バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~ 作:アスランLS
このストーリー、喧嘩ばっかりだなぁ……。
【和真視点】
売られた喧嘩は買うスタンスの俺だが、前の学校のカス共のようにオオトリをトラウマになるほど痛めつけるつもりはなかった。こいつは御曹子なので財力や権力にものを言わせて報復してきたらガチでマズい。俺や親父だけならともかく母さんに危害が及ぶのはダメだ。それに間違いなく霜月小を退学になるしな。そうなったら母さんの厚意を無下にすることになる。さっきから理由が母さんばっかだからマザコン扱いされかねんが……別に構わねぇよ何とでも言え。俺はあの人に心から感謝してるし、あの人を誰よりも尊敬してる。あんなどうしようもないバカ親父のために人生を棒に振って、多少いじめられた程度で相手を半殺しにするようなどうしようもない下衆野郎が実の息子だっつうのに、嫌な顔一つせず俺と接してくれてるんだからな。これ以上余計な負担かけられるかってんだ。
……話を戻すとこの闘い、壊れ過ぎねぇようある程度手加減しながら闘っている。度重なる鬼ごっこから、こいつの身体能力は高いが俺には及ばないレベルだとわかっている。多少気ぃ抜いた所で俺の勝ちは揺らがねぇはずだ。
…………そう思ってたんだがなぁ……。
ズドドドドドドドドドォォォッ!
物凄い勢いで遅い来る木刀を俺は次々と弾いていく。このままだとリーチの差の関係上一方的に攻められるだけになってしまうので俺が一方踏み込むと、ほぼ同時にオオトリが後ろに後退しつつ間合いギリギリで木刀を薙いできた。その攻撃はさっきまでのように木刀の側面を弾くだけで無力化できたものの、また俺の間合いから外れてしまった。
こいつ、予想よりずっと強ぇなオイ……。
確かにパワーやスピードは俺の方がずっと上……しかし戦況はほぼ互角。技巧や頭のキレは向こうが上だからだ。それに加えて自らのペースに無理矢理引き込む独特のリズム、そして小学生とは思えねぇほどの剣術のキレは正直言ってかなり厄介だ。あと鬼ごっこのときも思ったが、こいつ明らかに俺の思考を読んでるとしか思えねぇ……。例えば、俺が間合いを詰めながら右腕を振りかぶる。実はこの右腕はフェイクで本命は左足のミドルキックなんだが…事前に看過してなきゃ不可能なほど迅速にガードされた上、返す刀で俺の右足を叩きおろうとしてきた。俺は持ち前の反射神経ですぐさま離脱したためどうにか空振りに終わった。
あ、危ねぇ…もし俺が事前に察知できなきゃやられてたかもな……
俺は生まれつきとても勘が良い。特に顕著なのは自分に迫る危険と人を壊そうとするときの勘は100パー的中する。だから俺に不意打ち闇討ちの類いや身体能力で劣る相手からの攻撃全般は一切通用しねぇし、ついでに相手の隙やどこを攻撃すれば壊れやすいか、どのように攻めていけば良いかなどがなんとなくわかる。
……だがこいつには前者はともかく後者はいまいち役に立たねぇ。なんつうかこいつ、防御がとんでもなく上手いのだ。致命傷狙いの攻撃はことごとくいなされるか避けられるし、そうでない攻撃もダメージを軽減されちまってる。なんとか隙を見つけて何発か入れたものの、あんなショボい攻撃程度じゃたとえ100回食らわせたところで大したダメージにはななりゃしねぇよな……。で、そんな拮抗状態に置かれた俺はどんどん苛々が募ってくかと思いきや……むしろ気分が高揚してきやがる。
なんだこいつ!?攻撃が全然通らねぇ……面白ぇ!こいつなら多少本気でやっても大丈夫だよな!
ハイになった状態で再び間合いをつめながら右腕を振りかぶる。今度は余計な小細工を加えてない分、パワーもスピードも今までとはまるで訳が違う!防げるもんなら防いでみやがれ!……仮にいなそうが避けようが関係ねぇ、攻め続けて競り勝ってやる!
そんな俺に対し、奴は木刀でガードの構えに入り-
「-っ…!?(ゾクッ)」
ふと急激に嫌な予感が全身を駆け巡ったため、俺はすぐさまオオトリと距離を取る。今の嫌な気配、あのまま行ってたら確実に右腕やられてたな……。
「……今のを初見で看過したか」
「テメー……今何しようとしやがった?」
「我が鳳家に伝わる剣術流派“水嶺流”第陸の型・波紋。接触する直前に剣を高速振動させることで、ダメージを人体の内部に響かせる。私はまだ半人前でこの型を十全に使いこなせるわけではないが、貴様があのまま右拳を振り抜いていればただでは済まなかっただろうな」
なんつう危ねぇ攻撃仕掛けてくるんだよこのお坊っちゃん……。こいつ意外と過激派だな…………ククククククク、上等じゃねぇか!
「認めてやるよ、テメーは強ぇ……だからこそ覚悟するんだな、こっからは…」
俺はそこで一度言葉を切り、もう一度オオトリに向かって走り出す。
「本気で潰す!」
……手加減抜きの全力全開で。
「っ!?速い…!」
「オラオラどうしたァッ!?テメーの力はそんなもんかよ!」
拳と木刀が目にも止まらぬ攻防を繰り返す。しかし俺と奴の身体能力には明確な差があるため、徐々に俺が優勢になる。オオトリも先程のように振動を織り混ぜて牽制してきたが、全開時の俺の勘はより精度を増している。はっきり言って恐るるに値しねぇんだよ!
不規則な緩急は反射神経にものを言わせて対応し、急所狙いの鋭い刺突や遠心力を利用した回転斬りは無難にかわし、高速の剣撃も全て捌き切る。
「くっ…!このままではマズ-」
「隙見ぃいいっっっけっ!!!」
「!?しまっ-」
俺が繰り出す怒濤の攻撃を受け続けて疲弊したのか、とうとうオオトリが決定的な隙を露呈した。俺はそれを見逃さず奴の服の袖を掴み、そのまま地面に転ばせた。そしてトドメに渾身の蹴りを喰らわせる直前、
ドクンッ!!!
「-っ!?…オラァッ!」
俺は直前で蹴りの性質を人体破壊ではなくぶっ飛ばすことに変更させた。俺に蹴り飛ばされたオオトリはそこそこな距離を吹っ飛んだものの、大したダメージには至らなかった。
……今のは、何だ?アイツを壊そうとした寸前、俺の全身を何かが駆け巡った。直感で危険を察知…したわけじゃねぇ。現にそのまま振り抜いたのにアイツは何もしかけてこなかった。ましてや理性なわけねぇ、確かに冷静になって考えてみりゃ壊さないように闘ってたのだから完全に本末転倒になってたんだが、さっきまでのハイになった状態ではそんな些細なこと抜け落ちてたしな、我ながら情けねぇ……。
「………今、何故躊躇した?」
オオトリが立ち上がりながら興味深そうに尋ねてきた。いや、俺が聞きてぇよ……ここはトボけとくか。
「さぁてね……それよりも、どうだこの辺でやめとくか?頭のよろしいテメーならさっきの攻防で本気の俺には勝てねぇって理解しただろ?負けを認めるのがプライドが許さねぇってなら、しょうがねぇから引き分けってことにしといてやるからよ」
「人によってはその発言そのものがプライドを刺激しそうだな……生憎だが続行させてもらう。確かにお前は私より強い。だが私はここで退くわけにはいかない!そしてヒイラギよ、お前は畜生に甘んじてはならんのだよ!」
「お前が何を言いてぇのか知らんけどよ、これ以上やるってんならもう容赦しねぇからな。……一応釘指しとくけどよ、後で親に泣きついて仕返しとか企むなよ?」
「あまり私を愚弄するな。この闘いは私とお前だけのもの……たとえ父様だろうと干渉は許さん」
「そうかい、それを聞いて安心した。これで遠慮なくブチのめせるぜ」
「……よかろう、見せてやろうじゃあないか。水嶺流の真髄……剣撃の極致を!」
オオトリが木刀を構えて突撃してくる。……おいおいどういうことだ?さっきまでの闘いから判断すると、こいつの強みのひとつは絶妙な間合いの取り方だ。俺は拳か足なのに対してアイツは木刀という、リーチ差によるアドバンテージを最大限に活かそうとしていた。だから間合いを詰めようとしたのは俺ばっかで、アイツはあくまで迎撃というスタンスを取っていた。なのになんでアイツは向かってくるんだ?血迷ったのかやけくそか、どっちにしろ少し期待外れ-
ゾクゥッ!!!!!
っ!?!?!?
な、なんだこりゃ!?
俺の勘が告げている……避けようの無い危険が!
今まさに!
俺に向かって迫っていると!
次の瞬間、
一人の人間から放たれたとは到底信じられない剣撃の雨霰が、
無情にも俺の全身を飲み込んだ。
水嶺流陸の型・波紋……ぶつける瞬間に剣を素早く震動させることで、相手の体に衝撃を浸透させる。武器で受け止めてたとしても握力をどんどん失っていく。熟練者は応用として相手の臓器を傷つけたり、頭部にぶつけて脳震盪を起こさせたりも可能。