インフィニット・ストラトス~ドイツの黒き皇帝~(凍結)   作:鈴木颯手

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第三十四話

『ハインリヒ・フォンヴァレンシュタインが如何様をやって反則負け』

 

この話は半日もしないで学園中の知ることとなった。この噂はドイツ帝国の影響力が強い国から来ている生徒はほぼ信じなかった。ドイツ帝国の力はそれだけ絶大だと知っているからだ。

 

しかし、ドイツ帝国と国交を結んでいない国。特に日本、アメリカから来た生徒はこの噂を真に受けてしまった。このせいであり得もしない噂が広まることとなった。

 

曰く、

 

『本当は男装している女子』

 

『IS学園の生徒をたぶらかしている』

 

『対戦相手は金で買収した』

 

等々が飛び交った。

 

この噂はやはりドイツ帝国の影響力がない国でのみ広まりこれを信じたもの達をドイツ帝国の影響力がある国は冷ややかに見ていたと言う。

 

加えてドイツ帝国皇帝を案内した後学園長は夫婦そろって女性利権団体日本支部から招集を受けて学園にいなかったため織斑千冬の判決を覆せるものはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「納得いきません!」

 

二日目の学年別タッグマッチトーナメントが始まる少し前、管制室で怒鳴り声をあげる生徒がいた。

 

二回戦を勝ち抜いたクラーラである。

 

クラーラはヴィルヘルム六世が如何様をしたとして反則負けしたと言うことを聞き付けて織斑千冬に直談判しに来たのである。

 

「大佐殿は如何様をするような人ではありませんしそんなことをする必要はない位にあの二人は強いんです!」

 

「それはあくまで貴様が思っている評価であろう?今回は教師陣が話し合って決めた結果だ」

 

しかし、その直談判も織斑千冬はバッサリと切り捨てる。その言葉にクラーラは「話し合ったんじゃなくてあんたが勝手に決めたんだろ」と織斑千冬に聞こえない大きさで呟く。

 

実際のところ今回の騒動は織斑千冬とドイツ帝国をよく思っていない教師と女尊男卑に染まった教師の独断であった。本音を言えば織斑千冬は自身の弟である織斑一夏をボコボコにしたクラーラとコルネリアを失格にしたかったが織斑一夏とその相棒であるシャルロット・デュノアの機体はダメージレベルCに達しており直ぐには修理が出来ない状態であったため同じく勝ち上がったドイツ帝国の男性操縦者を失格にすることにしたのだ。結果は女尊男卑に染まった教師とドイツ帝国を快く思っていない教師を味方につけることが出来ヴィルヘルム六世とラウラは反則負けとなったのだ。

 

「しかし!」

 

「くどいぞアーベントロート」

 

クラーラは尚も食い下がるが織斑千冬は全く聞き入れなかった。

 

「あ、あのアーベントロートさん?そろそろ試合となりますが…」

 

そこへこの件に関与していない山田教諭が声をかけてくる。その声はとても怯えていた。クラーラと織斑千冬の間に漂う空気に耐え切れなかったようだ。よく見れば涙目であった。

 

「…分かりました。織斑先生、今回のことは本国に報告します」

 

「…好きにすると言い」

 

クラーラは山田教諭の説得を受けてクラーラは引き下がりドイツ帝国に報告すると言って管制室を出て行った。クラーラが出て行ったあと山田教諭が織斑千冬に話しかけた。

 

「あの、織斑先生。宜しかったのですか?」

 

「問題ない。ここはIS学園。何処の国にも影響は受けない」

 

山田教諭の不安に織斑千冬はそう答えるが山田教諭の不安は消える事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラーラちゃん、どうだった~?」

 

「だめ、全く聞き入れてくれなかった」

 

ピットについたクラーラは先に待機していたコルネリアから聞かれるも悔しげにそう答えた。その報告を聞いてコルネリアは「やっぱりか~」と答える。

 

「どうせ今回のことは一部の教師のごり押しだと思っているけど織斑千冬もやっぱり関与していたか~」

 

「どうするのですか?このままでは…」

 

「もう手遅れですよ。今、私たちに出来るのは優勝目指して頑張ることだけです」

 

そう言うと同時に【お待たせしました!選手の入場です!】と聞こえてきたためコルネリアは「モーゲンタウ」を装着する。クラーラは納得いっていないようで眉にしわが寄っていたが仕方なしにISを展開した。

 

「それでは行きますよ~」

 

コルネリアがそう言ってアリーナへと飛び出していきクラーラも続く。

 

「…昨日の専用機はどうしたの?」

 

対戦相手、反則負けとなり昨日ヴィルヘルム六世が戦った相手のうち女尊男卑に染まった女が聞いてくる。どうやら本来の専用機を使わないことに不満を感じているようだ。

 

「あなた程度~、使う必要はありませんよ」

 

「何ですって!?」

 

【試合開始!】

 

女がヒステリックな声を上げるのと試合開始となるのは同時であった。コルネリアはすぐにアサルトライフルを取り出してフルオートで女に撃ちまくる。

 

「ちょ!いきなり何するのよ!?」

 

「え~?試合が始まったから撃っただけだよ?こん位避けてよ~」

 

そう言いつつも女へと接近、近接ブレードを取り出して切りつける。

 

「きゃあ!ちょっと!早く援護しなさいよ!」

 

「無理ですよ~」

 

女がパートナーにそう怒鳴るがコルネリアが無理という。よく見れば女のパートナーはクラーラによってアリーナの端へと押し込まれており援護どころか二人は分断されていた。

 

「こ、この卑怯者!」

 

「卑怯者?何言っているの?これは試合。勝つために策を使うのは当たり前でしょ?」

 

「尤もこんなにうまくいくとは思わなかったけど」と女に聞こえる大きさで呟く。それに対して女は切れるがそれで試合の流れが変わる訳もなく、それどころか怒りで周りが見えなくなり単調な動きしか出来なくなっていった。

 

「ほらほら~、君が昨日戦ったハインリヒはもっと強かったよ~?」

 

「うるさい!」

 

女の攻撃をひらりひらりと避けては女をあおっていくコルネリア。しかし、コルネリアの動きが一瞬止まる。これを女はチャンスと思い一気に畳みかけた。

 

「くらえ!」

 

「え~?嫌だよ」

 

そう言ってコルネリアは避ける。女は止まれずにそのまままっすぐ突っ込んで行く。その先には…

 

「…きゃぁ!」

 

女のパートナーがいた。女は気づかないうちにパートナーの近くまで来ていたのだ。パートナーもクラーラから身を守るので精一杯で後ろから接近する二人に気付いていなかった。

 

二人は絡まって地面へと落下する。

 

「ちょ、ちょっと!早くどきなさいよ!」

 

「え!?え!?」

 

パートナーは何が起きたのかわからずに混乱している。そこへクラーラと合流したコルネリアが二人に照準を合わせた。

 

「じゃあね、君との試合はつまらなかったよ」

 

瞬間アサルトライフルが火を噴き二人のシールドエネルギーを空にした。

 

【試合終了!勝者クラーラ・アーベントロート、コルネリア・ヤルナッハ!】

 

そのアナウンスが流れ二人の決勝進出が決まったのであった。

 


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