青と藍と蒼と碧   作:藍澤 碧

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15 青と藍と蒼と碧と橙?

「というか、だ」

突然、マコノフさんが少しかしこまった声で言った。

「物凄く気になるけど。物凄く気になるけど、今はメソさんの、青好き、オレンジ嫌い、青とオレンジの組み合わせ嫌いの話の方が大事なんじゃないか?」

思わずキラキラした目で、マコノフさんを見てしまった。

“マスター・ネコノフ”を密かに名乗っているネコノフが、慌てて同調する。

「そうだニャ!その為に、その本を借りてきたんじゃなかったかニャ!?」

「そうニャ!!何か、やたら橙色のティガレックスが出てこなかったかニャ!?」

ムァも便乗する。

 

「そういえば、藍メソ。ティガもジンオウガも苦手よね」

話題が本題に戻ってホッとしたのも束の間、シュナさんの辛口が刺さる。

「う・・・。ティガもジンオウガも苦手だね・・・、確かに・・・」

「でも、ジンオウガ好きだよね?かっこいいって・・・あ」

スズナがフォローしようとして、止まる。

話題が戻りかねないからだろう。

「助けられたから、余計カッコよく見えるのかもしれんね」

マコノフさんがさらっと、流すように続けてくれる。

「問題はオレンジと、オレンジと青の組み合わせだもんね」

慌て気味のスズナが畳みかける。

「うーん。橙色って、オレンジのことなんだろ?」

「うん、そう」

「オレンジのヒプノックは克服してそうな気もするんだが・・・?」

マコノフさんが首をひねる。

「それは蒼火竜がいたからでしょう?」

シュナさんがいつもの調子に戻って、さくっと言う。

「う。・・・確かにそれもあるし、鈴菜(すずな)さんを捕らえられて、ムカつくとか思っているのかも」

私の言葉に、ちょっと照れくさそうな、悔しそうな複雑な表情のスズナ。

「スズナがヒプノックごときにやられるとは思えないけどね」

すぐにフォローのような本音を付け足す。

「まぁ、オトモに手を出させなかったみたいだしね」

自嘲気味に笑うスズナに、オモチが小さくなって言った。

「何かすまんニャ・・・」

「オモチじゃないし、御餅(おもち)さんもしっかり足止めしてたじゃない」

思わずフォローしてしまう。

「忍の雪崩(なだれ)さん、大活躍だったね」

そのくせ、余計なことも言ってしまった。

「・・・あ、そういえば、御餅さんは筆頭オトモだったね」

慌ててフォローっぽいことを付け加える。

 

「多分、今の藍メソはヒプノックも苦手でしょうね。イャンクックとかも苦手だし」

「うん、苦手。というか、苦手じゃないモンスター・・・、最近増えているゴア・マガラとかかな・・・?」

「それも面白いよねー。そうそう遭わないのに」

スズナの一言にみんな一斉に笑う。

「そのトンチンカンぶりは、この藍瑪蔬(あいめそ)さんからも垣間見えるよね、心配性とかもそうだし」

うう――。シュナさんの一言一言が、的確過ぎて刺さる・・・。

「トンチンカンって、おまっ・・・」

マコノフさんが絶句した。

「フィーリングハンターだから、フィーリングが合うのか何とかなっちゃうのよね」

そう言ってちょっと笑う私に、スズナが続けた。

「この藍瑪蔬(あいめそ)さんもフィーリングハンターだって、書いてあったね」

 

 

「ということは、何だ。メソさんの祖先の藍瑪蔬(あいめそ)さんは、仲間を危機にさらしたオレンジのヒプノックが許せず・・・」

マコノフさんの言葉にスズナが続ける。

「大事な蒼火竜・あおさんと自身の自由を奪ったオレンジと青のティガが許せない。それをどこかで思い出すから、不快に感じるのかな?」

「恐怖感もあるんじゃない?自分や大事なものを脅かされるっていう」

シュナさんはさくりと言った。

「う・・・。そういうのもありそう。あと、『金色(こんじき)の鎧』は多分、桐花のことだよね」

「ね!出てきたね!」

スズナが好奇心からか、興奮気味に言う。

「うーん?でもそれ、『東の果ての島国』から持って、流れ着いたのかね?」

首をひねるマコノフさん。

「あ、そっか・・・。じゃ、流れ着いた人達が、言い伝えに基づいて作ったのかな?」

私の言葉にシュナさんが応える。

「なぜ、埋まっていていたにしろ、お守りみたいなものだったんじゃないの?」

「なるほど!! 持ってきたにしても、作り直したにしても、自分たちを守ったご先祖さまの象徴なんだもんね!」

スズナが納得したように言った。

「『藍瑪蔬(あいめそ)』さん、凄いなぁ・・・」

「いや!あんただよ!!」

「ええ!?」

とぼけた言葉になってしまった私の本音に、マコノフさんがツッコミを入れる。

「少なくとも、メソさんの直系のご先祖様でしょ!?」

スズナも言う。

「えっ!でも、私こんなに凄くない・・・。それどころか直系の子孫だなんておこがましいよ・・・?」

困惑する私に、シュナさんが言う。

「凄いかどうかは別として、そのすっとぼけた感じがどう考えても、直系の子孫でしょ!」

「シュナ・・・。それ、けなしてるの?メソさんを」

マコノフさんが呆れ気味に、(たしな)めるかのように言ってくれる。

「え?けなしてなんかいないわよー」

「あはははは・・・」

困った笑いしか出てこない・・・。

「もう、シュナってば、メソさんには厳しいんだから・・・」

スズナも呆れ気味に言った。

「そう?」

相変らずケロリとしているシュナさんに、マコノフさんが驚いて言う。

「自覚ないのかよ!?」

「あはははは!朱納(しゅな)姫さんとは鼓舞の仕方がちょっと違うみたいね」

私の言葉に、またマコノフさんが驚いて反応する。

「前向きだ!!」

みんな、一斉に笑いだした。

「そりゃそうよー。それしか取柄ないもの!ふふふ」

そう言う私に、マコノフさんは笑いながら言った。

「よく言うよ~!『金色(こんじき)の鎧』作られちゃったくせにー」

「うーん。それねぇー。私なら金箔貼りはあんまり嬉しくないんだよね、多分」

私は笑いを引っ込めて、言った。

「なんで? その時代でも、貴重で高価だったんじゃない?」

そうスズナは言うけれど・・・。

「それはそうなんだろうけど、そんな大それたことをしたつもりはないだろうし、あおさんを失うわ、自分は大怪我を負うわで、情けなかったと思うんだよねぇ・・・」

「自分の不甲斐なさを感じるのも嫌悪感の原因かね」

マコノフさんがいう。

「あはは・・・」

渇いた笑いが出る。

「俺は、全然不甲斐ないとは思わないんだけど」

マコノフさんは、言ってくれるけれど・・・。

 

 

「むぁさんの言ってた『絆を築くことのできる力・・・お心』や『あお殿やむぁを惜しみなく愛してくにゃさる姿』には、多少、自負はあったと思うの」

「うん」

マコノフさんが相槌を打ち、みんな頷いている。

「ただ、国や郷や民を守ったとは言えない程、深手を負っているし、本当に不甲斐ないという表現がしっくりくる位、自分の力のなさを痛感していたと思うんだよね・・・」

「うぅむ・・・」

唸るマコノフさん。

「自分にとっても大切な蒼火竜・・・あおさんを失ったことは、蒼火竜の国?郷?や民にとっても大事なものだった訳だし、ましてや、あおさんのご両親って言い方も何だけど、親の蒼火竜と出てこないけど桜火竜に対して申し訳ないというか、合わせる顔がないと思っていたと思うのよ・・・」

「ほぉう」

少し納得してきた様子のマコノフさん。

「だから、『金色(こんじき)の鎧』は違うと思っていたと思うし・・・。そりゃ、民の謝意はありがたかったと思うけど・・・」

「ふむ」

マコノフさんが相槌を打ってくれる。

「脳裏に焼き付いたオレンジと青は、悔しさと自分の情けなさと、申し訳なさと・・・。シュナさんの言う、大切なものを脅かされる恐怖感の象徴として、今の私の嫌悪感につながるのかな?と・・・」

「うーん」

唸るスズナ。

納得しつつあるマコノフさんは、一人頷いている。

 

 

シュナさんが疑問を口にする。

「嫌いなものの理由は、そうなのかな。・・・じゃ、青好き・・・というか、こだわる理由は何だろ?」

「うーん。それねぇー」

「うん、うん!」

興味深そうな様子のスズナ。

「単純にこの『藍瑪蔬(あいめそ)』さん自身が青好きだったのもあるし、藍染の魅力に取りつかれていると言ったらおかしいけれど、藍から出る青も色々あるから、そういうのもあると思うの」

「うん」

今度はスズナが相槌をくれる。

「でも、こだわる理由は・・・、・・・あおさんに対する執着がある気がするの・・・」

「執着?」

少し驚いた様子のスズナ。

「執着ねぇ・・・」

シュナさんも唸る。

と同時にマコノフさんも口にしていた。

「執着かぁ・・・」

「ぷ。ハモってる・・・。ははは」

思わず笑う私。

ムァが口を挟む。

「自分の所為で失った、あおさんへの執着ニャ?」

「そう。うーん・・・。これも、悔しさと情けなさと申し訳なさ・・・かな。勿論、深い愛情故のものだとは思うんだけど・・・」

「ふむ」

マコノフさんが納得しつつある様子の相槌をくれる。

 

「ある意味・・・、言い方は悪いかもしれないけれど、怨念みたいなものを受け継いでるんじゃないかと・・・」

「怨念!?」

スズナが声を上げる。

「まぁ、そう言うと大袈裟だけど、『藍瑪蔬(あいめそ)』さんの執着を受け継いじゃったところもあるのかなぁ・・・?と」

「なるほどなぁ・・・」

納得したようなマコノフさん。

 

 

「それも私で終りにしたい気もする。あはは・・・」

「ええ!?」

スズナが驚いて、大きな声を上げた。

「いや、変な意味じゃなくて、執着から解放してあげたいだけ」

そう言う私に、シュナさんが言った。

「あんたが打破しなさいよ」

「あは・・・。そうできればいいのかもしれないけれど、青好きも、オレンジ嫌いもやめられそうにないから・・・」

「うぅーん。何百・・・何千もの代を越えて現れた特徴が、桐花と出逢わせたのか?」

マコノフさんが唸りながら、口にする。

「そうかもしれないね。だからこそ、無理矢理打ち破ったり拒否したり否定したりしないで、甘んじて受け入れて、昇華させてあげたい気がするの」

「なんかちょっとロマンチック・・・」

何かに浸っているかのようなスズナ。

 

 

「ふーん。なるほどね・・・。で?黒鷹(からす)って、誰よ?」

シュナさんが、唐突に言い出した。

「ええっ!!?そこ!?そこへ戻るの!?」

困惑する私に、さらりと言う。

「そりゃそうよ。みーんな、気になってるんだから!」

「えー。もういいじゃないよぉ・・・」

困る私を、楽しそうにシュナさんは見ている。

メロまで、ちょっとニヤニヤしているように見える。

ムァは小さくなった。

思い出したように、スズナが興味深そうな視線を投げてくる。

正面のマコノフさんやネコノフも、遠慮がちながら気になって仕方ない顔をしている。

オモチはなぜか、無邪気な笑顔で私とムァを交互に見ている。

 

私は、誤魔化すように立ち上がって、後ろに並んでいる椅子に置いてあったバッグに書物を丁寧にしまう。

「えっと・・・」

じ―――っ。

みんなの視線が痛い・・・。

 

「・・・あ!スズナ知ってるよ!何回か一緒に狩りに行ってる・・・!」

「ええ!?・・・ええ?・・・誰?」

困惑するスズナには悪いけれど・・・。

「じゃ!ごめん!!」

私は、慌ててシュナさんから逃げるように走り出した。

ムァがすかさずドアを開ける。

「スズナに聞いて~~~」

そう叫ぶように言いながら、マコノフさんの家を飛び出した。

ムァも再びドアを閉めて、一緒に走り出した。

シュナさんの

「ちょ!待ちなさいよ――!」

という声が聞こえなくもなかったけれど、全速力で走って、大急ぎで出発直前だった飛行船に飛び乗った。

 

 

 

 

 

 




“マスター・ネコノフ”
については、湯先生の『モンスターの生態』の「オトモの秘密」をお読み頂けると助かります。
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