こんなありふれた日常を   作:駈耶

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小説初投稿です!

文体がおかしかったり読みずらかったりするかもしれませんがよろしくお願いします!


再び春は訪れる

春眠暁を覚えずとは言ったものだが、新学期が始まって早1週間。俺はもはや頭より身体が先に動いてしまうほどの手際ぶりで、今日も今日とて朝ごはん兼昼食のお弁当の準備をしていた。

 

「竜児ぃ、ごーはーんー」

 

聞き慣れたフレーズと呼ばれた名前にやはりこれが自分の日常なのだと内心ニヤつきを隠せないのだが、そこはグッと押さえて、声の主の呼びかけに応える。

 

「待ってろー。あと5分でご飯が炊き上がるからな。そっち片付けてくれててもいいんだぞー。」

 

顔だけ振り返ってみるとこれも見慣れた光景。質素とか趣があると言えば聞こえがいいが、つまるところ何もないちゃぶ台に一匹の虎。改め、大河がペタリと突っ伏していた。時折、「めしー、めしー」と呟く姿は虎というより子ぐまのよう。

 

「できたぞー、並べるの手伝ってくれよー。やべっ泰子起こさねえと。」

 

我が家を支える唯一の働き手にはもう少し寝ていただいて欲しいのだが、以前勝手に朝食を食べて登校しようとした時に号泣されたので、わざわざ疲労の溜まった体に鞭打って起床しているのだ。みんなで一緒にご飯を食べないと生きている意味がないらしい。

 

「おい泰子。朝だぞー、起きろー。」

 

「う〜ん....ふぁぁ〜。りゅうちゃんにたいがちゃんもおはよ〜。」

 

「あっ、やっちゃん起きてきた。おはよ〜やっちゃん。」

 

こうしてやる気のない掛け声とともに始まる高須家の朝だが、俺はわりと、いや....こうしてみると本当に毎朝ゆるゆるだな。よくこれで学校に仕事に行けるもんだ。

 

「さっさと飯食えよ。遅刻すんぞって...おい、泰子!寝ぼけてインコちゃんに噛みつこうとしない!」

 

こんな日常。ありふれた毎日を送れることがどれだけ幸せなことか。そんな年寄りくさいことを思いながら茶をすすっていると、刻一刻と長針が登校時間を指し示そうとしていた。

 

「しょっと。じゃあそろそろ行くわ。泰子、ちゃんと戸締りしといてくれよ。」

 

「やっちゃん、いってくるね。」

 

未だ夢うつつの母親に釘を刺してから、俺と大河は学校に向かった。

 

 

 

そういえば春休み前に色々あったせいで忘れていたが、俺たちは無事3年に進級することができた。一度母親の元に行っていた大河も新学期の始まりにはこっちに戻ってきており、約1名進級が危ぶまれたのがいた気もするが、2ーC全員誰一人欠けることなく進級すことが出来たのだ。

 

3年になってからは俺と北村は理系のクラスに、櫛枝はスポーツ専攻のクラスに。大河はスポーツのクラスで最後まで粘っていたが結局入れず、なら櫛枝のクラスの隣のクラスにして欲しいと新学期早々職員室に殴り込みをかけていた。戻ってきて早々停学沙汰はやめて欲しいとも思ったのが、運良く職員室にいたゆりちゃんになんとか宥められ、加えて、教頭先生に一緒に頭を下げてるという....なんでこの人結婚出来ないんだろうか。

 

クラスはバラけてしまったが、今でも放課後集まったりするし、なんだかんだで2年と対して変わらない感じで過ごしてはいる。

 

そして現在時刻は4時過ぎ。金曜日の夕方ということもあって、校内に人影は少ない。そんな閑散とした雰囲気をもろともせず、ズズズ....と飲んでいたパックのオレンジジュースを飲み干し、開口一番すごい変化球を放ってきた。

 

「君たち...もっとイチャイチャしないさいな!!!!」

 

同じくジュースのストローを啜っていた大河が櫛枝の雄叫びと共に吹き出す。俺はそれを顔面で受け止めることになった。

 

「ゲホッ、ゲホッ、ケホッ....みのりん、急になんてこと言うのよ...。思わずジュースこぼしちゃったじゃない。」

 

「こぼしちゃったじゃねぇよ、大河。これは吹き出して俺にぶっ掛けたって言うんだよ。」

 

「うるっさいわね、ホントに。あんたのその顔面凶器に私のジュースを浴びたんだから、少しは顔面凶器度も下がったんじゃないの。あれ、もしかして私良いことしちゃった?」

 

悪びれる様子もなく櫛枝に同意を求めているこいつは、どれだけ自分を正当化することに長けているのか。濡れた顔を拭くのも大概に先ほどの雄叫びの主に意図を問うてみる。

 

「それでよ、櫛枝。いきなり大きな声上げてどうしたんだ?その、い、イチャイチャしろとはまた抽象的な言い方で。」

 

最後の方は目をキョロキョロと泳がせつつ、俺にとってはなかなか言い慣れない擬音語を言葉にしつつ、段々と顔に熱が集まっていくのが分かる。

 

「なぁ〜にを言ってるのさ高須くん!!君と大河と来たら毎日夫婦漫才みたいなことばかりしてくのに、言動といえば老年の夫婦みたいじゃないか!!せっかく大河もこっちに戻って来たことだし、ここいらで高校生活最後の1年間を謳歌しても誰にも咎められることはないってなもんよ!!」

 

歌舞伎役者顔負けの大見得を切りつつ櫛枝は机の上に片足をついて言う。てか、いつ靴脱いだんだ。

 

「そそそ、そんなこと突然言われたって、こいつとそんなことしても楽しいどころか頭に血が上っちゃうわよ....」

 

恥ずかしいったらありゃしないわ、と俺の方をチラチラ見ながら少し頬を染めた大河言う。やめろそんな顔で見られたらこっちも恥ずかしくなるだろ。

 

「い〜〜やだめだ!君達はもっとイチャコラするべきだ!そうでないとお天道様が許しても私が許さない!てなわけで、明日の朝10時に駅前に集合ね。」

 

アディオス!!と警察官顔負けの敬礼をして、呼び止める間も無く櫛枝は昇降口の方へと走って行った。

 

教室に取り残された俺と大河は明日への不安を抱きつつ、少し肌寒い季節に似合わぬ体温の上昇を隠しきれないまま帰り支度をしたのだった。

 

 

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