インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結) 作:鈴木颯手
ラウラとの愛を深めることが出来たヴィルヘルム六世は改めてラウラにペアを申し込みラウラも了承した。早速連携訓練をはじめ遂に学年別タッグマッチトーナメントの日がやってきた。
一年の行事の中で一番盛り上がるトーナメントではスカウトを兼ねて各国の重鎮が赴いていた。しかし、そんな重鎮を超える存在がIS学園に向かっていた。
小笠原諸島海域にドイツ帝国艦隊が存在した。基本IS学園に行ったり来たりする時は日本の空港を使うが今回はVIPということで艦隊で来ることになったのだ。もちろん日本政府も了承している。なお、ヴィルヘルム六世が来た時もこの方法である。
ドイツ帝国艦隊の空母「プロイセン」の甲板にはたくさんのヘリが用意してあった。これらはすべてこれから送る人物、ドイツ帝国皇帝フリードリヒ・フォン・ヴィルヘルム・ヴィクトル・プロイセンを護衛するヘリである。
「…さて、行くとするか」
「了解しました」
そのヘリの中で皇帝…にすり替わっているハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインは隣に座る宰相のアルベルトに告げる。アルベルトも二人が入れ替わっているのを知っているが余程のことがない限りハインリヒを皇帝として扱っていた。
やがてヘリが浮かび上がりIS学園に向けて出発していった。
一方、その頃学年別タッグマッチトーナメントは開会式が行われ対戦表が出ようとしていた。
「よし、もう一度確認するぞ」
そんな中、ヴィルヘルム六世とラウラは最後の打ち合わせを行っていた。
「はっきり言って俺もラウラも近接戦闘がメインだ。だが、俺が支援に回り相手の連携を崩しラウラは相手を一人ずつ確実に倒していく。これを基本戦術にして試合の流れで戦術を変えていくぞ」
「分かりました」
ラウラがそう言うと同時に対戦表が公開された。ヴィルヘルム六世とラウラは自分たちの名前を探す。
「…あったな。中盤か」
「対戦相手は他クラスの様ですね」
ヴィルヘルム六世とラウラが考察しているとヴィルヘルム六世のスマホがなり始める。
「…ん?アルベルトか」
ヴィルヘルム六世のスマホは特殊でヴィルヘルム六世が触らないと何もできない仕組みになっていた。
「…はい」
『陛下、もうすぐIS学園に到着します。他の面々には伝えてありますので』
「分かった。試合が始まるまで結構あるからな」
『では』
それだけ伝えると電話は切れた。
「どうしたのですか?」
「もうすぐ皇帝陛下がいらっしゃるそうだ。お出迎えに行くぞ」
「はっ!」
IS学園のヘリポート。ここはかつてヴィルヘルム六世が降り立った場所で大して時間は経過していないのに何年振りかに来た感覚に襲われる。
現在ここにはドイツ帝国からきている生徒に加えて各学年の学年主任、表向きの学園長である轡木十蔵の妻が来ていた。
全員が緊張した面持ちで、そうでないのはヴィルヘルム六世にラウラ、コルネリアだけである。
「…来た」
その声と同時にたくさんのヘリのローター音が聞こえてくる。やがて空を埋め尽くすほどのヘリの群れに守られて一番大きなヘリが着陸態勢に入る。それと同時にドイツ帝国から来た者たちは背筋を伸ばし
ヘリが着陸してまず護衛の武装親衛隊が現れて安全を確認してから中へと声をかける。すると金髪の男性が現れた。瞬間ドイツ帝国から来た生徒は敬礼する。
「ようこそIS学園へ。私は学園長を務めています
出迎えた者たちを代表して学園長が話しかける。
「お久しぶりです、陛下」
「ハインリヒこそ久しぶりだな。最後にあったのは十五日くらい前か?」
「十六日です」
二人はハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインとフリードリヒ・フォン・ヴィルヘルム・ヴィクトル・プロイセンとして話す。
「今回はお前も出るそうだな。楽しみに見させてもらうよ」
「分かりました。陛下が満足できるほどの試合を披露しましょう」
「ああ、それじゃ、俺は観客席の方に行く。他の者たちも頑張れよ…っと」
「ラウラも久しぶりだな。元気だったか?」
「はい、陛下もお久しぶりです」
ラウラは事前の練習通りに話す。ヴィルヘルム六世は設定を決めておりクロエはヴィルヘルム六世に、ラウラはハインリヒ・フォン・ヴァレンシュタインに嫁ぐということにしてあった。
「本当はクロエも連れてきたかったんだが今は皇宮でお留守番だ」
「それはまた、後が大変そうですね」
「まあな、後でビデオを持っていく予定だよ」
「陛下、そろそろ…」
武装親衛隊がそう言ってきたことで「おっと、話しすぎたな。それじゃあな、楽しみにさせておらうぞ」と言って観客席へと移動していったのであった。