インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第40話  甦る感情

 

 

  薄暗い部屋の中に無数に横たわって並ぶ白いカプセル。 その1つが音もなく開く。 

 そこには緑色の液体に浸かる裸の女性。 やがて女性は目をあけるとカプセルの縁に手をかけて液体の中から起き上がる。 全身から緑色の液体を滴らせながらカプセルから出て立ち上がり、そのまま何も纏わない状態で自らの体を観察する。

 

 

 「・・・・・クローニングももはや限界か・・・はやくあれを手に入れなければ。」

 

 そう言って女性は壁に向かって歩き、壁の一部に手を触れると壁が開き、中から下着や服が現れる。

 

 

 「それにしても、まさかいきなり死ぬなんて予測していなかったわ。それにしても誰かしら、あんな真似をしたのわ。どちらにせよ、あの場所には戻れないから、ここで見守るしかないわね。」

 

 女性は着替えながら、そう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「カタパルト・キィィィック!!」

 

 

   イ・・・ヤ・・・・・・・・ダ

 

   タ・・・・・・・ス・・・ケ・・・・・・・・・テ

 

   コ・・・・・ワ・・イ・コ・・・・・・ナ・・・イ・・・・・デ

 

 

 リュミエールのカタパルトキックがヴァルシオン・クリムゾンに命中した。

 

 

 

  シニタクナイ!!!

 

 

 

 

 ヴァルシオン・クリムゾンの腹部をリュミエールが貫いた次の瞬間、ヴァルシオン・クリムゾンに異変が起きる。

 全身から赤黒い光を放ち、そして腹部の穴が塞がっていく。 いやそれだけでは終わらなかった。

 

 

 「シュート、これって・・・」

 

 「あぁ、たぶん強制形態移行だ。」

 

 「でも、福音の時とは何か違うけど・・・」

 

 刀奈とシャルがシュートに尋ねる。 シュートが答えようとした瞬間だった、ヴァルシオン・クリムゾンに変化が、そうシュート達にも思いもよらない変化が。

 

 

  「「「なっ?!」」」

 

 10m程あった巨体は更に一回り、いや二回りも巨大になり、更にその姿も重厚な装甲に覆われた無骨なものへと変化した。それだけでなく、胸部からまるで異物を吐き出すかのように箒を押し出して、機外に放り出した。 それを見て慌ててシャルが箒を回収に向かう。

 

 

 「シュート、いったい何が?」

 

 「わからない何故、篠ノ之を機外に放り出したのかも・・・・」

 

 シュートと刀奈は突然の事に戸惑った。 有人型ISが装着者を排除するなんて前代未聞の出来事なのだから。 

 この事態を引き起こしたのは他ならぬヴァルシオンクリムゾンに搭載されている3基のブレインモジュールなのだ。 本来なら箒の動きを補佐するはずなのだが、GAMEーSYSTEMとリンクしているブレインモジュールからの最適な行動パターンと箒の動きに起きる擦れ、それは負荷となってブレインモジュールに蓄積されていった。

 負荷はやがてストレスとして、部品となった時点で喪われた脳の機能・・・感情を僅ながら呼び覚ました。

 3基のブレインモジュールは、リュミエールから放たれたカタパルトキックをヴァルシオンのハイパーセンサーと箒の視覚を通して認識した瞬間に恐怖という感情、そして死にたくないという生への執着心を呼び覚まし、遂にはヴァルシオンを支配する事になったのだ。

 

 3基のブレインモジュールは直ぐ様、行動を開始した。 ラズムナニウムを使い破損箇所を修復し、自分達が最適に動けるようにヴァルシオンを形態移行させた。 更にGAMEーSYSTEM に掛けてあるリミッターを解除し、その機能を最大限に発揮出来るようにした。

 そして最後に自分達にとって最も不用な部品・・・装着者、箒を排除することにしたのだ。 

 この様な状況、誰も予測することは出来なかった。

 

 

 『クロスマッシャー』

 

 胸部装甲が展開し放たれる高出力のエネルギー波がシュートと刀奈を襲う。 

 

 

 「グラビディテリトリー展開!」

 

 回避が間に合わないと判断したシュートはグラビディテリトリーを展開してクロスマッシャーを防ぐ。

 

 

 「シャル、流石に篠ノ之をこの周辺に置いて置くわけにはいかない、悪いけど彼女を厳重に拘束してから一度スチールキャットに戻って特別室に隔離しておいて。」

 

 「わかったよシュート。気を付けてね。」

 

 そう言ってシャルは気を失っている箒をワイヤーで拘束してスチールキャットに向かう。

 

 

 「シュート!」

 

 「いくぞ、刀奈!」

 

 二人はヴァルシオンクリムゾン改にに向かって攻撃を開始する。

 

 

 「蒼流弾!」

 

 凰姫の周囲に浮かんだ無数の螺旋状に渦巻く水の塊はヴァルシオンに向かって放たれる。 命中すると装甲削りながら食い込み爆発する。 そして左腕に装着されている楯から剣を抜くと

 

 

 「幻影舞踏!」

 

 背中の翼を広げた瞬間、その姿が消える。  そして無数に別れた凰姫がヴァルシオンを斬りつける。

 

 

 「日、吹、巳、世、意、夢、南、弥!」

 

 八方から斬りつけ終えた凰姫はその頭上に姿を現し剣を掲げて一気に振り下ろす。

 

 

 「終演の一太刀!」

 

 剣から放たれた高圧水流はヴァルシオンを両断する。

 

 

 「?! ラ? £%$&§Åヰ∂!」

 

 言葉にならない叫びを上げながら左右真っ二つに両断されたヴァルシオン、そのまま切り離されそうになったが、ラズムナニウムが修復を開始する。 左右に別れた機体を繋ぎ止めようと、細い糸のようなものが、機体の隙間に出てきて再び1つにしようと引き合う。

 

 

 「悪いが、追撃させてもらう! アーム・リンク、開始!」

 

 重力波を両手に纏わせてヴァルシオンに殴りかかる。

右ストレート、左フック、そして右アッパー。 

 リュミエールの10倍近い巨体が宙に舞い上がる。

 

 

 「まだ、終わりじゃないぜ。 AMボクサー、パージ! スラッシュ・モード、起動!」

 

 リュミエールの纏っているAMボクサーがパーツが離れ変形し、剣のような形状となり、その上にサーフィンするかのように乗る。 ヴァルシオンの周囲を旋回しながら頭部バルカンで牽制する。 そして少し距離を取ったところでヴァルシオンめがけて直進する。

 

 

 「フィールド展開! グラビディー・ソード・ダイバー!!」

 

 剣の先端部が光を覆われ加速する。リュミエールがジャンプして離れ、ヴァルシオンに突撃する。

 

 

 「?!! $&§$%&Åヰ$!!」

 

 Gソードダイバーにより、今度は腰の部分から上下に両断されたヴァルシオン。 修復が終わらない内に両断されたことで、左右に別れるのを引き留めていた糸が失われ4分割された形になる。 再びラズムナニウムの力で修復を開始し、銀色の糸のようなもので繋ぎ止めようとする。

 だが先程までと違い繋ぎ止めようと、4分割された機体を1つにしようとする力が弱い。 凰姫とリュミエールから与えられたダメージはおおきく、GAMEーSYSTEM にレプリコア、更に3基のブレインモジュールにもダメージを与えていた。

 刀奈とシュートの攻撃、感じるはずのない体が両断される傷み・・・幻肢痛を引き起こし死を認識させた。そして死を認識した2基のブレインモジュールは機能停止・・・壊死したのだ。 

 3基で起こなっていたことが一基となり処理能力が落ちた。 それでも残りの一基は必死になって制御しようとする。

 

 

 イ・・・ヤ・ダ・・・・・シ・・・・・ニ・・・タ・ク・ナイ・・・・・

 

 「刀奈! 力を貸してくれ、一気に決める!」

 

 「わかったわ!」

 

 「AMガンナー!」

 

 リュミエールに再びAMボクサーを装着したシュートは、AMガンナーを呼び出した。そして呼び出されたを見て刀奈は何をするのか理解しAMガンナーに乗る

 

 

 「ライドオン。コントロールシステム受諾。バイパス接続、エネルギーチャージ!」

 

 更にAMガンナーの背後にリュミエールが取りつきボクサーアームがAMガンナーを固定しコードが繋がる。

 

 

 「リミッター解除、エネルギーバイパス接続。フルチャージ!!」

 

 凰姫とリュミエール、2機のエネルギーがAMガンナーにチャージされる。

 

 

 「エネルギーチャージ完了、ターゲットロックオン!トリガー開放、シュートタイミングはまかせるわ!」

 

 AMガンナーの後部に表れたトリガーをリュミエールの手が握る。

 

 

 「いくぞ! ハイパー・フルインパクト・キャノン、デッド・エンド・シューーート!!!」

 

 4門のGインパクトキャノンから放たれた重力波は福音を撃墜した時とは比べ物にならない程の威力だ。

 重力波の帯はヴァルシオンに命中する。 ヴァルシオンは漆黒の重力の球体に包まれる。 球体は徐々に小さく圧縮されていく、それに伴い内部のヴァルシオンも圧縮変形していく。

 

 

   シ・・・・・・・ニ・・・・タ?!

 

  ドガァァァァァーーーン

 

 やがて極限まで圧縮されるとヴァルシオンは爆発して完全に破壊されチリ1つ残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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