バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~ 作:アスランLS
さて、久々に和真君が絶好調になります。
【雄二視点】
「まったく……最近、ババァの召喚獣のせいでヒデぇ目に遭うことが多いな」
「そうだね。困ったもんだよ」
子供型の召喚獣が出る、という騒ぎがあった、翌日の放課後。俺と明久は報復(学園長室の机の引き出しに鍵をつけて『どれかが当たり。頑張ってね♪』というムカつく文面の張り紙とともに偽の鍵百個と当たりの鍵一個を混ぜて机の上に置いてくるというもの)を終えて二人で廊下を歩いていた。ちなみに和真の案で机の中には『中の物はこの机の別の引き出しに移して置いたよ。無駄な努力御苦労様でした(笑)』と書かれた紙切れだけが入っている。人を苛立たせることに関しては他の追随を許さないよなアイツ。
「そもそも、身体よりも精神にくるものが多いっていうのがいやらしいと思うんだ」
鞄を回収しにFクラスの教室へと向かう途中、明久がそんなことを言い出した。まあ確かに勝手に本音を喋られたり子供のシミュレーションをしたりすんのはなぁ……常に平常心でいられる俺ですらうんざりしてるのだから、他の奴には苦行そのものだろうな。特に…
「確かに、俺ならともかくお前みたいに取り乱しやすい奴にはキツいよな」
俺が至極当然な意見を述べると、なぜかこいつは心外だとでも言いたげな表情になった。
「それはこっちの台詞だよ。僕は大抵冷静に対処しているけど、雄二はいつも隣でアタフタしてるじゃないか」
……はぁ?何言ってんだこのバカは。
「お前こそ何言ってやがる。どう考えても俺の方が常に冷静沈着な態度を保っているだろうが」
「いやいや、僕の方がクールに振る舞ってるよ。動じないこと山の如しって感じだね」
なんて会話をしながらFクラスのドアを開けると、
『木下が今着ているメイド服のリボン、一万から! 』
『一万五千!』
『二万!』
『何を勝手に人の衣装を売買しておるのじゃ!?これは演劇用じゃから、お主らには渡せんと言ってーーーとにかく放すのじゃー!』
教室の中ではクラスメイトがオークションみたいな、というかオークションを繰り広げていた。翔子は確か木下姉に呼ばれてAクラスに行ってるんだったな。だから和真も珍しく教室で惰眠を貪ってんのか。
「ほらね?平常心の塊の僕だからこそ、教室に入るなりこんな騒ぎがあっても動じないで済んでるんだよ」
「何言ってやがる。俺だって眉一つ動かしてないだろうが」
『平然と会話を続けとらんで助けんかぁぁぁあああああ!』
輪の中心から秀吉の叫び声が聞こえてくる。
最終的に騒音で安眠を妨害されたせいで超絶不機嫌モードに移行した和真があっという間に全滅させて幕を引いた。そういやこいつらはまだ知らなかったっけ、寝起きの和真は冗談抜きで危ないってよ。
「お主らの平常心、じゃと?」
「うん。僕の方が雄二なんかよりよっぽど冷静沈着だと思うんだ」
「まだ言うか。絶対俺だっての」
「……ワシはそんな話の為に見捨てられそうじゃったのか……」
「つうことはアレか?俺の安眠が妨害されたのも元を辿ればお前らがくだらねぇ争いに夢中になってあのボケどものバカ騒ぎをすぐに止めなかったからだってか?オイオイ良い度胸してんじゃねえか……ブチ殺してやるからちょいと面貸せや」
「よすのじゃ和真!?お主の気持ちはわからんでもないがが蒸し返すでない!」
据わった目で俺達を睨みながらこちらへにじり寄ってくる和真を、秀吉が後ろから羽交い締めして食い止める。あまりの迫力に金縛りにあったかのように硬直していた俺と明久がその様子を見て安堵する。こいつが本気でキレてたら秀吉が抑えきれるはずないしな。俺達の反応に不服そうな表情をしながらも、ようやく和真は矛を収めた。さて、命の危機が去ったところで話をもとに戻すが…
「雄二なんていっつも霧島さんに振り回されて動揺しまくりじゃないか。絶対僕の方が冷静だよ」
「寝言は寝て言え。お前のどこが俺より冷静だって言うんだよ」
「全部だよ。その証拠に今この瞬間だって僕の方が冷静じゃないか」
「嘘つけ。秀吉の格好に動揺しまくってるくせに」
「何を言ってるのさ雄二。僕はこの通り、取り乱すことなく冷静に鑑賞して」
「どれどれ(ピラッ)」
「卑怯なっ!?(ダバダバダバ)」
「雄二よ、なにゆえワシのスカートをーーーまあ、男同士じゃから構わんのじゃが……」
「すまん秀吉、一応中は見えない程度に捲ったつもりだ」
「なぜそこで謝るのじゃ!?男同士じゃから構わんと言っておるのに!」
「とにかく、これで明久の方が動揺しやすいということは証明されたはずだ」
「よし、さっそくこのことを霧島さんにリークしに…」
「なっ!?テメェ汚ねぇぞ!」
「ほら!雄二だって動揺してるじゃないか!やっぱり僕の方が冷静だよ!」
「何を!」
「やるか!」
まったくこのバカときたら、さっさと負けを認めれば良いものを……ここは第三者に現実を突きつけさせるとするか。
「「秀吉と和真!どっちが冷静だと思う?」」
「どっちもどっちじゃと思うのじゃが……」
そんな意見は断じて認めん。
「つーかお前らが冷静?とうとう頭に蛆か何かでも湧いちまったか?」
呆れたように答える秀吉と、可哀想なものを見るような視線を送ってくる和真。秀吉はともかく、すげぇムカつくなこいつは……!ちょっと前までは和真も木下姉絡みですぐテンパってたからそこにつけこめたが、耐性ができたのかそれとも痩せ我慢してるのか、少なくとも俺達の前じゃまったく動揺しなくなったからなコイツ……その代わりに以前にも増して木下姉に飼い慣らされてるみたいだが。
「そもそも、そういったことは同じ条件で比較せねば優劣などつけられんじゃろ」
「野球と水泳で優劣を決めようとしてるようなもんだな。んなもん勝敗云々以前にそもそも勝負として成立しねぇよ」
秀吉が諭すように言い、和真もそれに賛同する。
まあ確かにそうだな、今のところ俺と明久じゃ動揺する条件が違うだろうし。
「それなら条件を揃える必要があるな」
「だね。同じ条件なら僕は雄二なんかに負けるわけないんだから」
「なんじゃ、まだ続ける気か?」
「「当然!」」
こんなバカに侮られたまま終われるわけがねぇ!
「あー、やっちまったなぁ……雄二に明久、すまねぇ」
突然、和真が携帯を片手にバツの悪そうな表情でそんなことを言い出した。いきなり何だ?やっちまった、って……なんだか物凄く嫌な予感が-
「『お前ら二人がとうとう(美紀的な意味で)一線を越えた』ってメールをついA~Eクラスの全員に送信しちまっ-」
「「なんてことしてくれてんだキサマァァァアアアアア!?」」
俺も明久も我を忘れて和真に食ってかかる。こいつは悪魔か!?いや悪魔だ間違いなく!この学園の連中は思い込みが激しいから、そんなネタを吹き込めばあっさり信じてしまうに違いねぇことはわかりきってるだろうが!なんでいきなりそんな鬼畜な所業を…
…いきなり?………………まさか…
「まあ嘘だけどな」
「やり方は悪辣じゃが、お主ら二人が同レベルじゃと見事証明されたな」
やっぱり罠か畜生!?……いいや認めねぇ!
この俺が?こんなバカと同レベル?そんなこと天地がひっくり返っても認めるわけにはいかねぇんだよ!
「違うんだよ二人とも!さっきのはただの声の大きなツッコミで」
「そうだ!あくまでもあれは絶叫ツッコミなんだ!」
「それこそがまさに動揺じゃろうに」
「言い訳も同レベルだなお前ら」
ちぃっ、これは何を言っても逆効果だな!……仕方ねぇ、ここは敢えて受け入れることで器の大きさを見せるか。
「ま、まぁ、わかったよ二人とも。それなら次からはツッコミも控えるよ。さっきのも別に動揺したわけじゃないけど、誤解されるのも癪だしね」
「仕方ないな。ツッコミを動揺していると受け取られるなら、俺も控えるとしよう」
「それでも認めないとは、本当にお主らは負けず嫌いじゃな……」
「「コイツと同レベル扱いされるのが我慢できないだけだ(よ)!」」
お互いを指差して叫ぶ。コイツに負けてるのなんざ召喚獣の操作技術と女装のクオリティくらいで、あとは全て俺が上だ!
「しかし、次と言ってもどうするつもりじゃ?」
「じゃあもう一回俺が-」
「「遠慮させていただきます」」
そもそも題材をこのド外道に提供させるのは人選ミスだ。こいつの凶悪な所業を冷静に対処できる奴なんざ鳳ぐらいだろうよ……。
「しかし、困ったね……」
「うまく同等の条件で勝負できるものがあればいいんだがな」
「…………何を話している?」
俺達が頭を捻っていると、窓の外からムッツリーニが這い出てきた。以前までの俺ならかなり動よ-ツッコミを入れていただろうが、御門のおっさんが赴任して以来見慣れた光景になりつつある。あのおっさん、鉄人から逃げるとき大概窓から行くもんな……。
「ああ、ムッツリーニー。実はね-」
~~ムッツリーニに事情を説明中~~
「…………なるほど。
そういうことなら、協力する」
明久のわかりにくい説明を聞き終えたムッツリーニはそんなことを言い出した。
「え?協力って?」
「…………俺が二人を動揺させる仕掛けを用意する。それで勝負をしたらいい」
仕掛けを用意って、それ結構重労働じゃねぇか?
「ホントにいいの?」
「(コクリ)…………そういうのを、一度やってみたかった」
こともなげに頷くムッツリーニ。
仕掛け人がムッツリーニとなると不公平さは無いだろうし、和真のような殺傷力も乏しいだろう。
「よしっ。じゃあお言葉に甘えて……勝負だ雄二!」
「けっ。望むところだ!」
「まったく、お主らは……」
「ほほう、なるほどねぇ♪」
こうして俺達の奇妙な勝負が始まろうとしていた。後になって思うが、くだらない意地を張るんじゃなかったと心底後悔している。
和真「今回はあくまで導入……本当のお楽しみは次回からだぜ♪」
蒼介(新しい玩具を見つけたかのような笑顔だ…)