バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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本編では三人称視点で進みますがこっちでは一人称視点で進めようと思います。

誰をチョイスするかは気分次第。

今回は木下 優子さんで。




如月ハイランド~前編~

【優子視点】

 

「―以上でHRを終わります。皆さん、充実した休日を」

 

担任の高橋先生の号令とともに放課後に突入する。クラスメイト達は休日用の宿題を処理するため教室に残ったり、部活動に参加するためさっさと教室を出て行ったりとさまざまである。

ちなみにアタシこと木下優子は友達に別れの挨拶をし、帰りの支度を済ませたものの、自分の机から腰を上げようとすらしていない。

アタシの放課後の過ごし方は、もう少ししたらやって来るであろう友人の気分次第で決定する。今日は金曜なので、休日どう過ごすか決めることになるだろう。

アタシの休日の予定がアイツの気まぐれで右往左往する現状についてはまあいいとして……ちょいちょい山登りに付き合わされるのは正直勘弁して欲しい。アイツのチョイスする山はやけに険しいものばかりで、日頃鍛えてるアタシでも休日明けには筋肉痛で登校するのも一苦労になる。

まったくアイツはうら若き女子高生をなんだと思ってるのかしら?

そんな軽い不満を胸の内に秘めていると、教室の扉を開き、アタシが待っていた人物が入ってくる。

 

赤みがかかった黒い髪、あどけなさが残るものの非常に整った顔立ち。180センチ近くもある長身。細身ではあるが服の上からでもはっきりとわかる鍛え抜かれた体。そして何より、ある人には羨望と情景を、ある人には不安とちょっとした恐怖を感じさせる不敵な笑み。

トップクラスの学力を有しながらも最底辺クラスに所属している自称娯楽主義者の問題児。

アタシの友人、柊和真。

 

「わりぃ遅くなった優子、待ったか?」

「待ったわよ。いったいどこで油売ってたのよ」

多少待たされたところでアタシは気にしないけど、これくらい言ってもバチは当たらないわよね?

「HRで西村センセの雷が落ちた」

「また?今度は何があったのよ?」

「授業中俺と秀吉と翔子以外の計46名がラブレターを貰った明久を追い回してた」

「ごめんちょっと待って理解が追い付かない」

聞いていて目眩がしてくる内容だ。

「何でそれだけで学級崩壊レベルの暴動が起きるのよ……?」

「Fクラスは基本的に他人の幸せを祝福できない奴の集まりだからな」

人としてどうなのよそれは?

「だいたい坂本君は翔子の恋人でしょ?吉井君をどうこう言う資格ないじゃない?」

「あいつは明久の不幸を誰よりも喜ぶ奴だからな。そして最終的には明久に嵌められて雄二も処刑されてたな、翔子の手によって」

吉井君と坂本君は本当に友達なの?

あとどういう罠に嵌まれば恋人に処刑されるなんて凄惨な結末をむかえるのよ!?

「まぁそんなのいつものことだ。本題に入るぞ」

「いつものことなんだ……」

友達が処刑されたことをいつものことですました和真はアタシの近くの席に腰を下ろし、本題に入る。

 

「明後日に如月ハイランドに行くぞ」

「…今度は何を企んでるのよ?」

普通仲の良い男子にこんなこと言われたら、デートに誘われたと多少ときめくものだけど、こいつに限ってそれはない。

なにしろこの男、感性がお子様なのだ。

まだ思春期が来ていないのではないかと思うくらい恋愛への関心が薄い。モテるためしょっちゅう告白されているが長続きしたためしがなく、それについて気にしたそぶりも見せたことがない。心の中では傷付いている可能性もゼロでは無いかもしれないが多分ゼロね。こいつは言いたいことは言っちゃうし、やりたいことはやっちゃうタイプの人間だし。

だからこんな台詞が出てくるときは大抵何か裏がある。一年の頃は多少どぎまぎさせられたが流石にもう慣れた。

 

「清涼祭のときに雄二達が如月ハイランドのプレミアムチケットを手に入れたのは知ってるよな」

「ええ」

「雄二が明久に押し付けて明久が翔子にプレゼントしたため、今は二枚とも翔子が持ってる」

「へぇ、よかったじゃない翔子」

アタシは翔子に頼まれて召喚大会に出たものの、吉井君の策略に嵌まり敗退してしまった。あのときは悔しい思いをしたものだが、結果的に友人の望みが叶ったみたいで何よりだ。

「そのプレミアムチケットにはウェディングシフトという特典があるんだが、俺達『翔子の恋路を手伝い隊』はアシスタントとしてそれに参加しようと思う。あ、ちなみに愛子は予定があるらしく不参加だ」

「そういえば以前アタシも入隊させられたっけ……」

アタシにとって翔子はかけがえのない友人だ。あの子には幸せになって欲しいと思っている。それは和真も同じだろう。

 

だけど、

 

「アンタは坂本君が翔子に追い込まれていくのを間近で見たいってのもあるんじゃない?」

「もちろんそれもある」

せめて形だけでも否定しておきなさいよ友達なら……。

「それにアシスタントとして参加するって言ってもどうやって?」

「その点については既に明久が学園長のばーさんと取引して参加できるようにしてある、何も心配はいらないぜ」

別の意味で心配なのだけれどその内容。

何よ取引って?

「で、参加してくれるよな副隊長?」

「いつアタシが副隊長になったのよ……。まあ、構わないわよ」

こんなに楽しそうな表情をした和真の誘いを断るつもりなど最初から無い。何より和真の無茶苦茶な生き方は正直見ていて危なっかしいので、目を離すと色々と心配なのだ。

まったく、本当にいつまでたっても手のかかる子なんだから。

「おい優子、お前今心の中で俺をガキ扱いしなかったか?」

相変わらず勘も鋭い。

「そんなことないわよ」

「……まあいい。明日は当日に備えての下準備があるから良いとして、明後日の朝はお前ん家に迎えに行くから、秀吉と一緒に待機しておいてくれ」

「わかったわ」

伝えたいことを伝え終わると和真はさっさと教室から出ていってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして当日。

朝早くに如月ハイランドに集まった『翔子の恋路を手伝い隊』のメンバーの吉井君、土屋君、島田さん、姫路さん、秀吉、和真、アタシの計7名。程度の差はあるが和真以外は皆眠そうな顔をしている。もちろんアタシも朝早くに起こされてとても眠い。

和真はアタシ達を一列に並ばせると、いつもの不敵な笑みを浮かべつつ腕組みをしながら前に立った。

 

「いいかお前ら!これより『ウェディングシフト』の作戦を伝える!各々は栄えあるこの作戦の構成員としての自覚を持って行動するように!一切の容赦は必要ない!俺達の手でターゲット坂本雄二を人生の墓場へと叩き落とすのだ!」

 

「「「「「おおーっ!!!」」」」」

おかしい。アタシが聞いていた話と違う。

翔子の幸せを云々はどこいったのよ?

しかも何でアタシ以外は眠気も吹っ飛ぶほどノリノリなの?アタシが何か間違ってるの?

「ねえ秀吉、なんでアンタ達はあの悪意に満ちた演説に何の疑問も抱かないの?納得のいく説明をしてお姉ちゃんのお願い」

「Aクラスの姉上にはあまり馴染みがないじゃろうが、和真が霧島の手助けをしつつ雄二を追い詰めるのはFクラスではいつものことじゃ。姫路と島田は和真の話術によって雄二を追い込むことが霧島の幸せに繋がると信じておるしのう」

「アンタ達って本当に友達なの?」

少なくともアタシの知ってるような友達関係のそれではない。

「というかアタシ達の立ち位置アシスタントよね?何でいつのまに和真が『ウェディングシフト』の全権をにぎっているのよ……」

そのまま作戦説明を展開していく和真。

作戦の内容に思わず頭を抱えたくなるようなものが多々あったがFクラスの面々は一切疑問に思ってなさそうだったので言及しないことにする。これ以上はアタシがもたない。、

 

ピピピピピピピ  

 

作戦の説明中に吉井君のケータイが鳴る。

「あ、ごめん電話だ。えっ…と、非通知?

(ピッ)はいもしもし?どちらさまですか?」

『…………………………………………………………………………………………………キ サ マ ヲ コ ロ ス』

「え!?なになに!?本当に誰!?メチャクチャ怖(ブツッ、ツーツーツー)…………」

吉井君がやけに狼狽している。

「作戦説明中に電話してんじゃねぇよ明久」

「か、和真……知らない人から殺害予告されたんだけど、どうしよう?」

「おおかた番号通知をOFFにして雄二が電話してきたんだろ」

「あ、あの野郎なめたマネを!?」

吉井君は憤慨しているが、プレミアムチケットを内緒で翔子に渡した時点である程度予測できたでしょうに……。

「さて、作戦の続きだが―」

和真もアタシと同じ考えのようで、怒りを露にする吉井君を捨て置いて作戦の説明を続けた。

 

「―最後にウェディング体験をさせて終了だ。ムッツリーニ、指定した位置に監視カメラの設置は済ませてあるな?」

「…………問題ない」

問題しかないわよ。

「ターゲットが来たら連絡してくれ」

「…………了解」

「よし、ターゲットが来るまでそれぞれ場所で待機のち自由時間だ。それじゃあ散会!」

和真の号令と共に、持ち場へと移動していくメンバー達。その場にはアタシと和真だけが残った。

「なんかもう既に疲れたわよ……」

「なんだ優子体力不足か?そうと分かれば月曜日に体力強化スーパーハードプログラムを」

「精神的に疲れたのよ!アタシの中の常識がどんどん瓦解していくのよ!?そりゃこうなるわよ!」

弱音を吐いた途端に人をさらに地獄に突き落とす台詞をさらりと言えるこいつは間違いなくSだ。

「まあ冗談はともかく、ほれ変装アイテム」

アタシ達は如月ハイランドから支給された係員用の服を身に纏っている。これだけでは坂本君達にバレバレなので、隠密に任務を遂行するために各自変装することになっている。

で、和真がアタシに渡してきた物はというと……

 

マント

鹿追帽

オモチャのパイプ

 

アタシはシャーロック・ホームズか。

「アンタ、真面目に変装させる気あるの……?」

「当たり前だろ何言ってんだお前」

そう言って和真は自分の分の変装アイテムを全て身につけた。今の和真の格好は……

 

麦わら帽子

ダウジング

2002年眼鏡

 

「アンタ絶対ふざけてるでしょ!?いい加減殴るわよ!?」

「わかった、わかったから拳を下ろせ」

もしアタシがプライベートでここに来てこんな怪しすぎる従業員を目撃したら、おそらくそのまま回れ右して帰宅するだろう。

ワガママ言って今回の催しを任せて貰った以上、評判を悪化させる訳にはいかない。

「まあこんなもんでいいか(カチャッ)」

怪しさが倍増する三種の神器を外して和真のした変装は、サングラスをつけるだけだった。

いや、あのねぇ……

「そんなんでバレないとでも思っているの?」

「変装なんて意味ないから適当でいいんだよ」

こいつはここに来て本末転倒なことを言い出した。

「意味ないってどういうことよ?」

「明久達がボロを出さず隠しきれると思うか?」

そう言われると……。

「……アタシも意味ないような気がしてきた」

「だから俺はバレても是が非でも認めない作戦でいこうと思う。そっちのがおちょくりがいがあるしな」

「それが狙いでしょ絶対……。まあ、折角だしアタシはちゃんと変装しておくわ」

「おお、よくわかってんじゃねぇか。お前が真剣に変装してくれればくれるほど雄二の俺への腹立だしさもアップするからな」

アタシにそんな狙いは無い。

「さぁてと、準備も終わったしとりあえず将棋でもして時間潰そうぜ」

特にやりたいことも無かったので、アタシは二つ返事で了承する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………ターゲット出現。作戦開始』

 

「よっしゃ作戦スタートだぜぇ当然このゲームはお流れな!」

「あと数手で詰みじゃない往生際が悪いわよ!」

「はい終了~!仕事にかかるぞ!」  

「まったくアンタは……」

そういうところが子どもっぽいのよ。

というか20回も待ったをかけてこれって、いくらなんでも弱すぎるわよアンタ……。

 

 

 




一人称視点と三人称視点、どちらも違った難しさがありますね……。  



次回は流石に雄二視点で進めます。
以下オマケ。

【ミニコント】
テーマ:積み重ね

和真「しかしいつみてもすげぇ筋肉だな」

明久「ほんと人間離れした体ですね鉄人(ゴンッ)痛ぁっ!?」

鉄人「西村先生と呼べ。……しかし俺とて初めからこうだったわけではない。この体は日々の鍛練の賜物であり、大切なのは1の積み重ねだ」

和真「あー、だから宗一って名前なのか」

鉄人「名前は関係無い」

明久「あれ?でもおかしくないですか?1の積み重ね……って、1×1でずっと1ですよ?」

鉄人「どういう発想をすれば積み重ねが掛け算になるんだ……(ハァ)」






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