あおを荼毘に付して、ひと月が経とうとしていた。
傷口が塞がりつつあった
蒼火竜の里は、この島国の中でも有数の温泉地であり、傷ついた体にもよく効くとされていた。
未だに左腕は思うようにはほとんど動かず、右手も小太刀を自由に振るえるとは思えない状態であった。
竜人族の娘に手伝われながら身支度を整えたころ、すっと襖と呼ばれる間仕切りも兼ねた引き戸が開いた。
心配してくれているのか、蒼火竜に留まってくれていた。
「話・・・。良いか?」
「どうされた?」
笑顔を見せて、
「・・・うむ・・・。
困ったようにも遠慮しているようにも見える表情で、
「その・・・。蒼火竜の国を轟竜から守った
思案しながら、
「ふむ・・・。何か往かねばならぬ事情がないのであれば良いのではないか?」
「それは!
勢い込む
「? ・・・私は、命を救いあおとの・・・別れの時間を与えてくれたことに誠に感謝しておるし、恩を感じてもおる。そんな貴殿には、心ゆくまでゆっくりしてもらい、一生かけてでも恩を返したいと存ずるのだが?」
「そうか・・・」
そんな
「そう言えば、あの時何度か噂と言っておられたな?」
「あ・・・。ああ」
わずかに困ったように答える
「噂とは何ぞ?」
若干焦っているような
「あ・・・、ああ。あれは・・・」
「?」
「あ、いや。その何だ。我はここより西の方から参ったのだが、『
「何故(なにゆえ)!?」
驚く
「人の子でありながら、生まれた時から竜である蒼火竜に愛されし
「!!!」
途端に胸が苦しくなって、涙ぐむ
と、同時にほんの一瞬だったが、濃い橙色に走る青い縞模様が頭をよぎって消えた。
「ご存じなかったか?」
「いや、全く・・・」
「そうか・・・。 そのような者は他に聞いたことがない。広く知れ渡るほどに、稀有な存在でござる」
涙が落ちる。
「そ、そんな!とんでもない! ただの藍染屋の小娘ぞ・・・!」
「そう謙遜召されるな。皆言って居ったぞ、一度会うてみたいものだ、と。我もその一人であった」
言ってから、
「?」
袖で涙を拭って、しばらく考えていた
「それ故あんなところにおられたのか」
「そう多くの武将を存じてはおらぬが、
一人納得しながら更に続けた。
「ただ会うてみたいと思うてくだされただけ故、危害を加える気もなく、むしろ助けて下されたのじゃな?」
「・・・ま、まあそうだ・・・」
更に困ったように
「? ・・・気分を害されたか? ・・・!どこか具合の悪いところがあるのではあるまいな!?」
「ない!」
「顔が赤うござる。熱でもある・・・」
「ない!!」
叫ぶように
「ご免!!」
と言うなり、
「
すぱん・・・。ぱしん。
「・・・?」
一人残された
涙は止まっていた。