バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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ちなみに一人称視点を誰にするかはそのときの気分、物語の書きやすさ、そしてツッコミ属性の有無で決めています。多少は常識を持ち合わせてくれないと地の文が成り立ちませんからね……。


本音を喋る召喚獣②

【雄二視点】

 

「へぇ~。本音を喋る召喚獣か~。面白そうだねっ」

「「「全然面白くないっ!」」」

事情を聞いた工藤は楽しげにそう言った。自分が喚び出してないならさぞ面白いんだろうな!

「じゃあホントに本音を喋るのか、確かめてみようかな~」

「「「…………っ(ササッ)」」」

ターゲットにされまいと俺達が目を伏せる。

「あれ?和真君は召喚してないの?」

「生憎、俺の点数だと暴走したらヤベェっつってばーさんから止められていてな」

「むー、色々聞きたいことあるのに……仕方ない、それじゃムッツリーニ君」

「…………(ピクッ)」

「ボク、ちょっとキミに聞かせて欲しいことがあったんだよね~」

工藤がムッツリーニを見てにやぁ、と笑みを浮かべる。よしっ、当面の危機は去った!

「ねぇムッツリーニ君。一つ聞かせて欲しいんだけど」

「…………こっちは話すことなんか《…………エロの話しなら大歓迎》……何もない」

早速召喚獣が真逆の反応をしてやがるな。工藤はムッツリーニの目を覗き込んで、悪戯っぽく問いかける。

「あははっ。そういう話もいいけど、今ボクが聞きたいのはちょっと違うんだよね~。……ねぇ、ムッツリーニ君」

相手に考える時間を与えるためか、一瞬間を開けて言葉を続ける工藤。

「いつもは『興味ない』って言ってるけど……ホントはボクに、興味があったりしない?」

そう工藤が問いかけると、ムッツリーニはフッと小さく笑ってから答えた。

「…………何をバカなことを」

《…………スパッツの中はどうなっているんだろう》

「…………っ!!(バシバシ)」

《…………痛い》

思わず本音をぶっちゃけた自分の召喚獣をひっ叩くムッツリーニ。……まぁこいつが工藤のスカートの中に興味があることなんざ周知の事実だから、いちいち確認することでもないな。

「あははっ。本当に喋るんだね。面白~い」

「…………面白くない……っ!」

《スパッツの中、見たい》

「…………っ!(バシバシ)」

《…………叩かないで欲しい》

「あははははっ」

やけに楽しそうだな。しかもそんなことを聞わざわざ聞くってことは工藤はもしかして……まあ、俺には関係ないか。

「じゃあ、もうちょっと遊んでみようかな~?」

「「ん?」」

今度は工藤がムッツリーニから視線を動かし、俺と明久を交互に見る。何だ?とてつもなく嫌な予感がするんだが。

「ねぇ、吉井君、坂本君」

俺達の名前を呼びつつ、工藤は自分のスカートの裾をつまんだ。

「スパッツだからつまらないかもしれないけど……」

またもや相手が考える為の間を取る工藤。何を企んでいるんだ?

「ボクのスカート……めくってみる?」

そう言って、工藤はピラピラと自分のスカートの裾を上げ下げした。ふっ、俺も随分甘く見られたもんだな。

「何を言ってるのさ工藤さん。僕はそんな《めくらせて下さい》いやらしい人間じゃないよ」

「そうだぞ工藤。俺達をからかっても《待て明久、俺が先だ》無駄だからな」

「アキ、ちょっとこっち来て」

「明久君。お話があります」

「……雄二、おいで」

あ、臨死体験の予感。

 

~しばらくおまちください~

 

「まったく、少しは懲りなさいよね。そうやっていやらしいことばかり考えてると、また問題になっちゃうんだから。ね、瑞希?」

「え?そ、それはその、えっと……いやらしいことは年頃だから仕方がないかもしれないですけど……。と、とにかく、愛子ちゃんをそんな目で見るのはダメですっ!あんまりそういうことを考えると、私も美波ちゃんと一緒にお仕置きをしちゃいますからねっ」

「……雄二。浮気は許さない」

「「肝に銘じておきます」」

俺と明久が二人で額を畳にすりつけて謝る。

工藤め、俺達に何の恨みが……!

「ごめんねムッツリーニ君、吉井君、坂本君。ちょっとからかっちゃった」

謝るくらいなら始めからしないでくれ、こっちは命がかかってるんだから。

「…………俺は工藤に興味なんてない」 

「酷いよ工藤さん」

「ちょっとは自重してくれ」

「うん。からかって嘘なんかついちゃってゴメンね」

「反省してるならいいけど……ぅん?嘘?」

嘘だと……?何の話だ?

「そう。ボク、嘘ついてたんだ。ホントはボク……」

ギリギリまでスカートを持ち上げて、工藤が告げる。

「今日、スパッツ穿いてないんだ」

《…………っ!!(ガタッ)》

《…………っ!!(ガタッ)》

《…………っ!!(ガタッ)》

「「これは違うんだぁーっ!」」

「「「いいからこっち来なさい」」」

 

~しばらくおまちください~

 

「やべぇ……。意識が朦朧としてきた……」

「まずいね……。僕も指先が少し震えてきたよ……」

「むしろよく意識があるなお前ら……」

畳に倒れ込んだままでの俺と明久に和真が話しかけてくる。お前とは鍛え方(死にかけた回数)が違うんだ。……と言いてぇところだが、起き上がれるほどの体力はもう残ってねぇな畜生。

「……雄二。私だってスパッツを穿いてない」

「アキってば、どうしていっつもそんなにいやらしいことばかり考えてるのよ」

「明久君っ。ちゃんと反省してくださいっ」

倒れている俺達にに女どもがそう言う。んなこと言われても仕方ねぇだろうが!和真や鳳みたいなレアケースがそうそういると思うんじゃねぇ!

「…………(ぐったり)」

ちなみにムッツリーニは鼻血で倒れて動かない。こいつはいつも誰が手を下すまでもなく勝手に自滅するよな……。

《アキのバカっ。すけべっ》

あと、明久の背中の上では島田の召喚獣が飛び跳ねていた。鳳のお陰で多少向上したとはいえ古典の点数はまだまだ低いため、まったく痛そうではなかった。翔子もあれぐらい攻撃力が低ければ……。

「それとね、三人とも。今朝ボクちょっと寝坊しちゃって、ブラする時間が」

「「もう勘弁()()()()()()()()()()()》して下さいっ!」」

畜生、恨むぞ俺の無意識!というか工藤は俺達を追い詰めてそこまで楽しいか!?こいつも和真と同類なのか!?……って、翔子がこっちに来るぅぅぅ!?うわぁぁぁ死ぬほど怖ぇぇぇ!?

「……雄二」

「ち、違うぞ翔子!これは男として仕方ない反応で」

無駄なことだとわかっていても、抵抗するしかないじゃねぇか!そんな俺の弁解にもお構い無しに翔子はどんどん近づいてきて-

「……えい」

「んぉっ!?」

 

…………ええと、何だこの状況?

 

よし、一旦落ち着いて整理してみよう。俺の頭は翔子の胸の中に抱き抱えられて……!?!?!?

「……嬉しい?」

「ば、バカを言え!こんなのが嬉しいわけが《イィィヤッホォォー!》あるかぁぁぁあああーっ!!」

声を絞り出せ坂本雄二!声帯が潰れて今後一切喋れなくなっても構わないからこのボンクラ召喚獣の声を打ち消すぐらい叫びを上げるんだ!……って翔子!?なんだその嬉しそうな笑顔は!?更に抱き寄せてくるんじゃない!?

「……じゃあ、もう少しこうしててあげる」

「何を言ってやが《キャッホォォー!!》放せぇえええーっ!」

必死に抜け出そうと暴れるがもがけばもがくほど柔らかい感触が……って違う!邪念を捨てろ坂本雄二!そして少し離れた場所で嗜虐的な笑みを浮かべているであろうサディストのことを失念するな!木下姉との関係を散々弄られた報復の機会を虎視眈々と狙っているに違いないんだぞ!?情けや容赦とは無縁な和真のことだ、下手しなくても婚姻を早めるよう画策してくることは間違いない!

《いいなぁ雄二!羨ましいっ!羨ましいよっ!》

「明久君っ。翔子ちゃんもそう言う目で見ちゃダメですっ」

「アキ。まだ反省が足りてないみたいね?」

俺の将来が窮地に立たされている一方、明久は生命の窮地にたたされていた。

 

 

 

 

 

 

 

《優子視点》

 

「どいつもこいつも綺麗に墓穴を掘っていくなぁ……同情するぜ♪」

「まったく同情してないじゃないその顔……」

「あ、バレた?」

バレたも何も最初から隠す気すらないでしょうに……。ちなみにアタシと和真から少し離れた場所では吉井君が正座のまま瑞希にお説教されていた。最初は美波も隣にいたけど召喚獣が《ウチのちっちゃな胸でも喜ぶのかな?》とか言い出したので慌てて離れていった。頑張って美波、同志として応援してるから。

「……明久君、聞いていますか?」

「は、はいっ。勿論っ」

《怒ってる姫路さん可愛いねっ。今日は痛いお仕置きもされないし》

「のぉおおーっ!」

「あ、明久君っ!?」

吉井君の召喚獣がそんなことをのたまっているけど、後半はアタシの聞き違いかしら……?

「ねぇ和真。さっきまで吉井君、立ち上がれないほど痛め付けられてたわよね……?」

「明久も雄二も伊達に死線を潜ってねぇからな、死にかけてないなら大したことないんだろうよ」

「訓練され過ぎでしょ……」

「優子、頼むから変な影響受けんなよ?まぁ、もしお前がああなったら俺は全力で抵抗するけどな」

「言われなくてもわかっているわよ」

「ならいい」

和真と交際してから和真の変化に殆どの人が驚くけど、実際はそんなに変わっていなかったりする。理不尽な暴力には決して屈しないし、命令や指図や束縛をされようものなら、その相手を捩じ伏せることすら一切躊躇しない。

そしてそれは……アタシが相手でも例外じゃないでしょうね。上手いこと誘導することは可能だけど命令や指図は聞く気ゼロだし、翔子達みたいに暴力を振るおうとしたり無理矢理従わせようとしたら……容赦なく反撃した上で躊躇いなく絶縁してくるでしょうね。

和真を手懐けるコツ?そうね……優しさと包容力かな。意外と甘えたがりだしね……アタシ限定だけど。

 

「(コホンッ)と、ところで明久君っ」

「な、なにかな姫路さん」

《やっぱりお仕置きされるの?》

身を乗り出してきた瑞希に吉井君は怯えたように一歩引いてしまう。まあ、無理も無いかな……。

「いえ、そうじゃなくて……。その、突然ですけど……あ、明久君は……好きな人はいますかっ!?」

「ほぇ?急にどうしたの?」

《ほぇ?急にどうしたの?》

…………和真から鈍感だとは聞いていたけど、まさかここまでとはね……。あんなド直球の質問なのにどうして理解してないのよ……?

「……改めて知りましたけど、明久君ってこういう時、本当に質問を理解してないんですね……」

《どうしてこの状況で急に好きな人なんて聞いてきたんだろう?もしかして、最期に僕の好きな人に思いを伝えてあげるから安らかに眠れっていうことかな?そういえば先週見た映画でそんなシーンがあった気がする。死にかけの戦友の手を握って遺言を聞くところ。あの時はそのあと、火を点けたタバコを口にくわえさせて貰って、戦友はゆっくりと天に召されていたっけ……ってことは、この後僕はタバコを吸うことになるのかな。未成年だけど、大丈夫なのかな……?》

「あの、姫路さん。僕はまだ成人してないんだけど……」

「しかも、壮絶に明後日の方向に勘違いしていますし……」

いや、流石におかしいでしょ!?

「好きな人の有無を聞かれたのになんで最終的に喫煙の話になるのよ……?」

「改めて思うがアイツの思考回路は恐ろしいな。俺は感覚でなんとか理解できるけど常人にゃ無理だな」

ホント便利ねアンタの勘……。

 

《アキはウチと両想いになるのかな?気になるね?》

「こらぁーっ!ちょっとアンタは黙りなさいーっ!」

《やーっ》

「やーじゃないのっ!」

少し離れた場所で美波が自分の召喚獣と格闘してる。吉井君にもバッチリ聞こえてるわよね?実質もう告白してるようなものだけど……多分理解してないわね、あの様子だと。 

 

「そうじゃないですよ明久君。私が聞いているのは、純粋に、今明久に好きな人がいるのかいないのか、ってことだけです」

「え?なんだ、そういうことか。……でもそういうのは、あんまり人前で口にするものじゃ-」

《えっとね。僕が好きなのはね、》

「大空へ羽ばたけぇぇぇ!!!」

《ふぎゃぁーっ!》

「ああっ。小っちゃな明久君がっ」    

召喚獣が余計なことを口走る前に、吉井君はゴミ箱にドライブシュートで蹴り込む。へぇ、なかなかのキック力ね。

 

「……雄二。雄二はどう?私のこと、好き?」

「ふん。くだらねぇ。そんな質問に答える義務は」

《俺?俺は勿論……》

「ここだ!ここで決めるんだ!」

《みぎゃあーっ》

「……雄二、酷い」

 

あっちはあっちで坂本君が召喚獣にイーグルショットを喰らわせていた。というか、さっきから思ってたけど……

「絶対アンタの影響でしょアレ……」

「『キャプテン翼』は不朽の名作だ。ただし無印に限るけどな」

ああ、確かドイツ・アルゼンチンの扱いと『雷獣シュート』のネーミングが気に入らないんだっけ……。

「あの、明久君」

そうこうしているうちに瑞希が吉井君の召喚獣を抱き抱えて戻ってきた。

「………………(ジーッ)」

「???どうしましたか、明久君?」

「い、いや、別になんでもないよ」

何かを誤魔化すように慌てて手を振る吉井君。

「どうしたのかしら?」

「んー、観察処分者の召喚獣は本人と感覚が繋がってるって言えばわかるよな?」

「…………なるほど」

吉井君の召喚獣は瑞希の大きな胸で抱き抱えられている状態だ。まあつまり……そういうことなんだろう。

「って、違う!さっきいやらしいことを考えちゃダメだって叱られたばかりなのに、すぐにそんな不純な気持ちを抱くほど僕はいやらしい人間じゃ《おっぱいが柔らかくて気持ちいい》行くぞ!次は焼却炉だ!」

「あ、明久君っ!?いくらなんでも外に蹴り出すのはやりすぎですよ!?」

瑞希が吉井君の召喚獣をかばうように更に強く抱きしめる。……まあ男の子だし、そこまで隠そうとしなくても良いんじゃないかしら?

「それより明久君。さっきの質問なんですけど」 

「……さっきの質問?」

「はい。明久君の……好きな人は」

って、まだその話を引っ張るの?教えたくないって言ってるんだからそっとしておいてあげなさいよ。

「えっと、僕の好きな人はね……」

「は、はいっ。明久君の好きな人はっ」

「……Gクラスに居る左門さん、かな?」

勿体つけてから吉井君が言い放った。いや、いくらなんでもそんなあからさまなトラップに…

「……え?さ、左門(サモン)さん?誰ですか?そんな人、聞いたことも……。それに、Gクラスなんてうちの学校には……あっ!?」

 

ポンッ←瑞希の召喚獣登場

 

…引っ掛かっちゃうのね……。

「さぁこれで条件は五分五分だよ姫路さん!好きな人の話を続けようじゃないか!」

「ず、ズルいです明久君ッ!好きな人の名前で騙すのは反則ですっ!」

いや瑞希、今のは引っ掛かる方に問題があるわよ……。

「ふふっ。いらっしゃい瑞希。存分に本音で語り合いましょ……?」

いつの間にか二人の近くに来ていた美波が瑞希の肩に手を置いて微笑む。道連れができて随分嬉しそうね……アタシも注意しておかないと。

「だ、大丈夫ですっ。私には隠し事なんて」

《実は、さっきから明久君がHなことを考えてもお仕置きをしていないのは、私もたまにヘンなことを考えちゃうからで》

「いやぁああーっ!」

大慌てで自分の召喚獣の口を塞ごうとする瑞希。完全にフラグだったものね。

「オカルト召喚獣がサキュバスなだけあって、やっぱお前の脳内ピンク一色だなオイ」

「はぅ!?……うう、柊君ひどいです……」

諦めなさい瑞希、和真は人の弱味や弱点を抉り出すことが大好きな人種だから。

「甘いわね瑞希。隠し事のことなんて考えるから逆に召喚獣が口にしちゃうのよ」

《ウチもね、ぬいぐるみと机の上にアイツの写真が飾ってあってね、》

「こんな風にぃーっ!」

美波も瑞希と同じように飛びかかっていた。人のこと言えないじゃないアンタも。

《隠し事?隠し事って、僕が洗濯物の下に隠しているHな本の》

「でぇやぁああーっ!!」

《ふぎゃぁー》

どんどん被害が拡大していくわね……。

「というか柊!自分だけ高見の見物なんて汚いわよ!ウチらFクラスの仲間でしょ!?」

「そうです!仲間なら苦難も分かち合いましょうよ!」

「姫路の召喚獣もなんともないみたいだし、暴走はないとみていいだろうな。というわけで召喚しやがれ和真」

「そうだよ和真!隠しごとがないなら召喚しても大丈夫でしょ!?」

「ボクも和真君の本音、気になるな~♪ついでに優子も召喚しちゃいなよ♪」

「とうとうこっちまで飛び火してきたわね……」

というか愛子、アンタこそ召喚しなさいよ。土屋君との関係について根掘り葉掘り聞いて上げるから。

「ふむ……そうだな……」

和真は顎に手を当てて思案顔になる。そして、

 

 

 

「お前ら全員土下座して頼むっつうなら、召喚してやっても良いぜ?(ニヤァ……)」

未だかつてないほど嗜虐心に満ち溢れた笑顔でそんなことをのたまった。いや、あのね和真……流石にそこまでして召喚させたがるとは-

 

「「「お願いします」」」←男三人

 

……ホント、Fクラスって常識が通用しないわね。

「さあ柊、さっさと召喚しなさいよ!」

「あ?何言ってんだお前?全員っつただろうが、お前らも例外じゃねぇよ」

そう言って美波と瑞希と愛子を順番に指を刺す。

「な…何言ってんのよ!?そんなことできるわけないじゃない!」

「あっそ、じゃあ召喚してやんね(プイッ)」

美波が難色を示すと和真は明後日の方向にそっぽを向いた。まあ吉井君達に土下座させて自分は嫌、なんて言い分を和真が聞き入れるわけないわよね。

「何言ってんのさ和真!?女の子に土下座なんて、可哀想だと思わないの?」

「むしろ躊躇いなく土下座したお前らのプライドの低さを可哀想だと思うぜ。……つか明久、何か勘違いしてねぇか?」

土下座の体勢のまま吉井君が猛然と抗議するが、和真はそれを一蹴する。

「俺には召喚する義務なんてないんだぜ?それをわざわざ譲歩してやってんだからよぉ、お前らのプライドまとめて粉々にしてやらないと釣り合わねぇだろ♪」

うわ…セリフといい表情といい完全に悪役のそれね……。ん?美波、それさっき瑞希が吉井君を嵌めた紙じゃない。……まさか……。

「柊!これ、なんて読むか言いなさい!」

いや、引っ掛かるわけないでしょうが……

「issues of differenceだな」

「なんで英訳するのよ!?」

完全におちょくってる……特にやたら発音が良いのが余計に神経を逆撫するわね……。思い通りに行かず苛立っている美波の両サイドに愛子と瑞希が並び立つ。

「美波ちゃん、背に腹は代えられません……土下座しましょうっ」

「瑞希!?何言ってるの!?」

「仕方ないよ美波。こういうときの和真君、慈悲も情けも容赦も無いから」

「愛子まで!?」

あの二人、プライドを捨ててまで和真を陥れたいのかしら……?

「~~~~~ッ!!!わかったわよ!やればいいんでしょやれば!」

そこまで葛藤するくらいなら諦めなさい……。

「三人とも何言ってるんだよ!?和真は僕が説得してみせるから-」

「止めないでください明久君!」

「ウチらは是が非でも道連れが欲しいのよ!」

「だいいち、和真君は説得に応じるような性格していないしね……」

 

アタシの目の前には、四つん這い状態で額を床に擦り付けている6人の姿が。あれ、なんだろう……何故か涙が出てくるわ。

 

「……(パシャッ)よし!プライドを遥か彼方に投げ捨てようが構わないっつうお前らの覚悟、確かに伝わったぜ!」

「ちょっと待ちなさい!?今写メ撮ったでしょ!?」

「安心しろ、拡散はしないと約束してやる」

「まったく安心できないわよ!?」

美波が携帯を奪おうと飛びかかるが悠々と避けられる。ホント、的確に人の神経を逆撫でするわね……。

「おい和真、約束通り召喚してもらうぞ」

「柊君、覚悟していてくださいね?」

「ゼェゼェ……見てなさい柊、絶対に弱味を見つけ出してやるんだから……」

土下座を解除した6人が和真を取り囲む。大丈夫かな和真、このままだと質問責めされるわよ……?

「あいよ、慌てなくても約束は守るさ。……優子、もし召喚獣が暴走したら止めるの任せたぞ」

「…ふぇ!?なんでアタシ!?」

突然の指名にアタシはたじろいでしまう。

うぅ、変な声出ちゃった……。

「多分お前なら止められるから。頼む」

「……まあそこまで言うなら、引き受けるけど……」

「よし、これで後顧の憂いは断てたな。

さてと……試獣召喚(サモン)!」

 

ポンッ←和真の召喚獣登場

 

何の躊躇いもなく召喚したけど、やけに狂暴そうな笑みを浮かべた召喚獣が出てきたわね。……ん?なんか、攻撃体制に入ってるような……

「さっそく質問するぞ!和真、お前-」

《オラァッ!》

「(バキィ!)ごふぁッ!?な、何だこのチビ!?」

和真の召喚獣がいきなり坂本君を殴り飛ばした。え、何!?何事!?アタシが慌てている間も和真の召喚獣は坂本君に追撃を加えていく。

 

《オラオラ!さっさとくたばりやがれぇぇぇ!》

「(ドガァ!)ごっ!?(ドゴォ!)がはっ!?……なんでこいつ襲ってきやがる!?俺に何の恨みが!?」

《お前をボコる理由なんざ特にねぇよ……強いて言えばお前が一番デカくてぶっ壊し甲斐があるってだけだ!わかったらさっさと沈めやデカブツがぁっ!》

「ぐっ上等だテメェ!返り討ちに(ドカッバキッグシャ!!!)ぐげぇ!?ちょ、タンマタンマ!?」

《くくっ、フフフフ、あーっはっはっはっはっは!ヒャーッハッハッハッハッハ!!!そのままぶっ壊れちまいなぁぁぁっ!》

「ギャァァァアアアア!?」

坂本君は反撃しようとするも、多少デチューンされたとはいえ和真の召喚獣に勝てるはずもなく……って暢気に解説している場合じゃないわ!?

「あーあ、やっぱりこうなったか……それじゃ優子、頼んだぞ」

「アレを止めるの!?流石にアタシじゃ…」

「大丈夫、あれ暴走してるわけじゃねぇから。お前ならできる……というよりこの面子だとお前しかできねぇんだよ」

「…………わかった、やってみる」

「ちょ!?木下さん、危ないよ!?」

吉井君が制止してくるがアタシは構わず近づいていき、坂本君をボコっている和真の召喚獣を後ろから抱き抱えた。

《っ!?優子!?…邪魔すんじゃねぇ!》

アタシから逃れようとジタバタともがくものの脱出は不可能のようだ。本来アタシ程度の力で召喚獣を押さえ込める筈はないのだけど、何故か押さえ込めている理由はすぐに理解できた。これは和真の分身……だったら対処法はなんとなくわかる。

「よしよし(ナデナデ…)。いい子だからおとなしくしましょうね」

《っ!?…………っ…………。………♪》

暴れまくっていたが優しく撫でてあげると、次第におとなしくなっていった。顔つきもどんどん元の可愛らしい顔立ちに戻っていくわね……ん?突然アタシに抱きついて-

《優子だーいすき♡》

「…………」

アタシの頬にグリグリと自分の頬を擦り付けて甘えてくる和真の召喚獣。

 

…………あ、ダメだ。もう我慢できない。

 

「あぁもう、ホント可愛いわねこの子ったら!(ギュゥウウウ)」

《んにゅ~…♪優子、頭なでなでしてぇ……♪》

「まったく、甘えんぼなんだから♪(ナデナデ…)」

《えへへ♪好き♡大好き♡》

……これって和真の本音なのよね?ということは、後で和真本人も同じように可愛がっても問題ないわよね?……あ、でも周囲に誰かいると駄目っぽいかな……二人きりのときなら構わないわよね?もとより反論は受け付けるつもりないけど。

そんなことを考えていると和真本人がやってきて、意識を失っている坂本くんを背負う。

「それじゃ雄二は回収していくから、お前は試運転の間ずっとソレを肌身離さず捕まえておけよ?冗談抜きで人の命がかかっているから」

「わかったわ♪」

言われなくても……というかもし仮に離せって言われたとしても絶対に離すもんですか。

「……随分嬉しそうだなオイ」

「まぁね♪それから和真、アタシにはいつでも甘えてきても良いからね?」

「……ん、考えとく(ポリポリ)」

表面上は平然としつつ、和真は坂本くんを回収して離れて行った。……耳元がすっかり真っ赤になってたことには触れないであげよう。

《甘えたいのはやまやまなんだけど、流石にちょっと恥ずかしいな……》

アタシが抱いている召喚獣が本音を呟く。 

……やれやれ、和真ったら意外と恥ずかしがり屋さんなんだから♪

 

 

 

 

 

 

 




和真(…………俺、優子に甘えたいと無意識では思ってたのか………やべ、物凄く恥ずかしい……///)

とうとう和真君が自分の無意識的欲求を自覚しました。彼にとってはそこだけは想定外だったようです。
和真君の召喚獣の暴走(?)については、次回本人から詳細を語られます。
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