バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~ 作:アスランLS
【和真視点】
「「「うーーん……」」」
「? どうしたのよアンタたち。難しい顔しちゃって」
「珍しく真面目な顔をしておるのう」
「何かあったんですか?」
ある日の放課後。あと保健体育さえ500点を越えれば腕輪能力がランクアップするため、綾倉先生から借りた『エキスパート・ラーニング』を片手にガラにもなく教室で自習をしていると、真剣な表情で考え込んでいる明久、雄二、ムッツリーニが珍しかったのか、姫路と秀吉と島田が三人に訪ねていた。持ち前の勘で面白そうな気配を嗅ぎ取ったので、俺も本を閉じて集まりに加わることにした。
「これだよ、これ。どうしようかと思ってさ……」
悩みの元凶らしきものを姫路に見せる明久。
「あ。今日もらった進路希望調査ですね」
「うん」
進路希望調査表だぁ?あくまで現時点での希望なんだから、んなもん大して悩むことでもねぇだろ。
「どうするも何も、進学じゃないの?」
「うちのクラスの素行見てると忘れがちだが、一応ここ進学校だし大抵はそうだろ」
進学校どころか学舎かどうかすら結構な頻度で疑わしくなるけどな、このクラス。
「ワシは、少なくとも雄二は進学するものじゃとばかり思っておったがの」
「ま、俺もそのつもりではあるんだがな。進学するにしても、どこの学校とか何の学科とかも書かなきゃいけないだろ?それをどう書くのかが結構悩ましくてな……」
コイツがそんなことで悩むなんて意外……ああそういうことか。ホント往生際悪いなコイツも。
「悩んでるのは明久もだ。どこの樹海を選べば良いか、こいつにとっては悩ましいところだろう」
「お先真っ暗だなオイ」
「というか雄二、サラッと僕の進路選択に『樹海で野垂れ死に』を混ぜるんじゃない」
なんでコイツらは隙あらば会話内容を不毛な方向にシフトさせたがるかね……?
「迷ってるなら、まずは思いつくまま書いてみて、後から変更したらどう?」
「確か、第三希望まで書くんですよね?」
「いや。俺達三人は特別に第十五希望まで書くように言われている」
「多すぎませんか!?」
三つ程度じゃこいつらの進路は決まらない……とは西村センセの弁だが、数だけ増やしても下手な鉄砲なんとやらってなるほど人生甘くねぇと思うがな。
「十五個もあるんじゃ適当に埋めんのも苦労するだろうな」
「そうなんだよね……それに適当に書こうものなら鉄人のことだし、鉄拳制裁付きの書き直しか待ってるだろうし……ところで、秀吉や和真はもうコレ書いたの?」
「んむ?ワシもまだ書いてはおらんが、やりたいことは勿論演劇関連じゃからの。さほど迷うことはないじゃろ」
「あ、そっか。いいなぁ」
「俺は第一希望が霜月大で、それ以外は適当に大学ランク順で埋めたから全く覚えてねぇ」
「相変わらず滅茶苦茶ねアンタ……って霜月大?そこって確か、全国でも五指に入るであろう超難関大学じゃあ……そんなとこ受けて大丈夫なの?」
「試験当日俺に隕石でも落ちてこない限り間違いなく受かる。過去問目ぇ通したけど綾倉先生に借りた教材に比べればチョロかったし」
「おお……僕には一生縁の無いセリフだ」
「というかお前が霜月大?学力はともかく、人格破綻者のお前があんなエリート大学に進学希望するとは意外だな」
「よりによってお前に人格破綻者呼ばわりされる筋合い無ぇんだけど……まあ俺中学まで霜月大附属だから古巣に帰るみてぇな感覚だな、あっちには知り合いも多いし」
ちなみに優子と愛子と徹も霜月大志望で、飛鳥は梓先輩と同じく栄応大の推薦を考えているらしい。そして蒼介はハーバード、源太はイギリスの大学を希望しているそうだ。
「それなら、アキも将来やってみたいことで決めたらいいんじゃない?」
悩んでいる明久に島田はそう助け船を出した。
「将来やってみたいこと?」
「そうじゃな。そこから進学なり就職なりを考えたら良いじゃろ」
「明久君はどんなことにに興味がありますか?」
姫路にそう訪ねられ、明久はしばし考え込んでから口を開く。
「漫画やゲームかな」
「それただの趣味じゃねぇか」
「うぐ……」
「いや、漫画家という手があるぞい」
「あるいはゲームデザイナーという道もありますよ」
ケーキが好きだからケーキ屋さんになりたいレベルの安直な発想だな……。
「漫画やゲームには関係無いけど、アキなら調理師とかもいいんじゃない?」
調理師ねぇ……そういやこいつ料理得意だったな。ソウスケがガチ過ぎるからすっかり忘れてた。
「つまり、僕の将来は-」
「…………エロ漫画家、エロゲー作家、エロ調理師」
「-のどれかに……って、どうして全部にエロがつくの!?その進路は全部ムッツリーニにとっての願望だよね!?」
「………!!(ブンブンブン)」
いつになったらコイツはその無駄なあがきを諦めるのかねぇ……だいたい百歩譲って前二つはともかくエロ調理師ってなんだ、どこに需要があるんだそんな特殊なジョブ。
「おいおいムッツリーニ。まがりなりにも人生を左右する大事な話だぞ?もうちょい真面目に聞いてやろうぜ」
こいつが明久関連で真面目になるとき、大抵が明久をディスるための前フリだよな。
案の定雄二は小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら明久に向き直る。
「それで明久、いったいお前はどこの中学校に進学したいんだ?」
「さては喧嘩の特売だな!?全部買ってやるから表に出ろこのクソ野郎!」
「アキと葉月が同級生……。姉として感慨深いものがあるわね」
「美波はその前に友人として僕に同情するべきだ!」
「つぅかそれ進学じゃねぇだろ……進むどころか盛大に逆走してるじゃねぇか」
「あはは……。えっと、それじゃ明久君は一旦保留して……土屋君は将来なりたいものは何かないんですか?」
「…………ヌー……カメラマン」
(((ヌードカメラマンか……)))
俺達の考えは多分一致した。
「ええと、土屋君……。先生に提出する用紙なので、もうちょっと説明しやすいものにしたほうが……」
「…………!(ブンブンブン)」
どこの世界に進路希望用紙にヌードカメラマンと書いて提出する高校生がいるんだよ……。
「ムッツリーニはやりたいこと自体に問題がありそうだね」
「だが、明確にやりたいことがあるっていうのは良いことだと思うぞ」
明久と雄二はムッツリーニを見ながらそんなことを呟いた。やりたいこと、ねぇ……とりあえず体動かすやつがいいな。ここ卒業したら試験召喚戦争もできなくなるし、そうなったらいよいよデスクワークへの意欲が無くなるぜ……あ、翔子。
教室に入ってくるや否や雄二達には気づかれずに近づき、目にも止まらぬ早業で進路希望調査標をひったくったかと思えば、これまた凄いスピードで何かを書き込んでいく。
「そう言う坂本君は何か興味があることはないんですか」
「うん?そうだな、俺は-」
「……こんな感じ」
そして翔子は近くにいた明久にその用紙を差し出し、明久はそれを手に取って読み上げる。
《
「なによ坂本。アンタもう進路決まってるんじゃない」
「まったくだよ。人のこと羨ましいとかなんとか言っちゃってさ」
「お前らわかっていて言ってるだろ!?」
お前はもうどんなルートを辿ろうが最終的に行きつく所は同じだから、どれだけ悩んでも無駄ってことだな。
「つか雄二お前もしかして、翔子に自分の進学先教えないつもりだったのかよ」
「………俺がエリート気質の連中と無条件でそりが合わないのは知ってるだろ?だから自分の学力より大分ランク落とした大学に進学するつもりなんだが……こいつのことだから教えたら絶対俺についてくるだろ。そんなことになったら俺は翔子の両親に顔向けできねぇよ」
………こいつもう一回ぶちのめした方がいいかもな。
予想通り雄二はまさに「怒ってます」と言わんばかりの表情をした翔子にアイアンクローをかけられる。
もっともらしい理由で取り繕ったが、多分こいつのことだからキャンパスライフくらいは自由に過ごしたいとかそんなんだろうな……結婚云々に腹くくっても涙ぐましい抵抗はまだ続いているようだ。翔子もそれを察しているのか、雄二の悲鳴には耳を貸さず怒りに任せて顔面を大豆のように変形させる。
「うーん……。本当に悩ましいなぁ……」
まあそんなことはこのクラスでは日常茶飯事なので、明久はそれを捨て置いて自分の進路をどうするか悩む作業に戻ろうとしたその時、ガラッと戸を開けて我がクラスの担任、鉄人こと西村先生が教室に入ってきた。
「なんだお前たち、まだ残っていたのか。用がないのならさっさと帰宅しろ」
教室の窓を見て回る西村センセ。どうやら教室の戸締まりをチェックしにきたらしい。
「すみません、西村先生。ちょっと皆で進路について話をしていたんです」
姫路城がそう言って頭を下げると、
「ほう。進路についての話か」
西村センセは明久達三人の顔を順番に見て呟いた。
「今世紀中に終わればいいんだが……」
時たま思うがこの人ホントに教師か?
「まぁ、冗談は置いておくとしてだ。進路についての相談なら進路指導室で聞くぞ?」
「「「…………???」」」
何故かキョトンとする明久達。
「おいお前たち。なぜそんな不思議そうな顔をする」
「あ、そっか。あの部屋ってそういう使い方もあるんだっけ」
いや、普通そういう使い方がメインだろ……。
「拷問や補習の他に進路を指導する側面もあったとはな……」
いやだからメインは進路指導で他はサブ……というか補習はともかく、拷問なんざサブにすら入らねぇよ普通。
「………予想だにしない利用法」
「あの部屋の名前をなんだと思っていたんだお前たちは」
時たま思うがここってホントに学校か?
「あの、西村先生。進路指導でどういむたことを教えてくれるんですか?」
「そうだな。お前たちが希望する進路に対して、具体的なアドバイスをしてやることができる。例えば医者になりたいと言うのなら、その生徒の学力や学びたい内容に即した学校を紹介したりな。……それでお前たちはに漠然とした希望のようなものはないのか?」
「希望はあるが教えたくない」
「…………ヌー……カメラマン」
「樹海以外」
「よし。一列に並んで歯を食いしばれ」
せっかく珍しくまともな流れだったんだから、一瞬でぶち壊すんじゃねぇよ……。
「……まあ、つまるところまだ方向性が定まってないということか?」
「そんな感じです」
「そういうことなら皆と話をするのも良いだろう。困ったことがあれば進路指導室に来るといい」
そう言って西村センセは教室から出ていき、
「(ガラッ)放しは聞かせてもらったよ」
入れ替わるように学園長のばーさんが-
「あ、学園長先せ-」
「(ピシャッ)さようなら」
戸を開けて入ってくる前に明久がそれを阻止した。
「良い反応だ明久」
「………グッジョブ」
「(ガラッ)本当に無礼な連中だねアンタらは!」
「学園長先生、ウチらに何か用ですか?」
警戒しつつ島田がばーさんに尋ねる。これまでの経験が活きたのか、いい加減こいつも学習したようだ。
「実はだね、丁度新しい召喚獣の設定を-」
「間に合ってます」(島田)
「お引き取り願うのじゃ」(秀吉)
「…………帰れ」(ムッツリーニ)
「爆ぜろ」(雄二)
「ついでにハゲろ」(明久)
「なんだいその反応は!?しかも最後の二人はただの罵倒じゃないかい!」
無理もねぇけどまったく歓迎されてねぇな……つぅかもうすぐ大規模な召喚大会がある筈だろ?召喚システムの調整云々で綾倉センセ絶対クソ忙しくなるはずなのに、このばーさんまた余計な仕事増やしたんじゃ……。
「あの、学園長先生。新しい召喚獣の設定というのは……?」
(明久絡み以外は)人間ができてる姫路が恐る恐る問うと、ばーさんは満足そうに頷いてから答えた。
「前に召喚獣で心理を読み取ったり、性格のデータから子供をシュミレートしたことがあっただろう?それらを応用して、今度は召喚者の未来をシュミレートできるようにさせたのさ。綾倉先生に」
「そろそろアンタ綾倉センセに毒でも盛られるんじゃないか?」
やっぱ綾倉センセに負担がいってやがった。あの人がおとなしそうな外見なのに割と性格が荒んでるの、多分この人が原因だよな……。
「召喚者の未来をシュミレート……ですか?」
「ま、予測というより占いに近いさね。性格や運動能力や成績、人間関係のデータを入力して、考えられる最も可能性の高い未来の姿を出現させるのさ」
それは確かに面白そうだけどなんでアンタが自慢げに語ってるんだ?
「それってどんな未来が見られるんですか?」
「だいたい二十三~五歳になったくらいの姿だね。あんたらの性格を加味して、その進路を選択した際に抱くであろう感想とかを言うようにしてあるらしい。年齢に応じた心や身体の成長も考慮してね」
要は自分が選びそうな進路に対する感想を、未来の自分に教えてもらうってスタンスか。
「それは今のアキにはぴったりかもしれないわね」
「そうじゃな、渡りに船というやつじゃ」
その船がタイタニックかもしれねぇってのに乗り気になっている二人を見て、やはり学習していないと俺は考えを改める。
「でも、また酷い目に遭うんじゃ……」
「不要になったら『アウト』と言えば消えるようにしてあるさね。何かあればそれで対処したらいいさ」
ばーさんのその言葉に、疑惑の念を薄めてしまう明久。おいおいホントどうしようもねぇな明久……今回警戒しなきゃならねぇのは学園長よりむしろ綾倉センセだ。あの人ストレスが溜まると涼しい顔で八つ当たりしてくるって以前御門のおっちゃんが愚痴ってたからな……意図的にシステムに不具合を生じさせてもおかしくねぇ……。
『おまけ・アクティブメンバーの主な役回り』
和真……メイン火力担当
蒼介……司令塔担当
飛鳥……常識人担当
優子……オカン枠担当
愛子……お色気枠担当
徹……ゲス枠担当
源太……貧乏くじ担当
立ち位置はこんなイメージです。
最近めっきり活動してない気がしますがそれは気のせいではないでしょうね……やはりスポーツは文章ではなく映像、映像より動画がベター。