武士だけどお姫様   作:小鴉丸

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インフルってキツイですねー。初めてだったから身に染みて分かりましたたよ。

と、ほっんとーに久々の武士姫です。忘れ去られたのを引っ張り出す! ……遅くてすいません! 反省はしてるんです!



第八話 少しの変化

〜莉緒side~

 

 

「眠い」

 

「………」

 

イヴ達が家に遊びに来た次の日、学校だった俺達は教室に居た。今は一限目が終わった休み時間でそれぞれ行動をしている。

 

「おーい沙霧ー。お前の荷物が何で俺の席で寝てんだー」

 

「……俺のじゃないんだがな」

 

移動教室後で疲れたのか知らないが九郎は教室の入口に一番近い席に座っていた、当然そこは自分の席ではなく他の奴の席だ。そしてその事を知らぬ間に定着している保護者役の俺に伝えられる、というのはいつもの光景でもあった。

 

俺は九郎に肩を貸して自分の席に連れていく。どうせ俺の前の席だからついでになるし、ほっとく訳にもいかないし。

 

「おー、ありがとー」

 

「おう。食堂で飯の奢りな」

 

次の授業の準備をしながらしれっと見返りを要求する。因みにこれは別に断られてもいい、この言葉の本当の意味は「食堂で飯を食べよう」という誘いだからだ。

最近はパンだけだったからたまには食堂でご飯でも……、と思い誘ってみた。それに対していつも通りオッケーを出してくれたが、少し違った。

 

「今日は弁当なんだけどな……。ま、いいよ昼に食堂ね」

 

「弁当……? コンビニ……それとも九莉が作ってくれたのか?」

 

珍しい事に弁当を持ってきたらしい。それをスクールバッグから取り出して見せてくる。朝は別々に登校したから、その時にコンビニで買ってきた弁当かと思ったが違った。

 

そして次の瞬間、九郎はこの教室が凍りつくような言葉を発したのだった。

 

「んー……作ってくれたんだよね、別の学校の子が」

 

「「「「「…………は?」」」」」

 

比較的このクラスのメンバーは全員が仲がいい。軽い冗談で叩きあったり、愚痴は言い合える。

だからこそだろう。今の九郎の発言、聞き逃すはずはなく……。

 

「よぉ松橋さんよぉ。その“子”ってのは他校の“女子”だったりは……しねぇよなぁ?」

 

「女子だけど? 僕的には可愛いと思うよー、それがー?」

 

「女からの手作り弁当──か。同じゲーム仲間としては対立はしたくなかったが……仕方ない」

 

クラスのまとめ役、そして級長である立川が九郎を指さして言った。それはまるで戦の始まりかと言わんばかりの。

 

「この男子校において彼女の弁当を持ち込むたァいい度胸だ! さすがギルマスをしているだけはある! だが、それは同時にこのクラスの彼女いない連合軍を敵に回した事になるぞ! 分かってるのか!」

 

「(いつそんなの出来て……あぁ、LINEのグループか)」

 

ひとりでに盛り上がりそれについて行く周りの奴ら(数人)を眺めながらその連合軍とやらを思い出した。

 

確か一年の時に作ったやつだ。残念な事にクラス替えがない自分のクラスはせっかくの思い出という事で印象に残る事をする事になったのだ。で、やる事になったのがこのグループだ。

 

「(とか言っても何人かは彼女いるんだけどなぁ)」

 

当然だがその事は面倒ごとに巻き込まれないために黙っている。

 

しかし、九郎に彼女? というのは初聞き……じゃないな。昨日聞いたじゃないか、誰とまでは知らないが。だが九郎が興味を持つような人物ってどんな人だ? 俺が会ったことある人、じゃないよな。心当たりがないし。強いて言うならCiRCLEで見かけた黒髪の──?

 

「おっと……手荒い事はしたくないねー。手、怪我したくないし」

 

「ふふっ、同じゲーマー同士……力比べといくか?」

 

何やら喧嘩する流れになってるらしい。何故かは知らんが、九郎も乗り気だ。

 

俺は事が悪化する前に間に割って入り二人を止めることにした。

 

「はいはい。級長も九郎もやめろ。暴力なんて九郎が勝つに決まってるだろ」

 

「なっ……! そんなのやってみないと!」

 

「やめときなよ級長。松橋、割とガチで強いよー。身なりはあれだけどねー」

 

クラス一の問題児であり思いやりの強い光が級長に忠告をした。中学の頃ちょっとした事で殴りあった光は、それから九郎との親睦を深めたと言う。

 

光が喧嘩強い事を知っている立川は、本人がそう言うからどれほど強いのかを感じ取ったのだろう。

 

「く……ぅ……。す、すまなかった取り乱したりして。冷静さが欠けていた……」

 

「こっちもごめんねー。なんかよく分からないけど」

 

 

 

 

 

それから一日が過ぎて、その日の放課後。

 

「──にしても弁当って誰から貰ったんだよ? 俺にくらいは教えてくれたっていいだろ?」

 

「嫌だよ。莉緒にからかわれるのは癪だし」

 

下駄箱で靴を履きながら朝の会話をしていた。

 

正直気になるのだ。俺の知らない間にそんな変化があったなんて、気にならない方が不思議だ。

 

「人をからかうのは好きだけどその逆は嫌いなんだよ、僕は」

 

「そりゃ誰でもだ」

 

「──でも、莉緒にならいいかな」

 

正門に歩きながら自分の耳を疑ってしまう。

一体どういう風の吹き回し、あの九郎が素直に教えるなんて何か裏があるに違いない。うん、きっとそうだ。

 

「お、おお? 待て、怖い、逆に怖い」

 

「どちらにせよ言うよ。莉緒にははっきりさせないとね、千聖の事もあるし」

 

……こいつ。

 

半分ふざけていたが真剣さが伝わってきたので俺もちゃんとする。千聖の事は前々から二人で話していた内容でもある、それを持ち出すという事は、ガチなのだ。

 

それから俺達は学校の広場近くにある自販機で飲み物を買い、ベンチに座った。そして九郎が口を開いた。

 

「ま、本題だね。僕は好きな人がいる、勿論恋愛対象としてだ」

 

いつものようなまったりとした九郎ではなく、ライブをしていた時の状態に近い感じだ。回りくどい事はせずに単刀直入に物事を進める九郎だ。

 

「学校は花音と一緒、花女。二年生で名前は白金燐子っていうんだ。……知らないよね?」

 

「……あぁ、知らないな」

 

飲み物を一口飲んで答える。少し記憶を遡るが聞き覚えのない名前だ。

 

「オンラインゲームで知り合ったんだ。で、そのオフ会で実際に会ってみてベタな話、一目惚れしたよ」

 

「お前が一目惚れ、ねぇ」

 

俺がイヴを最初見た時の感じか? ……あれは一目惚れと言うより見入っただけだけど。

 

それでも九郎が一目惚れ、あまり考えられない。元々どういうのがタイプなのかも知らないし、恋愛感情があるのかも不確かだったし。

そう考えると、俺は今幼馴染みの知らない一面を見ているのか?

 

「あははっ、そこは置いておいて。千聖だよ問題は」

 

「スパッと断るのがいいんじゃないか。もやもやさせるのも相手に悪いだろ。あの完璧主義に限ってないと思うが、もしも仕事にでも響いたら大事だ」

 

んー、と九郎は悩む。やはり長年から気付いていたその思いを一瞬で切るのは難しいか。

 

「……それか時間に身を任せる、とか?」

 

「千聖との時間は止め続けて、その白金との時間を動かすってか。下手したら面倒臭いぞ? その結果が総士だ。あいつは片方に気付いてないがな」

 

「あ~~……恋愛って面倒だ」

 

投げやりになってきた九郎は飲み終えた缶をゴミ箱に投げる。だがそれは弾かれてしまった。俺も飲み終えたのでゴミ箱に空き缶を入れた、俺は投げずにだが。

 

「でも慌てる必要もないだろ。俺はそういう経験はないから分からんが……。ゆっくり、相手と向かい合って考えるのも手だと思うがな」

 

「千聖と、ちゃんと話し合う、か。……そうだね、慌てても仕方ないね」

 

空き缶を普通にゴミ箱に入れた九郎は、再び正門に足を進めた。急だな、相変わらず。と俺もその後を追う。

 

「もう話はいいのか?」

 

「うん。弁当箱返さないとだし……あ、莉緒も来る?」

 

「おー。これも随分急な誘いだ。でもいいのか?」

 

短く頷かれる。

 

「いいよ。それに莉緒も関わった方がいい人もいるしね」

 

「?」

 

関わった方がいい人、って誰だ? 花咲川女子に知り合いなんて花音と千聖……いや最近はパスパレメンバーが増えたけどそれ以外にいるか?

 

九郎がしたい事があまり分からないまま俺は着いて行った。

 

 

 

 

~燐子side~

 

 

「りんりんー! 一緒に帰ろー!」

 

バンドの練習が終わりあこちゃんが抱き着いてくる。後ろからリサさんに「入口前ではイチャイチャしないでくれるー?」と言われスタジオを取り敢えず出る事にした。

 

「ほんと白金さんと宇田川さんは仲がいいですね」

 

「ホントにねー。見てて楽しいよ」

 

「そ、そんな……あこちゃんが優しいから……」

 

そう。あこちゃんのおかげで私は頑張れる、勇気も出せる。年下の子から勇気を貰うというのは変な感じだが実際にそうだから仕方ない。

 

それのおかげで色々な人とも知り合えたのだ。他のバンドメンバーの人やお店の人、それと──。

 

「あ! マスターだ!」

 

思い返しているとあこちゃんが急に離れてSPACEの入口近くに走っていった。

リサさんは誰かと分からない様子で、友希那さんと氷川さんは驚いた様子でその人を見ていた。

 

「マスター? 何、なんかしたのお前」

 

「……単純にギルマスだからマスター。あこ、リアルでそれは控えてよ」

 

その人は今私が思い描いていた人であり、SPACE(この場)に一番似合っている人だった。その人は驚く私をよそに、今朝あげた弁当箱を掲げながらのんびりと、笑顔で言ってきた。

 

「く……九郎、くん?」

 

「ん、燐子。弁当箱返しに来たよ」

 




読んでもらいありがとうございました。
きっと待ってる人はいるんだろう、こんな作品でも! いる……と信じてちまちま投稿します!

これからもよろしくお願いします! 感想は毎度のこと気軽にです! (それと知らぬ間に色付いててびっくりしてます。評価してくれた方、心からの感謝です)
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