「ハァァァァァァーーー!!」
千冬は手にしている雪片弐式を下段に構えたままアリーシャに向かっていく。
「相も変わらず突進? 少しは知恵をはたらかせたらどうサね?」
千冬の攻撃をいなそうとするアリーシャ、だがその直前で突如として千冬の姿が消えた。
「これは?! まさか!」
相手の直前で1回目の瞬時加速を発動し、左右どちらかに移動し視界から消えたように感じさせ、そのまま2回目の瞬時加速を発動し、相手の頭上まで飛び上がる。 そして3回目の瞬時加速を発動して相手に斬りかかる。
短時間そして短い距離で3度の瞬時加速を発動し、方向を変えながら攻撃するという荒業、千冬以外の何者にも会得出来なかった技・・・いや、装着者と機体にかかる負担が計り知れない為に誰も会得しようとは思わなかった技。
「フハハハハハハーー それを! それを待っていたサね!」
アリーシャは歓喜に震えていた。第1回モンドグロッソにおいて成す術もなく破れ去った技、リベンジを誓った第2回大会では、その願いも虚しく叶わなかった。
その夢にまで見た技が目の前で繰り出された。
自分に目掛けて振り下ろされようとしている剣、だが悲しいかなアリーシャの目から見てもその太刀筋は現役時代の物とは比べ物に成らないくらい衰えており、アリーシャにとって反応するには容易いものだった。
「 だがブリュンヒルデ、これはあたしが待ち望んでいた技には遠く及ばないサね!」
アリーシャは左腕のガトリングガンをネーヴェロンペネに変えていた。 そして
「そんな腑抜け剣であたしを倒せると思うな!!」
零落白夜を発動させた雪片弐式がアリーシャを斬り裂こうとした瞬間だった、突如アリーシャの姿が消えた。
「 な?!・・・・・・・・・まさか?」
何の手応えも感じなかった剣、そして目の前で起きた現象に驚く千冬。 直ぐに真上を見上げると、そこにはアリーシャの姿があった。
「・・・・瞬速三連瞬時加速だと?! 馬鹿な!」
自分以外には会得していない・・・いや、会得するはずが無い技を目の前で見せられる。
アリーシャはずっと考え続けていた千冬に勝つための方法を、そしてたどり着いた答えは瞬速三連瞬時加速を会得するということだった。
だが、それは容易な事ではなかった。 以前の愛機テンペスタでは機体性能等の理由により再現できず、テンペスタⅡでは会得まであと僅かにまで迫ったものの、技の難易度が機体に負担をかけてしまい事故を誘発してしまった。 この事故により右目と右腕を失った。
だが、それでも諦めきれずアリーシャはリハビリとトレーニングを続け、そしてビアンカネービィ・ロッソという機体を得た事で遂に会得することに成功したのだ。 いや、会得しただけではない!
「受けろクローチェ・デル・スド・スパーダ!!」
手にしているネーヴェロンペネをX字に交差させるように振るう。すると千冬にむけてX字の斬撃が飛ぶ、それを雪片弐式で切り払う千冬、だが
「そんな付け焼き刃の技など! なに?!」
ドガーーーン!!!
雪片弐式で切り払った瞬間だった、斬撃が爆発したのだった。
クローチェ・デル・スド・スパーダ・・・2振りのネーヴェロンペネから放たれたX字の斬撃、だがその実態は極限まで圧縮された風・・・EF4クラスのエネルギーを内包する竜巻である。ほんの少しかすっただけでも大きく抉りとる程の威力を持つ。 この技の真の威力を発揮するのはやはり直撃したときだ。 直撃した瞬間にその全ての力を開放して爆発する、むろんただ爆発するのでない。命中したポイントから全方位に拡散的に爆発するのではなく、命中したポイントの方向に向けて開放されるのだ。
「くっ!」
クローチェ・デル・スド・スパーダの直撃をうけた千冬、纏っているガーリオンも手にしている雪片弐式もかなりのダメージを受けていた。 だがガーリオンは直ぐにラズムナニウムによる自己修復が始まる。しかし雪片弐式は修復することはない、それどころか
ポキッン!!
「なっ?!」
刀身が根元から折れる雪片弐式、それを目にして動揺する千冬。 だがすぐさま雪片弐式を拡張領域にしまい新たにアサルトブレードを呼び出し体勢を立て直す。 いや、それだけにはとどまらない、千冬は無意識の内に更なる力を求めた。 そしてそれに応えたのは、
「アアアァァァァァァーーーー!!」
千冬の叫び声に呼応するかのようにガーリオンの・・・いやラズムナニウムが輝きだす。 そして
「セカンドシフト・・・・いやサ、報告にあった強制形態移行というやつ?」
アリーシャの目の前ではガーリオンが姿を変えていく。 その姿は禍々しく白かったボディーカラーは漆黒にかわり、スラスターはまるで蝙蝠の羽根のような形状になり、全体的に悪魔を想像させるような形状となった。 いや、変化はガーリオンだけに留まらなかった。ラズムナニウムはどういう訳か装着者である千冬にも侵食し千冬の肉体と精神に大きな変化をもたらしていた。
「グフゥゥゥゥゥゥーーー!! イチカヲタスケル! ジャマヲスルナ!」
「情けないサね、それがブリュンヒルデと呼ばれた女の姿かね? IS装着者としての誇りも矜持も無くしたのか。」
そんな姿の千冬に憐れむアリーシャ
「終わらせてあげるサね。」
アサルトブレードを構えて突撃してくる千冬にアリーシャは
「単一使用能力【テンペスタ・ロッソ】発動!」
単一使用能力を発動した瞬間、ビアンカネービィ・ロッソは深紅の嵐の球体に包まれる。 千冬の斬撃はそれに弾かれ、アサルトブレードは折れる。 そして深紅の嵐の球体は突如上下2つに分裂する。 分裂後に嵐の球体は消え、そこからビアンカネービィ・ロッソがそれぞれ姿を現す。 そう2機に増えた・・・いや単一使用能力により分身を生み出したのだ。
そして2機のビアンカネービィ・ロッソはガーリオンを
「「ウーノ!」」
2機は瞬時加速を使い同時に、上からは右肩から胸をへて左腰に向けて斬り下ろし、下からは右腰から背をへて左肩へ斬り上げる
「「ドゥーエ!!」」
再び瞬時加速を使い同時に、今度は上からは右肩から背をへて左肩へ斬り下ろし、下からは右腰から胸をへて左肩へ斬り上げる
「「トレ!!!」」
正面と背後からガーリオンに向けてクローチェ・デル・スド・スパーダを放つ。 千冬は避ける間もなくそれをまともに喰らう。
「「インフィニート・テンペスタ・ロッソ!!!!」」
正面と背後から同時におこる爆発、やがて爆煙の中から落下していく人影・・・千冬。
纏っていたガーリオンは見るも無惨に砕け散り、影も形もなかった。 そのまま眼下にある貯水地に落ちていった。
「さらばブリュンヒルデ。」
アリーシャはあえて千冬の生死を確認せずにその場を後にした。