バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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【ミニコント】
テーマ:不毛な会話

和真「助けてくれ愛子!」 

愛子「ど、どうしたの和真君?」

和真「今すぐ不毛な会話を楽しみたいんだ!どうしたらいいっ!?」

愛子「えっ!?ふ、不毛な会話?

えーと……

もし今3億円当たったら…ボクはこの学校の隣にボウリング場を設置しようと思うんだ」

和真「えっ!?お前水泳部なのにどうして敢えてボウリング場を…

あっ!

今すごく不毛だったぜ!ナイス不毛!」

愛子「これ何が楽しいの和真君!?」




如月ハイランド~中編~

【雄二視点】

「……俺は……無力だ……」

 

電車とバスで二時間ほどかけ、俺と翔子は如月ハイランドの前まで来ていた。

こ、これは仕方がなかったんだ!翔子だけでなくおふくろまで結婚の話を進めだしたのが悪いんだ!どこの誰がこの俺を責められようか!

「……やっとついた」

「よし。それじゃ翔子」

「……うん」

「帰ろう」

 

ミシッ!

 

「……ダメ、絶対に入る」

「はっはっは、翔子、俺の肘関節はそっち側には曲がらないぞ?」

やべえ。指先の感覚がなくなってきた。

「……恋人同士は皆こうしている」

「待て翔子!お前は腕を組むという仲睦まじい行為とサブミッションを同様に考えていないか!?」

「……???」

世の中の恋人同士は相手を逃がさないために肘間接を取り合っていると真面目に信じてそうな学年次席様を目の当たりにして、つくづく世の中勉強よりも大切なものがあると痛感させられる。

左腕を人質に取られたまま入場ゲートへと連行される。

プレオープン期間のためか特に待つこともなく係員のもとまで進むことができたのだが、その係員二人を見るや否や俺は目のハイライトが死んでいくのを感じた。

片方の女だけならまだよかった。シャーロック・ホームズみたいな格好をしているがこいつだけなら何かのイベント用の格好だと納得できた。

だがもう片方の男、キサマは駄目だ。

なぜなら…

 

「イラッシャイマセ! 如月はいらんどヘヨウコソ!」

 

キャラ付けのつもりか謎の片言で喋っているサングラスをかけたこいつは、明らかにクラスメイトの大バカ野郎だからだ!

「何やってんだ和真テメェ!?」

「イエイエ、私トアナタハ初対面デス」

誤魔化せるとでも思ってんのかこいつ!?

「私ハ通称ねぱーるノ大地ガ生ンダ英傑コト、柊・マシンガン・和真デス」

「いや和真じゃねぇか!?」

「ちょっとこっちに来なさい」

女の方の係員に連れられて俺達と離れた場所に移動するマシンガンバカ。

今の声、あの口調、あいつ木下姉か……。

「アンタバカじゃないの!?偽名の意味まるで無いじゃない!(小声)」

「やれやれ仕方ない、変更するか(小声)」

何やら話し込んでから戻った来た。ここからじゃ聞き取れなかったが大体内容は想像がつく。

「間違エマシタ。私ハもるでぃぶノ海カラノ刺客コト、柊・ビバリーヒルズ・和真デス」

「いやだから和真じゃねぇか!?」

あ、木下姉が頭を抱えている。こいつはいつもこんな感じでこのバカ野郎に振り回されてるのかと思うと少しだけ同情した。

「ソシテ彼女ガ国籍不明名称不明ノ凄腕ノ仕事人、ソウデスネ……仮にインフェルノ=ドラゴンヴァイツとシテオキマショウ」

「無駄に壮大なコードネームだな!?覚えにくいことこの上ねぇ!」

隣で木下姉改めインフェルノ=ドラゴンヴァイツは真っ赤になって手で顔を覆っている。まああんな中二全開の通称無断でつけられたらそうなるわな……。

 

「本日ハぷれおーぷんナノデスガ、ちけっとハオ持チデスカ?」

「……はい」

「拝見シマース………コ、コレハ!?」

マシンガンバカ改めビバリーヒルズバカは翔子の取り出したチケットを受け取ると、やたら胡散臭い演技で驚いた。というか翔子、何のリアクションも無いと思ったら、まさか和真だと気付いてないのか!?

「……そのチケット、使えないの?」

「イエイエ、ソンナコトハナイデスヨ? デスガ、チョットオ待チクダサーイ」

和真は携帯を取り出し、俺達に背を向けてどこかに電話し始める。

「……俺だ、例の連中が来た。ウエディングシフトの用意を始めろ、確実に仕留めるぞ」

「おいコラ、なんだその不穏当な会話は?」

「……ウエディングシフト?」

隣で翔子が首を傾げている。如月グループの企みを知らないこいつからすれば初耳の単語だろうが、それこそ俺が是が非でもここには来たくなかった諸悪の根源なのだ。

「気にしないデくだサーイ。コッチの話デース」

「お前さっき電話で流暢に日本語を話してただろ。心なしか片言が崩れてきてんぞ」

「オーウ。ニ~ホンゴむ~つかしくてワ~カり~まシェ~ン♪」

 

やべえこいつ殺してぇ。

 

「ところで、そのウエディングシフトとやらは必要ないぞ?入場だけさせてくれたら後は放っておいてくれていい」

紆余曲折あって翔子に告白した俺だが、いくらなんでも高校生で結婚の話なんて嫌過ぎる。俺は目の前のビバリーヒルズバカみたいに気楽に人生を謳歌したいんだ。

「そんなコト言わずニ、お世話させてくだサーイ。トッテモ豪華なおもてナシさせていただきマース」

「不要だ」

「そこをナントカお願いしマース」

「ダメだ」

「この通りデース」

「却下だ」

「断ればアナタの実家に腐ったザリガニを送りマース」

「やめろっ!?そんな事をされたら、我が家は食中毒で大変なことになってしまう!」

あの天然ボケの母親は間違いなく伊勢海老だと勘違いして食卓に上げるだろう。

流石はFクラス最強の矛、なんて恐ろしい脅迫をしてくるんだ!?

「では、まず最初に記念写真をお撮りさせ頂きます」

「……記念写真?」

「はい。とってもお似合いのお2人の愛のメモリーを残しましょう」

「……雄二と、お似合い……(ポッ)」

インフェルノ=ドラゴンヴァイツ、お前もか。

 

「お待たせしました。カメラです」

そこに帽子を深くかぶったスタッフがカメラを片手に現れた。和真が一枚噛んでいるんだから、もしかするとこいつは……。

「どうもご苦労様デース」

「どうしたの和真?変な話し方して」

「あっバカ…」

確認する前に疑念が確信になったが、万が一を考えて一応やっておくか……。

「悪いが、ちょっと電話をさせてくれ」

「わかりまシタ」

携帯を取り出し、番号非通知で下衆野郎に電話をかける。

 

Prrrrrrrr Prrrrrrrr

 

「ああ、すいません。僕の携帯ですね」

「……ハァ、まさかもうバレるとはね……」

呆れるインフェルノ=ドラゴンヴァイツにも気付かず、バカは尻ポケットから携帯を取り出し電話にでる。

「……いよう明久。テメェ、面白いことしてるじゃねぇか……!」

「人違いですっ!」

 

ダッ!

 

「あっ、コラ!逃げるなテメェ!ええい、離せビバリーヒルズバカ!」

「彼はココのスタッフのエリザベート・ハナコ(35歳)、通称スティーヴでース。吉井ナントカさんではありまセーン。そして私の名は柊・アルケミスタ・和真デース」

「黙れ!人種性別年齢氏名すべてに堂々とウソをつくな!しかもどう考えてもその名前で通称スティーヴはないだろ!ついでに俺は吉井なんて名字は一言も言っていない!つーかお前はいい加減偽名に本名を混ぜるのやめろ!」

ビバリーヒルズバカ改め錬金術バカに絡まれているうちに明久の姿は見えなくなった。

こいつら俺の人生をなんだと思ってやがる!?

しかし、ここのスタッフになりすましているとなると、かなり大掛かりな話しだ。バックに誰かいやがるのは間違いねぇ。最初に思いつくのは和真の友人である鳳や橘だが、和真の性格上その線は薄い。

 

となると……おのれ、あのババァか……!

 

そして紛れ込んでるのがこいつら三人とは考えにくい。間違いなく他にも協力者がいる……!

「翔子、すまんがちょっと我慢してくれ!」

「……???」

きょとんとしている翔子のスカートを掴み、見えるか見えないかのギリギリの高さまでめくり上げる。

「…………っ!!(ギラッ)」

その瞬間、視界の隅で懐に手を伸ばした人影……というか、キツネの着ぐるみ。

「なっ!?なにやってるのよさかも(ギュッ)むぐぅ」

「はい優子ストップ」

思わずボロを出しかけた木下姉(そろそろ面倒だから戻すか……)の口を和真が抑える傍ら、着ぐるみは脱兎の如くその場から消え失せた。

「咄嗟に懐のデジカメに手を伸ばすあの動き……。やはり、ムッツリーニも来ていたか」

この分だと間違いなく姫路や島田や秀吉もいるだろう。いや、和真が関わっている以上もはや誰が参加していてもおかしくはない。

 

どいつもこいつも人の不幸を楽しげに……!

 

「……雄二、えっち」

俺が奴等の処刑法を考えていると、翔子が少し怒ったような顔で俺を見ていた。

「わ、悪かった。もうしないから許してくれ」

「……うん。続きはベットで」

「なっ!?ちっ、違うぞ翔子!俺はお前の下着になんか微塵も興味はねぇっ!」

「……それは許さない(メキッ)」

「ぐぁあああああっ!理不尽だぁあっ!」

翔子の握力で俺の頭蓋がきしむ音が響く。

「翔子、女性ならもうちょっと恥じらいを持ちなさい……」

「でハ、写真を撮りマース。はい、チーズ」

呆れる木下姉を余所にマイペースにカメラを構える和真。フラッシュが焚かれ、ピピッという電子音が聞こえてきた。

「スグに印刷しマース。そのまま待っていてくださイ」

「……わかった。このまま待ってる」

「ぐぁあああっ! このままだと俺の頭蓋がっ!」

律儀にも翔子はそのままの握力を緩める事なくキープ。こいつは本当に俺のことが好きなのか度々疑問に思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこの写真は」

俺と翔子を囲むようなハートマークと『私達、結婚します』という文字。アイアンクローをかましている翔子とそれに苦しむ俺の周りを、未来を祝福するように天使が飛び回っている。俺達の関係をよく知らない奴が見ればどういった経緯で結婚に至ったのか気になるところだろう。

「ええと…サービスの特殊加工で御座います」

「コレをパークの写真館に飾っても良いデスか?」

「キサマ正気か!?これを飾ることでここになんのメリットがある!?あとインフェルノ=ドラゴンヴァイツ、こいつのこういう暴走を止めるのがお前の役目だろ!」

「後で説得しておくからその呼び方やめて!?」

「……雄二。照れてる?」

「この写真に照れる要素は見当たらない」

なんて写真を見ていると、

 

『あぁっ!写真撮影してる!あたしらも写真取って貰おうよ!」

『オレたちの結婚の記念に、か?

そうだな。おい係員。オレたちも写ってやんよ』

 

偉そうな態度でチャラいカップルがやって来た。

「あの、すみません。こちらはプレミアムチケットの特別サービスですので」

この手のタイプと交流経験が少ないであろう木下姉だが、少々戸惑いながらも毅然とした態度で断ろうとする。

『ああっ!?いいじゃねーか!オレたちゃお客様だぞコルァ!』

『きゃーっ。リュータ、かっこいーっ!』

男が横柄な態度で木下姉に食ってかかる。

やれやれ、絵に書いたようなチンピラだな。それを見て喜ぶ女もどうかと思うが。

大の男に詰め寄られても木下姉は目を少し細めただけで微塵も物怖じした様子は見られない。

喧嘩慣れした俺には分かる。これは秀吉のようなポーカーフェイスではない。目の前のチンピラではどうあがいても自分を害することなどできはしないという確固たる自信が木下姉にはある。こいつ……伊達に和真と肩を並べてはいないな。

木下姉の立ち振舞いに俺が感心していると、和真がチンピラと木下姉の間に立つ。

一見すると和真が木下姉を庇おうとしているように見えるが、日頃つるんでいる俺にはわかる。今みたいな笑みをしているときの和真にそんな殊勝な考えが頭にあるわけがねぇ。

今の和真の表情は面白い玩具でも見つけたときの子どもの無邪気で残酷な笑顔そっくりだ、というかそれそのものと言って良い。

『すみませんねぇ~、俺達のポリシーはぁ、『客は客であってそれ以上でも以下でも無い』がポリシーでしてぇ~』

『てめ、なめてんのかコラ!?あぁ!?』

和真の明らかに相手をバカにしたような口調に神経を逆撫でされたチンピラは激昂する。どうやら面倒になったのか片言はやめたようだ。

あ、後ろで木下姉がまた頭を抱えている。

『だいたいよぉ、あんなダッセぇジャリどもよりオレたちを写した方がココの評判的にも良くねぇ?』

『そうよっ!あんなアタマの悪そうな男よりもリュータの方が百倍カッコイイんだからぁっ』

「砂利を顔にまぶしたような無様な男とカマキリにも劣りそうな知能の女のカップルなんざ祝福したら経営が右肩下がりになる一方だと思いますが?」

『『だとコルァアアア!?』』

まあとりあえず和真にこの場は任せて俺達はさっさと避難するか。

「……(ツカツカツカ)」

「っておい、翔子。どこに行くんだ」

急に勢い良く歩き出した翔子の腕を掴んで引き止める。

「……あの二人、雄二の事を悪く言った」

「あのなぁ……。その程度でイチイチ目くじら立ててたらキリがないぞ?何より視界に入れておくだけで不快だ」

「……雄二がそう言うなら」

翔子も渋々納得する。

俺としてはむしろ和真に目をつけられたあのチンピラカップルにも少し同情している。あいつの挑発スキルは学園でも随一で、あと数分もすればストレスが何十倍にも膨れ上がっているはずだ。

ちなみに俺が今一番同情しているのは木下姉だ。今度機会があったら胃薬でも差し入れしてやろうか。あいつとは分かり合える気がする。

「……雄二、浮気の気配(メキッ)」

なぜこいつはさっき和真達の正体にも気づかなかったのに、俺が絡むと和真に匹敵するほど勘が鋭くなるのだろう?

そして誰でも良いから俺にも同情してくれ。

再び頭蓋骨が軋む音を聞きながら、俺は切実にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【ミニコント】
テーマ:ひとりっこの好奇心

和真「なあ優子」
 
優子「何よ?」

和真「兄弟のいない俺は一度でいいから“不条理な姉の横暴”とやらを体験したいんだ。手伝ってくれ」

優子「アンタの突拍子も無いリクエストはいつものこととして……なんでアタシに言うのよ?」

和真「だってお前不条理な姉筆頭じゃん、秀吉曰く」

優子「愚弟へのお仕置きは後でするとして……いいわよ、手伝ってあげる」

和真「頼んでおいてなんだが、具体的にはどうするつもりだ?」 

優子「アンタが一度で食べきれなかったアイスがあるとするでしょ。それをアタシが食べている情況を思い浮かべながら話しかけてきなさい」

和真「わかった、やってみるぜ。


ん?なあお姉ちゃん。それ俺が残したアイスじゃねぇか、何勝手に食ってんだよ」

優子「っ!…和真、姉であるアタシは弟のアンタが残したアイスを食べる正当な権利があるのよ」

和真「なんて自分勝手な言い分なんだ。


……」

優子「……こんな感じかしら?」

和真「これが不条理な姉の横暴か……(シミジミ)」

優子「満足した?じゃアタシ秀吉に用があるから」
 
和真(やっぱ横暴じゃねぇか……。あとごめん秀吉)

優子(お姉ちゃん……)





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