バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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姫路さんの殺人料理スキルを消失させた弊害がこんな所にまで……バタフライエフェクト恐るべし!


動揺してはいけない土屋家②

【雄二視点】

 

週末の放課後、俺と明久は“土屋”と書かれた表札のある家の前まで来ていた。

「覚悟はできてるんだろうね、雄二」

「それはこっちの台詞だ明久」

明久とふたりで、目の前の一軒家を見ながら話す。綺麗な庭に、大きな玄関扉。モデルハウスのようなその家で、これからとある企画が開催される。

「…………まず、ルールの確認」

「ルールっつっても、別に複雑なもんじゃねぇから安心しろよ明久」

「なんで僕を名指ししたのかな和真」

「他意は無ぇ……多分」

「多分!?」

ムッツリーニと和真の二人が玄関の前で俺達に告げたルールはたった二つ。何があっても平静を保つことと、平静を保てなかった場合罰ゲームを受けることだ。要は常に平常心を保っていれば良いだけの話か……フン、楽勝だぜ。

「…………アウト判定は別室で待機している秀吉に任せてある」

「「了解」」

秀吉が判定するなら文句はねぇ。今日という今日はこのバカに人としての格の差、そして俺がいかに精神的に大人なのかをわからせてやる!

「…………ちなみに」

「「ん?」」

「…………罰ゲームは、和真のタイキック」

「「……………」」

俺と明久の心拍数が跳ね上がった。

「適度に手加減はしてやるから安心しろよ」

「「安心できるかぁっ!」」

冗談としか思えない…というか冗談であってくれと切実に願いたい罰ゲームの内容に、思わずツッコむ俺と明久。すると、

『明久、雄二、アウトじゃ』

どこからともなく秀吉の声が聞こえてきた。

「…………今のを開始後に言われたら、罰ゲーム」

「「なるほど」」

「景気付けに蹴っとくか?」

「「遠慮します」」

さっきのはあくまでルール確認だからノーカンだ。そもそもそれがわかっていたからツッコミを入れたんだしな。

「…………それじゃあ、今からスタート」

「「おうっ!!」」

「俺の出番が来ねぇよう、精々足掻けよ?」

 

 

 

ムッツリーニが歩き出す。

さて、ここからが本番だな。

「…………まずは庭を案内する」

「あれ?家の中じゃないんだ」

明久の言葉に頷いきつつ、玄関先から庭へと移動するムッツリーニ。俺達三人もそれに続く。ムッツリーニの家の庭は結構広く、花壇や家庭菜園などが作られていた。

「へぇ~。トマトを植えているんだ」

「向こうはキュウリか?ジャガイモも植えているみたいだな」

「裏側の方にはアスパラやピーマンもあるぜ。随分とまあバラエティ豊かな菜園じゃねぇの」

「…………父親の趣味」

話をしながら更に家の外周を沿うように歩く。多分このバカはこの方法なら食費をゲームや漫画に変えても問題なくなるんじゃないか?……とか思ってんだろうな。一つ意見するなら、生活費を好きに使いたいならその前にあの姉貴をどうにかしないとダメなんじゃないか?

「…………向こうは物置とか、車庫とか」

「ふむふむ」

「今のところ普通だな」

「…………普通の家だから」

「お前が住んでいるって時点でそこはかとなく異論を挟みたくなるなオイ」

心の内でのみ和真に賛同しておく。今日はそう言った発言は動じていると判断されてしまう可能性がある。まあ普通に何かを言うくらいなら大丈夫だとは思うが念には念をだ。和真の黄金の足から繰り出される蹴りは頭おかしいレベルの威力だ、断じて一発たりとも喰らうわけにはいかねぇ……。

「…………じゃあ、家の中へ」

「うん」

そしていよいよ家の中へ。

結局庭では何もなかったか……。

「てっきり何か仕掛けているものだと思っていたけど……」

「俺もだ。ずっと警戒していたんだが」

「…………考えすぎ」

「そんなことを言って、実は玄関を開けたらいきなり何か用意してあるんじゃないの?靴べらの代わりに鍋つかみがあるとか」

「…………そんなことはしない」

心外そうに言いながら、玄関を開けるムッツリーニ。

 

 

スリッパ

スリッパ

便所サンダル(新品)

鍋つかみ

しゃもじ

 

 

「…………何か?」

何かじゃねぇよこの野郎……!

下唇を噛んで必死にツッコミを我慢する俺達。

「…………今度は家の中を案内する」

「さっさと行くぞお前ら」

そんな俺達を尻目に、ムッツリーニと和真は平然と靴を脱いで、しゃもじを使ってスリッパを履いていた。そもそもスリッパだから靴べらは要らねぇだろなんてツッコまんぞ俺は……!

「行くぞ、明久」

「了解」

俺と明久も靴を脱いでサンダルや鍋つかみを履き、ムッツリーニにそれに続く。しゃもじの隣に“革靴用”と書かれたスプーンが置いてあったが、当然のように無視した。

「…………こっち」

ムッツリーニが階段を上っていく。どうやら先に二階を案内するようだ。

「二階には何があるの?」

「…………俺や兄さん達の部屋」

「そういや以前、上二人下一人の四人兄弟っつってたな」

「いいなぁ。お兄さんとか、羨ましいよ」

「何言ってんだ。お前にだって姉貴がいるだろ」

「……あれは……ちょっと、特殊だから」

「気持ちはわかるぜ明久、俺も父親がアレだし……」

勿論俺にもわかる。なんせ母親があれだしな。

「…………ここが、一番上の兄さんの部屋」

「ふむふむ」

部屋のドアには“颯太の部屋”というプレートがかかっていた。

「…………ここが、二番目の兄さんの部屋」

「ふむふむ」

さっきと同じように“陽太の部屋”というプレートが。

「…………そしてここが俺の部屋」

今度は“ムッツリーニの部屋”というプレートなかかっていた。

 

…………………………………………“ムッツリーニ”?

 

「「ぅくッ!」」

「アダ名て……」

滑稽なものを見るかのような(いや、実際滑稽なんだろうが……)和真の隣で、込み上げるツッコミの衝動をどうにか食い止める。なんで自分の家でアダ名!?こいつは母親に「ムッツリーニ、ご飯よー」なんて呼ばれてるってことなのか!?不憫すぎるだろ!息を止めて堪えている俺達に、ムッツリーニは続けてこう言った。

「…………最後に、妹の部屋」

そして、一番奥の部屋を指差すムッツリーニ。

 

“土屋の部屋”

 

「苗字ぃぃーーーっ!?」

いくらなんでもおかしいだろこれは!?何がどうなれば自分の家で家族から苗字呼びされる事態が起こり得るんだよ!?

『明久・雄二、アウトじゃ』

聞こえる秀吉の声。おのれ……四段落ちとは卑劣なマネを…………っ!?

「さて、楽しい楽しい罰ゲームの時間だ」

いつの間にか和真が俺と明久にジリジリと近づいて来る。満面の笑みを浮かべている様子が余計に怖ぇ……。

「「ちょ、ちょっと待-」」

「柊和真、容赦せん!」

思わず命乞いをする俺達を一蹴したかと思いきや、まさに一瞬で俺達の背後に回り…

 

バコォオン! バコォオン!

 

「「ぐがぁぁあああっ!?」」

俺達のケツに蹴りを叩き込んだ。あまりの威力に俺も明久も体を支えきれずその場に倒れこんだ。

い、痛ぇ……っ!チャリに思いきり跳ねられたほどの衝撃を受けたが、確かに手加減はされているようだ。こいつの蹴り、本気でやったらコンクリート程度ならレゴブロックのように砕けるらしいからな……。

「…………大丈夫?」

「いや。全然大丈夫じゃないよ……」

「一撃で意識を持って行かれそうになったぞ」

「んだよ軟弱だな。

ご自慢の打たれ強さはどうしたんだ?」

無茶言うな!……と叫びたい衝動をすんでのところで押さえつける。いくら耐久力に自信があってもだな、交通事故を平然と流せるほど人間やめてねぇんだよ……。

少し休憩を取った後、俺達はムッツリーニの部屋に入る。……しかしムッツリーニの部屋か、入るのは初めてになるな。通常時ですらツッコミ所の宝庫だというのに、まず間違いなく企画用に魔改造されているだろうな……。それに、もし和真が仕掛けに一枚噛んでいたとしたら……ここは気を引き絞めて行く必要があるな。

 

 

 

 

 

 




というわけで和真君のタイキックで代用しました。全力を出すとこの企画が打ち切りになってしまうので1/5程度の力で蹴っています。
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