今回は九郎メインです。
〜莉緒side〜
「──さて、冗談と遊びは終わりにして何する?」
未だ寝転がったままの九郎が聞いてくる。
その“冗談”と“遊び”という単語に反応したイヴと千聖に俺は睨まれた。
……別に俺が悪いわけじゃないのに。
「何するって……。何かしたい事ある人、挙手」
別にしたい事なんてある筈ないので周りにいるメンバーに振る。するとイヴが元気に手を上げた。
「はい! しりとり何てどうでしょう?」
「お、いいねイヴ。しりとり。やろうよ莉緒」
興味を持った九郎がベットに座っている俺を見上げてくる。
「時間潰しの代表的な遊びね」
「うーん、あたしはどうでもいいかな〜」
それぞれが反応を示す。
乗り気な奴とそうでない奴、俺は後者だ。理由は
「俺はやりたくない。多分、九郎の次の順の奴で止まるからな。丸山、こいつとしりとり勝負してくれ」
「え? い、いいよ? あ、それと下の方で呼んでも大丈夫だよ?」
「お、そっか。じゃ彩頼む」
訳が分からないという感じてしりとりを始めた、先行は九郎だ。
いつも通りのんびりとした声で最初の言葉を言う。
「それじゃ。しりとり」
「りんご」
「ゴールテープ」
「プレゼント」
「トラップ」
「プライバシー」
「湿布」
そこで彩は一瞬止まった。だが、すぐにしりとりは再開する。
「ぷ、プライベート」
「トップ」
「ぷ、ぷ……プリント!」
「トリップ」
「う、うーん……。プリクラ!」
「ラップ」
「プリンセス!」
「ストラップ」
「プラスチック!」
「クリップ」
「う、うぅ……」
彩の勢いが弱まる。そのやり取りを見ていたイヴが小声で話し掛けてきた。
「も、もしかしてリオさんがやりたくなかった理由って……」
「ああ。九郎は異常に“ぷ”で返すのが得意なんだ。だから俺のクラスや総士達──まぁ他のエタハピメンバーはしりとりをしようとしない……というか口に出さない」
純粋にめんどくさいから。
いつかの九郎の言葉、それは自分が楽しめれば他はどうでもいいという考えの表れ。
しりとりに関しては「思い付いたのがそれだったから」という謎な理由でその返ししかしないらしい。
「ま、まいりました……」
「勝ったよ、莉緒。ご褒美は?」
ガックリと項垂れる彩。それと反対に嬉しそう(特にそうでもないが)な九郎は約束してないご褒美を強請ってきた。
俺は適当に流す為に千聖に話を振る。
「──だってよ千聖。九郎を褒めてやれ」
「え、えぇ? えっと……おめでとう九郎くん、?」
「おお、千聖に褒められた。こりゃ明日は雨だね」
千聖に睨まれるがさらりと流す九郎。その度胸というか、スルースキルは流石だと思う。
まあ、これでしりとりは除外されたとして振り出しに戻ったわけだが……。
「他に何かあるか?」
うーん、と全員が考える。
「今更だけど〜……」
そんな中、口を開いたのは日菜だった。
「自己紹介なんてどうかな〜。あたし達じゃなくて莉緒くん達のだけどね」
「あれ? やってなかったか?」
こくんと頷く。
でもパスパレの中には俺達を知ってるのも居るから、わざわざする程でもないと思うが……。まぁ別にいいか。減るものでもないし。
「九郎もそれでいいか?」
「自己紹介? ……別に僕はどうでも。莉緒がやるのなら、やるよ」
一応納得してくれたようだ。
俺は咳払いをして自己紹介をし始める。
「知ってると思うが沙霧莉緒だ。沙霧旅館の息子で手伝いもしている。学校は日里高校で学年は二年、部活は何も入っていない。……とこんな感じか」
大体の紹介が終わり九郎を見る。その意味に気付いたのか、ゆっくりと口を開いた。
「……松橋九郎。莉緒と同じ高校で、学年も一緒。オンラインゲームが趣味……。他は、あぁ妹に九莉って子が居るよ」
「へぇ〜、九郎くんって妹居たんだ。初めて知ったな〜」
彩の言葉にこくりと頷く。
奏の妹である草薙未来と同じ学校に通うのが九郎の妹である松橋九莉だ。
両親が居ない時はよく家事をしていて、俺と同じように九郎に手を焼いている……と思う。未来と似てお兄ちゃんっ子だけどそれ以上に同性の未来の事を妙に気に入っていて、何か色々とやばい気がする。
「意外ってよく言われるけどね。……因みに、僕とはあまり似てないよ」
態度は真逆、行動するにしてもよく九郎が九莉に引っ張られる。……だけど、昔はそれが逆だったなんて誰も思わないだろうな。
「うーん……」
俺らの自己紹介が終わると日菜は唸り始める。そして、少しの間を開け。
「好きな人とかいないの?」
突然そんな事を言った。
〜九郎side〜
「好きな人……か」
莉緒が言葉を繰り返す。
「like、じゃないよな」
「そだねー。loveの方かなー」
高校生だからそういうのは気になるんだろうか。それともお互いに異性が居ない学校だから? まあ、理由はどうでもいい。
「俺は……いないかな」
お茶を飲みながら言った。
その言葉にイヴが安堵したように見え──いや、安堵したのが分かる。
薄々勘づいていたが、イヴは莉緒を好いている。理由は知らないが一方的なものだろう。
「ふーん。それじゃ九郎くんはー?」
当然、僕にも質問される。
「ははっ、こんな家から出ないゲーマー。好きな人なんてどうせいな──」
……そっか。
「僕か……。好きな人、ねぇ……」
自然と僕は千聖を見た。
そう。僕は昔から気付いている。この少女の想いに、千聖の隠した感情に。
「……っ」
『す──す、き……。私も、好きよ……九郎くんの事』
さっきの千聖の言葉が蘇る。
演技じゃなくて、本心からの言葉。正直ドキッとした。
上目遣いで顔を真っ赤にして見てくる千聖は、“いつもの”千聖ではなかったから。
「…………」
残酷かな……、想いに気付いてるのに目を背けるのは。
それでも自分の気持ちに嘘はつきたくなかったから。心の中で千聖に謝って……。
「いるよ」
短く、いつものように、何も無いように、平然に。僕は答えた。
「────は?」
最初に口を開いたのは莉緒だ。興味無さそうにしていたが、僕の発言に驚いている。
「ま、マジで……?」
「うん。いるよ、好きな人」
「へぇ〜! 誰誰!?」
驚いているのは莉緒と千聖。それ以外(主に日菜)は目を輝かせて詰め寄ってくる。
「流石に、教えられないね」
「え〜!! いいじゃーん!」
「ひ、日菜さん……そういうのは詮索しない方が……」
「私は気になるかな〜」
笑いながら流す。
今はまだ、それを伝えるだけ。僕とあの子はそういう関係じゃないから。
「暇なら、探してみるのもいいかもね。暇潰しにはなると思うよ」
悪戯っぽく言ってみると、日菜は挑戦状を叩きつけられたように乗っかってきた。それと、もう一人。
「そ、そうなの? 九郎くん?」
「うん、ごめんね千聖。僕はいるよ」
意味を込んだように言ってみる。
千聖が嫌いというわけじゃない、むしろ好きの部類に入るだろう。素っ気ない対応でも想っている事は分かって、時間が無くとも笑顔で話してくれて、たまに電話で弱気になる事もあって……。
僕の前だと仮面をかぶった千聖じゃない、それは分かりきっていた。
「でも──。いや何でもない」
言おうとした言葉を飲み込む。
「……それよりも僕は、莉緒に頑張ってほしいな」
「何だよ急に。家や学校では頑張ってるぞ」
無理矢理な話題変化に対応してくれたおかげで、少しだけ話の流れを曲げれた。これ以上、僕の話を続けるのは千聖に悪い。
「そうじゃなくって……姫の事だよ」
ちらとイヴを見て言う。
「だから関係ねぇって」
「そうです! 私とリオさんはまだ関係ないですよ!」
声を揃えて否定をされる。しかしイヴの顔はどことなく赤くなっていて……。
「“まだ”ね〜。その話、詳しく〜!!」
「うわぁぁぁッ! マヤさぁぁああん!!」
「わわっ!? 二人共落ち着いてください〜!」
日菜がイヴに引っ付いて、そのイヴは麻弥に抱きつく。何とも謎な光景だ。
「う、うーん……最近日菜ちゃんが元気だね」
「えぇ……そうね……」
それを見て苦笑いする彩と表情を曇らせている千聖。
「ま、お前の事なら何でも応援するさ。だけど、悩んだら相談しろよ。一応親友なんだからな」
「……ん。その時は頼りにするよ」
深く聞いてこないあたり付き合いが長いだけはある。
まぁ、千聖とも個人的には長いけど……。
「(見て見ぬふりも、そろそろどうにかしないとだね)」
想いはハッキリさせないと。久しぶりに千聖に会ってそう思ったのだった。
久々の投稿でグダグダ感が半端ないですがお許しを!
読んでくださりありがとうございました!