インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第37話  立ちはだかる壁

 

 

 マドカにオウカを任せてタバネは隠されていたエレベーターを見つけてコンピューターをハッキングして操作し、地下に向かっていた。 無論監視カメラも偽の映像を流すように細工をした。

 そして最下層までたどり着き、幾つかの扉を過ぎた所に目的の場所、動力炉制御室に来た。

 

 

 「さてと、ぽちっとな。」

 

 手にしていた端末を操作して扉に設置されているパネルに触れると扉が音もなく開いた。

 タバネは部屋のなかに入るとそこにはタバネの予想していた通りの光景が広がっていた。

 

 

 「やっぱりあったね、コントロールシステム【メイガス】。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 防衛部隊を簡単に撃破し、城へと向かうシュート達。

やがて目的の城が見えた。

 

 

 「よし、上の城の部分は殆ど飾りで重要な施設は存在していないから、地下への入り口を探すよ。」

 

 そうシュートが告げた瞬間だった。 城から、高出力のレーザーが発射されてきた。 シュート達は難なくかわし、発射された方角を見る。

 そこには同じ形状の巨大な完全装甲型ISが3機いた。

 真ん中に2本の巨大な剣を持つ紅い機体、その両脇に右手に同じ形状の剣左手にレーザーライフルを持つ青い機体・・・・・ヴァルシオン、タバネのダミーの設計図を元にグローリーキングダムが開発した自称究極のISだ。

 

 

 「 我こそはグローリーキングダムのEmpress 。我等が王国に攻め入りし愚かなる者達に裁きを与えん。」

 

 中央の紅いヴァルシオン・・・ヴァルシオン・クリムゾンから聞こえてきた声はEmpress こと箒だった。 だが、その声は無機質で感情が一切こもっていなかった。

 

 

 「篠ノ之箒さん、大人しく投降しなさい。いくら犯罪者に成り下がったとはいえ、かつては同じ学舎にいた者をそう簡単に撃ちたくはありません。」

 

 刀奈が箒に降伏勧告をするが、箒からは一切反応はかえってこなかった。

 

 

 「・・・・・映像から予測はしていたが、やはり精神コントロールを受けているな。」

 

 「できれば思いたくはなかったね、どうにもならないの?」

 

 箒の反応から現在の状況を予測したシュートにシャルが尋ねる。

 

 

 「シャルロットちゃん、たぶん無理よ。 篠ノ之さんがグローリーキングダムに精神コントロールを施された以上、そう簡単に解ける代物じゃ無いはず。」

 

 シュートの代わりに刀奈が答え、シュートもそれに同意するように頷く。 

 一夏を刺し逃亡した箒は、その行動を監視していた光子の手により匿われ島へと連れてこられた。

  その時点で箒は重度の心神喪失状態にあった。 そんな状態の箒にアギラが記憶洗浄・改竄に薬物、催眠暗示等を用いてEmpress に仕立て上げたのだ。

 ただ通常と違い短期間で行った為に何かの拍子に元に戻らないとも限らないので、そのリスクを最小限に押さえる為に感情制御と自我抑制が施されており、今の箒はただ与えられた指示を忠実にこなす人形となっていた。

 

 

 「二人とも篠ノ之は俺に任せて他の二機を頼む。」

 

 シュートはそう刀奈とシャルに告げて箒のヴァルシオンに向かっていく。 刀奈とシャルは顔を見合わせて、左右のヴァルシオンにむかう。

 

 

 「さぁ篠ノ之、行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「どうしたサね、ブリュンヒルデ? 息が上がっているようだけど?」

 

 「くっ?!」

 

 相対する二人、アリーシャは右腕をブレードに左腕をガトリングガンを装備。 千冬は雪片を両手で構えている。

 そしてアリーシャの言う通り千冬の呼吸は荒かった。

 

 

 「ハァァァァァァーーー!! 」

 

 千冬は瞬時加速によりアリーシャに接近し、その手にしている雪片を振るう。そして当たる寸前で零落白夜を発動されて振り抜く。

 同じ武器を使ってもその錬度は千冬が遥かに勝っている。 ずっと発動させ続けて直ぐにエネルギー切れを起こす一夏、だが千冬は当たる寸前のみに発動させて振り抜いた時には停止させている。 これだけでもエネルギーの消耗をかなり押さえられるのだ。

 

 

 「甘いサね!」

 

 アリーシャは右腕のブレードを突き出して雪片の刃を刀身で反らしながら鍔の部分まで送る。 アリーシャの右腕のブレードは鍔の部分が十手のような形式になっており刃を受け止められるようになっている。 いや受け止めだけでなく

 

 

    ガチン!!

 

 鍔の部分で受け止められた雪片の刃をL時部分が

可動して挟み込む。 直ぐに零落白夜を発動させて刃を引き抜く千冬。 だが、隙が生まれてしまい至近距離から左腕のガトリングガンを食らう。

 

 

 「おやおや、どうしたサねブリュンヒルデ? 」

 

 アリーシャのビアンカネーヴェ・ロッソはリムのものとは違い対千冬用・・・対零落白夜用にチェーンされた機体だ。その為に徹底的にエネルギー系統の武器は排除され全て実弾系の武器に変えられていた。特に右腕に装着しているブレード【ネーヴェロンペネ】は対零落白夜用にある意味特化した武装だ。 

 刀身部分は対ビームコーティングされており、更に鍔の部分には刀身を挟み込み刃を折る機能がある。 

 そして完全装甲に近い形状にすることで装着者の負担軽減を計り、開発中止となったアリーシャが怪我する原因になったテンペスタⅡに匹敵する機動性を持つことになった。

 

 

 「くっ?!」

 

 機体のダメージを確認しながら距離をとる千冬。

 

 

 (エネルギーはまだ十二分にある。 だが何故だ? なぜならアリーシャに届かない?)

 

 千冬が持つ雪片弐式はIS本体とは別に剣その物にISコアを埋め込むことでエネルギーを別々の物にすることで、機体のSEを消費するという欠点をカバーした。

 いや、それだけでなくレプリコアを複数、機体に装備しラズムナニウムの制御とエネルギー源にし、ISコアとの相性の悪さを改善させた。 その事で機体性能は大幅にアップした。 そう機体性能は・・・

 

 だが、装着者の技量には開きがあった。

千冬に敗北してからというもの、ISの開発に携わりながらもストイックに鍛練を怠らず、怪我をしてからもリハビリと鍛練を欠かさず現役時代と変わらない・・・いや現役時代以上の技量と身体能力を有したアリーシャ。

 

 一方の千冬も引退後も鍛練を欠かす事はなかったが、IS学園の教師となってからは、その密度時間共に低下していた。 教師の仕事の傍ら時間を見つけてはやっている程度であり、精々身体能力(筋力&持久力)を維持する程度であり本人はあえて意識していなかったが、現役時代に競べれば技量や勝負勘、反射神経等はかなり衰えていた。

 

 アリーシャと千冬の間には実力の壁が生まれていたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 


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