その1
直立二足歩行、道具を手に持って使う。
それだけでも猫であるぼくにとっては未知の、
そしてありえない体験ではあるのだけれども。
まさか、モンスターと闘うなんて体験まであるとはね。
「爆弾いくよ!」
「任せた!」
ぼくが叫ぶと、相方のハンターのリョウジは
倒れこんだ鎧竜の頭部へと狙いを変えて走り出した。
僕はというと、鎧竜グラビモスの一番堅い装甲である胸部に走り寄ると
背中のポーチから特大爆弾を取り出した。
どんな技術が使われているのか分からないけれど、
ハンターズギルド特製の特大爆弾は、ポーチから取り出した瞬間
ぼくの背丈よりも大きく膨らみ、自動で点火された。
爆発に巻き込まれると痛いので(痛いで済むのもおかしいけれど)
すぐに後ろへ放り投げる。
グオォォォォォ!!
リョウジの頭部への重い一撃、そして特大タル爆弾の爆発で
鎧竜はさらに吹き飛ぶように後ろへ倒れこんだ。
全身を分厚い装甲で覆われた鎧竜グラビモス。
屈強な両脚で二足歩行し、両腕には大きな翼がついており
その巨大な身体を宙に浮かせるほどの羽ばたきもできるという、
圧倒的なパワーの持ち主だ。
そんな、現実世界ではありえない怪物とまともに闘えるのは。
ぼくが、ニャンターというありえない能力を手に入れたからだ。
「ルド!回復笛頼む!」
相方のリョウジが、爆弾により装甲が剥がされた鎧竜の胸に向かって
走りながら、ぼくに回復を頼んだ。
言われるまでもなく、背中のポーチから
旋律を吹くだけで自分と味方の体力を回復する、不思議な角笛を取り出すぼく。
ぼええ~♪ぼええ~♪
適当に吹いてるだけなのに、リョウジの体力が回復したのが何故か見える。
ともあれ、相方ハンターの体力はもう大丈夫。
ぼくは次の攻撃のために背中、ポーチに直接くくりつけてある
ブーメランに、青い研き粉を振りかけた。
よし、これで貫通ブーメランの完成だ。
ぼくらとは逆に、体力が尽きつつある鎧竜は、
リョウジの大剣に襲われながらも慌てて立ち上がろうとしている。
早く僕も参戦して、この睡眠貫通ブーメランを投げつけないと。
そして眠ったら、また特大タル爆弾でトドメだ。
本来、ニャンターという能力を持つ猫でも
爆弾や笛など特別な攻撃、行動をするにはサポートゲージというのが必要らしい。
らしい、というのはぼくがそれを無視しているからだ。
そもそも、サポートゲージとかいうのが足りなくても
ポーチの中には爆弾や笛、罠など取り出せば使える道具がいっぱい詰まっている。
それが、ゲージが無いから使えないというのは
「やる気が無い」せいだと思うんだよね。
でも、他のニャンターたちがサポートゲージ(多分テンションのようなものだと思うんだ)が満ちてこないと道具を使う気になれないのは仕方ない。
結局は、雇われだもんね。
ぼくには、やらなきゃいけない事がある。
イッパイアッテナや日野さん、ブッチーにデビルが待っている
東京に、帰るんだ。
そしてその前に、ポッケ村で寝たきりになっている、
りえちゃんを起こすんだ。
そのためには、このモンスターハンターの世界で生き延びる。
生き延びるためには、爆弾だろうが罠だろうが、
気合で何度でも使っちゃうよ。
何故なら、ぼくは教養ある猫だからだ。