インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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次回から原作開始です。


第二章 IS学園編
第二十話


「…何故ですか?」

 

皇宮にあるヘリポートでクロエは正面に立つヴィルヘルム六世に声をかける。その声はヴィルヘルム六世を待つヘリのエンジン音で聞こえにくいが彼はクロエが言いたいことが分かっていた。

 

「なぜ私は一人だけ留守番なのですか!?」

 

クロエが怒っている理由は単純である。ラウラはヴィルヘルム六世の護衛として入学するがクロエは皇宮で一人留守番なのだ。せっかく婚約者になったのに一緒にいられないのがクロエには辛いのだ。あの告白以降クロエはうじうじするのをやめて積極的になった。それがすべて失敗してヴィルヘルム六世に苦笑されて顔を赤くするのは皇宮にいるものならだれもが知っている名物となっていた。

 

「仕方ないだろ。一応今年度合格する予定だった二名を不合格にしてもらって入学するのだから」

 

IS学園は世界でも有数の高倍率を誇っている。そして今年度はイレギュラーのせいで合格するはずだった三人が落ちたのだ。これ以上割り込ませるのはよくない。

 

「IS学園にもドイツ帝国の者はいるからな。護衛はラウラがいれば十分だよ」

 

そう言っているがクロエにはわかっている。ラウラだけ選んだ理由も。クロエは普通に過ごしているが実は目が見えない。気配を呼んで日々を生活している。最近は目が見えるように手術もしたがそれでも護衛としては不適任と言わざるを終えない。

 

さらに言えば二人は護衛というよりヴィルヘルム六世の精神安定剤の役割を持っている。何故かは知らないがヴィルヘルム六世は二人が来る前は荒々しい時が多々あったそうだ。そのときは薬を飲んで沈めていたが二人が来てからはそんなことはなくそのために二人がヴィルヘルム六世と一緒に寝ているのだ。

 

「…すまないなクロエ」

 

そう言ってヴィルヘルム六世はクロエの頭をなで始める。

 

「本当ならお前も連れていきたいのだが…。必ず連絡はするし大型連休の時には戻って来るから」

 

「…分かりました。帰ってきたらたくさん甘えます」

 

だから、とクロエは続ける。

 

「必ず帰ってきてください。それと妹のことはお願いします」

 

クロエの言葉にヴィルヘルム六世は笑ってかえす。

 

「当たり前だ」

 

それだけ言ってヴィルヘルム六世はヘリに乗り込んだ。それと同時に扉が占められて離陸する。

 

ヘリと一応なっているがこの機体はアメリカで配備されているオスプレイのようなもので中は広くなっていた。

 

「姉上の様子はどうであった?」

 

後方の席に座っていたラウラを見つけ隣に腰かけるとふとそのように聞いてきた。その表情には若干の陰りが見えた。恐らく姉が残り自分だけヴィルヘルム六世とIS学園に行くのに負い目を感じているのだろう。

 

「どうもこうもないよ。一発くらいは覚悟していたんだがな」

 

「その分後からありそうですね」

 

流石は姉妹。姉の考えることは大体わかっているようだ。

 

「まあ、クロエになら留守を任せられるからな。ああ見えて交渉能力はかなり高いぞ」

 

「それは私には任せられないということですか?」

 

ヴィルヘルム六世の言い方にラウラは不満そうにそう言うが実際その通りであった。クロエは誰とでも仲良くすることが出来るがラウラはそういう事を上手にこなすことが出来ていなかった。まさに区別がはっきりしている姉妹であった。

 

「さて、このままIS学園に行くが問題ないよな?」

 

「はい、日本自体が初めてですので特に行きたいところもありませんし」

 

ヴィルヘルム六世の確認の声にラウラは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園は先日にクラス対抗戦が行われたばかりであった。

 

そのため全体的に少しピリピリしていた。そんな中でIS学園のヘリポートで二人の女性が立っていた。二人ともIS学園の制服を着ているためここの生徒ということが分かる。

 

「ねえねえ、陛下は何時到着するの?」

 

二人の女性のうち片方、金色の髪を腰まで垂らした女性は幼げな声でもう一人に聞く。

 

「予定ではそろそろ付くはずよ」

 

もう一人の女性は腕時計を見ながらそう返事をする。先ほどの女性とは違い黒髪を肩に届かないあたりで切りそろえた目つきの鋭い女性であった。

 

やがてバラバラとヘリの音が聞こえてくる。その音を聞いて「来たわ」と短く答える。

 

そして現れたのは戦闘ヘリを中心に二十を超えるヘリの大軍勢であった。その姿は圧巻の一言でISがなければまさに最強と呼べる光景であった。

 

やがて一際大きなヘリがヘリポートへと降りてくる。無事に着地すると二人は近くへと寄った。

 

そして中から出てきたのは二人の男女であった。黒い髪の高身長な男性ときれいな銀髪を腰まで垂らした低身長の女性であった。何も知らない人から見れば年の離れた兄妹のようにも見えるが事情を知っている二人は敬礼した。

 

「お待ちしておりました。皇帝陛下」

 

「皇帝ではないぞ。ここではただの生徒だ」

 

「失礼しました。自分はドイツ帝国軍武装親衛隊第五部隊所属クラーラ・アーベントロート准尉です」

 

「同じく武装親衛隊第五部隊所属のコルネリア・ヤルナッハでーす」

 

二人の女性隊員はそう自己紹介するのであった。

 




なんでだろう。本当はラウラをメインにしたかったのにクロエがメインとなっている…。

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