バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~ 作:アスランLS
「ははっ。こいつは傑作だね」
「おや学園長、どうかなさいましたか?」
「ああ、綾倉先生かい。なに、ちょいと試験召喚システムの操作系統を変えてみようと弄っていたんだけどね」
「ほほう、ようやくオカルト仕様から復旧させられたというのにもう弄くり回したのですか。途中からメンテナンスを私に丸投げしておいて良い御身分ですね学園長」
「アンタ最近黒いのを隠さなくなってきたね……今回はすぐもとに戻せるんだからそう堅いこと言うんじゃないよ」
「……まあ良いでしょう。して、操作系統の変更とは具体的にはどのように?」
「半自動化を試してみたのさ。従来の召喚獣がはっきりとした意識のみを読み取っていてとしたら、今回定めた設定はその一歩先の意識と無意識の間あたりも読み取って、ある程度自立的に行動できるようにしてみたんだよ」
「なるほど、実用性はともかくとしてなかなか面白い試みですね」
「若干言動に刺があるけど、まあそういうことさ。コイツは是非とも実際に喚び出してデータを採りたいところだねぇ」
「データ採取でしたら私が協力致しますが」
「いやいやいや……アンタの点数だと試運転に使うには召喚獣が強すぎる。何かがあったら困るからね」
「面倒ですが故意に一度低い点数を取りましょうか?面倒ですが」
「二回も言わなくて良いんだよ。それに、そんな効率の悪いことしなくても……」
『明久テメェ!なんであのタイミングでくしゃみなんかしやがるんだ!途中まではうまくいっていたってのにこのバカ野郎!』
『雄二こそ!あのタイミングでお腹が鳴るなんて何考えてるんだよ!あれがなければうまくいっていたのにこのクズ野郎!』
『ええいキサマら!いいから補習に戻らんかあっ!』
『『くそぉおおっ!』』
「あのバカどもに補習を抜け出した罰としてやらせた方が効率がいいさね」
「なるほど、確かに丁度良いですね。……しかし学年末テストの結果に目を通しましたが、彼らの成績は飛躍的に向上しています。念のために私の方から召喚獣スペックをデチューンしておきましょうか?」
「その作業はどのくらい時間がかかるんだい?」
「カップ麺を作れる程度の時間があれば充分かと」
「相変わらず仕事が早いねぇ……」
【和真視点】
「「「召喚獣の試運転?」」」
「ああ。そいつをアンタらにやってもらいたいのさ」
夏休みも終わりに差し掛かったある日、Fクラス特別補習が終わってから一緒に海に行ったメンバー(蒼介は欠席、愛子は部活のため後から遅れてくる)で写真を見ながら雑談をしていると、そこにばーさんがやってきてそんなことを言いだした。ふむ、なかなか面白そうな話じゃねぇか。
「どうしてウチらなんですか?」
見ていた写真を片付けながら島田が尋ねる。
「どうしても何も、アンタらが適任だからさ。アンタらは召喚獣の扱いにも慣れているし、ついでに補習から脱走しようとしたバカどもへの罰にもなるからね」
「「……………(サッ)」」
咄嗟に目を逸らす明久と雄二。なるほどな、さっきこいつらが西村センセに捕まったのに特にお咎めなく解放されたのはそういうカラクリか。
「あの。試運転って、具体的にはどのようなことをするんですか?」
話を戻すように、姫路が手を挙げてばーさんに問いかける。
「特にこれといったテスト項目はないさね。召喚して、適当に動き回らせるだけでいいさ。なんの動きもさせないのはテストにならないから困るけどね」
「あ、それだけでいいんですか。それなら私でもできそうです」
安心したように胸の前で手を合わせる姫路。こいつはホント高城先輩並に騙されやすいな。「脱走の罰としてやらせることの割には妙に簡単過ぎる、何か裏があるんじゃないのか?」、とか思わないのかよ。……まあ、間違いなく裏があると確信しているにもかかわらずノリ気な俺がとやかく言えることじゃねぇけどよ。
「それでしたら、私もお手伝いします学園長先生」
「……私も」
「アタシも構いません」
「俺も別に良いぜ?つか、やらせろ」
名乗り出たのは姫路、翔子、俺、優子の四人。
「アンタらはダメさね、点数が高すぎる。あらかじめ綾倉先生が暴走したときに備えて召喚獣のスペックを一時的にデチューンしているとはいえ、軒並み4500点オーバーのアンタらに頼むのは流石にリスキー過ぎる」
チッ、なんだつまらねぇ……まあ確かにばーさんの言い分はわからんでもない。白金の腕輪の件でも色々あったしな。
「そう言うワケで試運転は吉井・坂本・土屋・木下・島田に頼むよ、科目は古典でね。試運転の時間は今から一時間。召喚フィールドは試運転用に学校全体に展開しておくけど、一応この教室から出ないように。データが採りにくいからね。うまくやってくれたら……そうさね、学食の食券か図書券くらいは進呈してやろうじゃないか。ただでやらせるのもなんだしね」
「「「おー」」」
学園長の進呈という言葉に、島田と秀吉とムッツリーニが感嘆の声をあげる。現金だなお前らも。
「じゃあ頼んだからね。報酬を出すんだから……絶対に途中で投げ出すんじゃないよ」
そう言い残してばーさんは教室から出ていった。
「ご褒美を用意してくれるなんて学園長もいいところあるわね。丁度欲しい本があったから助かるわ」
「…………図書券はいくらあっても困らない」
「学食の食券でもありがたいのう」
「良かったですね皆さん」
「……ちょっと羨ましい」
「まあ仕方ないわよ翔子。学園長の言った通り、万が一暴走したら大変だし」
まったくこいつらときたら、揃いも揃って素直な連中だなぁ……まあ、ばーさんとさほど交流がないから仕方無いのかもしれねぇがよ。
「「…………」」
おーおー、雄二と明久はしっかり警戒してるな。
「じゃあ、さっさと始めちゃいましょう」
「そうじゃな。こうしておっても始まらん」
「…………了解」
そんな明久達の懸念には気付かず、既に島田達は召喚を始めようとしている。こいつらホラー映画だと真っ先にくたばる役だろうな。
「三人ともちょっと待っ……」
「「「試験召喚(サモン)っ!」」」
明久の決死の静止もむなしく三人が声をそろえてキーワードを唱えると、お馴染みの幾何学模様から召喚獣が姿を現す。さて、鬼が出るか蛇が出るか……?
「良かった。サイズは前のやつに戻ってるみたいね」
「やはりこっちの方がしっくりくるのう」
「…………耳と尻尾も以前と同じ」
三人の言う通り、見た限りでは殆ど見慣れた召喚獣と全く同じであった。強いて違いを挙げるとすれば……
「……武器を持ってない」
「服装も学校の制服みたいですね」
「装備をリセットするって言ってたから、そのせいなんじゃない?」
翔子、姫路、優子も会話に加わる。そう、現れた召喚獣は文月学園指定の制服姿で手には何も持っていなかった。三体ともそうであるところから、装備を設定していないときのデフォルト形態だと推測できるな。
「一応、今の所おかしな部分は見当たらないね」
「安心するのはまだ早いぞ明久。さっきのババァの話しだと、変更したのは操作性の部分らしいからな。動かしてからが本番だろ」
「ふむ。ならば、さっそく動かしてみようかの」
見た目の確認を終えて、秀吉が自分の召喚獣に指示を出そうとする。その時、
《では、明久に飛びついて驚かせてみるのじゃ》
「「「へ?」」」
子供のような高い声が、教室に響き渡った。
今の口調……あー、そういう機能か……。こりゃ俺が参加しなくて良かったかもな。
「い、今の……何かしら……?」
「小さな子の声が聞こえましたけど……」
辺りを見渡して見る限り、子供どころか俺達以外の姿はどこにも見当たらない。まあ、犯人は目の前にいるんだがな。
「ほんのつい最近召喚獣が妖怪になっておったから、そのせいで今度は心霊現象でも起こったのじゃろうか?」
「「えぇぇええっ!?」」
相変わらずビビりだなこいつら……見ていて面白いから別に良いんだけどよ。
「けど、おかしくない?それだと操作性の変更とは全然関係ないじゃないか」
「だな。そうすっと、あの声は心霊現象なんかじゃないってことか?」
「…………そもそも、召喚獣とは無関係かもしれない」
残念、がっつり関係してるんだなこれが(笑)。
そんなことを内心で思っていると、
《今の声はどこから聞こえてきたんじゃろうか?》
もう一度さっきの声が聞こえてきた。
さて、そろそろ気づくかな?
「もしかして今の、秀吉?」
「いや。ワシは何も喋っておらんぞ?」
「でも、今の話し方って秀吉そっくりだったような……」
《な、何……?お化け……?うぅ……怖いぅぃ……っ!》
《…………この声、変声期前の児童のもの》
さらに次々と子供の声が聞こえてくる。うわっ、姫路達露骨に震えてやがる……面白っ!
「ど、どこかにスピーカーでも隠してあるとか、そういうのですよねっ」
「そ、そうよっ。そうに決まってるわ」
「…………その可能性は低い」
ムッツリーニが姫路達の言葉を即座に否定する。その言葉を聞いてますます震える二人。
「和真、美波達が可哀想だからそろそろ答えを教えなさいよ。アンタはもうわかってるんでしょ?」
「やれやれ、優子もせっかちだなオイ」
「柊っ!もったいぶってないで早く教えなさいよ!」
「何なんですか柊君この声は!?」
「わかったわかった、そう急かすな。……それだよそれ、犯人はそいつらだ」
その場にいた全員が俺の指差した方角に目を向けると、そこにはさっき喚び出した三匹の召喚獣がいた。
《それにしても、困ったのじゃ。今朝のことはどうしたら良いじゃろうか……》
《怖い怖い~!お化けとか、ウチ本当に嫌なのに~!》
《…………この視点の低さ。悪くない》
「しょ、召喚獣が喋ってる!?」
「へぇ~。こりゃ面白いな」
召喚獣たちはそれぞれ腕を組んだり、その場に頭を抱えてしゃがみ込んだり、低い姿勢から頭上を見上げてみたりと、思い思いの行動を取っていた。……この召喚獣達の行動から察するに、俺が予想してた余計なオプションも付いてるみてぇだな。
「と、とりあえず、心霊現象とかじゃないみたいね」
「はぁ……。良かったです……」
お化けの類が苦手な姫路と島田が胸を撫で下ろしている。ホントこいつらは弄ってて飽きねぇな。
「しかしまぁなんつーか、操作性の向上というよりは自動化って感じだよな。これ、お前らが指示してるわけじゃないだろ?」
「…………特に何もやらせてない」
「ワシもあのような動作をさせておらんの」
喚び出された召喚獣は、さっきから溜息をつく仕草をしてみたり、胸を手に当てたり、仰向けに寝転がったりしている。やれやれ判断が甘いなお前達、こいつらの本当の厄介さは……
《お化けじゃなくて良かったぁ……。危うく前の肝試しのときみたいに、また眠れなくなって葉月と一緒に寝なきゃいけなくなるところだったわ……》
《まさかまた近所の男子中学生に告白されるとは……。こんな話が明久達にバレてしまえば、ワシは更に女扱いされてしまう。なんとか秘密裏に断らねば……》
《…………この視点の低さなら、いつでもスカートの中を見られる……!》
……こういうところだぜ。
「美波……。今召喚獣が言っていた、肝試し以来お化けが怖くて葉月ちゃんと一緒に寝てるって話本当なの?」
「木下君……。ついに学校外の男の子にまで告白されちゃったんですか……?」
「ムッツリーニ……は、別にいつも通りだな」
明久達がそう問いかけると、三人はそれぞれ否定の姿勢で返事をした。
「な、何を言ってるのよアキ!召喚獣が勝手にウチがまったく思ってもいないことを喋ってるだけよ!ウチがお化けを怖がるとか、そんなのありえないもの!」《寝る時だけじゃなくて最近はお風呂も一緒かな。だって、髪洗うとき怖いんだもん!》
「島田の言う通りじゃ。いくらなんでも、男のワシが近所の男子中学生に告白されるなぞ、嘘にもほどがあるぞい」《今月はこれで三人目じゃ》
「…………スカートの中に興味なんてない」《…………スカートの中にはロマンや夢や希望があり興味は尽きない。タイト・ミニ・ロング・フレア・プリーツなど様々なスカートがありそのどれにも異なった魅力があるが、キュロットだけはスカートを名乗るべきではないと思う。あれにははあれで独特の魅力があるものの、防御力が高すぎてー》
語るに落ちるってこういうことを言うんだな。
「秀吉ったら、相変わらずアタシより男子にモテるのね……」
「なんだ優子、お前まだそんなこと気にしてたのかよ?はぁ、俺が捨てられる未来もそう遠くはないということか……」
よよよ……と、無性に悪ふざけがしたくなった俺がわざとらしい泣き真似をしていると……
ちゅっ♡
頬に未だ慣れない柔らかい感触が。
「誰もそんなこと言ってないでしょ?それに……そんな未来は永劫こないわよ。それにアタシは死ぬまでアンタの側にいるって、かなり前から決めてたんだから♪」
そう言って優子はウィンクをしつつ、俺に向かって微笑みかけた。
…………なんというか……うん……。
「お前……なんかずるい……」
「ちょっと、人聞きの悪いこと言わないでよ」
ここんところ優子に主導権握られっぱなしで、完全に力関係が出来上がりつつあるよなぁ……。別にそれほど嫌なわけじゃねぇんだけど……やっぱなんとなく悔しいから、近い内に何かしら手を打たねぇとな、うん。
《でも冷静になると、ちょっと勿体なかったかも。意地を張らずに怖いって言って、アキに手でも握ってもらえば》
「ちょ、ちょっとぉーっ!?本当に何言ってのよーっ!」
言って欲しくないことを口にされたので美波が慌てて召喚獣に飛びかかるも、美波の召喚獣はその手をひらりとかわして逃げ回り、明久の足にしがみ付いた。いつまでも意地っ張りなままの本体より召喚獣の方が上手く行きそうだなオイ。
「って、あれ?美波の召喚獣に触れる……?」
「あのババァのことだ。また細かい部分の調整に失敗したんだろ」
「ん~……どうも、そんな感じだね」
本来明久以外の生徒の召喚獣は物理干渉ができない。点数が未だに表示されないことも合わせて、雄二の推測は概ね正しいだろうな。
「そんなことどうでもいいから、とにかくその子をこっちに寄越しなさいアキ!」
《やっ。ウチはアキのところにいるっ》
そう言って明久の足から離れない美波の召喚獣。
「え?今、召喚者の意思に逆らいませんでしたか?」
「こいつは俺の推測だがよ、本能や無意識に思っていることを優先的に読み取ってるんじゃねぇか?」
もしこの推測が正しいのなら、ますます俺は召喚しない方が良いだろう。
「なるほど。それで体面より欲求に従った行動を取るワケか」
「……さらに自動化のために自己を形成させたとしたら、幼児に近いものになるのも頷ける」
当然こんな小難しい話に明久がついていけるハズもなく、頭上に沢山の?マークを浮かべていた。
「えっと、要するに?」
「……この子たちは、幼児程度の行動原理を持ち、自我があると言うこと」
「つまり、本音を喋っちゃう自分自身の子供の姿、といった感じですね」
「要するに、本人から理性を外して幼児退行させたようなモンだと考えりゃ良い」
俺の噛み砕いた説明を聞いた辺りで、ようやく明久は理解できたようだ。
「そっか、子供の姿か。だから美波の召喚獣はこうなんだね」
《アキ、抱っこ》
「抱っこじゃないでしょうが!何甘ったれてるのよ!いいから離れなさいっ!」
《やーっ》
島田が明久の足にしがみついている召喚獣を引きはがそうと悪戦苦闘している。シュールな絵面だなオイ。
「ま、気にしなくても大丈夫だよ美波。こういうの、慣れてるから」
「え?慣れてるって?」
「どうしてか知らないけど、僕って昔から小さな子に好かれるんだよね」
「知能レベルが近いからだろ」
「黙れ雄二」
「むしろ負けてるよな」
「和真、貴様もか!?」
「すまん明久、召喚獣が勝手に(笑)」
「喚び出してもいないのに召喚獣に擦り付けるんじゃない!」
俺達を睨みつつ明久が頭を撫でてると、島田の召喚獣は気持ちよさそうに目を細める。
《あのね、あのね、アキ》
「ん?なに?」
《ウチね、いつもは酷いことをしてるけど、ホントはアキのことが》
「きゃああああーっ!」
「ぎゃああああーっ!」
島田が持ち前のヘタレを発揮して明久に間接を極める。あーあ勿体無ぇ、ここさえ我慢すれば姫路より一歩リードできたのにな。
「ちょっと、本当に何を話そうとしてんのよ!?どうしてウチの分身なのにウチが困るようなことを言うの!?」
《アキ、大丈夫?痛くない?ごめんね?》
「こらっ!ウチの話を聞きなさい!」
おーおー、普段内側で闘ってる理性と本能が外側でも闘ってら……愉快愉快♪
《参ったのじゃ……あの少年、いくらワシが男じゃと言っても聞いてくれんのじゃ》
《スカートの魅力はたくさんあるがその中でも特筆すべきはそこに内包される可能性つまり見えるかもしれないと言う希望を提供すると言ういわば優しさにも似た-》
「むぅ……。この召喚獣、なんとかして消したいのじゃが……」
「…………召喚フィールドが広すぎて範囲外に出られない」
秀吉達も自由に話し続ける召喚獣に困ってるな。フィールドは学校全体に広がってるから簡単には消せねぇし、自由に動き回るから目を離せない。完全にばーさんの思う壺だなこりゃ。
「それにしてもこれは凄いな。ムッツリーニはともかく。秀吉が隠そうとしていることまでわかるなんて、なかなかできることじゃないぞ」
優子なら力づくで聞き出せるがな。
「そうですよね。木下君のポーカーフェイスは凄いですから」
優子は結構な頻度で平然と見破ってくるらしいがな。
「いやいや何を言うのじゃ雄二に姫路。ワシは常に自然体じゃと《演技を褒められたのじゃ。嬉しいのじゃ》………………」
その場でぴょんぴょんと跳ねて喜ぶ秀吉の召喚獣。
お、明久が何か思いついたようだ。
「あのさ、秀吉」
「な、なんじゃ明久?」
「秀吉は男子に告白されたことってある?」
「あるわけなかろう」《ここのところほぼ毎日じゃ》
「「「毎日!?」」」
そういや以前に飛鳥もそんなことを愚痴ってたな、同性から毎日のように告白されるって。
「ななななんてことを言うのじゃ!明久よ!今のはこやつの嘘じゃからな!?本当はワシは《金曜日と月曜日は特に多いのじゃ》違うのじゃ!ワシは男に告白などされておらんのじゃ!」
週始めに玉砕覚悟で告白する奴と、週末だからダメもとで告白する奴が多いんだろうな。
「あ、あれはその……きっと姉上と間違えられておるだけなのじゃ!《宛名を何度確認してもワシの名前が書いてあったのじゃ》だから違うのじゃ!」
「秀吉アンタ、この学校でアタシに告白してくる生徒がまだいると思ってるの?」
「俺と優子の関係は、俺の知り合いなら全員知ってるからな」
それはつまり全校生徒及び全教職員に知れ渡っているということだ。それを知った上でなおアタックしようとするチャレンジャーは……いたらいたで面白ぇが、今のところ確認されていないな。
「んじゃ、今度はムッツリーニに何か聞いてみっか。ムッツリーニ、お前は……」
《…………話しかけるな。今、スカートについて考えるのに忙しい》
「…………………すまん」
「…………っ!(ブンブンブン)」
こいつ、いつもと何も違わねぇな……。
「じゃあ、最後は……」
「島田だな」
「な、なによ……?」
明久と雄二の視線を受けて、一瞬美波がたじろいだ。そして、気を取り直すように咳払いをして二人に告げる。
「い、言っとくけどね!ウチに隠し事なんて何もないんだからね!アンタたちがいくら質問しても《実は昨日、下級生の女の子に告白されて》いやぁああーっ!」
「「「…………」」」
ものの見事にに自滅したな……。
「それにしても優子、ウチの学校いくらなんでも同性愛者が多すぎねぇか……?」
「そうね……。アタシも以前何度女子に告白されたことか……」
前々から思ってたんだけどよ、同性にモテるのは木下家が背負った業か何かなのか?
「ひ、卑怯よアキ!そうやってウチの恥ずかしい秘密を聞き出すなんて!」
「いや、今のは美波の自爆のような……」
「問答無用よ!いいからアンタも召喚獣を出して本音を喋りなさいっ!」
《本音?本音って、好きな人のこと?ウチの好きな人はね、》
「アンタは黙ってなさい!」
まあ、いくら明久でもこの状況で召喚獣を喚ぶわけがねぇよな。だが明久、気をつけろよ?俺達の周りにはお前が思ってる以上に狡猾な奴が多いぞ。
「……本音を喋っちゃう、召喚獣ですか……」
ほら、さっそく姫路が紙とペンを取り出してある四字熟語を書き始めた。あの熟語の読み方、間違いなく明久に召喚獣を召喚させるためのトラップだろうな。
「あの、明久君」
「ん?なに姫路さん」
「これ、なんて読みますか?」
「えっと格差問題(かく
「はい。正解です」
明久の答えを聞くと、姫路はにっこりと微笑んだ。明久、ドンマイ……。
ポンッ←明久の召喚獣登場
「しまったぁあああーっ!!」
「ごめんなさい明久君っ。でも、どうしても本音で聞きたいことがあるんですっ」
成績が上がったことが裏目に出たな。
「ははっ。相変わらずバカだな明久」「……雄二。法の精神を書いた人は?」「モンテスキューだろ。お前はいきなり何を言って」
あきひ
ポンッ←雄二の召喚獣登場
「しまったぁあああーっ!!」
翔子のさりげないトラップに綺麗に引っ掛かり、雄二の召喚獣も喚び出された。雄二はバカだなぁ……人の不幸を笑ってるからそうなるんだよ。
「何故かしら和真……たった今物凄くアンタに『アンタが言うな!』ってツッコまなければならない気がしたわ」
「そうか、そりゃ間違いなく気のせいだな」
俺は人の不幸が好きなんじゃねぇ……人を追い詰めるのが好きなんだよ。ちなみにそうして追い詰めた奴が、死力を尽くして不幸を克服するような熱い展開はもっと好きだ。
「ナイスよ二人とも!さぁアキ、答えなさい!アンタの好きな人は?」
《あのねあのね、ウチが好きなのはね》
「アンタは言わなくていいの!さぁアキ、答えなさい!」
「あ、明久君っ!私も知りたいですっ!」
「……雄二。私のことをどう思っているのか、聞かせて欲しい」
三人の視線が明久と雄二の召喚獣に集まる。
ちなみに二人の召喚獣はというと……
《バカ明久!お前の名前のせいで召喚しちまっただろうが!》
《アホ雄二!人の不幸を笑うからそんな目に遭うんだ!》
取っ組合いの喧嘩をしていた。
うん、いつも通りの光景だな。
「明久!テメェの名前のせいで召喚されちまったじゃねぇか!」
「何を言ってるのさ!元はと言えば雄二が脱走に失敗するからこんなことになったんだろ!」
その証拠に本体も同じように喧嘩してるしな。
「あの、明久君っ。坂本君のことじゃなくて、好きな人について考えて見て下さいっ」
「そうよアキ!人のだけ聞いておいて自分は逃げようなんて許さないんだから!」
「……雄二。本当の気持ち、聞きたい」
《ムキー!雄二のアホー!》
《うぎー!明久のボケー!》
「くたばれ雄二!責任を取れ!」
「死ぬのはお前だ明久!地獄に落ちろ!」
「明久君っ」
「アキっ!」
「……雄二……!」
そんな不毛なやり取りをしているところに、
「皆お待たせー。って、なになにー?なにか面白そうなことやってるねっボクらも混ぜてよっ」
部活を終えた愛子が遅れて合流してきた。同情するぜお前ら……このトラブルメーカーが関わるとロクなことにならねぇからな。
「ねぇ和真、また突っ込みたくなったんだけど」
「よかったな優子、今回はあってるぞ」
俺がトラブルメーカーだってのは否定しねぇ。
え?ダウト?放課後に和真君が教室に残っているとでも?
原作通り明久と雄二が屈辱的な目にあって終了しましたよ。