インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第十二話

「陛下、織斑千冬の弟の居場所が判明しました」

 

報告を聞いて検問を敷き武装親衛隊による捜査が行われて一時間。試合は既に決勝戦を残すのみとなっていた。決勝戦は午後から行われることとなっており時間的には余裕があった。因みに決勝を勝ち上がったのはドイツ帝国と日本である。

 

「どこにいた?」

 

「アリーナに近い廃工場です。数は二十前後。男が半分以上、女性が少しいます。恐らくISを所持している可能性があります」

 

「だろうな」

 

廃工場へ向かいつつ武装親衛隊に廃工場を囲むように布陣させる。何かあった場合はすぐに動けるようにしていく。

 

「日本に動きは?」

 

「いえ、特にこれといった動きはありません。報告によると織斑千冬に知らせずに弟を見殺しにするようです」

 

その報告を聞いてヴィルヘルム六世は頭が痛くなってくる。恐らく女性利権団体が絡んでいるのだろう。織斑千冬の唯一の親族であり男である弟を殺して織斑千冬を不動のものにしたいのだろう。

 

「全く、なんで日本なんかを助けなくちゃいけないんだ?」

 

ヴィルヘルム六世は別段親日というわけではない。もし親日ならすでに日本との国交は回復しているだろう。しかし、実際にはそうなってはいない。本来ならISがなければ今頃国交は回復していたかもしれない。しかし、ISの登場によりその話はなくなり織斑千冬のこともあり下がり気味であった日本の評価は崖を落ちるように下がっていた。よほどのことがない限りこの評価を取り戻すのは難しいであろう。

 

現在ISを認めても日本人を好きになっている人は少ないだろう。特にドイツ帝国の影響力が強いところでは。

 

「…なら救出した後に報告するとするか。賠償してもらえればいいか」

 

その場合手に入れたいものは決まっているのでその時のプランを考えていく。

 

そう考えているうちに例の廃工場についていた。ヴィルヘルム六世は武装親衛隊と合流した。

 

「面倒だから一気にいくぞ」

 

ヴィルヘルム六世は先頭に立って廃工場へと入っていく。そこへ見張りと思われる男二人と出会った。

 

「な!?だ、誰だ!?」

 

「知る必要はない」

 

いきなりのことで驚く見張りをヴィルヘルム六世は一撃で沈めていく。首謀者を聞き出すために殺してはいない。

 

「第一部隊は右を、第二は左、第三はまっすぐ、第四は地下、第五、第六は俺とともに上だ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ヴィルヘルム六世はどんどん進んでいき既に五人ほど倒している。やがて女性の金切り声が聞こえてくる。

 

「見張りは何やってるの!?命を懸けて止めなさいよ!?」

 

「…ここで合っているようだな」

 

ヴィルヘルム六世は武装親衛隊に命令して中をのぞかせる。

 

「どうだ?」

 

「…奥の方に目標を発見。しかし、気絶しています。誘拐犯は手前の方にいる模様」

 

「よし、スタングレネードを投げ入れろ」

 

そう指示を出して耳をふさぐ。瞬間とてつもない閃光と耳がいかれるほどの音が聞こえてくる。

 

「(行くぞ!)」

 

「「「(了解!)」」」

 

命令を下して室内に入る。室内は阿鼻叫喚となっており錯乱した女がISをまとって銃を乱射していた。その銃弾に当たった男がうずくまっている。

 

「(あの女を無力化せよ!)」

 

第五部隊の女性隊員が第二世代IS「モスカー」をまとって四連ロケットランチャーを錯乱する女性に向けて放つ。女性は何が何だかわからないうちにシールドを空にされて第五部隊の隊員に取り押さえられている。

 

「状況は!?」

 

「室内制圧完了。目標に目立った傷はありません」

 

「負傷者は?」

 

「錯乱した女によって撃たれた誘拐犯が三人いますがいずれも弾は抜けているうえに撃たれた部分は腕や足です」

 

「よしとりあえずこれで終了かな」

 

その後残りの誘拐犯も全て捕まえたという報告が入り織斑千冬の弟救出作戦は成功をもって幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日本の外交官だな?」

 

あの後事後処理を終えてアリーナに戻ったころには決勝戦は終わっていた。ドイツ帝国代表アルビーナ・フォン・バッケスホーフは新武装「ウェスティン・フォックス」で善戦したが織斑千冬には一歩及ばず勝ったのは織斑千冬であった。現在は表彰を終えて観客たちが帰りの帰路につき始めていた。

 

そんな中で何やら話し込む外交官を見つけることが出来た。声をかけられた外交官はヴィルヘルム六世を見て驚き次に武装親衛隊に担がれて眠っている織斑千冬の弟をみてヴィルヘルム六世をにらみつける。

 

「…まさか超大国はここまで落ちぶれたのですか」

 

ヴィルヘルム六世は一瞬外交官の言うことがわからなかった。

 

「いったい何を言っている?」

 

「決まっているではありませんか。織斑千冬の弟、織斑一夏君を誘拐したのはあなたたちですね」

 

「…は?」

 

ヴィルヘルム六世はいきなりのことで思わず聞き返してしまう。外交官はなおも続ける。

 

「織斑一夏君がさらわれたのを知っているのは日本政府のみです。なのにあなたたちは誘拐されたはずの一夏君を連れてきた。あなたたちが犯人以外に考えられないじゃないですか」

 

ヴィルヘルム六世は日本政府が特に動きを出さない理由を悟り同時に呆れた。あまりにもお粗末すぎるからだ。確かに決勝戦でドイツ帝国は織斑千冬と当たった。織斑千冬が大切にしている唯一の親族を人質にとれば決勝戦を投げ出すこともあり得るだろう。しかし、デメリットの方が大きいし、試合でそんな無粋な真似を大国たるドイツ帝国がするわけがなかった。

 

そう思い反論しようとしたとき

 

「一夏!」

 

声の方を見ればそこには目を血走らせた織斑千冬がいたのであった。

 




やり過ぎた…

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