ルドルフニャンターひとりだち   作:湯たぽん

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※今回のお話は
「ルドルフとイッパイアッテナ」のいわゆるネタバレ要素をふんだんに含んでおります。
件の作品を知らず、そして読んでみたいな、映画見てみたいな、と
考えておられる方はこのお話を飛ばして
東京編 その4へとお進みください。

ルドルフの物語を知らず、でも知りたい方のみどうぞ。
このお話は飛ばしても先へ進める内容になっております。


その3

その夜、ぼくは夢を見た。

 

あ、これ夢だ。珍しく、それがすぐに分かった。

 

ぼくの目の前に、ぼくが居たからだ。

 

ぼく達猫は、人間と違って自分の姿をじっくり見つめる事は少ない。

鏡なんて持ってないもんね。

でもぼくは、夢の中で目の前に居るのがぼくだと分かった。

いや、正確にはそれはぼくじゃあない。

以前、同じ事があったんだ。

 

 

 

ぼくは、今から数年前に

とある事件(自業自得だったんだけど・・・・)によって、

生まれ故郷の岐阜からここ東京に来てしまった。

その東京でイッパイアッテナと出会って、文字を習い、

教養を身に付けたんだけど

事件前までは自分の生まれ故郷が岐阜県岐阜市だという事も

知らなかったので、偶然テレビに僕の生まれ故郷の風景が映り

岐阜を目指せばいいと知り、帰るための道順を調べ、行動に移す時には

 

ぼくが故郷から姿を消してから一年が過ぎていた。

 

ぼくの飼い主、リエちゃんは当時小学生だった。

小学生にとって一年は長すぎる。

ぼくが大好きなリエちゃんは、同じようにぼくを大好きで居てくれた。

だから、ぼくが居なくなった事に耐え切れなかったんだと思う。

 

リエちゃんに会いたい!

ぼくが必死の思いで岐阜県に辿り着き、

家の庭にあった桜の木に駆け上ると、リエちゃんの部屋には・・・・

 

ぼくが、居たんだ。

 

いや、正確にはそれはぼくじゃあない。

ぼくとそっくりな、ぼくの弟だった。

リエちゃんは、ぼくを待っていなかった。

ぼくとそっくりな弟を、ぼくと同じくルドルフと名付けて

ぼくとして可愛がってくれていた。

ぼくじゃない、ぼくを・・・・。

 

ここにはぼくの居場所は無い。

気付けば、ぼくは東京に戻っていた。

 

 

 

そんな、辛い場面が夢として出てきた。

ちぇ、嫌な事を思い出させてくれる夢だよ。

 

夢の中のルドルフ(ぼくの弟のほうだ)は、

一人でつまらなさそうに、分厚いカーペットの上でボールで遊んでいた。

 

「おい、ルドルフ」

 

夢とは知りつつも、ぼくは小さいぼくに語りかけた。

 

「んー?おじさん、前に会ったね」

 

けだるそうに、小さなルドルフが顔を上げた。

もちろん、前に会ったというのは

ぼくが岐阜に帰った時のことだ。

 

「お前一人か?リエちゃんはどうした。」

 

夢の中で岐阜に来たのなら、

こいつなんかよりリエちゃんに会いたい。

弟に八つ当たりしても仕方ないけれど、

ついつい強い口調になってしまう。

 

「リエちゃん、もうずーっと寝たまんまで

 全然遊んでくれないんだよ。つまんないなー」

 

小さなルドルフは、ボール遊びをしながら不平を言う。

だが、ちょっと待て。

 

「・・・・寝たまんまだと?」

 

八つ当たりよりさらに強い口調になってしまったけれど、

この際気にしてなんていられない。

リエちゃんに何かあったのだろうか。

 

焦ったぼくは、

とんでもない事を言いながらもしれっと一人遊びしている

小生意気なちびルドルフに詰め寄ろうとしたけれど、

身体が動かなかった。そうだ、これは夢なんだった。自由に動けない系か。

 

「リエちゃんはどこにいるんだ。寝たままってどういうことなんだ?」

 

仕方なく、声だけドスを効かせて(るつもりで)問いかけたけれど

小さなルドルフは特に動じる様子は無かった。

ボールを蹴飛ばすと、のんびり伸びをして、こちらを向いた。

 

「そっか、周りがこう暗いと見えるわけニャいよね。ほら、すぐそこだよ」

 

ぱちん。

小さなルドルフが指を鳴らすと、急に周りが明るくなった。

 

そこは、見知らぬ家の中だった。

大きな暖炉、その上の窓からは雪が積もった雪国の風景、

そして部屋の反対側のベッドの上には一人、誰かが横たわっている。

 

多分、リエちゃんだ。

 

飛び上がって駆け寄りたいところだが、この夢の中では身体が動かせない。

でも、それでさらに焦るよりも。ぼくには、気になる事があった。

 

「・・・・ルドルフ、お前、ルドルフじゃあないだろう」

 

部屋の真ん中に陣取り、ぼくの表情の変化を楽しむつもりだったのだろう。

リエちゃんに飛びつかないぼくを見て、ちょっぴり不満そうに

にせルドルフは口を開いた。

 

「どうして分かったのさ」

 

「猫が指をぱちん、となんて鳴らすか。

 しかも突然わざとらしい猫語になりやがって。何が見えるわけニャいよね、だ」

 

恫喝のつもりで、さらに声を低くしたけれど、

相手は逆にそれが嬉しかったらしい。にやりと笑うと、向こうから近づいてきた。

 

「さすがルドルフだニャ。ちょっとした予知夢を見てもらおうとしたのに

 あっさりバレたニャ」

 

「予知夢?リエちゃんが寝たきりになるってのか」

 

ベッドの上で寝ているのは、よく見えないが間違いなくリエちゃんだろう。

寝たきり?ひきこもり?いくつかの考えが浮かぶが、どれも良い予感はしない。

しかし、にせルドルフはにやにやしながらぼくのほうに歩み寄り

気分の悪い猫語で続けた。

 

「いやいや、現実世界のリエちゃんは元気だニャ。

 ちゃあんとキミの弟ルドルフとも遊んであげてるニャ」

 

「現実世界?何を言ってるんだ。この部屋は岐阜県じゃあないのか?」

 

にせルドルフが目の前に来ても、ぼくの身体は動かない。

こいつに一発パンチを食らわせてやりたい!

 

「いいや、ここはポッケ村だニャ」

 

ポッケ村・・・・聞いた事も無い名だ。

リエちゃんは外国に居るのか?

そこで何かが起きるのか?

次から次へと疑問が湧いてくるが、

ぼくの目の前のにせルドルフが、今度はさっと手を下ろした。

部屋の中が再び暗くなる。

 

「どうもキミは近々こちらに来るようだからニャ、案内をしてあげようと思っただけニャ」

 

にせルドルフがそう言うと、今度は完全な闇。にせルドルフすらも見えなくなった。

あぁ・・・・これで夢、終わりか。なんて意味深な。

 

「とりあえず、浅草で待ってるニャ、ルドルフ」

 

暗闇の中、にせルドルフの声だけ聞こえた。

なんでこいつ、ぼくが明日浅草へ行こうとしてるのを知ってるんだ。

 

「ふふふ・・・・キミはどうやってモンスターと闘うのかニャ?」

 

なんだよモンスターって。なんで闘うんだよ。

ポッケ村ってどこだよ。そもそもお前誰だよ・・・・

 

いろんな疑問と不満が入り混じる中、ぼくの意識は夢の奥へと溶けていった・・・・

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