きゃすたー(7mg)の雑多なネタ倉庫   作:きゃすたー(7mg)

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知識深くもないのに書いてみた。つまり行き当たりばったり。

あまり深くつつかないでください。
ガバとか設定の勘違いしてる部分などあるので。


オバロ試作品

 一つの世界が終わる。それを知ったのは偶々だった。新作ゲームのレビューをつらつらと流し読みしていた中で不意に目に留まった一つの広告のことだ。

 

 『DMMO-RPG“Yggdrasil<ユグドラシル>”サービス終了が決定』という見出しに目を奪われた。

 

 この薄汚れた、いや……病巣が至る所に蔓延り余命幾許もない死に体のような地球に生きる俺たちにとっての安らぎ。かつて二人してのめりこんでいたゲームが終わるという事実。それがほんの少しの侘しさを俺に齎したのだ。

 気づけば埃を被っていたコンソールを引っ張り出して掃除し、コンセントに電源ケーブルを挿入。システムを起動し、数年分にもなるOSのアップデートを開始していた。

 無性にイライラするのを抑えようとして電子タバコを一口。まだ終わらない、二口。もっと早くしろよ、と三口。…………更新が終わったころには、帰宅してすぐ封を開けたばかりのカートリッジが半分も減っていた。

 

 即座にヘッドギアを被り運営会社のホームページにアクセスしてログイン。最新版クライアントをダウンロードしてインストール。起動してアップデート。……そしてゲームにログインした。

 

 暗転する視界。真っ白な光が広がり、見えてきたのは最後にログアウトした地点――自身の住居(ホーム)の姿だ。鬱蒼と生い茂る森の中にぽつんと空いた土地に建てられた一軒の邸宅。ゴシック・リヴァイヴァル建築のカントリー・ハウスはストリベリー・ヒル・ハウスを思わせる純白の壁をしていて、よく観察すると細やかな彫刻がさりげなく施されている。ほんの気まぐれで依頼しただけなのに、とんでもないクオリティの拠点が手に入って二人して驚いたのも懐かしい。

 そうして次に始まったのが土地探し。比較的辺境の、というか敵MOBのレベル帯が低いワールドの中で更に低レベル帯、つまるところ初心者向けのフィールドを何か月もかけて駆けずり回った。そして落ち着いたのが平均レベル30以下、ヨトゥンヘイムの山脈地帯の麓に広がるこの森林地帯だった。野ウサギや野鳥、少数のオオカミなどが居る以外には脅威が無く、薬草系アイテムやキノコ系アイテムの採集地として初心者がたまに来る程度の静かな世界だ。

 ……高難度ダンジョンが発見されて一時期は廃人(ハイレベル)クラスや上位ランクギルド(やりこみ勢)が出入りするようにもなってPKなんかもされたりやったりしていたが、運営の計らいで所有者以外は邸宅や周囲の敷地内に入れなくなる措置が施されたんだったか。

 

 そういえばユグドラシルの運営は凝り性というか、頭のネジが外れてるというか、大雪山おろしから空中スクリューパイルドライバーをキメたようなブッ飛んだことをしでかす奴等だった。ならこれくらいはまだ控えめなほうなのかもしれない。別次元に通じるゲートがあってそこからしか邸宅に入れない、なんていうような大仰なギミックでないだけマシだろう。

 壁と同じ真っ白なドアも懐かしい。真鍮製のシンプルなドアノッカーは見た目こそ質素だが、ハンドルの部分は月桂冠(酒ではない)を模したもので葉脈の文様まで刻まれている気合の入りようだ。

 

 コン、コン、コン。

 

 もう叩くこともないと思っていた。けども、ああ、やっぱり俺は棄てきれないんだ。俺たちは遠く離れ離れになって会うことも難しくなり、それでも声が聞きたくて会いたくて、唯一得られた二人きりの時間をここで過ごして思い出を作り上げてきた。子どもを作れなくなった彼女はどうしても諦めきれなくて、このユグドラシルにソレを求めたことも覚えている。

 

「――ただいま」

 

 ひとりでに開く真っ白なドア。その向こうに――小学校にあがるかというくらいのちいさな、太陽のような輝きを帯びた黄金の髪の、黒いセーラーワンピースを身にまとった少女の姿があった。

 

「パパ! おかえりなさーい!」

 

 あどけない笑みを浮かべ、搾りたての真っ赤な鮮血を光に透かしたような瞳で俺を見る少女。俺たちの娘――という設定のNPCは、定められた通りの行動を定められた通りに実行し、定められた一定の声色で俺を迎え入れてくれた。

 思わず笑みが浮かぶ。いや、ゲーム内だから表情が変わるわけではないのだけど、この子に再び会えた歓びを感じている自分が居ることは確かだ。…………ここにあいつも居れば――いや、それは過ぎた願いだ。

 

「ふぅ」

 

 パタパタと駆け足で付いてくる娘(NPCだけど)と共にヴィクトリア朝時代を思わせる書斎に入ってソファに腰かける。娘も同じようにソファにぼふっと勢いよく座るものの……そこから先は微動だにしない。当然だ。プログラムされていない行動はとれないのだ。あの子のように俺の膝の上に飛び込んできたりなど……できないのだ。

 

 ふと思いついて、スクリーンショットのフォルダを開くとページをめくる。二人して様々なワールドを駆け巡った思い出が脳裏を過って、ちくりと刺すような痛みが胸を貫いた。

 ユグドラシルに存在する山の最高峰へ登った。湖のほとりで開かれたイベントに参加して惜しくも優勝を逃した。海辺で魚釣りをした。ワールドエネミーにたった二人で挑んだ。未だ見ぬストーリーイベントやダンジョンを探してワールド内を駆け巡った。桜並木を一緒に歩いたり、PKされたり、クリスマスツリーを二人で眺めたり、すべては電子の海の中で起こったことで、ゼロとイチの生み出す光景でしかないけれど、俺と彼女が一緒にこのユグドラシルで思い出を作ってきたことは決して虚構などではない。

 

 俺と彼女が流れ星の指輪(シューティングスター)に願って生み出されたこの子が、両親から何の思い出も与えられることなくただ消えていくだけになる。そんな空虚な、ただ寂しいだけの終わりなんて迎えてほしくない。自分の中の何かが“無駄なことをしているな”と思いながら、“やるべきだ”と後押ししている。

 

「――よし、決めた。旅行しよう」

 

 だからなのか、消えてしまう前に一つでも新しい思い出が欲しかった。無性に、衝動的に、この子を連れて世界(ワールド)を巡ってみたくなった。

 この子はレベルにして僅か一桁、それも種族レベルくらいしか持っていない非力な存在だ。一度でも刃が通れば死あるのみ……即ち消滅だ。さすがに最難関ダンジョンを無傷で連れ歩くなどできやしないが、駆け出しが居るようなフィールドであれば出歩くこともできるだろう。

 

「まだ半年あるんだ。それまでにいろいろと――うん?」

 

 ピロン、と聞こえた通知音に気付いてコンソールを開くと……軒並みオフライン状態のフレンドの中で唯一オンラインになっているフレンド名があることに気付いた。奇しくも、かつて彼女と二人で世界を巡っていたときに出会ったかの悪名高いギルドの主人(マスター)の名が、そこに記されていた。

 

「モモンガさん、か」

 

 ふとあのオーバーロードの顔を思い出した俺が彼にメッセージを送るのにそう時間はかからなかった。

 

 

 

「ルイス・ローデンバッハさん、か」

 

 十分前に送られてきた突然のメッセージ。三年越しに聞いた声はどこか疲れた様子で、嫁自慢をしていた頃――彼のユグドラシル全盛期を知っているだけに不安な気分になってしまった。

 とはいえ三年前に最愛の人を失った直後に比べれば雲泥の差だ。あの時の彼は最早生きながらにして死んでいるかのような陰鬱な気配をまとっていた。

 今日声を聴いた限りでだけど、精神面は比較的安定しているようだった。まさか世界旅行(ワールドツアー)のスタート地点にナザリック大墳墓をチョイスするとは思ってもみなかったけれど。

 

「でも、スタート地点に選んでくれるっていうのも……ふふっ、なんていうか、嬉しいもんだなぁ」

 

 サービス終了まであと半年。それまでに精一杯遊び倒すつもりなのかもしれない。レベル5のNPCを連れてモンスターの跋扈する世界旅行をやり遂げるっていうのは無茶な気がするけど。

 

「よっし! 気合入れてロールプレイするぞぉ! 伊達でオーバーロードやってんじゃないんだ! あっちが吸血鬼の皇帝ならこっちは死者の王なんだ!」

 

 よし、そうと決まればまずはナザリックの陣容を見せつけなきゃな! メイドに執事、それに領域守護者を第一から第三層まで待機させて、案内先は円形闘技場にしよう! 階層守護者を勢ぞろいさせ、観客席にモブモンスターを大量に配置して……歓迎しようじゃないか、盛大に!

 

 

 

「よく参られた。我が盟友……ルイス・ローデンバッハ殿。ユグドラシルワールド遊行の出立地として、我らアインズ・ウール・ゴウンが誇るナザリック大墳墓を選んでいただけたこと、どれほどの言葉を尽くそうとも感謝の念に堪えぬというもの」

 

 堂に入ったロールプレイだなと改めて感心する。ただ拠点の入り口の前に立ってセリフを言っただけだというのに、立ち振る舞いはまさしく支配者のそれとしか言いようがない。中身は普通の会社員なのに。

 

「気合入りすぎじゃね、モモさん」

「ムフン、どうです? こう見えて実はこっそりと練習してみたんですよ! せっかくですしルイさんもロールプレイしてみてはどうです?」

「いやいや! 俺には似合わないって。できないわけじゃないけど堅苦しいのは正直苦手なんだしさ」

「やってみなきゃわかりませんって。こう、ほんのちょっと胸張って声のトーン落とせばいいんですよ。リアルでもいい声してたじゃないですか」

「ま、まあ“声は”良いと言われるけどさ……」

 

 エモーションで“グッド!”とアイコンを出したモモンガさんが急かすようにどうぞどうぞと待ち構えている。ウキウキしながらエモ出しするオーバーロードの姿には先ほどの威厳が微塵とも感じられない。

 

「久方ぶりだな、我が朋友。かつての動乱期の貴公を想起させる良い覇気を感じたぞ。時の流れは残酷にして無常の音の響きにも似たものだが、どうやら貴公には無縁であったようだな。壮健で何よりだ」

「貴殿もな。……いや、普通にカッコイイと思いますよ。これでもっと早くロールプレイしてればタブラさんとウルベルトさんも加えて四人で魔王ロールプレイできたのに……」

「それ“ヤツは四天王の中でも最弱……”ってなるパターンじゃない?」

「ワールド相手に善戦できるやつが何言ってんですか」

「守勢だから! 思いっきり守り固めてどうにか! だからな!」

 

 嫌なものを思い出した。ワールドチャンピオンのたっち・みーさん相手に戦わされる羽目になって必死に“次元断切(ワールドブレイク)”を“刹那の見切り”でカウンターしまくって受け流ししてたら本気出したたっち・みーさんが他の火力スキルを使って疾風怒濤と言わんばかりにゴリゴリ攻め寄せて押し切られたんだったか。チャンピオンだけあってプレイヤースキルも頭おかしい。

 

「思ったんですけど、この子ってNPCですよね?」

「ああ、そうだけど?」

「……レベル5のNPC連れていくんですか?」

「そうだ」

「アホかアンタはーっ!? 危険地帯にろくなAI設定もしてないNPCを! しかもレベル一桁! 連れて行ったら一撃で消し飛びかねないじゃないですか!」

「そうだな」

「わかってるならなんで――!?」

「思い出作りです。せめて、思い出だけでもと、そんな感じです」

 

 ぷんすかと怒っていたモモンガさんの動きがピタッと止まる。ああ、彼も俺が何をしようとしているのかは察したらしい。あと半年で終わるユグドラシルだが、だからこそやるべきことなのだ。

 ふと、隣に居るNPC……俺たちの娘と設定された彼女、レーナの姿を眺める。少なくとも、嫁はこの子を本物の娘のように大切にしていた。服や装備を揃え、家の中でとれるモーションを設定したり、過去にサンプリングされた声優の声を古いデータベースから引っ張ってきて与えたり。

 対して、俺は何を与えられただろう。せいぜい素材を用意したりコックのスキルで作った料理アイテムを与えたりした程度だ。そんなもので終わってはいけないと、俺は心の底で思ったから行動に出たのだろう。

 

「それに俺はこう見えて防衛や支援に関しちゃそこそこ自信あるんですよ。死なせはしません。この身を盾としてでも守り通しますよ。ま、俺が気づくより召喚した眷属が庇うのが早いかもしれませんけど」

「なんか不安ですね」

「低レベル帯のマップだからいけるいける」

「余計不安になった」

「なんで!?」

「ま、せめて中でゆっくり話しましょうよ。突っ立って長話するのもいいですけど、せっかく来たんだから中を見て楽しんでもらわないと」

「そうだな。モモさん自慢のナザリックだ。楽しませてもらうよ」

「っと、パーティ設定しなくちゃ。とりあえず作りますね」

 

 いざ入室というところでパーティを作り忘れていることに気付いたモモンガさんがパーティー編成を持ち掛けてきた。……のだがうんうんと唸るだけでお誘いのポップが出ない。

 

「……よしっ! コレだ!」

 

< モモンガ さんから パーティ名 “子連れ吸血鬼‐骸骨街道‐” への参加要請が届きました!>

 

「ひっでぇネーミングセンス」

「……そうですか?」

「だってモロにパクりじゃん」

「“ナザリック・ウィズ・ヴァンパイア”のほうがよかったですか?」

「モモさん、子連れ狼といいなんでそんな21世紀前後の映画知ってんの」

「以前ウルベルトさんたちと一緒に上映会やったんですよ。昔の廃墟から映画のディスクが出てきたらしくて、全員に配信したんです。いやーアレは爆笑しましたよ!」

 

 映画か。最後に見た映画はなんだったか。確か嫁が大興奮していたのは覚えているんだけどな。

 

「じゃあ行きましょうか! さあまずは第一層ですよ! あ、ちゃんとギミック切っておかないと……エフェクトで見えづらくなりますし、NPCが敵対行動に出る可能性もありますから」

「マジ?」

「ええ。基本的にNPCは拠点への侵入者に対して即座に攻撃行動に出ますから。その点ギルドメンバーがリーダーのパーティを組んでいれば襲われることがないんです。ただし拠点内でパーティや同盟から離脱すると即座に拠点外に転送されるので、組みなおすには拠点外に一度出ないといけなくなります」

「そりゃそうか。突然抜けられて背後からドスッってのはなぁ」

 

  まあ、上位ギルドには上位ギルドなりの苦労があるということだ。その中でもたった41人とはいえ最盛期にはランキング一桁にもあったギルドの盟主なのだから、その辺の知識も豊富なのだろう。

 ナザリックの中へ入るとまず出迎えたのは無数のアンデッドの軍勢。しかし彼らが立ち並ぶ姿は整然として規律正しく、一列になって無骨な片手半剣(バスタードソード)の柄を右手に持ち、刀身の峰を胸にあてるように袈裟懸けで保持した様子はまるで儀仗兵のようだ。

 実際、ただのスケルトンではなくその骨身に纏う(アーマー)籠手(ガントレット)伝説級(レジェンド)に近い聖遺物級(レリック)はあろうというものだ。拠点に配置するモンスターとはいえそこそこの数が配置できるMOB(その他大勢)にわざわざ装備させているあたりナザリックの財力と積み上げてきたモノがわかるというものだ。

 石造りの壁面に均一に配された松明の明かり。その微かな光で照らし出される古代文字や絵画は経年劣化による風化具合まで再現されたエフェクトがかかっていて、陰影が効いたスケルトンの儀仗兵たちと相まって威圧感すら感じる。

 

「よくこれだけ揃えられましたね。軽く見ても伝説級一歩手前の装備じゃないですか?」

「あ、そういえば知らないんでしたっけ。二年ほど前に過疎化対策でレア武器ピックアップガチャとかカムバックキャンペーンがあったんですよ。その中に特定モンスターの限定ドロップ神器級(ゴッズ)装備が含まれているっていうのがあってですね――」

「買いまくったわけだ。で、余ったと」

「……お恥ずかしながら」

「あの時よりも装備が豪華になってるもんだからどれだけ頑張って稼いだのかと思ったら…結果として何人で回したんです?」

「5、6人ってとこですかね」

「それで、何回ほど回した?」

「……300連ほどですかね」

「そうか。じゃあ聞くけど――お求めだった品は?」

「……あなたのような勘のいいヒトは嫌いですよ」

「オーケー、俺が悪かったよモモさん」

 

 やはり知るべきではない、思い出したくない出来事だったらしい。俺も1500人の討伐部隊の波状攻撃なんて思い出したくもない。いきなりメッセージで救援を求められたかと思えば嫁に引っ張られ、ナザリック外縁部で他の異形種ギルドのメンバーと即席のパーティーを結成して侵入阻止のための防衛戦をさせられる羽目になった。<号令>のスキルでひたすらに火力部隊の強化と足りない手数を補うための眷属召喚を繰り返したんだったか。結局第四波の迎撃のとき初手ワールドアイテム“光輪の善神(アフラマズダー)”でメチャクチャデバフくらったところに号令料理その他スキルバフマシマシ“失墜する天空(フォールンダウン)”ブッパで半壊して……悲惨だったなあ。

 

「これだけ装備を整えたとしてもあの時みたいな場外乱闘には打つ手なしなんですけどね。拠点外で起こる戦闘となると……」

「奇遇ですねモモさん。俺もあの日のことを思い出してました。アフラマズダーはいやだ……! アフラマズダーはいやだ……! ああ! 光が! 広がってっ……!」

「……嫌な事件でしたね……」

 

 なんやかんやとモモンガさんと会話しながらスケルトンの儀仗兵が立ち並ぶ中を歩いて進むと、第四層への入り口の前で立つ一体の影が目に入る。

 一言で言えば宮廷に住まう貴族のような印象を受けるNPC。上から下まで漆黒のボールガウンドレスにカーディガンもヘッドドレスも同じように漆黒。しかしながら真っ白なフリルやリボンもあしらわれていて、深窓の令嬢という雰囲気を纏っている。

 

「このNPCは?」

「シャルティアといいます。ペロロンチーノさんの作ったNPCですよ」

「あのエロゲーマニアの、か。……はてさてこの子はどういうエロを詰め込んだのやら。見かけからはさっぱりだ」

「聞いた限りではなんかいろいろ詰め込んだそうですよ。俺の嫁って自慢してましたから」

「きっと俺たちじゃ想像もつかないような設定なんだろうな」

「……ありえますね。私も一部は知ってますけど、詳しい全容までは。さて、とりあえず“付き従え”」

 

 モモンガさんが指示コマンドを発すると、シャルティアと呼ばれた少女は優雅に一礼してモモンガさんの後ろに若干の距離をもって回り込んだ。

 ……簡単なものでもいいからレーナにも組み込んでみようか。お辞儀の仕方や挨拶の仕方程度は備えていてもいいかもしれない。エロスにすべてを捧げた彼、ペロロンチーノのNPCへのこだわりと作りこみようを見た俺はどうやら感化されてしまったらしい。

 おかげでやりたいことが一つ増えたよ。ありがとう、我が同志よ。意気投合から5分で“ケモミミは頭の上派”と“人間の耳の位置派”で袂を分かつこととなったがお前の熱意は素晴らしいものだったと記憶している。

 

『バカヤロウ! ケモミミは頭の上にあるからいいんだろうが! 獣の耳、つまり犬猫のように頭の上にあって然るべきなんだよ!』

『ニワカ乙。人間的な要素と獣的な要素が融合してるからこそ“そそる”んじゃねーか。頭の上にただ乗っけただけの要素なんぞおっ立ちもしねーんだよ。脳みそまでカビたか?』

『アァンっ!? ケモミミって言えば大概は頭の上についてんだ! 人間の耳の位置派なんぞ21世紀の中頃には消滅したようなもんだろ! つまり世界の潮流は頭の上派なんだよ! 格が違うんだよ格が! 消えろ、イレギュラー!』

『……いいか、俺は面倒が嫌いなんだ。マッハで蜂の巣にしてやんよ!』

『たっちさん相手に持ちこたえたって話だが、中近距離戦ビルドの指揮官型に純遠距離超火力ビルドが負けるわけねえだろォ! 行くぞぉぉぉっ!』

 

 あの時は引き分けたが……先に切り込んだのはこちらなのだ。カウンター気味に“天地儘滅の太陽(ライジングサン)”を食らったが、俺の剣のほうが先に届いたのだから俺の勝ちだ。つまり“人間の耳の位置派”の勝利なのだ。アイツは頑なに認めようとしなかったが事実は事実だ。

 表層部とはいえナザリックそのものにかけられた防御を貫いて、第一層から第二層の中ほどまでブチ抜くあのスキルを最後の最後で直撃させられたのは痛かった。あれさえなければ引き分けることはなかったのに。

 

「さ、ここです」

「……こりゃあスゴイ。屋内に空とはなぁ」

 

 地底湖と氷河を抜けて出た先、鬱蒼と生い茂るジャングルが目の前に広がる。木々で少し見えづらいものの、空を見上げれば青い空が広がって白い雲が流れ、風の流れさえも再現されているのか木々がざわめく音が聞こえてくる。

 

「ブループラネットさんの努力のたまものですよ」

 

 フフン、と自慢げに胸を張っているあたりモモさんにとっても思い出深いものなのだろう。しかしこれほどの規模で、過去の記録映像で残る程度でしかないジャングルの景色を再現してしまうのだからブループラネットという人物の熱意は素晴らしいものだ。ペロロンチーノのエロスへの熱意すら足元にも及ばないだろう。

 

「こりゃあ……たまげたなあ」

「ようこそ! 円形闘技場(アンフィテアトルム)へ!」

「建築はローマ風か。コロッセオを参考にしたんだろうなこりゃ。階層ごとに装飾や建築様式が違うし、素材も古代式のコンクリート造りだ。地下にはやはり巻き上げ機や出入口を完備しているんですか? 水道橋から水を引いて模擬海戦ができるようなプールになったりする機能も?」

「えっ? えー、そ、そこまでは、ちょっと……わからないですね」

「……そうでしたか」

「しかし、コロッセオって水が入っても大丈夫なんですか?」

「ああ、コロッセオは水道橋を利用して水を溜め込んでプールのように使うことができたんだ。模擬海戦が競技の一つとして行われていたらしいし。もう二千年以上前の話なんだけどな」

「そりゃあスゴイ! というかさすがの知識ですねルイさん。そんな知識を持ってる人なんてそうは居ないですよ」

「俺の家柄故だな。……人々が今みたいに知識と思考能力を奪われるよりも前に作り出された知識の蔵。それがあるからこその今の俺がある。といってもいかがわしい雑誌から学術書まで見境なしに集められたから整理すら終わってないんだけどな」

「確か……本でしたよね。あのすぐ破れるクセに傷みやすい、クッソ高い値段がする紙でできたやつ」

「今でこそ本と言えばデータだが、昔は紙媒体の本ばかりだったのさ。でも本はかさばるし重いから、次第にデータ化されたものが主流になっていったわけだ。その結果、第三次大戦後の世界では企業が世界中のネットワークとデータを掌握し、アーコロジー外に住む人々には知識という財産が分け与えられることがなくなった。

 代わりに何が与えられた? クソマズイと評判のエナジーバーと基本無料で楽しめるプロパガンダ付きのゲームと映画に、格安で受けられる病院くらいなものだ。時間が経つにつれ民衆から知性は失われ、先ほどの三つで生活するのが“当たり前”になり、それが“普遍にして不変のもの”として新しい世代の“常識”になっていった。

 地球の自然環境こそ人類にとって最大の財産だというのに、企業を牛耳る輩がそれを破壊してまで自身の豊かさの追求と保身に努めた結果が今のこの世界さ。

 まあ、いずれ等しく地球上の生命も死に絶えるだろうさ。そのとき奴らは宇宙に進出して火星あたりをテラフォーミングして王様きどりでふんぞりかえってるんだろうけど」

「ルイさん、そのへんで……」

「っと、そうだな……目先に釣らされたニンジンを追いかける馬どもが躍起になる前にやめておこう」

「真っ向から喧嘩売っていくスタイルやめい」

 

 衆愚政治はクソだが愚民政策なぞもっとクソだ。何も考えない国民というのは扱いやすい駒ではあるが、それは国家にとっては害悪でしかない。治安は乱れ、教育はままならず、学問が発達することもなく、感情のままに行動するだけの国民を統制するなぞできるわけがない。

 だが巨大な複合企業であればどうだろう。食を支配し、エネルギーを支配し、メディアを支配し、医療を支配し、ネットワークを支配し、教育を支配し、そして最後には感情すらも支配し……そうやってヒトが生きる上で必要となるあらゆるものの根元を抑えてしまえばどうなるか。

 最早知識層以外はただの家畜同然だ。反抗する力などなく、知識も技術も奪われ、生きる力さえ奪われる。考えてもみれば、地球環境の悪化は彼ら企業にとってはむしろ追い風なのだろう。食うため生きるためには企業にすがらざるを得ず、逆らえば死だ。

 地球環境の改善を行う事業のほうが長く太く儲けられる事業だと俺は感じるのだが、企業は自然を……地球を食らいつくすことを決めたのが事実だ。いずれ尽きて儲けられなくなることがわかりきっている方策に投資する心理は俺にはわからないが、企業のトップはそうではないと判断したのだろう。完全にルビコン川を越えては引き返すなどできないと理解しているのだろうか? あるいはそれすらも儲けに変える方法があるのか。

 そのうち非知識層はロボット――それも人間以上の性能で人間より安い“維持費”で動く彼らに取って代わられる日が来るのかもしれない。要らなくなったなら、その先にあるのは廃棄場だろう。大量の非知識層はグラインダーに放り込まれて家畜や動物園の肉食獣のエサとして駆逐され、一部の上流階級とそれを支える無数のロボットたちがこの星の主役となるのだろうか。

 いずれにせよ死に絶える運命にある従属なぞ俺は御免被る。彼女と我が子の未来のためにと企業内で革新派の主要メンバーになるまで歩んできたのだ。……娘を爆破テロで失い、彼女が病で他界するまでは。

 ふと、リアルでの娘にそっくりなNPCであるレーナに目が行く。俺はまたしても失うことになるのだろうが、それでも残すべきもの、残せるものがあるはずだ。そう確信している。

 

「――というわけで。聞いてました?」

「――大丈夫だ。行こうか、モモさん」

「ん? じゃあ行きますか」

 

 ギギギと軋んだ音を上げて闘技場の門が開かれる。目の前に広がる圧倒的な数のモンスターの観衆たち。観客席の下から上まで埋め尽くす大量のモンスターと、だだっ広い闘技場の真ん中に立つ数体の影が目に入る。

 

「さっきのおさらいです。ロールプレイしてみましょう。それじゃ!」

「え? ちょ、まっ」

 

 即座に<飛行(フライ)>を唱えて飛び立つと、後ろについていたシャルティアも続いてモモンガさんと飛び立ち、中央で待つ影の下へと向かっていった。後に残されたのは俺とレーナだけだ。

 

「諸君! 長らく待たせてしまってすまなかったな。此度は久々に我らがナザリックへの訪問者が現れた!」

 

 んでもっていきなりの演説が始まった。おい俺にどうしろってんだよモモンガァ!

 

「とはいえ侵入者ではない。諸君らをここに招集したのは彼に我らがナザリックの威容を誇示するためである! 彼は我ら至高の四十一と対等の素晴らしい男だ。この私がぜひとも我らがナザリックへ――アインズ・ウール・ゴウンへと望むほどの強者である! 紹介しよう!」

 

 突如、晴れ渡っていた青空が夜空へと切り替わる。どこからかスポットライトに照らされ、浮かび上がるのは俺とレーナだけになった。観客がモモンガさんだけとはいえぶっちゃけ羞恥プレイじゃねーか!

 

「彼は――我が盟友!

 彼は――(あか)の帝王!

 彼は――吸血鬼の支配者!

 彼は――彼こそは、かの高名なるギルド“紅き館”の第二席に座す者、ルイス・ローデンバッハである!」

 

 いやそれ過去形だからな! かつて在籍してたってだけだから!

 

『ほら、もうすぐ暗転とけますからエフェクトいっぱいのスキル使ってください!』

『いきなりやれと言われてできるか! ロールプレイってこんな面倒なのかよ!』

『いいからほら! 暗転とけちゃいますから!』

 

 次第に暗黒の帳は鳴りを潜め、明るさを増す空とゆっくりと弱まっていくスポットライトの中でとりあえず武器の効果で使用可能になる、エフェクト付きスキルを選択。左腰の剣を抜き放って地に突き刺すと同時に発動する。

 

<スキル “紅の湖(ナトロン)” 発動>

 

 空から明るい光が差し込むと同時に、剣先からジワリと溶けだすように赤い水が円形闘技場に広がる。外壁を蝕むように静かに侵食する水に触れる寸前、モモンガさんが貴賓席にまで飛びのくのにわずかに遅れて、彼の後ろに居た数体のNPC――おそらくモモンガさんが言っていた守護者だろう――も続いて飛びのいた。

 

「なるほど……これが噂に聞くナトロン……触れれば周囲のあらゆるものを無慈悲に石化させるという……」

「然り。この紅き湖上に立つ者は須らくその動きを止め、やがて石となり果て彫像と化す。そこに動くものは、ただ我が身一つのみ」

「フフ、ナザリック内にすら自身の領域を作り出してしまうとは。流石は我が盟友(とも)……味な真似をしてくれる。叶うものなら貴公を従えてみたいものだが……」

「抜かせ阿呆(あほう)が。従属なぞ御免被る! 我が道を阻むならば万象悉く石と変え、粉微塵すら比較にならぬほどに打ち砕くのみよ!」

「クハッ! で、あるな。やはり貴公は“我が友”だ! 従属するなぞ貴公らしくない! それでこそ我が友だ! やはり対等の関係というのは心地よい!」

 

 思いのほか言葉がするすると飛び出してくる。いや、俺は中二病なんぞかかっちゃいないんだぞ。ほんのちょっぴりノッてきただけだ。所謂酔っ払いのやってることと同じだ。

 モモンガさんはなんかオーラ系のスキルまで発動して気合を入れ始めた。声のトーンは低いままだというのに、高揚した感じを含ませ手にしていた杖を掲げ始め――っておいまさかPVPやろうってんじゃないだろうな。

 

「ん? アイエェェェーッ!? いきなり石化食らってる! ナンデ!? ナンデェ!?」

「は?」

「えっ?」

「ちょっ! この変な赤い水何なの!? 完全耐性貫通して時間経過で石化とか鬼畜じゃねーか!」

 

 円形闘技場の片隅に目を向けると、もぞもぞとうごめく真っ黒なスライム的なナニカが赤い水を滴らせてのたうち回っていた。

 

「ヘ、ヘロヘロさん! あっ、スキル解除して! ルイさん、スキルスキル!」

「あっ、ちょいまち」

「モ、モモンガさん! ヤバイ! 助けて! 石化す――!?」

 

<スキル “紅の湖(ナトロン)” 解除>

 

「ヘロヘロさぁぁぁぁーん!?」

「……その、すまん」

 

 解除――するよりも早く真っ黒なスライム的なナニカが石像と化した。とりあえず状態異常解除の魔法ですぐ回復したが、中の人が落ち着くまでには十分の時間を要した。

 

「するとモモンガさんのフレンドさんだったわけですか」

「いやはや、驚かせてすみませんね。ルイス・ローデンバッハです。モモさんにはルイさんって呼ばれてます」

「これはどうも。ヘロヘロです。特に短くしてもあんまり意味がないのでそのまま呼んでください。

 いやでもマジで最初はビックリしましたよ。すわ討伐隊の再来か、と思いましたもの」

「すわ?」

「大変なことになったときに使う古語……だったはずです」

「感動詞っていうやつで、正確に言えば驚いたときや大事件でビックリしたときにつく言葉ですよ。小説とか字面で使うことが多いから普通は言わない」

「なんでそんなの知ってるんですかヘロヘロさん。というかもっと詳しいルイさん……は知識層だったなそういえば」

「知識層じゃない。知識人だ」

「何か違うんですか?」

「大いに違う。けど……説明し始めたら止まらなさそうだからやめとく」

 

 なんやかんやあったものの、モモンガさんが懇切丁寧な説明をしてくれたお陰でヘロヘロさんからの誤解は解けた。防衛用のNPCなんかは解散させ、今では円形闘技場の外の木々の根っこに腰かけて雑談している程度には仲良くなれた。

 お陰でいろいろとお互いについて知ることができたのは言うまでもない。彼がブラック企業勤めでデスマーチしていたこととか、つい昨日それが終わってログインしたとか。しかしまた二日後からデスマーチらしい。

 

「そういえば、そのNPCはルイさんのですか?」

「ええ。といってもレベル5ですけど」

「うーん……どこかで見たような気がするんですけどね……まあ可愛いNPCはいっぱい居るけど、その中でも特にレベル高い……」

「そりゃあウチの娘は最高にかわいいからな。つまり最カワだ」

「ルイさん、その子娘設定してたんですか……」

 

 モモンガさんがこちらを見る視線がやけに冷たい。いいじゃないか。失った娘の代わりなのだとしても、たとえあと半年で消える運命なのだとしても、この子は俺にとって……彼女にとって確かに娘だったんだから。 

 

「なんだモモさん! 可愛い娘を可愛いと言っても何も悪くないだろ! 可愛いは正義だぞ!」

「そうですよ! 可愛いは正義なんです!」

「黙ってろロリコンども」

「でも、可愛いだろ?」

「……かわいい」

 

 ほらみろ! やはり俺たちの娘は世界一可愛いのだ。俺の膝の上に飛び込んでくる姿も、大好きなおもちゃで遊んでいる姿も、嫁と一緒に本を読んでいる姿も……本当に可愛らしかった。ああ、とても可愛い娘だった。

 

「ルイさん、この子動かしてみてくださいよ」

「え? あー、この子のAIってそんなに弄ってないからあんまりとれる動きがないんですよ。基本的なモーションくらいならできるんですけど――」

「もったいない! それはもったいないですよルイさん!」

「お、おう」

「いいですか!? 今でこそユグドラシル以上の精巧なAIやモーションがあるゲームは多数ありますけど、このユグドラシルのモーション機能は手足の運びから重心移動まで自由にカスタマイズできるんです!

 しかもレベル100のNPCに施せばビルドの相性もあるとはいえプレイヤー相手に完封することだって不可能じゃないんです! それを生かさないまま死蔵させておくなんてもったいないにも程がある!」

「アッ、ハイ」

「よっし、私がやります。この子に見合うモーションを考えてAIである程度自由に行動できるように組み上げてみせます!」

 

 俺はなんか勢いのままに押されていたが、ヘロヘロさんは燃え上がるようなエモーションを出して立ち上がって(?)宣言しはじめた。大丈夫なのかコイツ。デスマーチ明けのテンションのまま居るんじゃないよな?

 

「あの、大丈夫なんですかヘロヘロさん? 健康診断がレッド通り越してるなんて言ってたのに」

「……大丈夫かって言われるとちょっとキツいです。でも昔作った基本的なプログラムがありますし、それを流用して少し弄るだけで使えるようになりますよ。それに戦闘はしないんですから、女の子らしいちょっとあざと可愛い動きとか純真純朴な子どもっぽい動きをいくつか考えるくらいですよ。そう大した負担にはなりませんって」

 

 彼のその言葉が所謂“フラグ”であるということを、この時のモモンガさんも俺も気づいていなかった。




以下適当な設定

名:ルイス・ローデンバッハ
種族:異形種
異名:なし
役職:なし
住居:ヨトゥンヘイムワールド、ガルフピッゲン山麓の森林地帯の邸宅
属性:-100 中立(悪)
種族レベル:吸血祖神(ザ・ワン)Lv.10
     :真祖(トゥルー・ヴァンパイア)Lv.10
     :始祖(オリジナル・ヴァンパイア)Lv.10
     :吸血鬼(ヴァンパイア)Lv.5
     :吸血種(ブラッド・タイプ)Lv5

職業レベル:侍(サムライ)Lv.10
     :剣聖(ケンセイ)Lv10
     :修行僧(モンク)Lv5
     :功夫(クンフー)Lv8
     :大君主(ハイスト・ルーラー)Lv5
     :将軍(ジェネラル)Lv7
     :コック Lv5
     :他Lv2職×5つ

プロファイル
 異形にしてヒトに属する吸血生命体。流れ星の指輪を用いることで<吸血種>の種族を取得して亜人化しており、異形種の持つ高ステータスそのままに一部人間用装備が装備可能となっている。が、反面で異形種の持つ耐性(毒や即死、呪い耐性など)が失われた上に本来の異形の姿も失われ、回復も人間種同様にヒールやポーションで行わなければならない。なのに分類上は異形種扱い。運営はこれによるシステム齟齬への対処に苦慮したとか。
 流れ星の指輪の効果(2回目)の効果で住居(ホーム)を獲得。嫁と共に拠点とする。
 流れ星の指輪の効果(3回目)の最後の使用で傭兵NPCでも拠点NPCでもない“家族NPC”を運営におねだりし、娘となるNPCを手に入れた。本物の娘そっくりで驚いたらしい。
 PvPは得手としておらず、やるとしても死亡無しの試合形式のみ。その分対モンスター戦ではかなりしぶとく、モンスターハウス内で味方があわや全滅という危機にあってもギリギリ生き残ることが多い。
 集団戦では種族スキルで呼び出した眷属を指揮官職で強化して周囲を守らせたり盾にして敵をかく乱し、自らは安全圏から中距離攻撃スキルを使って雑魚を蹴散らすなど、露払いや支援が主体となる。前衛としての性能もそこそこ備えており、万一のときや場を繋ぐための代役などもこなせる。
 しかし専門とする肉壁職や近接火力職ほどではないため、あくまで短時間だけ代役をできるだけのものしかない。
 単独での戦闘の場合はモンク職系列の自己バフ、打撃スキル、移動スキルなどで立ち回る。吸血鬼の誇る高いステータス値と自己再生能力でな防御力の低い職業構成ながらしぶとさも兼ね備えている。
 サムライ系列は主にボス戦など高耐久力の敵を相手取る場合に用いる。モンクの防御スキルとHPを一定量消費することで短時間ながら火力と防御力を著しく向上させる“背水”のスキルを活用し、剣聖のスキルで一撃を見舞ったり倍率の高いカウンターで敵を仕留めるスタイル。消費したHP量に依存するため、高いHPと自然回復プラス自己再生能力で消費した分のHPを取り戻しやすいのもメリット。
 


名:レーナ・ローデンバッハ
種族:異形種
異名:なし
役職:なし
住居:ヨトゥンヘイムワールド、ガルフピッゲン山麓の森林地帯の邸宅
属性:100 中立(善)
種族レベル:吸血祖神(ザ・ワン)Lv.3
     :吸血種(ブラッド・タイプ)Lv2

職業レベル:未取得

プロファイル
 異形にしてヒトに属する吸血生命体、ローデンバッハとその嫁の子……という設定で運営に製作依頼を出したNPC。既存のNPCと違い傭兵でも拠点防衛用でもなく、自由にどこにでも連れ出せるNPC。
 かつて戦火で失われた娘を忘れられず、自身も生殖能力を失ってしまってふさぎ込んでいた嫁を見たローデンバッハが新たな娘として製作を依頼して生まれた。父と同様に異形の性質を持つ亜人種。

NPCとしての設定
 人にして人に非ざる者であるローデンバッハと忘れられ失われた血筋のエルフであるナターシャとの間に生まれた娘。かつて吸血鬼たちを支配したローデンバッハは“異形にして異形足りえぬ者”と揶揄されたが、支配者たる彼の風格の前には一部の同格の吸血鬼以外はみな等しく跪くこととなった。
 その娘たるレーナは父の持つ力を等しく受け継ぎ、母の持つ聡明さと包容力を備えて生まれ落ちた。強さとやさしさ。偉大な君主であった父と、優しく暖かな安らぎを持つ母の愛で育てられた彼女は、ちょっぴりの世間知らずな面と君主足るに相応しい威風を備えるようになり、後に“紅の女帝”として君臨し千年王国も形無しの大国を作り上げることとなる…………のは彼女が大人になってからのお話。
 今はただの女の子。母と同じ黄金の長髪。父と同じ鮮血の赤い瞳。天真爛漫な幼い女の子。甘いお菓子が特に好きで、かわいいものに目がないなど普通の女の子である。パパやママが大好きで甘えん坊だが、時に鋭い観察眼や意外な発想を見せ、大器の片鱗を(自覚はなくとも)すでに見せている。
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