バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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ところどころ原作との差異がありますが、和真君達オリジナルキャラという異物が混じったことによる、バタフライエフェクトだと思ってください。


進路指導と召喚獣②

【雄二視点】

 

「一応、話を聞く限りでは大きな問題は無さそうだな」

「うーん……それはそうなんだけど……」

それでもやはり明久は猜疑心を拭いきれないようだ。……まあこのババアのいうことをホイホイ信用するほど、俺も平和ボケしちゃあいないがな。

「まぁ気が向いたら使えばいいさ。無理強いはしないよ。フィールドは張っておくから好きに使いな」

そう言い残してババアは去って行った。いつものように俺達をモルモットにするつもりならこの場にいなきゃデータを取れないし……あのババアも一応教育者だ、今回は善意で提供してくれたのかもしれないな。

「して、どうするのじゃ明久?」

「折角だし、使ってみるよ」

「お。随分と思い切りが良いな」

「まぁね」

だがまぁせっかくこうしてバカが率先して毒味役を引き受けてくれるわけだし、とりあえず今は静観でいいか。

「じゃ、喚び出すから念の為に皆離れて。

よし……試獣召喚(サモン)っ!」

お馴染みの喚び声に呼応して現れるお馴染みの紋様。そしてその中心から明久の分身である召喚獣が姿を現した。

「おお、今度は等身大だな」

「…………肝試し以来」

出てきた召喚獣はいつもの三頭身ではなく、きちんとしたバランスの姿だった。

「ふむ。今回は制服ではなくスーツ姿なんじゃな」

「社会人になったってことだからかな?」

「よかったな明久。かろうじて社会人にはなれるって、コンピューターが判断してくれたみたいだぜ」

「和真、ぶん殴っていいよね?」

「その後で蹴り返していいなら構わないが?勿論全力全開で」

「…………じゃあいい」

俺と明久の会話は不毛なやり取りが多いって以前言ってたが、お前も人のこと言えないだろ和真……それからお前の蹴り交通事故と大差無いんだから自重しろマジで。

「あれ?僕よりちょっと背が高い」

「これからまだ伸びるって予測したんだろうな」

「へぇ~。それは嬉しいなぁ」

なんて話をしている俺達に、未来の明久は顔を向けてきた。

《あ、懐かしい!高校生の頃の皆だ!》

召喚獣が喋ることに関しては以前経験済みのためさほど違和感はない。というか会話ができないと聞きたいことも聞けないから当然の措置だろう。

《そっかそっか。そういえば高校生の頃の僕ってこんな感じだったよね……でも、もうちょっと賢そうだったような気もするけど……》

未来の明久よ、それば間違いなく気のせいだ。

「一応聞くが、お前は明久の将来の姿でいいんだよな?」

《そうだよ。いやぁ、雄二もこんな顔だっけ?秀吉にムッツリーニに、霧島さんもまだ幼いなぁ。

和真は……………あれ?この頃から顔つきがほとんど変わってないね……》

「オイ待てやコラ、なんで関係ない俺に流れ弾が来てんだよ。……つか俺、未来でも童顔スパイラルから抜け出せてねぇの?地味にショックなんだけど」

召喚してもいないのに知りたくなかったことを聞かされて露骨にテンションを下げる和真。……あぁ、そういやこいつ自分のキャラとは真逆の可愛らしい顔立ちがコンプレックスだったっけ。

《あ、あはは……それにしても、こうして高校生の頃の皆にまた会えるなんて思わなかったよ》

空気を読んで話題転換なんて今の明久には絶対にできない芸当だが、未来から来ただけあって少しは賢くなってやがる。……いや実際に未来から来たわけじゃなく、それらしく設定されただけなんだろうがな。

《それで、そっちは瑞希と美波だよね?こんにちは》

「は、はいっ!ここここんにちはっ!」

「え、えっと、初めまして…じゃなくて!久しぶり…でもないし!あ、あの、その……!」

「狼狽えすぎだろオイ」

「? 二人とも、何を慌ててるの?」

「お前はお前でマジかよ……」

目に見えて緊張する姫路達とその理由がまるでわかっていない明久に、呆れたように嘆息する和真。気持ちは十二分にわかるぞ。

「あー……。確かに、今よりは若干マシな顔つきになってるもんなぁ」

「うむ。良い男になったものじゃ」

「…………今後余程苦労すると見た」

この二人の受難は今後しばらくは続きそうだな……それと明久、そんな面白くなさそうな表情になってる暇があるなら、お前はもう少し周りを見ろ。

「……ま、いいか。それより、未来の僕に聞きたいことがあるんだよね」

《ん?何かな?》

「単刀直入に聞くけど、二年後の僕はどうなってるの?」

現在高校二年生の俺達に訪れる二年後。進学か就職か……その後の人生に大きな影響を及ぼす大事な選択だ。

《ああ、それなら大丈夫だよ》

「? 大丈夫って、何が?」

《二年後も楽しく幸せな高校生活を送っているから》

「待って!?二年後にまだ高校生をやっているって、全然幸せには思えないんだけど!」

こいつは傑作だ、まさか選択すらできない立場だとは。

《あ、わかりにくかった?要するに、来年卒業できないっていう-》

「そこまで説明しなくてもわかるよバカ!問題はどうして僕が来年卒業できないのかってこと!出席日数!?それとも赤点!?」

《いや、点数も出席日数も足りていたよ》

「じゃあどうして!?」

《……でもね、二年生じゃ卒業はできないんだよ……》

「卒業以前に三年生になれなかったのか!」

「明久、俺らに対して別に敬語とかはいらねえからな……それと下級生達と馴染めなかったいつでも三年の校舎に遊びに来ていいから-」

「慰めてるつもりかしらないけど、半笑いで言われたら余計心が痛むかららね!?」

和真の慰めに見せかけた追い討ちを受け、明久が頭を抱える光景を未来の明久はまじまじと眺め……

《う~ん、なるほど。我ながら反応が面白いね。これは皆が散々からかってきたのも頷けるなぁ》

「は?」

………どうやら多少マシになったのは外見だけじゃないみたいだな。明らかにどっかの誰かの影響を受けたであろう不適な笑みを浮かべる未来の明久を、かつがれたと知った今の明久は半目で睨む。

《心配要らないよ。死ぬほど勉強して先生方に毎日土下座をしたら温情で卒業くらいさせてもらえるよ》

「全てにおいて心配だらけだよその台詞!」

崖っぷちに晒されていることに変わりはないと知った明久は再び頭を抱える。……いやまあ、最近はこいつも段々成績が向上してきたからそこまで追い詰められてはいないと思うが、それでもあり得ないと言い切れないのが明久の明久たる所以だな。

《他に聞きたいことは?》

「いっぱいあるけど返ってくるのは聞きたくない答えばかりになりそうだよ……」

すっかり将来を聞くことに躊躇するようになった明久の代わりに、姫路と島田がすごい勢いで前に出る。

「じゃ、じゃあ、私が質問してもいいですか?」

「ウチもちょっと聞きたいことが……」

《ん? 何かな?》

「あの……今、恋人がいたりしますかっ」

「そ、そうっ。あるいは結婚していたりとか!」

「ド直球過ぎるだろお前ら……」

和真が呆れるのも無理はない。本人がすぐ横にいる中そこまでストレートな質問ができるなら、明らかに直接想いを伝えた方が手っ取り早いだろ……というか横でクエスチョンマークだらけになってる明久、なんでこれで気づかないんだよ……。

《ん~……内緒、かな?》

未来の明久は少し考え込んでから、悪戯っぽく微笑みながら言葉を濁した。はぐらかすのも大分うまくなってるなこいつ……。

「そ、そんなこと言わずに教えて下さいっ!」

「そうよアキ!隠し事なんて似合わないわよ!」

《あはは。そう言えば高校生の頃の瑞希と美波ってこんな感じだったなぁ》

「も、もしかしてウチらに関係あるから言えないとか、そういうこと!?」

「お願いです!教えて下さい明久君!……あとさっきから気になってたんですけど、いつ頃に私のことを名前で呼んでくれるようになったんですか!?」

《え?……あぁ、確か高校の頃はまだ瑞希のことを名前で呼ぶのが気恥ずかしかったっけ?そうだなぁ、あれは-》

「アウト」

明久の一言で跡形もなく未来の明久は消え去った。あのババアのことだから、召喚獣を消す際に何か不具合でも生じるかと思ったが、杞憂だったか。

「あ、明久君っ!どうして意地悪をするんですか!」

「ウチ、他にも聞きたいことがあったのに!」

「いいんだよ。あんなバカに質問なんてしても、どうせ変な答えしか返ってこないんだから」

「? 何怒ってるのよ?」

「別に」

「「???」」

「明久もアレだが、こいつらもこいつらだな……」

鈍感なのはお互い様だったか……これじゃあ永遠に進展なんかしないんじゃないか……?

「とりあえず、役に立つかはわからんが、そんなに害が無さそうなことは確かだな」

「………そうだな、俺の直感にも抵触しねぇし」

「うむ。どうじゃムッツリーニ。進路に迷っておるなら喚び出してみるのも良いかも知れんぞ?」

「(コクッ)…………試獣召喚」

喚び出されたムッツリーニにはノーネクタイのスーツ姿で、どことなく飄々とした印象を抱かせる。系統としては御門のオッサンに近い。

「意外だな、ムッツリーニはまだまだ背が伸びるみたいじゃないか」

「僕より少し高いくらいだね。いいなぁ」

「…………そんなことはどうでもいい」

未来の自分の外見には興味がないようで、すぐさま質問に入るムッツリーニ。

「…………一つ、聞かせて欲しい」

《…………なんだ》

「…………ヌードカメラマンには、なれたのか……?」

いや、そんな「プロ野球選手になれたか?」みたいな目で尋ねるようなジョブじゃないだろ……。

《…………今の俺の仕事を知りたいと?》

「…………(コクリ)」

《…………“鳳財閥”直属の新聞記者をやっている》

「…………」

《…………どうした?》

「…………Pardon?」

なぜ英語。

《…………“鳳財閥”直属の新聞記者をやっている》

言われた通り、さきの台詞をもう一度繰り返す未来のムッツリーニ。しかし新聞記者……それもあの“鳳”直属か。高い情報収集能力に行動力、そして多種多様の特殊技能を備えているムッツリーニに、鳳が目をつけ勧誘したとしても不思議ではないな。

しかし、かなりの出世頭になることを聞かされたと言うのに、ムッツリーニは怒りに全身を震わせていた。

「…………お前は……」

《…………ん?》

「…………お前は……何をやっている……?」

《…………何を、とは》

「…………なぜ、ヌードカメラマンになっていない自分を許容している……?」

何故ヌードカメラマンにならなかった自分を、そこまで許容できないんだ……?

「…………諦めたのか、自分の夢を……生きる意味を……!」

《…………政界・財界の闇を暴き、駆逐し、日本を浄化することが、“鳳”から課せられた俺の使命だ》

「…………違う……!服の中に隠された神秘を暴くことが指名なんだ……!」

《…………酷いもんだな……昔の俺は》

「…………認めない……!俺はそんな自分を絶対に……!」

自分の夢とは道を違えた未来の自分。その生き方を認められず、ムッツリーニは将来の姿を強く睨みつけていた。

「それにしても、ムッツリーニの口から『日本の浄化が使命』なんて台詞が出てくるとは思わなかったよ」

「まさかあの鳳から、そんな重役を任されるようになるとはの」

「ソウスケは権力者や人の上に立つ者が道を踏み外すことを決して許さねぇからな。父親の跡を継ぐにあたって掲げる当面の目標は、そういった連中を片付けることだって以前いってたが、その尖兵として抜擢されたのがアイツとはな……」

「このまはまのペースでエロさが成長したら、そのうち振り切って真面目になるってことかもしれないな」

以前の合体召喚獣の際も似たような結果だったし。

なんて考察をしているところに、

 

ーピピッ パシャッ

 

という電子音が響いた。今のはケータイカメラのシャッター音か?

「……ありがとう、瑞希」

「いえいえ、これくらい」

音の原因は姫路と翔子。どうやら姫路がケータイで未来のムッツリーニを写真に収めたらしい。

「姫路さん、ムッツリーニの写真なんか撮ってどうするの?」

「あ、私じゃなくて翔子ちゃんに頼まれたんです。取り方がわからないそうなので」

「……携帯電話は苦手」

「俺の携帯はメモリー消去から画像データ改造まで何でもできるくせにな……」

「……雄二の物以外携帯電話は苦手」

なんてピンポイントに俺に不利益を及ぼす例外なんだ。

「して、霧島はムッツリーニの写真なんぞをどうするのじゃ」

「愛子にでも送るんだろ。相変わらず友達想いだなお前は」

「……それほどでもない」

工藤に未来のムッツリーニの写真を?

「ああ、そっか。夢に破れた惨めなムッツリーニを指差して笑うわけだね」

「それは良い考えだな。ムッツリーニの夢の哀れな末路だ。高らかに笑ってやろうじゃないか」

「相変わらずデリカシーの欠片も無ぇなお前らも……」

「たまに疑問に思うんだけど、アンタらって実は友達じゃないわよね」

「失礼な。僕らの友情は一生ものだよ」

「まったくだ。俺たちは永遠の友情を誓い合っているんだからな」

((……利用価値がなくなるまでは))

「なんか、心の声が聞こえてきた気がするわ」

「金箔より薄っぺらい友情じゃな……」

「いくらゴーイングマイウェイな徹でも、流石にこれと一緒にはされたかねぇだろうな……」

俺達こそ親友未満知人以下の固い絆で結ばれた、真に素晴らしき男の友情と言えるだろう。

なんて話をしている横で、姫路はさっきの写真を添付したメールを打っていた。

「愛子ちゃんに送信っと」

「……ありがとう、瑞希」

「いえいえ、これくらいなんでも……わ、もう返信が」

送ってから殆ど間を置かず姫路のケータイに返信が来た。

「……ふふふっ、愛子ちゃんってば」

「どれどれ、ウチにも見せて」

「……私も」

姫路のケータイを覗き込む翔子と島田。

「あははっ、いいリアクションね!」

「……愛子、可愛い」

すると、二人とも楽しそうに笑顔を浮かべた。

「なんだ?そんなに面白い返事がきたのか?」

「どんな反応だったの?」

「やめとけデリカシー皆無コンビ」

続いて俺と明久も覗き混もうとしたが、失礼な呼び名と共に和真に阻まれる。このバカと一緒にするなといつも言ってるだろうが。

「う~ん……秘密です。これは明久君たちには見せられません」

「それが良いだろうな。男の俺らにゃ見せるのは無粋ってもんだ」

「……和真、愛子がどう反応したかわかるの?」

「アイツの人となりを知ってりゃ大方見当はつくだろ。……この非モテ共はともかくとして」

「「ぐっはぁっ!?」」

和真の放った言葉のナイフに打ちのめされ、夏のナンパが散々だったことを想起させられつつ、俺達は膝から崩れ落ちた。この野郎自分がモテるからって容赦なく人の古傷抉りやがって!

 

《…………お前が抱いているのは夢じゃない、欲望だ》

「…………己が信条に背を向けた男が何を……!」

《…………それなら貫いて見せろ、自分の志を》

「…………言われるまでもない。俺は決して信念を曲げない……!」

《…………夢は形を変える。それだけは覚えておけ》

「…………これ以上、お前と話すことはない……!」

 

ムッツリーニが「…………アウト」と呟き、召喚獣が消え去った。やたらとシリアスな会話だったが、その中心はヌードカメラマンになるか否かと聞くと、なんだかなぁという気分になる。

 

 




【作中では触れない予定のオリキャラ達の未来①】

鳳蒼介……鳳家当主及び鳳財閥トップ。

橘飛鳥……婦警及び『鳳翼の七雄』の一席。

五十嵐源太……通訳、洋書の翻訳家

大門徹……パティシエ


余談ですが、今回登場した未来のムッツリーニも『鳳翼の七雄』の一席を担う重要な存在という設定です。
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