「おおおぉぉぉぉぉぉぉええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」
ユクモからの帰り。
いつも通り、飛行船で乗り物酔いしたマコノフさんを家まで連れて行き、休ませた。
その30分程の間に、シュナさんを呼びにスズナが出かけ、マコノフさんのオトモ、ネコノフがお湯を沸かしてお茶の用意をしてくれる。
私は、イスに座ってテーブルに置いた書物を撫でながら、ぼんやりと眺めていた。
村長から借りたその書物は、当然といえば当然のことなのだが、とても古いものの様で、表紙の端は少し擦り切れているし、中身の含め全体が黄ばんでいる。
バン!!!
「!!?」
驚いて振り向いた私に、道々事情を聞いていたらしいシュナさんが、入ってくるなりニッコニコしながら言った。
「藍メソ~~~、私、ちゃんと覚えてるわよぉ―――。ラギアの装備教えたの!」
「えぇ~~~! 忘れてて欲しかったぁ―――」
半泣き半笑いで応える。
「あはは!別に気にしてないわよー!」
「ホントに?」
「ホント!本当!! それより、そっちの方が気になるわよー!」
そう言ってシュナさんは、私の手元を指差した。
「シュナ、うるさい・・・」
マコノフさんがベッドの上で起き上がった。
「何よぉ。マコノフだって、気になってるんでしょう?」
「ご主人!少し落ち着くニャ!」
そこへ、スズナのオトモのオモチとウチのムァを連れて、シュナさんのオトモのメロが現れた。
「む!メロだって気になって付いてきて、オモチ君とムァ君呼びに行っちゃったじゃないの!」
呆気に取られて、目が点状態の私を置いて、シュナさんはなんだかとても楽しそうに興奮している。
「シュナ・・・。頼むから、もう少し、静かに喋ってくれ・・・」
まだぐらぐらするのか、頭を抱えたマコノフさんに言われて、シュナさんは舌を出した。
「べー」
さすがのスズナも、放ってはおけなくなったようで、なだめだした。
「シュナぁ。メソさん、固まってるよ・・・」
こちらを振り向いたシュナさんが、私の目の前で手をひらひらさせた。
「藍メソ―――。 ジンオウガに雷やられも殴られもしてないよ―――!」
しょっちゅうそうやって、星を飛ばしてフラフラしている私をからかうようにシュナさんは言う。
「あー、うん。でも私、今、耳栓付けてない・・・」
思わず出たマヌケな一言に、一瞬全員が固まった後、大爆笑された。
「はっはっはっはっは! シュナ!あんた、リオレウスだったんだな!」
そう言って面白がっているマコノフさんに、爆笑していたシュナさんが言い返す。
「失礼ね!私は、レディよ!!」
「じゃ、リオレイアニャ!」
これまた、大笑いしているメロに面白そうに言われて、シュナさんはメロを小突く。
「シュナ、火竜だったんだ!!あはははは!!!」
スズナも笑いスイッチが入ったようで、笑いが止まらない。
「カップが割れちゃうじゃニャいか!?」
慌ててティーセットをテーブルに置いたネコノフが叫ぶ。が、ネコノフも笑っている。
オモチは転がって、床をペシペシしながら大笑いしている。
パタン。
「ご近所迷惑ニャ・・・」
私のマヌケな発言に慣れ切っているムァが、それでも精一杯冷静を装って、開けっ放しになっていたドアを閉めた。
やっぱり、ドアの前で笑いを堪えるように、口を押さえて肩を揺らしている。
みんなでひとしきり大笑いした後。
笑い過ぎて痛くなったお腹を押さえながら私の左側にスズナ、書物を覗き込みながら右側にシュナさん、向かいにマコノフさんが座る。
ネコノフが用意してくれたティーセットでお茶を淹れてくれるマコノフさんは、やっぱり紳士だと思う。
乗り物に乗れないマコノフさんに合わせ、度々ここに集まる為、マコノフさんの家には大きなテーブルセットだけでなく、更に何脚も椅子が用意されている。
「あー、お腹痛い」と言いつつも、まだ笑いが止まらないスズナは、むしろ苦しそうだ。
書物を受け取ってから、妙に神妙な気持ちの私をよそに、皆楽しそうである。
オトモたちも、ぴょんぴょんと自分のご主人の隣に座った。
ムァは、空いているマコノフさんの左側、オモチとの間に座る。
私につられているのか、少しおとなしい。
お茶を頂いたりして全員が落ち着いたところで、そっと表紙をめくる。
すかさずシュナさんが覗き込む。
「ユクモ・・・に・・・?」
「『ユクモに伝わる』」
「私読めない!藍メソ、読んで――!」
「うん」
古い言葉遣いで、古い表記で書いてある。
これは、この手の文学好きか、ユクモの人ぐらいしか読めないだろうな。
「『ユクモに伝わる、
「言い伝えなのか・・・」
とマコノフさん。
「伝承ってそういうものじゃない?」
「そっかぁ」
「続きいくよー。 『人同士の戦いが絶えなかった時代―――――――――・・・』」
私は、書物を声に出して読み上げていった。