インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第十一話

無事にデータ取りを捕まえたヴィルヘルム六世は後始末を武装親衛隊に任せて自身はクロエとラウラが待つ皇帝専用席に向かった。どうやら最後の試合も終わっているらしく通路にはそれなりの人がいた。そのため再びメンテナンス用通路を通り皇帝専用席に戻った。

 

「今戻ったぞ」

 

戻ってみると二人は食事をとっていた。ヴィルヘルム六世は世界各国の料理を食べており週ごとに世界の料理を食べていた。二人が食べているのはイタリア料理のピザである。基本ヴィルヘルム六世はテーブルマナーのうるさい料理は好きではなくそういうことに縛られない料理を食す傾向が強かった。ちなみに先週は中華料理である。

 

「お、旨そうなの食べてんな」

 

「陛下もどうですか?このピザっていう食べ物おいしいですよ」

 

「私は昨日食べた小籠包の方が美味しいと思うのだがこれも行けるな」

 

二人が来てから食べたのは中華料理だけなのでイタリア料理は新鮮なのだろう。…いや、食べ物全てが新鮮なのかもしれない。そのことを思いヴィルヘルム六世は悲しそうな顔をするも二人が喜んでくれるなら色々な物を食べさせようと心に一人誓うのであった。

 

「あ、試合はイタリアが勝ちましたよ」

 

「そうか。これで残ったのはイギリス、ドイツ、日本にイタリアか。…ほぼヨーロッパ勢だな」

 

第二回戦まではいろいろな国がいたがやはり技術がある国が残ることとなった。

 

「イギリスなら我が国は勝てるだろうな。そうなると一番の強敵は日本だな」

 

「今のところ一番人気があるみたいですね」

 

「まあ、ほぼ瞬殺だからな」

 

前の試合のアメリカ以外、第一回モンド・グロッソの時も瞬殺していたために織斑千冬の人気は絶大なものとなっていた。

 

尤もアルビーナの前に代表をやっていたものは決勝戦で織斑千冬に善戦していたが、彼女は現在故郷に帰って実家の手伝いをしていると言う。

 

「あ、始まるようですよ」

 

クロエの言葉通りアリーナにはイギリス代表とドイツ帝国代表のアルビーナが入場していた。

 

「陛下!大変です!」

 

そこへ諜報大臣のゲルルフ・ツー・ブロボヴィッツが血相を変えて皇帝専用席に飛び込んできた。

 

「どうした?ゲルルフ、まるで死神のようだぞ?」

 

元々色が白すぎるゲルルフはげっそりとした体型のせいで死神と呼ばれていた。そんな彼はいつも以上に青白く動いていなければ遺体と間違えても可笑しくない白さであった。

 

「これを見てください!」

 

そう言って資料を見せてくる。ヴィルヘルム六世はその資料を見るが見た瞬間真剣な表情となる。

 

「…すまない、クロエにラウラ。また仕事だ」

 

「そうなんですか?」

 

クロエは少し残念そうに聞く。その姿にヴィルヘルム六世は苦笑してクロエの頭を撫でる。

 

「あっ」

 

「心配すんな。直ぐに戻ってくるからな。それまで少しだけ待っていてくれるか?」

 

「…はい」

 

顔を真っ赤にしてクロエは頷く。その姿を見て暫く撫で続けたくなるが今はそんなことをしている場合ではないため名残惜しいが手を離して詳しい報告を聞くために皇帝専用席を後にする。

 

そのときに見た物足りなさそうな顔をしたクロエと羨ましそうな表情のラウラを見て直ぐに向かいたくなるが心を振り絞って皇帝専用席を出た。それだけことが大きいのである。

 

''織斑千冬の弟の誘拐''

 

ヴィルヘルム六世としては自国で誘拐されたわけではないなら無視したいが残念ながら誘拐が起きたのはここアリーナの中であった。これ以上面倒事はごめんだと思いながら武装親衛隊に指示を出していく。

 

「誰か現場を見なかったのか?」

 

「それがたまたま日本から派遣されたボディーガードがトイレで離れたところを狙われたらしく」

 

「…はあ、まさか我が国に対する嫌がらせか?そうならとてつもなく陰湿だな」

 

もしその場合日本の権威も落ちるが自国で開催された世界大会で足元の事件に気付かないなど無能と呼ばれても可笑しくないことであった。

 

「とにかく交通大臣に連絡して事情を説明してアリーナを中心に検問を設置しろ。警察組織と連携して特にトラック類はこまめに探させろ。武装親衛隊はこの付近の工場をあたる。いいな」

 

「「「了解!」」」

 

武装親衛隊はヴィルヘルム六世の命令に敬礼してそれぞれ自分のすべきことのために動き始めた。ヴィルヘルム六世の護衛役を除いてすべていなくなった後に頭を抱える。

 

「これは結構まずい。誰だよこんな忙しい時に誘拐騒動なんて起こす奴は。折角クロエやラウラと試合を観戦できると思ったのに…」

 

ヴィルヘルム六世は不満を吐きながらもテキパキと行動していく。その原動力はひとえにクロエとラウラと過ごすと言うものでなければとてもかっこよく決まっていただろう。

 

フリードリヒ・フォン・ヴィルヘルム・ヴィクトル・プロイセン。

 

最近ロリコンに目覚めつつあった。

 


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