BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第58話投稿。



………何か、凄く長くなった代わりに、何となくグダグダになったような気がしますが、ご容赦ください。


第58話

第58話

 

 

 

――――夢を、見ていたような気がする。

 

 

 

うまく思考も纏まらない意識で何か暖かいものに包まれているような感覚を感じながら、ラグナはそんなことを考える。………夢の舞台は昔、ラグナの家だった教会。登場するのはラグナと、ラグナ達兄弟を教会に引き取り、世話をしてくれていたシスターの二人。時間は………そう、何時だったか、風邪で倒れてしまった妹のサヤを看病しているうちに、ラグナにも風邪が移ってしまった時だ。内容は、サヤもジンも知らない、シスターとの『約束』のこと。あの時は簡単だと、当たり前だと思っていた、今は出来ないと思ってしまっている、遠い昔の約束。

 

 

 

………そこまで思い出した所で、急激に意識がはっきりとしてくる。頭が回り出して、思考も纏まって、先程と変わっていないのは、ラグナの体を不自然なまでに包み込んでいる暖かさだけだ。それに疑問を覚えたラグナは、閉じていた目をゆっくりと開く。

 

 

 

「あ、気が付いたんだ。良かった。」

 

 

 

「あはは、やっと起きたね。おはよう、ラグナ。」

 

 

 

目を開いたラグナを覗き込むようにして、黒髪と茶髪の二人の少女がラグナの視界に入り込んでくる。黒髪の方はラグナもよく見覚えがある。というより、一緒に師匠の獣兵衛の所で修行していた兄弟弟子である素体の少女――――イオだ。しかし、もう片方の茶髪の少女を、ラグナは見たことがない。

 

 

 

「………あんた、誰だ?」

 

 

 

ラグナは、茶髪の少女に向かってそう問いかける。イオが一緒に居て、警戒もしていない、ということはこの少女がラグナに危害を加えることは無いのだろうが、だからと言って名前も知らない全くの他人を警戒しない、ということはラグナには出来ない。

 

 

 

「私はセリカ=A=マーキュリー。よろしくね、ラグナ。」

 

 

 

ラグナの問いかけに少女――――セリカはそう簡単に答えて、笑顔を浮かべる。しかしラグナは、素早く立ち上がってセリカの方へと向き直り、セリカを睨み付けた。――――そう、今、確かに。セリカは名乗ってもいないラグナの名前を呼んだのだ。それに、たった今動こうとしてようやく気付いた事だが、右腕が、右腕の形をした『蒼の魔導書(ブレイブルー)』が動かないのだ。更に、右目も開かない。………こんなことは今まで一度もなく、セリカが何か関係してる可能性が高い。

 

 

 

「………うん、セリカちゃんもちょっとうっかりが過ぎてたから、ラグナがそんな風に警戒するのも分かるけど……安心して、ラグナ。大丈夫、セリカちゃんはラグナの敵に回ったりしないよ。」

 

 

 

と、そこで、警戒しているラグナと状況が理解できずにぽかんとしているセリカを見かねたイオが、そんな事を言いながらセリカとラグナの間にすっと入り込んで、そんな事を口にする。

 

 

 

「………じゃあ何でこいつは俺の名前を知ってやがんだ?それに、右腕と右目。これが動かないのもそいつのせいなんだろ?………本当に敵に回らないってんなら、とりあえず俺の右腕と右目を動かせるようにしてみろよ。」

 

 

 

「ラグナの名前を知ってるのは私がセリカちゃんに教えたからだよ。………まぁ、その右腕と右目はラグナの言った通りセリカちゃんのせいだけど、動かせるようには出来ないと思うよ。………だってセリカちゃん本人も、その力を止めようとすれば止められる、って訳じゃないんだから。」

 

 

 

「………どういうことだ?それ。」

 

 

 

イオの言葉に、ラグナはそう聞き返す。………ラグナの右腕と右目が使えなくなってしまっている時点で、セリカに何かの特別な力がある、ということは分かっていた。しかし、止めようとすれば止められる訳ではない、というのはどういうことなのだろうか。こうしてラグナの右腕と右目を使い物にならなくしている以上、それは制御できているのではないのか?

 

 

 

「う~ん、じゃあ、私とセリカちゃんの関係から説明していくよ?セリカちゃんは私の暗黒大戦時代に出来た親友でね、一緒に黒き獣と戦ってたんだ。それで、セリカちゃんは少しだけ特別で、黒き獣に対しての抗体、ってハクメンさんは言ってたかな?………まぁ、そういう訳で、黒き獣、っていうより、自分の周りの魔素の動きを抑制するって力を持ってたんだ。だから、セリカちゃんの近くに居るラグナは、魔素の塊なその右腕と右目が動かせないってこと。それに、セリカちゃんの力はセリカちゃんの無意識でも周りに影響をあたえちゃうから、セリカちゃんがどうにか出来るものでもないんだよね~。………あ、ちなみにだけど、セリカちゃんは治癒魔法のスペシャリストで、私の先生でもあるんだ。さっきまで血塗れでばったり倒れてたラグナの怪我を治したのもセリカちゃんだから、実はラグナ、間接的には何回もセリカちゃんに助けられてるんだよね~。………警戒するより、お礼を言った方が良いんじゃないかな?」

 

 

 

イオはそんな風に、セリカの力とラグナの疑問について、あはは、と何時ものように笑顔を浮かべながら説明する。ラグナはそれで大体のことを理解したらしく、くるり、とイオとセリカに背を向けた。

 

 

 

「………あれ?どこ行くの?ラグナ。」

 

 

 

「………ん?あぁ、セリカ、って言ったっけ?あんたは俺の敵にはならねぇみてぇだが、俺の近くに居ると俺が全力を出せねぇんだろ?じゃあ、そいつと一緒に居る意味はあんまねぇだろ。だから、ここで別れさせてもらう。どうせ俺にも探し物があるからな。何時までも此処には居られねぇ。」

 

 

 

首を傾げながら問いかけるセリカに、ラグナはそうとだけ答えて歩き出そうとする。しかし、何かを思い出したように振り返り、

 

 

 

「まぁ………何だ。怪我を治してくれた事は感謝してる。………ありがとな。」

 

 

 

それだけ言って再び振り返って歩きだし、姿を消した。

 

 

 

「………うわぁ、素直なのか素直じゃないのか、判断に困るなぁ、今の。………あ、そういえば、忘れてた。」

 

 

 

歩き去っていくラグナの様子をぽかんとしたような表情で見送ったイオは、ラグナが見えなくなってから思い出したようにポンと手を叩いてそんな事を言う。………よく考えてみれば、ラグナに話があったのを思い出したのだ。

 

 

 

「忘れてたって、何を?」

 

 

 

「………いや、さっきラグナ、探し物があるって言ってたでしょ?その探し物ってラグナ一人じゃ見つけられなくてね。私かノエルちゃん――――私の妹しか見つけられないんだよね。でもラグナ、私が見つけられるってことを知らないみたいだから、教えて手伝ってあげようかな?って思ってたんだけど。………さっきの話の中ですっかり忘れちゃってました~。………と、言うことでね。ラグナを追いかけてみない?セリカちゃん。」

 

 

 

セリカの質問に、イオはあはは、と笑いながらそんな事を提案してみる。セリカはそれに一瞬だけぽかんとしたような表情を浮かべたあと、

 

 

 

「うん!行こう、イオちゃん!」

 

 

 

そう頷いて、花が咲いたような笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「………あははは。ラグナぁ~。私、前に、ラグナにものの頼み方を教えたような気がするんだけどなぁ。」

 

 

 

ラグナを追いかけ始めてから数十分後、ようやくラグナに追い付いたイオは、現在ラグナがやっている行動を見て、そんな事を呟く。イオの視線の先では、ラグナが金髪碧眼の少女――――ノエルの腕を掴んで強引に引っ張っている。ノエルは何が起こっているのかよく分かっていない、というより、ラグナが全く説明していないのだろう。更に、ノエルの腕を掴んでいるラグナの力が思いの外強いらしく、ノエルが痛がっている。………こんな光景を見せられてしまっては、イオに何もしない、という選択肢はない。イオは十メートル近い距離をほとんど一瞬で詰めると、ラグナの脇腹に肘打ちを入れた。

 

 

 

「ごはぁ!………てめぇ、イオ!何しやがる!」

 

 

 

「え………お姉ちゃん?」

 

 

 

肘打ちを入れられたラグナは、脇腹に走った痛みを堪えながら、肘打ちを入れた張本人であるイオに噛みつくように言葉をかける。一方のノエルは、今の状況に完全に置いていかれているらしく、ぽかんとした表情を浮かべている。

 

 

 

「あはは。何してるの、ってこっちの台詞だよ、ラグナ。人へのものの頼み方。昔、師匠と一緒にラグナに叩き込んだ気がするんだけど………気のせいかなぁ?」

 

 

 

イオの言葉に、ラグナは一気に目を泳がせ始める。いつの間にか、本人であるラグナでさえもほとんど無意識に、ラグナの格好は正座へと変わっていた。………どうやら、思い出したようだ。

 

 

 

「一つ目、自分のやりたいことを相手に理解させること。ものを頼む時は、頼み事をされる相手が何をさせられるのか、はっきりさせることが大事です。二つ目、相手の了承を得ること。相手が「分かった」と自分の意志で言ってくれることが大事です。強制的に言わせたのでは意味がありません。………あはは。そろそろ思い出した?」

 

 

 

イオはそんなことを言うと、先程までの怒ったような表情から一転させて、いつもと同じ笑顔を浮かべる。ラグナはそれに無言のまま何度も頷いてみせる。………そもそも、少しだけ焦っていただけで、忘れたわけでは無かった。と、言うより、文字通り叩き込まれたので、忘れられるわけがない。

 

 

 

イオはそんなラグナの様子を見て、笑ったまま一度頷いてから、くるりとノエルの方を向く。………どうやらイオが説教をしている間にセリカが大まかなことは説明してくれたらしく、ノエルの顔に困惑は無かった。

 

 

 

「あはは、久しぶり、ノエルちゃん。大丈夫?ラグナに怪我、させられてない?」

 

 

 

「うん、大丈夫だよ、お姉ちゃん。………ラグナさんも、最初から説明してくれれば良かったのに………。」

 

 

 

「あははは。まぁ、きっとラグナもこれで学習したと思うから、許して………ん?」

 

 

 

ノエルの独り言のような文句に、笑いながらそう宥めるように声をかけるイオ。しかし途中で何かに気付いたように、くるりと後ろを振り返った。イオの視界に入ってきたのは、気絶しているラグナと、統制機構の制服を着て、巨大な大剣を持った黒髪の男。どうやらラグナは気絶させられたらしい。イオは男がラグナに触れる前に、一瞬でラグナと男の間に割って入り、剣を男の方へと向ける。

 

 

 

「おいおい、お嬢さん。そんな物騒なものを向けたら………って、あんた、『影の英雄』か?」

 

 

 

「あはは。その呼ばれ方は好きじゃないんですけど。何でそんなことが分かるんですか?………あれ?あなた、何処かで………。」

 

 

 

男の言葉に、イオそんな疑問を返して男の顔を見る。………そもそも、影の英雄、というのは、最初から噂の域を出ないものなのだ。顔も知られなければ、実在したかどうかさえ分からない存在。それを顔を見ただけで言い当てた理由が分からなかったのだ。しかし、その顔を近くで見て少しだけ思い出す。――――確か、この顔にそっくりな人を、暗黒大戦の時に………。

 

 

 

「………もしかして、カムイ=ムツキさんの子孫、だったりしませんか?」

 

 

 

「お、その通り。よく分かったなぁ、『影の英雄』さん。俺はカグラ=ムツキ。あんたの事は俺の爺さんの親父、カムイ=ムツキが撮った写真で見たんだ。宜しくな。………で、そこ、退いてくれねぇか?せっかく油断してるラグナ=ザ=ブラッドエッジを気絶させられたんだ。さっさと捕まえてぇんだが。」

 

 

 

「………そうですね。捕まえた後、何もしないって事なら退きますよ?それ以外なら、私はあなたを倒して、ラグナを連れて逃げさせて貰います。」

 

 

 

カグラの提案に、イオはそう言ってにこり、と笑顔を浮かべる。………何もしない、何て言わないんだろうなぁ、何てことを思いながら。

 

 

 

「よし、分かった。こいつは牢屋にぶち込んどくだけで、後は何もしねぇよ。」

 

 

 

「………はい?それ、本気で言ってますか、カグラさん。」

 

 

 

予想外の答えに、イオはそう聞き返す。

 

 

 

「何だよ、用心深いな。ほら、ノエルちゃんもセリカちゃんも、何か言ってくれ。」

 

 

 

呆れたような口調で、カグラはイオの後ろにいる二人にそう声をかけた。その声に応じて、セリカとノエルがイオに意見を言う。………纏めると、カグラはほとんど統制機構の裏切り者であるノエルやマコトを匿っている、良い人なので、信用しても良い、ということらしい。

 

 

 

「はい、大体分かりました。カグラさんを信じます。………あ、そうだ。私も連れていって貰っても良いですか?実は何すれば良いかよく分からなかったんですよね。」

 

 

 

「もちろん、最初からそのつもりだって。」

 

 

 

イオの質問にカグラはそう答えると、ラグナを背負って歩き出す。イオはそれを見て、セリカとノエルに「それじゃあ、行こっか。」とだけ言うと、軽くとん、と地面を蹴って、カグラの向かった方向へ歩き始めた。

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