バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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【バカテスト・英語】
問.次の英文を和訳しなさい。

No, thank you.

姫路の答え
『いいえ、結構です』

蒼介「正解だ」


明久の答え
『ありがとうございません』

蒼介「何とか訳そうとした努力は認めるが、その訳は些か強引過ぎる」

須川の答え
『ありがとうなんて言わないんだからね!』

蒼介「……???」
 


※蒼介君は“ツンデレ”という文化を理解していないようです。


和真と優子②

【優子視点】

 

ザワッ

 

『へ、変態だと!?』

『ここの学園長は変態なのか!?』

『道理で学費が安いと……!』

《ちょっ…!?どうしてアタシが変態扱いされるんだい!?》

 

学園長の衝撃カミングアウト(?)により体育館は喧騒に包まれる。いや…ここ仮にも進学校よね?明らかに学園長の声とは違うってわかるでしょ……。

「変態が学園のトップねぇ……これからの三年間が不安になりますなぁ木下さん」

「悪ノリしないの」

「ちっ、しょうがねぇなぁ。さっきの声は、っと……あいつらだろ」

そう言って柊君は体育館の入口の方を向く。アタシもそちらに視線を移すと、二人の男子生徒がすごい形相で走っているとても珍妙な光景が目に入った。片方は逆立った赤髪に屈強なガタイのいかにも不良っぽい男。もう片方はそこそこ整った容姿をしているだけでパッと見は普通………じゃないわね、上半身セーラー服の時点で普通とはかけ離れているわ……。アタシの弟の亜種、つまり実は女性という可能性もゼロではないのだが、そうなると何故下半身は普通に男子制服なのかという話になってくる。総じてこの二人を一言で言い表すのなら………うん、紛れもなく“問題児”ね。

「聞けお前ら!とにかく腕に自信のある奴は出てこい!そうでないやつは邪魔だから下がってろ!」

赤髪の方の男子が体育館中に響き渡るほど大声でそんなことを言い出した。ちょっ…入学式早々喧嘩でもしようっての!?

「えっ、なに!?今度は喧嘩!?今日は一体どうなってるの!?」

セーラー服の男子(仮)が突然慌てふためく。あの二人、グルってわけでもないのね……。

啖呵を切った赤髪を中心に新入生達が『十戒』のワンシーンのように割れていくなか、好戦的な表情で向かっていこうとしている生徒が約二名…って、

「アンタ達どこ行こうとしてんのよ!?」

アタシは柊君と大門君の手を慌てて掴む。二人はアタシの方に振り向くと、

「何、随分腕に自信があるみてぇだから軽く遊んでやろうかと思ってな」

「売られた喧嘩は買う主義なんでね。別に良いじゃないか、『無駄にデカい奴は何をされても文句は言えない』って法律で決まってるんだからさ」

 

涼しい顔してとんでもないことをのたまいやがった。

 

「ダメに決まってるでしょうが!?初日から問題起こすつもりなのアンタ達は!?あと大門君、そんな法律無いから!」

ホント何考えてんのよ!?こんなのがウチのクラスの男子トップツーなの!?アタシが意地でも離さないとばかりに手を握りしめつつ二人を握りしめる。すると、

「まぁ確かに初日から問題起こすのは割とマズイよな。仕方ねぇ、ここは引き下がるか」

柊君はあっさりと納得した。あれ?意外とすんなり説得できた……。一方大門君はというと、

「仕方ないね、ここは君の顔を立てといて上げるから感謝するんだね。……もし僕が将来政権を握ったら必ず『長身撲滅法』を制定してやる」

やたらと恩着せがましいもののこちらもすんなりと引き下がる。というか大門君、どんだけ身長がコンプレックスなのよ……あとその法律が制定されることは絶対無いと思う。 

 

「誰も腕に覚えのある奴はいないのか!」

 

離れた所で赤髪の怒号が木霊する。あぁもう、いい加減にしなさいよ……。周りの迷惑もお構い無しに行動して、これだから不良って嫌いなのよ……。

アタシが内心でイライラしていると前の席の女子生徒が赤髪の方を向きながら、心なしか悲痛そうな表情で呟く。

「……雄二…」

……え?知り合い?この……どの角度から見ても模範生というイメージしか湧かない美少女と、あの見るからに粗暴そうな男が?

 

「この状況で寝てんじゃねぇぇぇ!!」

 

するとまた赤髪の絶叫が響く。声がした方を向くと、赤髪の不良とポニーテールの女子生徒が対峙していた。近くに座っていた他の生徒は避難しているのに何で座ったままなのあの子!?

「ありゃあ寝てんな。随分と豪胆な奴だぜ」

アタシの隣で柊君が感心するように呟いた。アタシも目を凝らしてよく見てみると、確かにその女子生徒は座ったまま眠ってるようだった。な、なんて緊張感の無い……というか、なんでこんな騒ぎの中寝ていられるのよ!?

すると、騒ぎの元凶二人に一人の教師が近づいていく。あの人さっき校門で挨拶した色黒の先生ね。

「ん?ありゃあ……西村センセじゃねぇか」

「え?柊君あの先生と知り合いなの?」

「俺の知り合いっつーか、俺の親父の知り合いだ」

西村先生は問題児二人と二言三言ほど言葉を交わしてから、

 

「この……馬鹿者どもがぁぁっ!」

「「ぎゃぁあああああっ!!」」

 

騒動を拳一つで収束させた。

いやあの、西村先生……それ体ば-

「違うぞ木下。あれは指導だ」

「強引過ぎない!?というかこれ、教育委員会とかに訴えられたらマズいんじゃ…」

「はっはっは、お前いくらなんでも四大企業を過小評価し過ぎだろ。この程度のスキャンダル、余裕で揉み消せるだろうぜ」

「黒っ!?仮にも教育機関が揉み消しとかやっちゃっていいの!?」

え?ってことはこんな高台に校舎を建てたのも不都合なことを隠蔽するため!?…………入る学校間違えたかもしれない……。

 

 

その後入学式は粛々と進んだ。予定外の乱入事件で時間が押していたのでやたらと急ピッチで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式終了後、振り分けられたクラスで自己紹介の時間に。教室での席順は普通に出席番号順なのね。あの男子二人とは離れちゃったか、ホッとしたような野放しにするのが不安なような……あれ?黒髪の人はアタシの後ろなんだ。

「じゃあまず私から……この一年間君達の担任を務める布施文博です」

布施と名乗ったその先生は、白衣を着た少々頼りなさそうな男性だ。……多分化学教師でしょうね。

その後淡々と自己紹介は進んでいき、あっという間にアタシの番になる。ここは正念場よアタシ、この自己紹介で奇抜な挨拶をしようものならこれからの一年間…いや、下手したら三年間の学園生活にダイレクトに響くんだから。

「如月中学出身の木下優子です。これから一年間よろしくね(ニコッ)」

結構大きめの拍手を受けながらアタシは着席する。よしっ、手応えは十分……!

別に脚光を浴びたいとか、中心に立ちたいわけではない。欠点を人にさらけ出すのが極端に嫌なだけで、それを防ぐためならいかなる労力も惜しまないのがアタシ、木下優子という人間だ。損な性分だとは自分でも思うけど、こればっかりは生まれつきだからしょうがない。

…………あと柊君、何故アンタは机に突っ伏して笑いを堪えるかのように体を震わしてるのかしら?事と次第によってはひっぱたくわよこの野郎。

そんなアタシの怒りなどお構いなしに自己紹介が続く。アタシの後ろに座っている黒髪の女子生徒が優雅に席を立つ。なんていうか、ただ立っただけなのに随分と絵になるわね……。

「……神無月中学出身の霧島翔子です。よろしくお願いします」

霧島さんはクラス中の視線をこれでもかと浴びながらも顔色一つ変えずに淡々と名前を告げる。内容こそ特筆すべきことの無いありきたりなものであったが、同性のアタシですら見惚れそうなほど優雅な佇まいであった。カリスマってきっとこういう人を言うんでしようね……。

その後も自己紹介は続いていき、大門君の番になる。……改めて見ると小学生にしか見えないわね。入学式では問題起こそうとしてたけど、流石に自己紹介は普通に-

 

「皐月中学の大門徹だ。始めに一つきみ言っておくことがある……僕の身長や顔立ちにとやかく言う奴は 容 赦 な く ブ チ の め す つもりだから覚悟してね」

 

数秒前の自分をひっぱたいてやりたくなった。

……おかしいでしょどう考えても!?どこの世界に初めの自己紹介でクラスメイトを脅す奴がいるのよ!?

皆も同意見なのか(柊君だけ机に突っ伏して爆笑してたけど)

教室中がざわめくのもお構いなしに大門君は着席する。いくらなんでもマイペース過ぎでしょ……。布施先生は注意しようか悩んでいたようだが、結局諦めて次の生徒に自己紹介の続きを促した。

そして自己紹介は続いてゆき、とうとう柊君の番になった。すっごく不安なんだけど……。

「霜月大附属中出身の柊和真だ」

霜月って、あの名門の?意外……。

問題児と思いきや、以外と品行方正なのかも-

 

「ククク、覚悟しろよお前ら……俺と同じクラスになったからには、平々凡々でありきたりな学園生活は潔く諦めてもらおう!」

 

アタシの淡い希望は意図も簡単に打ち砕かれた。

何の宣戦布告よそれは!?

「ふむ、具体的にどんな学園生活になるんだい?」

すると大門君がそんな質問する。

「良い質問じゃねぇか大門。そうだな、例えば……」

柊君はおもむろに後ろに座っている平賀君に振り向く……心なしか悪意に満ちた笑顔で。

「例えばだ……この男こそ京成中学出身、趣味は音楽鑑賞特技は手品得意科目は社会と、なんとも普通きわまりない男・平賀源二とて、例外じゃねぇ!」

「いやなんで俺のプロフィール全部暴露したんだ柊!?俺自己紹介で何言えば良いんだよ!?」

「せっかくだから一発ギャグでもしろよ。……これが質問の答えだ。自己紹介で一発ギャグ……一人の男子生徒がさっそく平凡な学生からかけ離れてしまったなぁアッハッハッハ!」

「アッハッハッハじゃなぁぁあああい!?」

 

お……鬼だ…………。

 

クラス中が爆笑の渦に包まれる中、アタシは平賀君に同情の涙を禁じ得なかった。惨い、惨すぎる……。

柊和真……アイツは間違いなく真性のSだ。

 

そして同時にこう思った。

 

 

 

 

 

 

“頭脳の無駄遣いにもほどがある”……と。

 

この一連の流れ……間違いなく計画的犯行だ。おそらく柊君は入学式前に平賀君と知り合ったときには、こうなる算段がついていたのだろう。柊と平賀……自己紹介が出席番号順かつこの二人が同じクラスであるならこの二人の自己紹介は十中八九連続している。だから柊君は平賀君のプロフィールを細かく聞き出していたのだ。時任君のプロフィールを細かく聞いていたのは、自己紹介も成績順だった場合の標的だったのだろう。これだと一見男女混合の際の成績順だった場合を想定していないように思えるが……おそらく柊君の標的は男子に絞っていたと思う。標的を女子にすると、その女子が気弱な性格だったら最悪泣かせてしまい笑い話にならないもの。

ここまで情報を集めれば、あとは大門君にさっきのような質問をしてとでも頼んでおけば準備は完了。思考時間ほぼゼロで一発ギャグをさせられるという、地獄としか思えない状況に平賀君を放り込める。なんかクラス全体も平賀君に一発ギャグを期待するような空気になってるし、大門君みたいな図太い神経をしていなければやらないという選択はできないだろう。

 

…………ごめんなさい平賀君、標的がアタシじゃなくて良かったとかちょっと思っちゃった……。

 

 

 

 

 




飛鳥「その後、1ーAの自己紹介は終了したわ。え?平賀君のギャグはどうなったかって?……ただでさえ一発ギャグは『やれ』って事前に言われた時点で敗北しているのよ?その上思考時間ほぼゼロなんて……」

和真「あまりにもいたたまれねぇ結果に終わったから描写はしねぇ。武士の情けってやつだな」

蒼介「追い込んだ張本人のお前がいたたまれないとか言うな。……しかし平賀、こんなことがあってよくこいつと下の名前で呼び合う仲にまでなったな」

和真「社交性の為せる技だぜ」

優子「そのどや顔やめなさい」
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