きゃすたー(7mg)の雑多なネタ倉庫 作:きゃすたー(7mg)
現地勢もそろそろ出していきたいところ
平穏な一日が終わった。野盗の出現、村人たちの死、国の助けも無いまま、明日があるかさえわからない恐怖に震える“いつもの”日常が過ぎていく。
「敵襲! 敵しゅうぅぅ~う!」
真夜中に鳴り響く、ガンガンガンと五月蠅い鐘の音。隣家から聞こえはじめるドタバタという騒がしい音。村の見張りについていた若い衆が怒声を挙げて駆けていく音。静かに過ぎつつあった凪いだ一日は野盗の出現という報によって瞬く間に阿鼻叫喚の坩堝と化した。
これからの村を担うはずの年若い青年や働き盛りの男たちが立ち向かうものの返り討ちにあい、花盛りの村の娘たちはまとめて捕えられて野盗たちの慰み者にされていく。父さんと母さんが隙をついて私を逃がしてくれたけれど、駆け出した数秒後に後ろからくぐもったような叫び声が二つ聞こえた。
誰かが追いかけてきている。後ろから声が聞こえる。それでも走って、走って、丘の上まで登って森の中へ逃げ込めば──そう考えて森の中に踏み込んだとき、見てしまった。
たくさんの太陽の光を受けた麦の穂が煌めくような金色の髪。二十代と思しき
傍らに控えるのは彼の従者なのか、貴族の
「逃げ──」
逃げて! そう叫んだはずなのに声が出ない。後ろからドンと腰と背中の間を押されたような衝撃と鈍い痛みが走る。自分のお腹を裂いて、私の赤い血で染まった切っ先が、月明りでなまめかしく輝いているのが見えて────意識が、落ちた。
「気が付いたか?」
「助けて、くれたんですか?」
死んだと思っていた。けれど私は再びこの目を開いて世界を目にすることができたのだという実感が湧いてきて、視界の片隅に見慣れない男が転がっているのが見えた。
私を追っていた野盗だと思い出した瞬間、父と母の顔が脳裏を過った。助けにいかなければ、例え一人でも、野盗に殺される前に助け出さなければと立ち上がったが、貴族のような、しかし身なりは旅の剣士のような粗末な防具の彼に引き留められた。
彼が言ったことは正しい。私には力が無くて、誰かを助けるどころか自ら捕まりにいくだけでしかない。悔しさが胸を締め付け、無力感がひたすらに頭の中を埋め尽くしていく。気づけば私は藁にも縋る思いで彼に助けを求めていた。
「引き受けよう」
彼は、引き受けてくれた。その喜びに我を忘れそうになって、しかし彼の言葉で冷や水を浴びせられたように冷静さを取り戻した。
「あの子たちを……俺のいとこと娘を、頼む」
そうだ。野盗を一人軽々と殺せるからといって何十人もの野盗を相手に一人で挑むなど死を覚悟しなければいけないことだ。私は彼に、自らの血族であるあの二人の少女との別れになるかもしれないようなことを頼んでしまった。巻き込んでしまったのだと、遅まきながらに気が付いた。
「──この命に換えましても」
この人があの少女たちを大切に思っていることは明白だ。太陽が昇って沈むのと同じくらいにわかりきったことだ。あの子たちにとっても彼が傍に居ることは“当たり前”のことだ。そして私はその“当たり前”を奪ってしまうかもしれないような頼みごとをしてしまったのだ。
見たところ珍しい黒髪でメイド服の少女は十五に届くかどうか、更に彼によく似た金髪の幼い子は一昨日8歳を迎える前に殺されたばかりの、お向かいのドリスちゃんと同じくらいだ。
きっと今が覚悟を決めるときなんだ。私はあの子たちより年上だ。十八になる大人の女なのだ。だがあの子たちは完全に大人になりきれてもいないままに、大切なヒトを失うかもしれない。そしてそのきっかけを作ってしまったのは私だ。
────今が私の命の使い道を決めるときだ。彼が覚悟を決めたように、私はこの身の持つ全てを賭けて守り通す。
そう決めた直後に野盗など足元にも及ばない強さを感じさせる馬(?)のようなモンスターに話しかけられた。金髪の好漢に仕えている彼女(?)はモンスターではなく竜、所謂ドラゴンでしかもまだ子供らしい。見た目には馬そっくりだけど、ひしひしと感じるけた違いの気配の強さはそこらへんのゴブリンやオーガは比較にもならず、一度だけ見かけたことのあるオリハルコン級の冒険者をも超えているだろう。
彼女が居れば野盗が何人束になってもたやすくはやられない気にさえなってくる。
そうこうして彼が村へ向かって走り去ったあとに残された4人(?)は全員が女だ。しかも私は血濡れでメイドの少女は自身の漏らした液体で下半身が濡れたままだ。
ひとまずは挨拶を、と思ってまずは小さい子……彼の娘に声をかける。
「えっと、私はヘレンっていいます。よろしくおねがいします」
「はじめまして! レーナ=ローデンバッハです!」
彼の娘である幼子はまさに貴族と言わんばかりで、私のような一平民のたどたどしいカーテシーとは違って堂に入ったものを披露してくれた。しかも家名まで名乗っているということは元はどこかの領地を治めていただろう貴族であるということの証左だ。
衣服も平民のものより上等で派手さはなくシックながら可愛らしさも感じさせ、背中に背負ったうさぎのぬいぐるみと相まって彼がこの子に注ぐ愛情の深さを図り知ることができる。
「……ヒビキ、です」
リ・エスティーゼでは珍しい黒髪の少女はヒビキと名乗った。血縁であるはずなのに家名を名乗らないということは本家筋ではなく分家筋で、彼の下で従者として働く以上家名は不要だという認識なのかもしれない。
「ひとまず、ヒビキさん」
「……なに? ボクに何か用?」
明らかに怒気を孕んだ声が私に向けられる。……何か気に障ることがあったのだろうか。
「その、ひとまずそこの池で服を洗いませんか? 私もほら、血で真っ赤になっちゃってますし! 自分の血ですけど!」
「…………キリ?」
『いいと思う。正直匂う。アタシがもしオスだったら興奮するかもしれないけど、小便まみれなのは衛生的とは言えない』
「そう…………ボクを見ないでよ?」
「お、女の子同士ですから大丈夫ですよ!」
「ボクの裸はユウくんだけにしか見せないって決めてるの! 今までどんな時でもユウくん以外に全裸なんて見せたことないんだから!」
「ハ、ハイ! 見ません!」
あれ、これって、もしかして──この子…………まさかの婚約者だった!? いやでも貴族なら若いうちから縁談が決まってることもあるって聞いたことあるし! 正式な決定ではないけどすでに両家で合意がなされている状態であると想像できる。余計な邪魔や縁談話が来ないように彼の従者扱いで最初から手元に置いておくことによって早い段階から二人が夫婦生活を営めるようにし、万一他の縁談話が入ってきても実質的に夫婦であるってことをアピールして“オメーの席ねーから! ”と撥ね退ける狙いがあるということね! 何故かいやに敵視されてる理由がわかった。私がヒビキちゃんの婚約者に命の危険があるお願いをしてしまったからだった!
──いやまてちょっと待つのよヘレン! もしもヒビキちゃんが彼の婚約者だと言うならあの子は、レーナちゃんは一体どういうこと!? ヒビキちゃんはきっと十代半ば。レーナちゃんはおそらく7歳前後。つまりヒビキちゃんからレーナちゃんが生まれた場合、ヒビキちゃんの年齢は……!
「ねえねえヒビキおねーちゃん! レーナもおよぎたーい!」
「ええ? ……うーん、ここ深いみたいだから近いところだけだよ? ボクだって泳げるわけじゃないんだから」
「ヒビキおねーちゃん、泳げないの? ママは泳げたよ?」
「あのねー、ボクは紗耶香さんみたいな超人じゃないの。料理洗濯炊事掃除財政管理その他いろいろを完璧にこなせるようなすごいママとは違うのー」
よかった。いやよくないんだけどとりあえずよかった。“レーナちゃんの母親は今どこに? ”っていう点にさえ目をつぶれば何も問題はない。
察するにあのお方には元々奥様が居て、その方との子がレーナちゃんなのだろう。しかしどういう理由か母親が居なくなってしまった。いつまでも伴侶が居ないという状況は自勢力以外に付け入る隙を晒すに等しいため、それを防ぐ意味合いも兼ねて従妹でありレーナちゃんと面識があるヒビキちゃんを後妻の枠に据えたのだろう。
……ということはあの方は他勢力から目を付けられたり、婚姻による外交を行うだけの価値があるお方だということになる。それがどうしてリ・エスティーゼ王国の、それもアベリオン丘陵に近い辺境地に居るのかという話になるが、とりあえずわかるのは私が助けを頼んだ相手は、万一彼の関係者に知られれば斬首確定コースになる地位かそれに準じるものを持っているということだ!
「つめたーい!」
ばしゃん、と水の弾ける音ではっと我に返る。眩い輝きを放つ月の下、生まれたままの姿ではしゃぐ様子は普通に村で見るような子供たちとそう変わらない。
「レーナ、あんまり深いところ行っちゃダメだよ!」
「はーい!」
ふと隣を見ればいつの間に着替えたのか、ヒビキちゃんは胸から股間までを覆うような地味目の衣装を身に着けて、先ほどまで着ていたであろう白い下着を木桶に入れてばしゃばしゃと水洗いしていた。いやそれよりも、その木桶はどこから取り出したのか。
「はー、まさかユウくんに見せようと思って用意してた水着がこんな風に役立つなんてね」
まさかの水着だった。もう少しちゃんとした服らしいものが水着だと思っていた私からすればありえない。ほぼ肌着と同じようなデザインの水着なんて考えもしなかった。……股の食い込みもハイレグだし、生地は薄くてピッチリしているし、これはむしろ殿方を寝所に誘う衣装だと言われたほうがしっくりくる。
『アンタは入らないのか?』
「あ、いえ、その」
『心配いらない。アタシが警戒してる。ただ、何か来たら水から上がったほうがいい。感電する』
「か、かんでん?」
『要は“雷に打たれる”ってことだ。アタシは電撃の魔法やスキルが使える』
ほへー、という言葉しか出ない。私が思っていた以上にこの馬らしきドラゴンは多芸なようだ。
「……はやく服貸して。洗っておくから」
「あ、ありがとうございます……」
脱ぎ去った衣服一式を渡す直前、ヒビキちゃんの目線が私の胸に向いた。ぐっと、私の服を握りしめたヒビキちゃんが先ほどよりもさらに声のトーンを落として言う。
「…………ユウくんに色目使ったら────ボクは赦さないから」
どうか無事のご帰還をお祈り致しております。というかほんとに無事で帰ってきて! 傷一つない状態で! 可及的速やかに!
森を抜けて丘の上から見た村の様子はひどいものだ。煌々と燃え上がる家屋がいくつか。中央の広場らしいところには篝火が焚かれ、集められた村人たちらしい影がそこかしこに見受けられる。
偵察用装備の一種である単眼鏡から目を離すが、月と星の明かりくらいしか光源が無い夜間だというのに夕暮れ時程度の明るさで周囲が見える。吸血種という種族のせいか、それとも吸血鬼という夜の支配者たる種族のせいかはわからないが、夜目が利くというのは非常に便利だ。
軍用のフルフェイスヘルメット──それも可視光増幅型の
「さて、どう攻める?」
思わず零れた問いかけ。“自分としては──”と後に続く副官の言葉は無い。そうだ、俺は今一人であの37人の野盗を始末しようとしているのだ。
一人ずつ始末していたのではキリがない。だが複数を相手取るのは愚策。姿を晒して切り込むなんぞ到底ありえない。俺が姿を現したとなれば村人は救う間もなく殺されるだろう。
「情報が要る」
だがどうやって得る? ナイフを突きつけて脅した程度で吐いてくれる相手ならいいが、そうでないなら? 助けを呼ばれればその時点で村人の被害が一気に増えるのは明白だ。
「……スキルが使えるか?」
そう判断した瞬間に脳内を情報が駆け巡る。自らが行使可能な魔法とスキルがずらりと並び、その中で対人戦で有効に働くだろうモノがピックアップされていく。
「……どうやらやれそうだな。スキル発動、<眷属招来・
自身の周囲に赤黒い蝙蝠たちが現れ、ギイ、ギイと鳴き声を上げて俺の指示を仰いでくる。正直言って生きた蝙蝠なんて初めて見たが、ユグドラシルのとき以上にリアリティが増している。飛膜の動きの一つ一つが目で追えるうえに、彼らが発する超音波さえも感じ取れるとは、この肉体はスペックだけを言えば人類が比較にもならないものを持っているらしい。
「第一分隊、偵察だ。行け、静かにな……」
20匹のコウモリたちが集団を離れて飛び去って行く。彼らがどの位置にいてどこを探っているのかが脳内に直接的に流れ込んでくる。
「第二、第三分隊、村の周囲を警戒しろ。侵入者や村を出ていく者がいれば知らせろ。第四分隊は俺のローブの中で待機だ」
40匹のコウモリたちが村の周囲へと散っていく。お得意のエコーロケーションで潜んでいる者を探りつつ、目視で周囲を警戒して飛び回る。これでひと先ず村の全域が俺の警戒範囲内に収まった。
さすがに本職のように<
ゲームからそのまま現実世界のような挙動になったのであれば、そこらへんの“融通”が利くようになっているはずだ。ゲームをそのまま当てはめたのでは世界なんぞ成り立たない。ゲームのままでは矛盾していること、成立しないこと、齟齬が生まれることに関して何らかの補正や修正、そして歯抜けになっている辻褄を合わせてくれる“融通”がなされているはずなのだ。
知恵と知識と発想を組み合わせて、自分が習得していない高位の魔法や職業のスキルを再現、もしくは劣化させたものを行使できる可能性が無いわけがない。
「使えるものは全て使う……“工夫を凝らしてあらゆるものを最大限に活用していくのがサバイバルの基本”か……前時代的な教官の、それも自然が死に絶えた現代で必要になるわけがないと思っていたサバイバルの心がけをここで思い出す羽目になるとはな」
偵察に出した第一分隊のコウモリから齎される情報を頭の中で捌きつつ昔のことを思い出す。
鬼教官に一端の戦士として鍛えてもらったこと。同じPMCのオペレーターを務めていた女性と恋仲になったこと。彼女がスパイ容疑で拘束され、48時間に渡る尋問の末に息絶えたこと。旧大阪アーコロジーに本社を置く企業の令嬢である妻と出会ったこと。結婚し、娘が生まれたこと。テロリストに娘を殺されたこと。同じテロで怪我を負った妻が一週間後に亡くなったこと。
「行くぞ」
覚悟は──もう決まっている。俺は無慈悲に奪われていくだけの現実に抵抗する。
目標は──最優先は村人の救助。次点で野盗の確保又は殺害。
時間は──そう長くはかけられない。長くとも1時間。迅速に行動すべし。
「いる」
モンク系や侍系の職業故か、種族的な特性かはわからないが敵意を感じ取った。敵意だとはっきり認識しているあたり、俺もずいぶん人間を辞めている体になっているものだ。
相変わらず夕闇程度の薄暗さ──ただし人間にとっては漆黒の闇の中──だが、目の前から歩いてくる三人組は手にランタンのようなものを片手に持って、血濡れの剣を手にこちらに向かって歩いてくる。
「あー、しっかしアイツどこまで追っかけてったんだ?」
「さぁな。逃げたのが若くて美人のいい女だってのはわかるが、必死すぎだろ?」
「仕方ないさ。ラルフのやつ、前は見張り番で女を抱けてなかったからな。前に飼ってた女はボスの目に留まって一週間前にガキまで産んじまったし、三か月前は犯してた女にタマを噛みちぎられそうになってたぜ」
「なんだそりゃ! どんだけ女運がねーんだ? 今度は遂に殺されちまうんじゃねぇか?」
ひと先ず背の高い草むらに腹ばいになって身を伏せる。ローブが自動的に周囲の光度に合わせてモザイクの暗色の迷彩へ変化し周囲に溶け込んでいく。
ざく、ざくと足音が通り過ぎる。見つかった様子はない。すれ違いざまにスキルを行使し、敵のレベルを計測して情報を集める。
「<
……人間種、名はトビアス、年齢は32歳、レベルは7……って一桁!? ステータスを見ても軒並み低い数字が並ぶだけで特筆すべき点は何もない。しいて言えば他の二人も同じようなレベルとステータスだった。これならコウモリだけでもやれてしまうぞ。
「始末するか──」
ひょこ、とコウモリたちがローブの裾から顔を出す。“いかないの? ”と言いたげな雰囲気だが、コウモリに始末させた場合どうやって殺害するのだろう?
『ごしゅじん、ごしゅじん、われわれは“きゅうけつきのけんぞく”であります。あいての“ち”をすって“しっけつし”させるのであります』
「……となるとまずいか」
吸血で敵を殺したとなればどうなるか。生き血を吸われて干からびた死体が出来上がることになる。それはまるでどこぞのチュパカブラのような所業だし、人間業とは思われないだろう。ここで余計な不信感を与える真似は避けておきたい。
折角人間種と同じ見た目をしているのだから、それは有効的に、そして友好的に利用できるはずだ。
「三人……ギリギリいけるか」
このままあの三人を行かせればヒビキやレーナたちにたどり着いてしまうだろう。ここで始末しなければ。
静かに起き上がってショートソードを抜き放つ。左手には一振りのダガーを手に、脚にかかる重心を調節することで足音を消して忍び寄る。少しずつ、野盗たちの背中が近づく。あと数歩……五歩、四歩、三歩、二歩……今だ!
「──だってのにアイ──ゲボォッ」
ぎり、と弓を引くように右手を後ろに引いて全力で前に突き出す。呑気におしゃべりを続けながら後ろを歩く男、トビアスの喉を矢のように貫いてショートソードが生える。
「──あ?」
ショートソードを生やしたままのトビアスを前に蹴り飛ばし駆け出す。どしゃり、という音で異常に気が付いた男、アランの心臓にダガーを両手で力いっぱいに押し込むと、アランは痛みと衝撃で手にしていたランタンを手放した。
「ゲフッ!」
押し込まれたせいで肺の中の空気を一気に吐き出したのか、アランが短い断末魔をあげて背中から倒れこむ。目じりに涙を浮かべ、死を忌避し、恨みごとを吐こうとして事切れるのを確認するよりも早くその隣に居た男、ビョルンの目を指先で突く。
「ぎっ! アッ──」
バリン、とランタンが地に落ちて砕け散ると同時に聞こえたくぐもった悲鳴。指先に絡む眼球と神経のデコレーション。腹に肘を叩きこんで体を前にかがめた瞬間にビョルンの首を右わきで抱え込むようにホールドし、そのままぐるりと両手で頭を一回転させる。
「お゛っ゛ほ゛ぉっ」
ごきり、ぼきり、と骨が砕け首が360度に一回転。ねじ切れた首から下がビクビクと痙攣を起こし糞尿をズボンの中でまき散らしたまま、ビョルンは息絶えた。
『おみごとなのです! さすがはごしゅじんなのです!』
「久々にやったわりに鈍ったような感触がない。……吸血種のカラダのお陰、か」
起き上がってから一連の動きを行った所要時間は体感にしておよそ12秒。むしろ以前より早くなっているとはどういうことなのだ。
「……よし、死んでるな」
ショートソードとダガーを回収し、今一度彼らの心臓に剣を突き立てる。無慈悲と思うなかれ、これは敵の死亡を安全に確認するための由緒正しい方法なのだ。死んでいないのなら今一度これで殺せばいい。死んでいるのなら死体になったと確信できるのでよし。わざわざ膝をついて相手の瞳孔を見たり脈をとったりする危険性の高い方法を使う必要などないのだ。
そういえば生体センサーに連動した
「村に向かう。道中に敵影が無いか索敵しろ」
『らじゃー! だいよんぶんたい、てーさつにんむだー!』
『おしごとおしごと~』
『おいおすなよ! いまとぶから!』
『ねむいよー』
『おきろねぼすけ! ごしゅじんからの“にんむ”だぞー!』
……眷属って、こんなにコミカルなやつらなのか?