インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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勢いで作ってしまった。


第九話

「まったく、なんで行事ごとに面倒ごとが発生するんだよ」

 

寝室で寝巻きになったヴィルヘルム六世は一人ごちる。因みに先の暗殺未遂を受けて寝室には二人の武装親衛隊がいる。今回は女性二人で一人は老婆、もう一人は十代程度である。それでも皇帝を守る衛兵であるため二人ともかなりの実力を有している。

 

基本的に武装親衛隊はドイツ帝国軍の中でも優秀な人材のみ入隊できる部隊で武装親衛隊に所属しているものはそれだけで優秀な者となっているため憧れの的でもある。基本軍人が目指す最終目標は将校か武装親衛隊である。

 

「さて、そろそろ寝るとするか」

 

考えても仕方ないとベットに入ったときにドアをノックする音が聞こえてきた。護衛の二人が動いていない時点で害意が無いものと分かる。

 

「…誰だ?」

 

「あ、あの。クロエとラウラです」

 

聞こえてきたクロエの声にヴィルヘルム六世は警戒を解いてドアまで行き開けた。そこにはお揃いの青の寝巻きを着たクロエとラウラの姿があった。

 

「どうした?なにか用か?」

 

「じ、実は…」

 

クロエは恥ずかしそうに顔を赤らめて言いよどむ。ラウラに至ってはクロエの影に隠れて此方を見ている。

 

「なかなか眠れなくて、それで」

 

「成る程、分かった。取り敢えず入ってくれ」

 

「「し、失礼します」」

 

取り敢えず護衛二人に椅子を持ってこさせて二人を座らせるとヴィルヘルム六世はベットに座り、用件を聞く。

 

「それで?確か眠れないんだったよな?」

 

「は、はい」

 

「つってもなぁ。…よし、なら一緒に寝るか」

 

「「え!?」」

 

ヴィルヘルム六世の驚きの発言に二人とも目を見開いて驚く。

 

「大丈夫だって。やましいことなんてしないから」

 

「で、でも…」

 

クロエは恥ずかしいのか顔を真っ赤にして俯いてしまいラウラに至ってはフリーズしている。

 

「…ほら。おいで」

 

「…はい」

 

結局ヴィルヘルム六世の手を握ってベットに横になる。

 

「ほら、ラウラもいつまでも呆けてないで」

 

「…ふぇ?」

 

何が何やら分かっていないラウラを持ち上げる。お姫様抱っこというやつである。

 

「え?…え!あ、あの!」

 

ラウラはリンゴよりも顔を赤くして腕から逃れようと暴れるがこの体制で落ちたら危ないので更にラウラを抱き寄せる。

 

「あっ」

 

ラウラはそれ以降顔を真っ赤にしていたがおとなしくなりクロエの横に寝かせる。

 

「むぅ」

 

そのようすをクロエは頬を膨らませて羨ましそうに見ていた。

 

「…ほら、膨れるな。寝るぞ」

 

ラウラを寝かせたヴィルヘルム六世はそう言ってクロエの頭を少し乱暴に撫でる。そのいきなりのことにクロエは顔を真っ赤にしてされるがままとなってしまう。

 

「ラウラもそうだけどクロエの髪は艶々で綺麗だよな~」

 

クロエがなにもしないことに調子にのったのかヴィルヘルム六世はクロエを自分に寄せて頭を触りまくっていた。

 

「え!?あ、あう…」

 

クロエの頭の中は混乱状態である。そこへヴィルヘルム六世の止めの一撃が、

 

「二人となら結婚しても良いかもな」

 

ヴィルヘルム六世は皇帝であるため嫁にと勧めてくるものがたくさんいた。

 

加えて先々代の時に皇宮が全焼するお家騒動が発生。これ以降男子一人しか成長せずヴィルヘルム六世が死ぬとドイツ帝国皇室が途絶えるどころか世界から消えてしまうのだ。

 

そのため何がなんでも皇室の人口を増やそうとしているのだが当の本人にその気はなく未だに后どころか婚約者すらいない状態であった。

 

その事はクロエも知っていたためにこの言葉を聞いたクロエは

 

「…きゅぅ」

 

会心の一撃となりオーバーヒートして気絶してしまった。

 

「…ちょっとやり過ぎたか?」

 

気絶してしまったクロエをラウラの隣に寝かせてヴィルヘルム六世は反省する。

 

「…ま、結婚の話は本当だけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雲ひとつない快晴となったモンド・グロッソ二日目。

 

今日も昨日と変わらず車でアリーナまで向かうがその車内はとても表現しきれない空気となっていた。

 

ヴィルヘルム六世にお姫様抱っこされされるがままだったラウラと結婚しても良いと言われたクロエはヴィルヘルム六世のベットで起きて直ぐに顔を真っ赤にした。それから一度もヴィルヘルム六世の顔を見ることができず今も二人とも外の様子を眺めている。

 

ヴィルヘルム六世も何となく察しているため特になにも言わず二人を眺めていた。

 

「…あの」

 

その空気に耐えかねたのか意外にもクロエから話しかけてきた。

 

「き、昨日言っていたことなんですけど…」

 

「ん?結婚の話か?」

 

結婚と聞いて昨日のことを思い出したのか顔を真っ赤にする。

 

「はっきり言うとわ、私ではとても陛下の相手など、つ、務まりません!」

 

つっかえつっかえで最後は大声で言って直ぐに声の大きさに気付き二重の意味で顔を赤くする。

 

「そうか?ラウラもだが俺は二人となら結婚しても良いと思ってるぞ」

 

いきなり自分の名前が出て来てラウラは驚きヴィルヘルム六世の言葉に顔を赤くした。

 

「わ、私もですか!?」

 

「当たり前だろ?でなければここまで二人に構ったりしないよ」

 

ある意味プロポーズに聞こえなくもないが二人はそれどころではなく必死に頭を回転させていた。

 

そんな二人を微笑ましく眺めながら言う。

 

「…ま、今すぐって訳じゃない。俺はいつまでも答えは待ってるからじっくり考えてくれよ」

 

ヴィルヘルム六世はそう言って笑うが護衛として一緒に乗り込んだ武装親衛隊は今すぐにでもこの車内から降りたくなる気持ちにかられるのであった。

 


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