1 プロローグ
「そういえば、防具もいつも青だよね」
親友と服の話をしていた時だった。
彼女は、ハンターではない。
私がハンターになる前からの親友だ。
ありがたいことに、ハンターとして忙しく過ごしているが、時々、都合を合わせては彼女のところに遊びに来ている。
遊びにといっても、専ら、尽きない話に花を咲かせるだけではあるけれど。
そんな時は、ハンターではなく一人の女性としていたって普通の格好をしている。
ユクモ出身の私だけれど、各地を飛び回っているお陰で、色々な服を見て選ぶことができるのは、オシャレも好きな女性としてもしあわせなことだ。
最近はこのところメインの拠点となっていたベルナ村のものがお気に入りで、今日も龍歴院のテイストを私なりに取り入れたベルナ風の水色のワンピースを着ていた。
彼女はいつもピンクなどを中心にかわいらしい格好をしている。
抑えめだが、何色も使ったパステルトーン。女の子らしい。
そんな彼女に言わせると、常に青系のワントーンでまとめている私の服は、『あり得ない』らしい・・・。
そうは言われても、私は寧ろ多色使いが苦手なのだ。
そして、固執しているといってもいい程、青が好きで青いものばかり着ている。
そこで、先程の彼女の言葉が出てきたのだ。
彼女はドンドルマの近郊に住んでおり、私がハンターとしてドンドルマに来た時にも時々顔を見に来てくれる。
その為、彼女と会う時に防具を着けていることも少なくないのである。
「そうだねぇ。青って落ち着くし、私は安心するんだよね」
「ふーん。赤とか、金や銀の方が強そうだけど・・・」
実際、銀や金のリオレウス・リオレイア希少種の装備は、防御力も高く強力なスキルも付けやすい。
「蒼レウスとも呼ばれる、リオレウス亜種の防具の方が好きなの!」
そう言って、ちょっとふくれてみる。
「えー!リオレイア亜種のピンクの方がかわいいじゃん!!」
と、彼女は言って笑いだした。
「桜色ね」
私も軽く訂正しながら、笑った。
私というハンターの友人がいるだけで、彼女は一般市民なので言わないが、スキル構成的にレウス亜種の方が私の愛用する双剣と相性がいいのだ。
私は常に装備の見た目にもこだわらずにはいられない質の様で・・・。
防御力や攻撃力を多少犠牲にしてでも青系にするし、好みに合わな過ぎれば、どんなに強力でもその武器はまず選ばない。
逆に好みの色や形なら、要らないスキルが付いていてちょっとお高い武器でも作ってしまった事もあるくらいである。
見た目縛りだと笑いながらも、ハンター仲間もそんな私に色々アドバイスをくれる。
リオレウス亜種の防具を教えてくれたのも、先輩ハンターの一人、シュナさんだった。
少々辛口だが、ベテランハンターとしてとてもありがたいアドバイスをいつもくれる。
私はハンターになったのが遅く、ハンターの中ではあまり若くはない。
故にハンター歴が浅く、年齢にみ合う程の腕も知識もない。
結果、常に若い先輩ハンター仲間にアドバイスを貰ってばかりの日々である・・・。
その中でもいつも快く相談に乗ってくれるのが、若くてかわいいスズナと笑いを忘れない紳士なマコノフさんだ。
彼らは、まだまだ経験不足な私では荷が重そうなクエストにも、快く付き合ってくれるし、
「何事も経験!経験!」
と、事もなげに言ってくれては、ちょっと私には難しめなクエストに連れて行ってくれる。
などと、挙げ出したらキリがないほど、たくさんの仲間に恵まれている。
ちょっと話がそれた。
話を戻そう。
少し前、技術の進歩とハンターランクが上がったお陰で、防具の色が(ものによっては僅かな部分だが)一部、好みの色に染め変えられるようになった。
今、愛用しているユクモに近郊に埋まっていたご先祖の遺産、ユクモらしい鎧武者の様な桐花装備。
ユクモ温泉の番台さんに、依頼達成のお礼として頂いたのだけれど。
元々の
金は高価なので、散々勿体ないと言われたけれど、肌に合わないし、いかんせん鮮やか過ぎて派手ともいえる金色が苦手だったのである。
変えられるようになって早々、『勿体ないよ』と渋る武具屋のお兄さんに頼んで、金をはがして青い色に染め変えてもらった。
武具屋のお兄さんははがした金を、
「勿体ないから、持って帰りなよ」
と言ってくれたけれど、今日のようなオシャレをした時のアクセサリーにもできない以上、無用の長物なので丁重にお断りした。
ユクモの加工屋のおじいちゃんに頼むのは、あまりに心苦しくて、龍歴院の武具屋のお兄さんに頼んだのだけれど、気を遣って染め変え代をディスカウントしてくれた。
いつも、体質の所為もあるとは言え、無茶を聞いてくれるハンターズギルドの武具屋さんたちには、特に感謝している。
そういえば、一度だけ、大先輩シュナさんが色まで気遣って紹介してくれたおススメ装備を、強く断ったことがあった。
どうしても、その色の組み合わせが我慢できなかったというか、気持ち悪くて耐えられなかったのだ。
それは、水色がかった青に、所々オレンジが入ったラギアクルスの装備だった。
今思い返してみても、何故なのか解らない。
何故あんなに嫌悪したのか・・・?
元々、オレンジは何故か好きじゃない。
暖色系自体苦手なのだけれど、赤やピンクよりも苦手だ。
だが、青とオレンジの組み合わせへの嫌悪感は、その比ではない。
青はとても好きなのに・・・。
『何がそんなに嫌なんだろう?』
考え出したその日から、急に気になりだした。
なんだろう?
何だか妙にそわそわする。落ち着かない。
心の中が、ぐるぐるし始じめた・・・。