バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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今回からの話はざっくり言うと優子さんと和真君の馴れ初めです。明久が熱心にフランス語の勉強に励んだり雄二と大喧嘩したりしている傍らで、和真君達はいったい何をしていたのでしょう?前回までと比べてコメディ要素強めです。

あと、この話の間は優子さん視点onlyです。


和真と優子①

【優子視点】

    

「ふぅ、やっと登りきれた……。これから三年間通いつめるとなると少し憂鬱になるわね……」

周りに誰もいないことを確認しつつ、アタシは愚痴のような独り言を呟く。今日からアタシの通う文月学園の校舎はは急勾配の坂の上…いや、むしろ山の上に建っているという清々しいほどの不親切設計だ。通る道によっては坂が急すぎて自転車から降りないと登れないほどで、その分帰りは何とも爽快な気分に……なるかと思えば傾斜が急過ぎて全力で漕ごうものなら安全面のまるで保証されてない絶叫マシーンに変貌してしまう。よって結局朝の登坂で費やしたエネルギーは、自転車のブレーキによる摩擦熱に変換されて終わるという……改めて整理するとなんとまあ不合理極まりないこと。

アタシは徒歩だからまだマシだけど、それでもしんどいことには変わりない。まったく、何を考えてこんな場所に校舎を建てたのやら……。普通に考えれば金銭的な理由なんでしょうけど、この学校についているスポンサーは言わずと知れた四大企業と来たもんだ、そんなケチ臭い理由ではない気がする。……ま、一庶民のアタシがそんなこと考えてもしょうがないか。

「……眺めは悪くないわね」

立ち止まって周囲を見回してみる。眼下には見知った自分の街と知らない郊外へと続く道の二つの光景が広がっていた。現在の時刻は7時半と、入学式まではまだ一時間以上余裕がある。入学初日とはいえこんな早くに登校している生徒はアタシの他には今の所見当たらない。アタシも別に物好きでは無いので、こんな早くに登校せざるを得ない自分に少しだけ辟易している。

 

アタシは猫かぶり、というか……周りから何でもできる優等生に見られるための努力に人生の大半を費やしている。双子の弟が演劇狂いであるように、アタシも木下家の血の性からは逃れられないようだ。

その後アタシは校門で待機していた色黒の大柄な先生に挨拶を済ませ(「こんな朝早くから感心だな」と褒められたがこっちの台詞です。教師って大変ね……)、新入生在校生教師父兄用の椅子が並べられた体育館で自分のクラスと座る席を確認する。アタシは1-Aで、座る座席は右から二番目かつ前から二番目だ。

文月学園は完全実力主義の先進的な進学校だ。一年目はクラスによる優劣は存在しないようだが、席順は入試での成績順で決まっているらしい。この席順を見て教師は贔屓する生徒を選別するのではないかと想像するとどんよりとした気分になるが、席は男女で別れているためアタシは自分のクラスでは二番目に成績の良い女子ということになる。たしか入試でのアタシの順位は5位だったから、よほど各クラスに偏りがなければアタシより成績の良い男子はいないだろう。……学園生活の滑り出しとしては上々ね。

そんなことを考えながら指定された場所に向かうと、既に先客が座っていた。アタシの右隣、つまり1-Aの男子で二番目に成績の良い生徒の席に男子が一人。

赤みがかった黒髪の無造作ヘアにやや細身ながら引き締まった体、そこそこの高身長と見るからに運動が得意そうな外見だ。…あと、やけに可愛らしい顔立ちね。男子に可愛らしいは禁句だとはわかっているけど、それにしたってこれは……。流石に女子に間違われることはないだろうが、演劇バカの弟がメイクしたら男子だと一目でわかる人が皆無になりそうなほどの童顔だ。

……まあ、その弟はノーメイクでも男子だと認識できる人が皆無、どころか家族でもアタシとの区別がつかないほどなんだしそう驚くことでもないか。

この男子生徒は見るからに退屈していた。同じ雑誌を100回ほど連続でひたすら読み返せばこのような表情になる、というくらい明らかに退屈そうな表情だ。

こう言っては失礼だがとても真面目な優等生タイプには見えないので、こんな朝早くからスタンバイしているのはちょっと不思議に思った。……もしかして、式の始まる時間を8時だと勘違いしたのかな?意外とドジっ子?

アタシがそんなくだらないことを考えていると、その男の子はこちらに気づいたのかアタシの方をじろりと見る。

「オイ、心の内で勝手に人をドジっ子扱いしてそうなそこのお前。つっ立ってねぇでさっさと座れよ」

なんでわかったの!?

「そ、そそそんなこと思ってないわよ!妙な言いがかりはやめ…やめてよね!」

「いや動揺しすぎだろ……。おおかたどう見ても優等生には見えねぇ俺が、入学式とはいえなんでこんな朝早くに登校してんのか疑問に思って、式の開始時間を間違えたんじゃないか?…とか思ったんだろ」

いやだから、なんでそんなピンポイントで当てられるのよ!?エスパー!?

「えっと…ごめんなさい……?」

「いや別に謝って欲しい訳じゃねぇよ。アンタの想像通り俺は断じて優等生タイプじゃねぇし、そもそも好きでこんな早くにここにいるわけでもねぇしな」

そう言ってこの男子生徒は肩を竦める。というかさっきから思ってたんだけど、可愛い顔に反して意外と荒っぽい口調ね……。

「まあとりあえず初対面だから自己紹介でもしようや。俺は柊和真、これから一年間よろしくな」

「そ、それもそうね。アタシは木下優子、こちらこそよろしくね柊君」

フレンドリーに手を差し出して来たのでアタシも手を出して握手する。そこまで男の子に免疫があるわけではないため若干動揺してしまったが、自己紹介としてはまあ及第点だろう。

「…?……ふむ、なるほどねぇ……」

しかし柊君は一瞬腑に落ちないような表情をしてから、すぐさま意味深な笑みを浮かべた。ちょっと何よその不敵な笑みは…?せっかく可愛い顔してるんだからもうちょっとこう、あどけなく笑いなさいよ……。

「何か気になることでもあるの?」

「……いや、気にすんな。んなことより式開始までまだ大分時間あるんだし、適当に駄弁って時間潰そうぜ。さっきまで暇で暇でしゃあなかったんだ」

「だったら話は戻るんだけど……時間を間違えたわけじゃないなら、どうしてアンタはこんな早くに登校したの?」

「あぁそれな。聞いて驚け実はな……俺、こう見えてスポーツ得意なんだよ」

「ツッコミ待ちかしら」

どう見ても得意そうに見えるわよ。

アタシの指摘を気にも留めず柊君は話を続ける。

「それで今日サッカーの気分だったから、この学校のサッカー部の朝練に混ざろうと画策してたわけよ。ところがだ、今日は入学式だからサッカー部…というかどこの部も朝練やってなかったんだよ。それで泣く泣く体育館で退屈な時間を…」

「やっぱりアンタドジっ子気質じゃない」

「やかましい」

その後もアタシ達は談笑を続ける。アタシは今まで完璧な優等生を演じてきたため社交性には自信があり、柊君はそんなアタシよりも社交性に富んでいたため、さっき知り合ったばかりとは思えないほど話が弾んだ。そして時間経過とともに次第に他の生徒達もどんどん体育館に集まってきた。柊君の前に座ったのはとても高校生とは思えないほど小柄で童顔な銀髪の生徒。柊君は一度会話を切り上げて自己紹介をすると、こちらに振り向き大門徹と名乗りその後は我関せずとばかりに前に向き直った。人付き合いが苦手なタイプなのかな?アタシの前に座ったのは神々しさすら感じさせるほどの黒髪の美人。アタシが今まで見た中で一番整った顔立ちね。柊君と違ってどう見ても優等生タイプにしか見えないのに、この女子生徒は式開始ギリギリにやって来た。柊君が恒例の自己紹介をしようとした(省略したが柊君は彼女の前に来た1-Aの生徒全員と自己紹介を済ませている。どんだけコミュニケーション力高いのよ……あと平賀君って男子と柊君の後ろに座っていた時任君の二人だけ趣味だの特技だのやたら詳しく聞いていたが、なんで?)が、間の悪いことに式開始の合図らしきブザーが体育館全体に鳴り響いた。

パンフレットで学園長と紹介されていた白髪の老婆と、眼鏡をかけたバリバリのキャリアウーマン風の女性がマイクを持って舞台に立つ。

 

《それではこれより文月学園入学式を開催させていただきます。司会進行を務める第一学年主任の高橋洋子です。まず最初に学園長による新入生の皆さんへの祝辞です。学園長先生、よろしくお願いします》

《あいよ。コホン…えー、新入生の皆さん。入学おめでとう。アタシは、この学園の長を務める-》

 

「変態だァァァァァ!」

「僕の話を聞けェェェェェ!」

 

 

 

 

えっと……どう反応すれば良いのかな?

 




多機能フォーム便利ですね。どうしてもっと早く気づかなかった。
自分のバカさ加減をここにきて痛感……。

ちなみに入試での順位はこんな感じです。

①鳳蒼介(500/500)
②霧島翔子(497/500)
③姫路瑞希(485/500)
④久保利光(481/500)
⑤木下優子(465/500)
⑥佐藤美穂(459/500)
⑦橘飛鳥(442/500)
⑧二宮悠太(438/500)
⑨沢渡晴香(433/500)



⑱大門徹(411/500)


⑳柊和真(409/500)


と、現在でこそトップ10ド安定の和真君や徹君も入試での成績は上の中くらいでした。

・徹君は和真君や蒼介君との交流を経て文系科目を克服したためこの頃は苦手科目。よって理科・数学は満点だが他三教科が微妙だった。

・和真君は試験召喚戦争があるからこそ勉強したのであって、この頃は大の勉強嫌いが、天才なので適当にやってもこのくらいは朝飯前。ただし理数系は苦手。

以上の理由でこの順位です。



明久含むFクラスの人々が仮にも進学校を謳っているこの学校に合格できた理由は、えっと………原作でもぼかしていたのでこの作品でもぼかさせていただきます……。強引に理由をでっち上げることもできるんですが(例;生徒の学力差が小さいと上位クラスと下位クラスの戦力差も小さなくなるため、試験召喚戦争が頻発して学級日数が足りなくなる。それを防ぐために優秀・平凡・劣等をバランス良く合格にした…とか)、それをやると学園長の悪役度がストップ高になってしまうので……。
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