バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~ 作:アスランLS
【雄二視点】
「そうだろう、アンタ達?」
「はい!是非とも子供の顔を見せ……じゃなくて、協力させて下さい!学園長先生!」
「う、ウチも協力しようかな。ホラ、生徒として先生のお願いには極力答えないといけないし」
必要以上に張り切る二人。俺は明久みたいに察しの悪い人間じゃないから、こいつらの狙いが何か嫌でもわかってしまう。
「嬉しいねぇ。二人もデータ収集に付き合ってくれるなんて」
「「任せて下さいっ!」」
「よし。それじゃ、よろしく頼むよ」
再びババァが召喚フィールドを広げる。すると、姫路と島田は予想通り明久の方に向かって召喚の為に手を伸ばす。
「…………(ササッ)」
それを明久は後ろに下がって避ける。
「な、なんで避けるんですか明久君?」
「そうよアキ。おとなしくしてなさい」
「いや、そんなこと言われても。二人が協力するって言うのなら、姫路さんと美波の二人で召喚すればいいじゃないか」
「いえ。それはですね、その……」
「えっと……ホラ!瑞希と組むと、点数が高くなり過ぎちゃうじゃない!それだと危ないから、アキと組んだ方がいいのよ!」
「そ、そうですっ!美波ちゃんの言うとおりです!」
その理屈だと姫路は喚び出したらダメなんじゃないか?島田の奴抜け駆けするためにそこまで考えて……いるわけねぇよな、明らかに今考えましたと言わんばかりの苦しい表情だし。
「大丈夫じゃないかな。今回は学園長が危なかったら召喚獣を戻してくれるし」
そう言いながら明久が二人から距離を取る。
「でも、さっき明久君たちは蹴られたりしていたじゃないですか」
「そうよ。念のためにね?」
だったら召喚しない方がいいんじゃないか?まあ明久が追い詰められていくさまは見てて面白いから放っておくか。しかし、ホント翔子がこの場にいなくて助かっ-
ゾクッ…!
………………いる。
この心臓を鷲掴みされるような圧迫感……間違いない、奴だ……!
自分の運命を呪いつつ後ろを振り向くと、いつもの無表情ながら心なしか目を猛禽類のようにギラつかせた翔子が立っていた。
神様……やっぱりテメェは最低最悪のクソ野郎だよ。
「おい翔子。お前、何処から現れたんだ」
「……私たちの子供が見られると聞いたから」
「一応言っとくが、それぜんぜん答えになってないからな」
俺の記憶が確かならこいつは和真達とテニスしているはずだ……いったいどうやって嗅ぎ付けたんだ!?また勘か!?なんでこいつ俺が絡むと和真みたいに理不尽なほど勘が鋭くなるんだよ!?
「隙ありよアキっ!」
「えーいっ!」
「ーーっとぉーっ!さよならっ!」
「あっ!」
「こら!待ちなさいアキ!」
あっちでは姫路と島田が強行手段に出たが明久は素早くかわして逃亡した。…!翔子の意識が姫路達の方に向いた!チャンスだ!
「付き合っていられるかっ!」
「……雄二。逃がさない」
ふはは、いかに翔子と言えど逃げることに慣れている俺に追いつけると思うなよ!
と、そう考えていた時期が俺にもあったっけ…。
あの後俺は翔子に逃走経路を次々と潰され、あっさりと捕獲されてしまった……何故だ!?かつて神童と呼ばれたこの俺が何故翔子が相手だとこうもあっさり……!
ちなみに明久も教室まで強制送還されている。まあ俺が逃げ切れないのにこいつが逃げ切りでもした日には、俺はこいつを地獄に叩き落とさなければ気が済まなくなるがな。
「学園長先生。最初はウチからいきます」
「明久君。もう逃げちゃダメですよ?」
「召喚の準備はできてるよ。いつでも呼びだしな」
「ありがとうございます。それじゃ……」
島田が明久に向かって手を伸ばす。明久はそれを黙って見ていて、
ササッ ぺタ
「試験召喚(サモン)-って、ちょっと!?」
「え?み、美波ちゃん!?」
島田が喚ぶ直前、明久はその手を避けて後ろにいる姫路と接触させた。こいつバカのくせにこういうときだけ機転がきくな……。
「これで、出てくるのは姫路さんと美波の子供だね」
「そうじゃな。どんな子供が出てくるんじゃろうか」
物凄く独占欲の強いのが出てきたりしてな。
慌てふためく姫路と島田をよそに、出てくる召喚獣を気長に待つ。
その時、
「お姉様?まだ残っているのですか?それなら美春と一緒に……」
ガラッと戸を開けて清水が教室に入って来た。
それとほぼ同時に姫路と島田の召喚獣も姿を現し始める。ふむ、あの髪の長さだと、多分女子だな-
「…………(シュパッ)」
《うにゃーっ》
「「「「…………………………え?」」」」
出てきた召喚獣が、とんでもないスピードで清水に攫われていった。
「…………」
「…………」
「…………」
あまりに迅速すぎる清水の行動に、一同の思考が停滞していた。今、和真と同じぐらい速かったぞ……。
『ハッ!?ど、どこに消えたんですか美春の可愛い可愛い天使は!?出てきて下さいっ。美春が大事に大事に育ててあげますからっ!』
どこか遠くから、そんな切羽詰まった声が聞こえてくる。どうやら奴はあの一瞬で召喚範囲外まで移動していたようだ。清水の奴どんどん化け物になっていくな。和真曰く俺らの学年で一番身体能力が高い女子は橘らしいが、今のを常時発揮できるなら余裕で塗り替えられるほどだ。
「さて、今度は誰が呼び出すんだい?」
気を取り直してババァが告げる。清水の奇行はいつものことなので深入りしてもキリがない。
さて、今のうちに俺は退散-
「……私と雄二」
「ぐぁああああっ!離せぇええええっ!」
現実はいつだって非情だ畜生!
「……サモン」
翔子は逃げようとする俺にアイアンクローをきめながら召喚を始める。俺がいったい何をしたというんだ……。
「あ……。すっごく綺麗な子ですねっ」
「ホントね。それに、頭も運動神経も良さそう。文武両道って感じ」
出てきた召喚獣は女児の姿だった。見た目は翔子に近いが、あの目つき……くそっ!嫌なこと思い出しちまったじゃねぇか……!
「まぁ、雄二と霧島の子じゃからな。恐らく勉強も運動も優秀な子になるじゃろ」
「…………背も高くなりそう」
「けっ。知るかっ」
苛ついているからか、つい突き放すような言葉が口から出る。
「……目元とか、小さな頃の雄二にそっくり」
「えぇぇっ!?雄二って小さな頃こんなに可愛い顔してたの!?」
「……うん。ほら」
翔子がポケットからガキの頃の俺の写真を取り出す。こいつ、余計な真似を……!
「「「えぇぇぇっ!?」」」
不必要にオーバーリアクションするバカ共。大方、今の俺とあの頃いかにも純粋ですと言わんばかりの表情をしたガキが結び付かないんだろうよ。
だがこれだけは断言できる。明久ほどではないが、今の自分が相当クズだと自覚はしている。
だが、この頃の俺は……それ以上のクソだった。
「翔子ちゃん。将来が楽しみですね」
「……うん」
「いいわね~。名前はどうするの?」
「……しょうゆ」
「「「………………はい?」」」
「……私と雄二の名前を組み合わせた」
「いや。霧島よ。その名前はもう一度考え直した方が……」
「…………それだと、調味料を連想させる」
「じゃあ、こしょう」
「「「それも調味料だから!」」」
翔子の独特すぎるネーミング、いや和真が面白半分で吹き込んだんだっけか?ともかく流石のアイツらでもついていけないようだ。というかまだその名前諦めてなかったのかよ……。
それにしても、コイツを見てるとやっぱりどうしてもイラつくな……!
「くそ……っ。こんなもんで勝手に色々言いやがって……!」
《おとーさん、おとーさん。遊んでよ!》
「ふんっ」
しょうゆ(仮)が俺にせがんでくるが無視だ。
《あそぼーよー。ねーねー》
『イヤだ』
コイツを見ているだけで、過去の俺が重なってしょうがねぇ……こんな奴に構ってられるか!
《うー……。おとーさん……》
「………………」
構って………………
《おとーさん、あそんでよぅ……》
『……………チッ』
わかってんだよ……コイツは何も悪くねぇ……!俺がくだらないプライドを捨てきれないガキなだけだ!
《おとーさん……ダメ……?》
こんなしょうもない葛藤を和真にでも見透かされてみろ……俺は一生笑い者だろうが!
『……少しだけだぞ』
《うんっ》
『おらっ。これっどうだ』
《きゃーっ。たかーい♪》
『……そうか。んじゃ、今度は』
《きゃっきゃっ♪すごーい!おとーさんすごいー》
『……まぁな。それで、更にこうだ』
《わーっ♪ぐるぐるだー♪》
『はっはっはっそうかそうか。それじゃ次は』
「「「「………………(じーっ)」」」」
「はっ!?!?」
いつの間にかその場にいる全員が俺に視線を向けていた。しょうゆ(仮)を高い高いした状態でフリーズする。
……………………や、
やっちまったぁぁぁあああああ!?!?
「雄二、楽しそうだねぇ(ニヤニヤ)」
「まったくじゃなぁ(ニヤニヤ)」
「…………素直じゃない(ニヤニヤ)」
「ち、ちが……っ!これは……っ!」
《どしたのおとーさん?もっともっとー》
しょうゆ(仮)、今は黙ってろ頼むから!一生のお願いだから!
「……雄二はいいお父さんになる」
「そうね~。厳しいことを言いながらもついつい構っちゃう感じね」
「坂本君、可愛いですよ♪」
「うがぁあああっ!そんな目で俺を見るなぁああっ!」
神様、さっきクソ野郎扱いしたことは謝るから……なんだったら土下座もするから……この一連の流れは無かったことにしてくれ……!
雄二の子供時代に何があったのか気になる人は、原作6.5巻もしくはアニメをチェックしてください。
あのストーリーにはオリジナルキャラクターを挟みたくないので絶対に記載しません。
雄二は未だ子供時代のトラウマを払拭仕切れていません。かつて神童と謳われた彼なら和真や蒼介に比肩する成績でもおかしくはないのに、学年トップ10になんとか食い込める程度の学力に甘んじている理由はそれです。
彼が吹っ切れて覚醒するか、今の実力に留まるのかは今後の展開次第です。