽子を被り直した。

 

 

 

「………これはこれは、怖いですねぇ。さすがは『影の英雄』。容赦は無しですか。………ここで殺されるのは得策ではありませんから、これ以上失言をする前に退散させてもらうとしましょうか。」

 

 

 

ハザマはそう言って、くるりとイオに背を向けると、歩いて遠ざかっていく。イオはその姿が消えるのを見送ってから、ベンチに寝かされているマコトの元へと戻った。

 

 

 

「ごめんね、マコトさん。今治すから。」

 

 

 

「………私は……いいから、ノエル………を、助けて………。」

 

 

 

治癒魔法を掛けようと伸ばした手を掴んだマコトは、切羽詰まったような顔でそう懇願してくる。イオはそれに優しく微笑んで、イオの手を掴んでいたマコトの手をゆっくりと外し、手に温かい光を灯して、マコトに治癒魔法を掛け始めた。

 

 

 

「………どう……し………て?」

 

 

 

マコトはイオの行動に疑問の声を上げる。イオにとってマコトは、妹の親友、という認識しかないはずだ。怪我をしている妹の親友と、連れ去られた妹。どっちを優先するかなど、火を見るより明らかな筈なのに。

 

 

 

「あははは。マコトさんは、ノエルちゃんの親友なんでしょ?なら、ノエルちゃんが自分を護ろうとして大怪我を負ったとして、連れ去られちゃったマコトさんは、どう思う?」

 

 

 

「………あ……。」

 

 

 

イオの言葉に、マコトは納得したような声を上げる。もし自分がその立場だったら、きっとマコトは自分を許せなくなってしまうだろう。自分のせいで、親友が大怪我を負ってしまったのだ。自分なんかがいなければ、と。

 

 

 

「私は、ノエルちゃんに悲しんでほしくは無いからね。ノエルちゃんが笑っててくれるなら、最後に笑えるなら、どんな事でもやるよ。必要なら、世界も統制機構も全部潰してみせる。………それで、今はマコトさん、あなたの治療が一番大事だと思ってるから。何て言われても、私はマコトさんの怪我を治すよ?」

 

 

 

そう言ってから、イオはそれにね。と言葉を付け加える。

 

 

 

「知らないままなら、知らないままで良かったと思うけど、ノエルちゃんは『自分』を知っちゃったから。だから、向き合う時間と、機会が必要だと思うんだ。………うん、これで大丈夫。まだあんまり激しい動きはしない方が良いけど、とりあえず、普通に動けるくらいには怪我が治ってる筈だよ。だから、ノエルちゃんは私に任せて、少し休んでてね?」

 

 

 

イオはそう言いながら、ひょいと立ち上がってマコトに背を向けて歩き始める。イオが向かう先は、統制機構支部の地下にある『窯』だ。………恐らく、ノエルはそこにはいないのだろう。地下とは別にもう一つ、統制機構の頂上に、『窯』があるのが分かる。恐らく、ノエルはそこで『精錬』されている筈だ。だが、イオはそちらへは行かない。ノエルの精錬は、始まってしまったらイオには止められないのだ。

 

 

 

「………『精錬』が終わった後なら、どうにでもできるんだけどね。………うん、じゃあ、私もノエルちゃんを助けるついでに「役割」を果たそうかな。」

 

 

 

イオはそんなことを呟いて、歩いていく。目的地は地下にある『窯』。精錬を終えたノエルが、『神殺し』――――『マスターユニット・アマテラス』を破壊するために、必ず訪れるはずの場所である。

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