バカとテストとスポンサー~愉快な彼らのバカバカしくも素晴らしき日常~   作:アスランLS

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今回は雄二と蒼介の視点です。

彼の視点になる頻度が多いのは、おそらく一番書きやすいからでしょうね。


海辺でのお祭り騒ぎ②

【雄二視点】

 

「(パチッ)王手だ」

「ぐっ……」

バスに乗っている最中、暇になったので和真に将棋セットを借りて(というかアイツ最近将棋セットを常備しているな……)向かいに座っている鳳と対局している。

ちなみにバスの席は2人掛けの椅子が対面するようになっていて、工藤・ムッツリーニと島田・姫路、和真・木下姉と明久・玲さん、そして俺・翔子と鳳・秀吉の順に4人ずつ3グループに別れて座っている。

 

「ううむ、頭を使うゲームで雄二がここまで追い詰められるとはのう……」

「……雄二、頑張って」

「俺だって負けたくはねぇがよ……(パチッ)」

「…王手(パチッ)」

「…………投了だ」

「ふむ、なかなか手強かったぞ」

くそっ、こいつマジで強ぇ……。将棋のようなルールに則った戦いじゃまるで勝てる気がしねぇ。この力の差はおそらく試召戦争にも通ずるだろうな、真っ当な戦術で挑んでも勝ち目はおそらくゼロに等しい。

だが付け入る隙が無い訳ではない。将棋では負けたが二学期に仕掛ける予定の試召戦争では絶対に負けないと心に誓う。

その後、明久にスクール水着フェチの変質者疑惑がかかったり(それに関しては玲さんの独断であったようだが、俺は明久を心の底から変質者であると確信している)、和真が木下姉にオセロで圧勝していたり(将棋と打って変わって和真はオセロがやたら強い。しかも中盤辺りで木下姉の負けがほぼ決まっていたのにもかかわらず最後まで続けさせるという安定の鬼畜っぷりを発揮していた)、女子達がやれ体重だのバストサイズだので盛り上がったり(その途中に俺が翔子に目を潰される羽目になったのは言うまでもない。理不尽極まりないが慣れつつあることに少しブルーになった)しつつ約三時間が過ぎた。

 

長い道のりを経て辿り着いたペンションは、緑に囲まれつつも潮の香りが行き届くような好立地だった。

小高い丘の上というだけあって眺めも良い。建物自体は多少年期の入ったものであるが、夏の海を楽しむには最高の条件が揃っている。

「さて、どうするんだ?荷物を置いてすぐにでも海に向かうか?」

「そうだね。海が見えたら泳ぎたくて仕方なくなっちゃったし」

「…………(コクコクコク)」

「折角砂浜があることだし、後で走り込みさせるってのも悪くねぇな……倒れる寸前まで」

「『アクティブ』活動中じゃないんだからスパルタしようとしないの……」

何やら不吉なことを言い出した和真を木下姉が諌めている。ナイス判断ではあるがその諌め方だと『アクティブ』活動中はそういうスパルタが常識であるかのように聞こえるんだが?もしそうだとしたら、よくついていけるなアイツら……。

「それでは荷物を部屋に運んだら海に行きましょうか。御門先輩はどうします?」

「せっかくの海だし、タバコでも吸いながらその辺で適当に黄昏れておく。迎えに来て欲しけりゃ連絡してこい」

あのオッサン……玲さんと同時期に大学に在籍してたっつうことはまだ二十代だろ?なんであんなにくたびれてるんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が着替えを終えて二十分後。

 

「やっぱり俺たちは待たされるわけだ」

「仕方ないよ。向こうは水着の準備に時間がかかるんだから」

「…………こっちも機材の準備に時間がかかるから助かる」

「……………………」

男五人で浜辺で女子勢の着替えを待つ。ちなみに鳳は俺達の近くで日課であるらしい瞑想に耽っており、和真は少し離れた場所でロンダード→後方伸身宙返り2回半ひねり→伸身前宙2回ひねり→バンローンという超人アクロバット連続技を砂浜上で決めて観光客達から拍手喝采を浴びている。相変わらずデタラメな身体能力だ。

「というかいつも思うけど、和真は着痩せするにもほどがあるよね……」

「まったくだ、歴戦の傭兵かっての……」

和真は普段から周囲にどこからそんな力が?と疑問に思われているみたいだが……服を脱いだアイツの体を一目見ればそんな疑問は一発で解決するだろうな。

 

『……む、明久たちはあそこじゃな。おーい、お主ら……』

『あ、あなたっ!何をしているんですか!?』

『んむ?なんじゃ、監視員の方じゃな。そんなに血相を変えてどうしたのじゃ?』

『どうしたのじゃ、じゃありませんっ!どうしてあなた、上を着ていないんですか!』

『???どうしてと言われても、普通男物の水着に上は着ないものじゃと』

『女の子が男物の水着を着る時点で間違っているんです!とにかくこっちに来なさい!』

『ま、待つのじゃ!ワシは男じゃからこれで良いと』

『私の目が黒いうちは、この海水浴場でそんな過激な格好は許しませんからね!ここは子供たちも大勢いるし、怖いお兄さんとかも一杯いるんだから!』

『だから違うのじゃ!とにかくワシの話を……』

『上を着ない限り、絶対に海水浴場には入らせませんからね!途中で脱いでもダメですよ!きちんと遠くから双眼鏡で監視しますからね!』

『だから待つのじゃと言うとるのにーっ!』

 

 

パラソルの陰に入りながらのんびりしていると、遠くからそんな会話が聞こえてきた。秀吉もいい加減自分の性別が初対面の人間にどう判断されるかぐらいわかってもいいのにな……いや、玲さんが初対面でわかってくれたことで味を占めたのか?

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせっ。準備に手間取っちゃってゴメンね」

「うう、やっぱりちょっと恥ずかしいわね……愛子、本当にこれで良かったの……?なんだかアンタに良いように乗せられてる気がしてきたんだけど……」

「今更何言ってるのさ優子。ささっ、恥ずかしがってないで披露しちゃって♪」

最初にこちらに合流したのは工藤と木下姉のAクラス才女コンビ。工藤は下にジーンズを短くカットしたようなパンツで、上は肩や腹の部分の日焼けの境界線がはっきりと見える水着だった。頭には麦わら帽子を被っており、いかにも“夏”という感じの健康的な格好だ。

そして木下姉だが…………その、なんだ、黒のマイクロビキニというなんというか目のやり場に困る格好だった。……というか視界に入れただけで翔子に目を潰されかねないな、アイツがここにいなくて助かった……。

真面目そうな木下姉にしては意外すぎるチョイスだが、先ほどのやり取りから察するに工藤の入れ知恵だろう。

「おい和真、彼女に水着の感想の一つでも言ってこいよ(ニヤニヤ)」

「そうだよ和真、木下さんは多分和真に見てもらいたいだろうしね(ニヤニヤ)」

ここぞとばかりに俺と明久は弄りにかかる。木下姉が絡まないと和真が動揺することは滅多にないから、俺達は数少ないチャンスを絶対に逃さない。

「ん。おーけー」

しかし俺らの予想とは反して、和真は平然とした表情で木下姉に近づいていく。

「なあ優子」

「あ……な、なに……!?」

恐る恐る訪ねる木下姉に、同性の俺から見ても格好いいと言える爽やかな笑顔を浮かべて言い放つ。

「その水着、似合ってるぜ。端的に言うと今のお前メチャクチャ可愛い」

「~~~~~っ!…………アリガト……///」

余計なこと振ってしまったと今更後悔している。

(ねぇ雄二、なんだか無性に苦いものが欲しくなったんだけど……)

(同感だ……なんだあの桃色空間!?というか和真の奴ウブのくせに、何であんな恥ずかしい台詞は平然と言えるんだよ!?……ん?)

突然、和真の顔つきが悪戯をする直前の子どものような笑顔に変わる。長い付き合いになるからわかるが、あの顔をしているときの和真はホントにロクなことをしない。

「しっかしお前も人のこと言えないくらいピュアだよなー、その水着買うまでに数時間も悩んだそうじゃねぇか」

「ちょっと待ちなさい!?なんでアンタがそのこと知ってんのよ!?」

「とある筋からリークがあってな。具体的に言うと某保健体育実技派の人から」

「……愛子?」

「ちょ!?和真く……ピューピュー♪」

工藤もう手遅れとはいえ、いくらなんでも誤魔化し方下手すぎるぞ……。

「ア~ン~タ~は~!(ギュゥゥゥゥゥ)」

「いひゃひゃひゃひゃ!?ひょ、ひょえんひゃひゃ~い!」

「あ、俺ちょっと御手洗いに行ってくるから」

鬼気迫る表情で制裁とばかりに工藤の頬を力一杯に引っ張る木下姉。処刑されている工藤には一切目も暮れず、場を荒らすだけ荒らした和真はやけに早い足取りでトイレに向かっていった。

「まったく、和真の奴はいったい何がしたいんだ?」

「……おそらく、限界が来たのだろう」

「え?どういうこと鳳君?」

「気になるならカズマの後をつけてみろ。普段ならすぐにバレるだろうが……今はそれどころではないはずだ」

「「???」」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と明久は言われた通り和真の後をつけてみると、和真はトイレには向かわず、さっきいた場所からはちょうど死角になる場所まで移動する。俺達のいた場所からは見えない場所であることを確認すると……全身を茹で蛸のように赤くして両手で顔を覆ってその場にうずくまった。

「……耐えた……なんとか耐え抜いたぞコラ……。あ、危な……。つかいくらなんでもあんな際どいの反則だろ……殺す気か優子の奴……」

 

 

 

(ねぇ、雄二……和真、さっきまで平然としていたわけじゃなくて……)

(ああ、ただ痩せ我慢してただけのようだな……)

 

この状況で出ていって茶化そうものなら、おそらく俺達は下手したらライトニングタイガーの餌食になりかねないので、俺達は何も見なかったことにして皆の所に戻ることにする。

 

 

…………というか、結局さらに苦い物が欲しくなっただけじゃねぇか畜生!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【蒼介視点】

 

「……戻ったか。やけにげんなりとした表情だなお前達」

「あんなの見せられたらげんなりもするよ……」

「つか鳳、もしやテメェこうなるとわかってやがったな……?」

「つまらん野次馬根性を見せるからそうなるんだ。これに懲りたら出歯亀は極力控えるんだな」

まったく、五十嵐や大門といいこいつらといい……是が非でもカズマをおちょくろうとしなければ気がすまないのか?

私がそんな風に呆れていると、木下(姉)も工藤への制裁を終えたみたいだ。

 

「……ハァ、愛子の口の軽さを失念していたアタシがバカだったわ」

「いたたた……もう優子ってば、そんなに怒らなくてもいいのに……ん?」

「…………(ササッ)」

「あははっ。ムッツリーニ君ってば。ボク達の水着を撮りたいのなら堂々と撮ればいいのに。別にボク達は怒ったりしないから。ね?」

「さもアタシが同意見のように言わないでよ……」

「…………俺は水着に興味など微塵も(ダバダバダバ)……これは日射病のせい」

さっきまで全力で目をそらしていた土屋だが、直視した途端に鼻から凄い勢いで鼻血が流出する。カズマから事前に聞いてはいたが、この男はいったいどういう身体構造をしているんだ……?

「おお。頑張ったなムッツリーニ。28秒だぞ」

「凄いじゃないかムッツリーニ。鼻血の我慢記録更新だよ」

「吉井に坂本、呑気にカウントを取ってる暇はないだろう……」

「そうだよ、そんな悠長なことを言ってないで助けてあげようよ……」

まるで蛇口を捻ったようにもめどなく流れ出す鼻血を心配して、工藤が土屋に駆け寄る……って、ちょっと待て!?ここでお前が介抱するのは悪手以外の何物でもないのではないか……っ!?

「おい工ど-」

「…………日差しがキツくなってきた……っ!(ブシャャアアッ)」

遅かったか……。

「え?ちょ、ちょっとムッツリーニ君!?ムッツリーニ君ってば!

「大丈夫なの土屋くん!?鼻血が噴射みたいになってるわよ!?」

「…………最近の日射病はタチが悪い(ブシャァァアアッ)」

「明らかに大丈夫じゃないでしょ土屋君!?」

「もうコレ日射病とかじゃなくて新型ウィルスか何かじゃないかな!?」

「坂本、土屋の用意した輸血パックはどこにある!?」

「ん?ああ、確か機材を入れていたリュックに入っていたと思うぞ」

なんでこいつはクラスメイトが死にかけているのにこんなに冷静でいられるんだ!?

私が急いで土屋の荷物から輸血の準備をしていると、おもむろに吉井が倒れている土屋に近づいて語りかけていた。

「ムッツリーニ」

「………明久……」

「……遺言は?」

諦めるの早くないか吉井!?

「何言ってるの吉井君!?」

「そうよ!いくらなんでも縁起でもないわよ!」

「………来世は、鳥に生まれてきますように……」

土屋、お前もか!?少しは足掻け!

「ムッツリーニ君もそこで乗らないの!ちゃんと助かるからっ!」

「…………そして、空から女子更衣室を思う存分覗けますように……」

「しかも生まれ変わってもやることはソレなの!?」

「もうちょっと現世の死因から何かを学びなさいよ!?」

「くっ、間に合え……!」

私と木下(姉)と愛子の尽力で土屋は何とか一命をとりとめた。 輸血作業を終えた私達三人は半端じゃなく疲れた表情になる。

……なんなんだこれは!?

何故海水浴に来てライフセーバーでもないのに人命救助を行わなければならんのだ!?

そして吉井に坂本!……あと土屋!何故こんな事態になったのに平然としていられるんだ!?私がおかしいのか!?私の16年の人生が間違ってたのか!?

 

私(おそらく他の二人も同じような気持ちだろう)がそんな葛藤をしていると、手洗い(?)に行っていた和真がようやく戻ってきた。

「……オイオイ、またひでぇ惨状だな。またムッツリーニが死にかかったのか?」

「……なあカズマよ、この僅かな時間で私達の今まで信じてきた価値観がいくつも音を立てて崩れていったのだが……」

「ボク達、海水浴に来ただけだよね……」

「何?何なの?もしかしてアタシ達……何か間違った人生歩んでたの?」

「……あー、今お前らが何を思っているのかだいたい把握した。気持ちはわかるから安心しろお前ら……お前らは何もおかしくねぇし、お前らの培ってきたもんは間違っちゃいねぇ。ただ……常識が一切通じないのが、Fクラスってやつだ」

カズマの言葉で私達に多大な安心感を得ることができたが、それと同時にFクラスという概念にある種の恐怖のような感情が芽生えた。

 

「すいません。お待たせしちゃいました」

「……お待たせ」

そうこうしているうちに姫路と霧島が合流した。霧島の格好はおとなしめの白のビキニと水着用のミニスカート、姫路こ格好は薄ピンクのビキニにゆったりとしたパレオ。吉井達の反応が特に無いことから考えるに、おそらく以前から使用していた物なのだろう。

「……愛子。あまり土屋をいじめないように」

「いや、ボクなにもしてないんだけど……」

霧島が倒れ臥す土屋を見て工藤に告げる。確かに工藤は少々性に奔放な所があるが、今回に限っては落ち度はないだろう。

「違いますよ翔子ちゃん。土屋君は工藤さんの水着姿があまりに可愛いから興奮しちゃったんですよ。ね、土屋君?」

「…………そんな事実は確認されていない」

「まだ立つな土屋。しばらく安静にしていろ」

「……興奮?」

「はい。土屋君も男の子ですから」

「……そう」

姫路の言葉を聞くと、霧島は一つ頷いた後にゆっくりと坂本に歩み寄った。何をするつもりだ?

「……雄二」

「んぁ?なんだ翔子?」

「……えい(プスリ)」

「ふごぁっ!?(プシャャアッ)」

そして坂本の鼻に突然霧島の指が潜り込み、そこから鼻血が間欠泉の如く湧き上がった。何がしたいんだこいつは……?

「……これで、いい」

「いいわけあるかぁっ!いきなり何しやがる!(プシャャアッ)」

「……だって、雄二は私の水着に興奮しないといけないから」

そもそも普通の人間なら異性に興奮したからといって鼻血を吹き出すという結果にはそうそう結び付かないとか、たった今坂本の鼻から流れ出ている血は断じて興奮したからではないとか突っ込みどころは多々あるが、これまでのやり取りでいちいち反応していたらキリが無いと悟った私はもう見なかったことにする。

 

「霧島さんも姫路さんも、二人とも綺麗だからなぁ……。スタイルもいいし……」

「え……っ!?あ、明久君!?そんな、綺麗だなんて、恥ずかしいです……」

「んぁっ!?ご、ゴメン!つい口に出ちゃった!」

何気ない吉井の呟きを耳にした姫路は、パレオの裾を合わせるような仕草をしつつ身体を縮めていた。

「ふんっ。どうせウチはスタイルが悪いですよーだ」

そして吉井の背中側からは少々ご機嫌斜めな島田が歩いてきた。わかりやすいくらい修羅場だな。

「って、あれ?美波は水着変えたの?この前と違うみたいだけど……」

パーカーを羽織っていて全容は確認できないが、島田の水着はおそらくは競泳タイプの水着だろう。

「こ、これはその、今日はたくさん泳ぐ気だったからで!ほら、最近アイスやジュースが美味しくて、体重が増えちゃったから……!」

「え?でも美波、バスの中では夏バテで胸が痩せたって」

「む、胸は痩せたけど、お腹は出たのよ……ってウチのバカぁーッ!そんなこと強調してどうするのよーッ!」

力強く言い切ると島田は自分の顔を覆って嘆き始めた。嘆くくらいならわざわざ言わなくて良いものを……。

「そ、そうなの?僕には全然そんな風には見えないけど」

「いいのよアキ……。どうせウチなんて、古き良き日本人体型なんだから……。ドイツで育ったはずなのに……」

「いや関係ねぇだろ。外国で生活すればデカくなるってんなら誰も苦労しねぇよ」

バッサリとした和真の物言いにさらに沈み込む島田。とどめを刺してどうする……。

「島田、人の価値は外見で左右されるものでは無いぞ」

「鳳、慰めてくれるのはありがたいけど……この悲しみは男子にはわからないことなのよ……」

流石に見ていられなくなったので励まそうとするも、どうやらあまり効果はなかったようだ。おかしいな、飛鳥は特に気にした様子は無かったんだが。

(男が何言っても無駄だぜソウスケ。こういうの、気にする女子はとことん気にするんだよ。優子もそうだし)

(お前が言うのなら、そうなんだろうな)

カズマの交遊関係は男女問わず異常に広い。だからこそ、同じようなケースに何度も直面したことがあるのだろう。……つまりさっきトドメ刺したのは、天然とかではなく故意か……相変わらずえげつないなこいつは。

 

「あら?どうかしましたか美波さん。そんなところで座り込んで。うちの愚弟が何か粗相でもしましたか?」

島田の後ろから浮き輪を片手に歩いてくるのは、明久の姉の吉井玲さんだった。

「あ、何でもないんです玲さん。ちょっとウチが一人で落ち込んでいただけ……で……」

島田が吉井さんの方へと顔を向けて、そのまま動きが固まった。

「美波さん?」

「……しくしくしく」

「美波さん。どうして私を見て泣き出すのでしょうか」

「いいんです……。ウチはもう、瑞希や玲さんには一生勝てないんです……」

「???」

……大門が身長で悩んでいるときに宮阪先輩あたりに遭遇したようなものだな。

「良かった……。姉さんが普通の水着を選んでくれて、本当に良かった……」

吉井は姉がまともな水着をビキニを着ていることに心の底から安心しているようだった。まあ私もバスでのやり取りを小耳に挟んでいたので安心するのも頷ける。

「そんな心配はしなくても大丈夫ですよアキくん。サイズが無くて、選択肢が殆どありませんでしたから」

「待つんだ姉さん。選択肢があったらどうする気だったんだ」

この人はもし丁度いいサイズがあればまたスクール水着をチョイスしたのだろうか?文月卒業後ハーバードに進学を予定している私であるが……この卒業生の破天荒さを見ていると、その新路が本当に正しいのか疑問が出てきてしまう。

「……玲さん」

「はい、なんですか翔子さん?」

「……少しだけ、失礼」

霧島は一言断ってから、吉井さんの胸を無造作に鷲掴みにしていた。

「?どうかしましたか、翔子さん」

「……凄い……」

「あ、玲さんっ!私も失礼しますっ!」

戦いている霧島の横から、姫路が吉井さんの腰に腕を回す。

「???瑞希さん。あなたも何か?」

「……いえ……なんでも……ないです……」

姫路は力なくそう答えると、静かにその場から離れて島田の隣に同じ体勢で座り込んだ。

「……しくしくしく……」

「あ、瑞希……いらっしゃい……」

「美波ちゃん……。海って、残酷ですね……」

「違うのよ瑞希。残酷なのはきっと、神様なのよ……」

まるで生気の抜けたような目をした島田が姫路を暖かく迎え入れている。正直見ていて痛ましすぎる……。

 

「ア…アタシも-」

「(ガシッ)やめとけ優子、はっきり言ってハイリスクノーリターンだ」

「で…でもやっぱり気になるじゃない……」

「俺はありのままのお前が大好きだから」

「っっ!?……か、和真がそう言うなら……モゴモゴ」

……アイツも頑張るな。

一見平然としているが、よく見ると耳元が真っ赤に染まっているじゃないか。動揺しているのか木下はまだ気づいていないようだが……さて、いつまでもつかな?

「すまぬ皆の衆……。ワシが一番最後のようじゃな……」

頭上の天気とは裏腹に、沈んだ木下(弟)の口調。

「どうかしましたか、秀吉君。随分と元気がないようですが」

「そうだね。着替えの前は『今度こそワシを男として認識させるのじゃ!』なんて張り切ってたのに」

「放っておいて欲しいのじゃ……」

俯いて呟く木下(弟)は水着の上に監視員にでも押し付けられたTシャツを着ていた。監視員に悪気は一切ないのだが……木下(弟)にとっては災難だったな。

 

 




Q1.和真は優子さんの水着姿が随分お気に召したようですね?

A.そうですね、ひと目見た瞬間に悩殺されてましたが、どうにか根性で取り繕いました。

Q2.どうして取り繕う必要があったのですか?

A.和真君は優子さんも、優子とイチャつくことも大好きですが、周りにつっつかれたり弄られたりするのは虫酸が走るほど嫌いだからです。

Q3.もしも二人っきりだった場合、不純異性交遊に発展する確率は?

A.0です。和真君の貞操観念は箱入り娘クラスなので。

Q4.今回、蒼介君にしては内心随分取り乱しましたね?

A.こないだの勉強会ではFクラス要素が控え目でしたからね、バカテス世界屈指の常識人である彼にはちょっとしたカルチャーショックだったのでしょう。


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